神の教育1
シャオちゃんが少し成長してます。
「さて今から一年間シャオには様々な知識を覚えてもらう。」
「知識?」
「そうだ。今から生きていくための知識を覚え最低限の事は自分で出来るようになれ。」
「はい、パパ。」
「それに、この家の様々な本は好きに読むといい。俺の世界やこの世界の本がある。」
ここは修羅の社の一番奥にある部屋で、様々な本が置かれている場所である。社の数十倍もあるこの部屋は神の力で別空間と繋がっている。見渡す限りの本棚にズラッと並べられた本が今か今かと読んでもらいたそうにしている。
「さっき言ったように俺の世界の本もある。この世界では通用しない技術や思想、文化が記載されているがそれを使うかはお前しだいだシャオ。」
「ハイ。」
「どんな文化や思想も知らなければ否定も賛同も出来ない。難しいことを言うようだが自分で考え自分に合ったものを選んでいけ。しかし、生きていく上で必要な食料確保、寝床の確保、周囲の警戒は叩き込む。いいな!」
「ハイ。よろしくお願いしますパパ。」
シャオが本の虫になって半年が経った。今の見た目は7~8歳程度になっている。魔族の成長スピードには少し驚かされる。最近シャオが気に入っているのは社交辞令の本だ。何かと挨拶するときいちいちスカートの端を上品に摘み少し持ち上げ「おはようございますパパ。」と挨拶をする。俺はそっけなく「おはよう。」と返すだけ。シャオは少し頬を膨らましムッとしすぐ自分の部屋に戻る。その後何食わぬ顔で俺と朝食の準備をし朝食を取る。最近居間の一室をシャオの部屋にしている。奥の本の空間を使えばいいと言ったが、居間に丸いテーブルを置き「ここがいい」と言ったのでそこをシャオの部屋にした。そしてこの半年間ミスラは此処を訪れていない。自分の神職が忙しいらしい。
「フム、そろそろ食料確保と周囲の警戒の実践でもやるかな。」
俺はそろそろ実践でシャオの知識がどのくらい付いたか確認しようと思っている。
「パパ。ちょっといい?」
「ん、どうした?」
「え、えっとね。」
シャオが手をもじもじさせて言葉を選んでいる。
「どうした?」
「えっと、私に魔法を教えてください。」
銀髪の可憐な少女の頭が勢いよく下ろされた。
「無理。」
「え゛」
俺はシャオに即答した。
「や、やっぱり私なんかじゃまだ魔法使えないんだ。」
シャオは頭を下げたままスカートの端を握りしめていた。
「はぁ~」と俺はひと呼吸ついて
「違う違う、俺には魔力が一切無いから魔法使えないの。」
「えっ、パパあんな凄い部屋とか作れるのに魔法使えないの?」
「あぁ使えない。それにあれは神の力で魔法とは一切関係ない。」
「じ、じゃあ私はどうすればいいの・・・」
まるでこの世の終わりのような顔で泣き出しそうなシャオ
「フム、俺の知り合いで魔法に詳しい奴がいる。会ってみるか?」
「ふぇ、う、うん!」
よし、奴の所まで行く時に実践を試してみるか。
荒野に一人泣きじゃくる少女が立っていた。
「うわぁ~んぱぁぱぁ~!!どこぉ~!!」
ふむ、まだ無理だったか。今度からはすぐ居なくなるのではなく少し離れて見ることにするか。
少女の上空数百メートルに修羅は立っていた。跳躍力を活かし一瞬でこの高さまで来てシャオの様子を伺っていたのだ。しかし、一人で荒野に放り出されるとは思っていなかった彼女は突然修羅が居なくなったので泣き出してしまった。
「パパ~!!」
「フム、俺を呼んだか?」
シャオの横に見慣れた武神の姿があった。
「ぱ、パパ~!!」
シャオは修羅の右足へ抱きつき大きな声でまた泣き出した。
「も゛う゛居なくなっちゃいや~!!」
「まだお前には早かったな。」
ひたすら泣いて疲れたのだろう、シャオは眠ってしまった。
「さて、まずは奴に会わんとな。」
修羅はシャオを背中に背負い疾風のごとく荒野を走り抜けて行った。
ギャグ回までもう少しです。