ORDER12【トラブルシューティング1】
ORDER12【トラブルシューティング1】
「どうゆうこと?イサ・・・?」
「僕はね・・・―――」
イサが何か言葉を紡ごうとしたとき、突然地震が起きた。
家具が大きく揺れて、一同は一時話しを中断して、家具が倒れない場所に避難した。
しかし、地震はすぐにおさまった。
一時はほっとして、全員が気を抜いていたが、次の瞬間、店の床に描かれているセシルの魔法陣の中心部当たりで、黒い光が煙のようなものが始めた。
「闇の力?!」
セシルは、その煙のようなものを見ながら、驚いたようにそういった。
闇の力だとセシルが言う煙の塊は、すぐに霧が晴れるように消えた。
そして、全員の瞳に全く知らない男性の姿が映った。
赤毛の男性バニッシュだ。
「イサ・・・シウテクトリの力を得たようだが?」
「やっぱりアンタがシウテクトリを解き放ったんだね?どうりでおかしいと思った。彼はまだ、閉じ込められて強制終了状態のはずなのに、彼のマスターの指示がない限り起動はしない・・・なのに無理矢理起動させたんだ?」
「ずっと深い闇の中に眠り続けるなど、可哀想じゃないか・・・その力を活かさないとは・・・もっとも勿体無いとは思わないか?」
「・・・お前バカだな。」
「そういえば、何故貴様も起動しているのだ?私は貴様を起動させた覚えはないのだがな?まさかとは思うが・・・マスターが開放したのか?」
「マスターが開放・・・か。いや、彼は無意識のうちに解放したんだと思う。彼は、まだ自分がマスターであることに気がついていないから。」
イサはそう言って、レイスの方を見た。
レイスは、自分を指していることに気がついていないようだが・・・・・・・。
レイスの様子を見て、バニッシュは鼻で笑った。
「なるほどな・・・親が親なら子も子か。」
「マスターをバカにするのだけは許さない。」
イサの体から青色の光がふわりと放出しだした。
同時に、高速でバニッシュの前まで踏み切り出ると、下から光の塊をバニッシュに向けて放つ。
しかし、それは軽々と避けられてしまった。
「いいのか?そんなことをしてみろ。マスターの意識は戻らないままになるぞ?」
「それはどういう意味だ。」
「まだ分からないのか。出来損ないが。」
バニッシュは一息つくと、自分の前髪をかきあげながら、不敵に笑った。
そして、イサの前に手を差し出す。
開かれた手の上を見ると、手の平から次第に鏡のようなものが現れてきた。
丁度、女の子の持つ手鏡くらいのもので、淵はアンティークなデザインで装飾されていた。
「それは!」
その鏡を見て、イサは酷く驚いた様子で身を乗り出した。
しかし、バニッシュはすぐに鏡をしまった。
「お前が返して欲しいものはここにある。マスターが、ずっと昔に失くしてしまった記憶の中で、生まれ変わっても、心の記憶に戻ることが出来なかった、一番大切な部分。返して欲しいだろう?今は・・・言うことをおとなしく聞いておいたほうがよいと思うが・・・?」
「!!」
「・・・ふっ・・・愚かなものだな・・・。」
バニッシュは、不敵な笑みを浮かべながら、何処かへ消えてしまった。
「ふざけるな・・・ふざけるなよ・・・バニッシュ!!!」
イサが掴みかかろうとしたが、虚しくもその手は宙を切った。