Order8【完全廃墟地区エリア1】
Order8【完全廃墟地区エリア1】
ショコラの誘導で導かれた先は王都の地下鉄道の通る道筋。
エリア弐区画の錆びれた場所。
【完全廃墟地区エリアD-1】
崩れかかった研究所のようなものがあり、それ以外には特に何もない・・・
まるで嵐が来て全てを奪い去ったような感じの場所だ。
「ここは?」
セネルがショコラに尋ねると、少々ショコラも困ったような顔をしていたが、答えてくれた。
おそらく、自分の分かる範囲で。
「えっと・・・イリーガル研究所。なんか、遺伝子の研究してたらしいよ。穀物とかの遺伝子組み換えで新種の商品作ろうとしてたんだとか・・・。」
「イリーガル・・・ねぇ。」
イリーガルといえば『違法な』という意味であるから、セネルは何処か納得しないような表情でいたが、一体昔ここで何があったのか、遠い過去から来たセネルには全く分からない未来の話のため、このことは保留することとした。
ショコラが研究所の横にある螺旋階段を上るその後ろをセネルたちも一緒に着いて行くと、屋上には大きなゲージのようなものがあった。
その中には、おそらくレイスのフリンジだと思われる輝きが見えている。
「あれ、レイスのフリンジ?」
疑問風にショコラがイサに輝きを指差した。
イサは駆け足で輝きに近づき、確認する。
頷くという仕草は、レイスのフリンジであるという肯定。
「でも、このゲージは起動していて、鍵が掛けられているみたいだね。このゲージの動力源を落とさないとこの中からフリンジ取り出すのは難しいよ。」
「動力源かぁ・・・。ショコラ、分かる?」
セネルとイサがショコラの方を見てそういうと、ショコラは少し考えてから「あ」といいながら振り返り、このエリア内の隅っこでわずかに光っている場所を指差した。
「あそこ・・・」
「あれは?」
「うん、あれね・・・すっごい言いにくいんだけど、麻薬密売とかしてる結構危険な人たちがあそこの中にあるバーで麻薬の売買行ったり、人体売買してたりする結構ヤバイ場所。だから完全廃墟地区エリアの仲間に入っちゃってるんだけど・・・。」
「意外とあっさり言ってるじゃないか。」
苦笑しながらセネルが一言突っ込む。
イサもなんでこんな区画にそんな奴等いるんだ!と心で突っ込んでみた。
「まぁ・・・この区画で生きている動力源はそこの店の中にしかなさそうだね・・・それ以外の場所からはエネルギー的なものは見えないし、生きている気配もないね。」
「じゃあ、あそこに行くしかないんですか・・・でも、真正面から行ったらきっとボコボコにされますよね。てか、即戦闘状態=即死。」
「じゃあ乗り込めばいいんじゃない?」
「「マジで?」」
「うーん・・・言いだしっぺが俺だから何も反抗できないけどさぁ・・・」
バーの入り口前にはガラの悪そうな服装をしたショコラが1人立っていた。
黒い髪の毛をワックスで後ろにかきあげ、毛先を洗って落とせるヘアスプレーでシルバーにしている。
服装は紳士的であるが、何処か人を近づけさせないような雰囲気を放っている。
「・・・落ち着け俺。俺はできる。できるはず。」
そう自分に言い聞かせながら、意を決してバーのドアを開いた。
「よう、兄ちゃん。見かけない顔だな?」
ドアを開くとすぐにカウンターの向こう側でコップを磨いているマスターがショコラに声をかけてきた。
マスター自身はそこまでガラが悪いという印象を持たせてはいないが、その瞳は明らかに人を警戒する目だ。
「あぁ、俺は最近ここのことを知ったんでな。マスターのトコ、結構いいやつ出回ってるらしいじゃん?」
挑発的にカウンターに腰掛けながら、マスターに顔を近づけてショコラはそう言った。
ちなみに、何故ショコラがこんなことをしているかと言うと、セネルとイサ、そしてレイスがショコラがマスターやお客達を引きつけている間に裏口から回り込み、店の内部にあるこの区画の動力源を探し、落とすという計画を打ったのだ。
正直、ショコラはあまりこうゆう場所は苦手なので、早く終わらせてしまいたい気持ちでいっぱいいっぱいである。
「ほぅ・・・お前、名前は何て言うんだ?」
「俺?俺はノーバディ。生憎、生まれた時から迷子なんで名前なんてないんだよ。好きなように呼んでくれないか?マスター。」
「ならば、ブラックとでも呼ばせてもらおうか?お前は何故、この店のものを欲しいと思うんだ?」
「俺が欲しい理由?それは・・・―――」
バーの裏口の窓がゆっくりと開いて、そこから3人が侵入する。
「なんとか侵入には成功ですね。」
「でも、どうやって見つける?ここの中知ってるわけじゃないから、開くドア間違ったらヤバくない?」
「大丈夫。こんなこともあろうかと、セシルから預かったものがあるんですよ。」
そう言ってセネルが出したのはまるで電子辞書のようなコンパクトな機械。
「それは?」
「前、レイスがこっちにいた時に作ったものの一つらしいよ。この場所のことを、すぐ表示できるようになってるんだって。使い方は教えてもらったからきっと動くはず。」
セネルがスイッチを1つ押すと、機械音が微量だが聞こえ、フォログラフィーの画面が浮き出た。
それを見て、2人は地図を頭に叩きいれる。
「とりあえず、そこの道を左へ行かなければいけないようですね。行きましょう。」
そう言い、セネルが曲がった時、通路には密売中の男性が2人いた。
彼等とセネルの瞳は交じり合い、一瞬の沈黙の後、彼等はセネルに向かって殴りかかろうとする。
それをセネルは軽々と避けて、二人を壁際へ押しやる。
「ちっ・・・さっきそこには誰もいなかったはず・・・お前等不法侵入者だな?!」
「貴方達は密売者だよねー?いけないんですよ?そんなことしちゃ。」
「警備官か?!」
「何処にこんな子どもを警備官にする警備役所がありますか。」
「だよな・・・・って!お前等・・・じゃあ現場目撃したんだな?仕方がねぇ・・・殺すしかないようだな?」
そういい、セネルに向かって男たちが殴りかかろうとしたが、どの道勝ち目は決まっていた。
彼等は一般的な人間であるが、セネルは魔法使いである。
魔法の使えるセネルにとって、大の大人2人くらい軽々と魔法で捕らえることなど可能なのである。
氷の魔法で、彼等の足を掴み、地面に氷付けにしてやると、彼等は驚いたようすでセネルのことを見る。
「お前・・・魔法使いか!!」
「はは♪喧嘩売った相手が悪かったようだね?お・じ・さ・ん♪」
セシルに似た不敵な笑みを浮かべて、セネルは指を鳴らしてもうひと魔法。
発動された魔法に彼等は叫びにならない悲鳴をあげて気絶した。
「うわー・・・セネルやりすぎ!」
「いいのいいの。縛っておいて、そのへんのゴミ箱に突っ込んでおけばいいんですよ。」
そう言い、本当に行動に移し、ゴミ箱へ捨てた。
「・・・有言実行・・・。」
それそ見ていたイサはセネルは実は腹黒いのではなかろうかと思い始めていた。
「次は、ここのドアの向こうに階段があるので地下へ降りますよ。」
3人はゆっくりとドアを開けて薄暗い階段を降りていった。
すると、地下には多くのドアがあり、まるで3人を惑わしているようだった。
その時、セネルは手にしていた機械に異変が起きているのに気がついて自分の握っているものを見てみると
「こりゃ・・・やばいねぇ・・・地図のフォログラフィー消えちゃったよ。電力に耐え切れなかったかな?」
手に持っていた電子辞書のような機械は完全にショートしていて、使い物にはならなくなっていた。
「どれだけの電力が流れているんだろう・・・それだけ規模がでかいってことなのかな?」
「よくわからないけどさ、兎に角、はやく動力源行かないとヤバイかも・・・。」
「ヤバイって?」
分かっていない様子のイサにセネルは難しい顔をしながら、はっきり言う。
「もし本当に動力源がそれだけの力を持つ価値あるものであるのなら、ショコラは今とっても危険なマスターと出会っているってことですよ。」
「お前、本当にお客か?違うだろ?」
マスターはショコラを睨みながら怪しく笑う。
その笑みにショコラも負けじと不敵に笑ってみせる。
「もし、そう思うなら・・・貴方はどうするつもりだい?マスター。」
「分かってるんだろ?削除するまでよ。」
パチン と、マスターが指を鳴らすと、それまでテーブルについてお酒を飲んでいたお客が一斉に立ち上がりショコラの方へ向き直った。
それも、完全なる殺意の眼差しで。
「うわぁお・・・これは危険かも・・・」
そういい、ショコラは袖口から二本の短いロッドを取り出した。
持っている部分のボタンを押すと、ロッドは30cmほど伸び、遠距離にも対応できるものになった。
「隠し武器だと?」
「あんたらも変わんないじゃないか・・・」
相手もごつい武器を持っているのに、そんな文句を言われても・・・と、困ったような表情をしていたショコラだったが、相手が動き出したため、ショコラも動き出した。
ロッドを握り締め、相手の急所に目に見えないほどの速さで打ち込んでいく。
まるでショコラは疾風のように次々と倒していくと、大体半分ほどは減っただろうか・・・一息つくように動きを止めて、残りのマスターの連れとマスターの方へ振り返った。
すると、全員戦意喪失している様子だったが、マスターがはっとして連れ達に指示を出す。
「どうやら君達調子に乗りすぎたようだね・・・俺、ちょーとっ怒っちゃったかな。大体俺だって好きでこんなとこ来てるわけじゃねぇんだよ。なんで俺がここに来なきゃならないんだ。俺こんなの向いてないって・・・そう思ってたのにまさかのここ・・・。」
ぶつぶつといいならがショコラはロッドに力を込めて、思いっきり店内に放った。
ロッドを振り上げただけのはずだったが、ロッドからは風が放たれていて、その風はまるで刃のように店内のコンクリート壁をエグっていた。
「お前・・・魔法使いか?!」
「魔法使い?あー・・・そうだったかもなぁ、俺親父にコレ制限されてたからあんまり使わなかったんだけどさ・・・俺にも何なのかわかってなくてさー・・・まぁ魔法なら魔法でいいさ。お前等覚悟できてるんだろうな?お客様は神様なんだぜ?神様に歯向かうとどうなるかおしえてやるよ。」
ロッドには強い風が集まり始めていた。
「セネル、こっち!こっちだよ!このセキュリティパネルを解除すれば、きっと動力源のある部屋にけるんだと思うんだけど・・・」
そう言ってイサはセキュリティでロックされているドアの前で困ったようにたたずんでいた。
生憎、セネルにもセキュリティことは一切わからない。
魔法で壊してみようと試みたが、それはイサに止められた。
最近のセキュリティには対魔法用があるらしく、もしそれが作動してしまえば、すぐにこの店の中にいる密売人達がやってくるはずだ。
リスクを減らすのであればここは正規ルートで行くか、セキュリティを解除する暗証番号を誰かから聞き出すしかない。
しかし、聞き出すとなると少々危険である。もし、すぐにインカム(無線)で仲間に連絡を入れられてしまえば、後から仲間がこちらへ集中的に集まり、動力源につくことはできても、帰りがかなりの危険を伴う。
3人で大勢の人数に敵うはずがない。
(それに、レイスが・・・―――)
そうセネルが思っていた時だった。
レイスは2人の前に出て、セキュリティパネルを解除した。
ハッキングをしたのだ。
相変わらず無表情なままで言葉すら発さない彼であったが、恐らく仲間を思って体が動いているのだろう。
「ありがとうレイス。君ってすごいね!」
「・・・・・・。」
レイスは未だ視点の合わない瞳でイサをみていた。
それから3人は、ドアを開けて先へ進んだ。
すると、その先にはゲージの中で輝きを失わず、光り続けている大きな水晶のようなものがあった。
それこそ動力源の源。【魔法結晶石】
これは新人類計画の時に使われた材料の主体であるが、現在はこうして動力の源として使用されている。
それ以外に使用することは法律上禁止されている代物であるが、よく見れば、魔法結晶石の一部が欠けている。
「おかしいですね・・・魔法結晶石は自らは欠けたりなどしないはず・・・となると・・・。」
「誰かの手によって削られているってことですね?」
「そうみたいだね・・・それに、こっちの部屋、見てください。」
そう言いセネルが隣の部屋のドアを開けると、溢れんばかりの魔法結晶石が大量に敷き詰められていた。
「何コレ・・・」
イサが驚いたようすで見ていると、ふと、部屋の一角に放置されていたダンボールが視界に入ってきた。
そっとそれに手を伸ばし、開いてみると、中身はなんと、密売されていたと思われる薬物ばかりだった。
しかし、その薬物からは魔法結晶石の輝きが微量であるが残っていた。
「これは・・・魔法結晶石の麻薬?」
「なるほど、魔法結晶石を麻薬にしていたのですか。それなら高値で売れるでしょうね。」
「一般的な麻薬より売れるの?」
「えぇ、これは新人類計画のレポートに書かれていたことですが、魔法結晶石は人体に取り入れると魔晶反応を起こして、そこから異常な程の運動能力値や知能値を大幅に増加させた新人類を生産したといわれていますが、その生産の過程で使用されたこの魔法結晶石には直接オリジナルである私達が取り入れると、強力な麻薬にしかならないと解説されています。」
「オリジナル?」
「イサは、イサしかいないでしょう?そうすればイサ自身はオリジナル。そして、イサの細胞などから生成されたクローンがレプリカのことです。」
なるほど。と、イサが納得したように頷いていると、レイスが何かに気がついたようにセネルの腕を引っ張った。
何?といいながらセネルとイサがレイスが指差す方をみると、そこには武装したマフィアっぽい人が完全にこの部屋の入り口を塞いでいた。
「いい度胸だな。お前たち、もちろん死ぬ気できたんだろうから、手加減はいらないんだろうな?」
そう言いながら武装集団は銃などを構えてこちらを睨んでいる。
「・・・ヤバイ。」
「まさか武装集団のたまり場だったとはねぇ・・・」
「・・・・・・。」
絶対絶命?
久しぶりなラストオーダーの更新・・・。
超長い気がする。
今まで部分部分で短くしておいたのに超長い。
今までの中で。最上級だよ最上級。ワロスワロス。
(もはや俺にも意味不明