ある男と娘の出会い
連投です。
ここフューリ大陸の住民は特殊な経緯のものが多い。先の大戦で英雄と呼ばれた剣士。数百年前大魔法使いと呼ばれ恐れられた魔女。様々な理由で俗世から逃れた者たちがこの荒野に住んでいる。
男は久しぶりにフューリ大陸の端にあるガルガンダに訪れていた。ガルガンダへは俗世から逃れたものも自分からあまり近づこうとしない。武神修羅が祀られているからである。武神と言われる神だが『黄金の鎧を纏った神』以外全てが謎に包まれているため警戒して近づくものが少ない。男はこの修羅の社を目指していた。確固たる意思を持って。
「修羅様に勇者の容姿を聞き出し、先遣部隊に伝えねば!」
俺は武神修羅様になんとしても合い狂勇者の容姿を聞き出さなきゃならねぇ!見守る事だけしかしない神様と呼ばれているし、今回は合えばすぐ教えてくれるに違いねぇ!それに我らドワーフ族の戦いの装備、金剛石でできた『大地の鎧』に伝説の龍の名を付けた斧『ズメイ』だ。この『戦いの正装』ならすぐ出てきて下さるだろう。
男は何度か修羅の社に訪れたことがある。最初は『正体が分からない神を確認したい』と言う好奇心で訪れた。しかし、社には誰も居らず生活感だけが漂っていた。この時修羅は社に居たが男には見えなかったらしい。二回目は神職直後の修羅に偶然社に居合わせた男がばったり遭遇した。男は固まりその場から動けなくなった。全身黄金の鎧を纏った神が目の前に居るのだ無理もない。その日修羅は初めてこの世界の生物と話をした。あまり口数は多くなかったが男が修羅を崇拝しそうになった。修羅は「ん?気にするな。」と一言言って過度な神崇拝を止めさせた。信仰は欲しかったが、過度な事をされてこの世界に影響を出したくなかったからである。その態度に男は驚き度々ガルガンダに訪れ献上品を奉納するのが多くなっていた。
「他の神様も一方的に信仰を押し付けるのではなく、修羅様のように一歩引いた態度を取ってくださればいいのだが。」
神々は自分が選んだ神子に思考を伝えるか、その神子を寄り代に他へ伝えるかぐらいが一般世間で知られている事だ。神は一方的に伝えるだけでこちらの意見を聞こうとしない。たまにミスラ神が王都や街に赴いて様々な交流をしている事は神々以外誰も知らない。
男は社の数十メートルで足を止めた。男は愕然とする。
「・・・」
男の思考は停止いている。
「おじちゃん誰?」
男の目が一点を見つめたまま動かない。
「パパ~おきゃくしゃん!」
男はまだ理解できない。目の前にヒューマンでいう3~4歳程度の銀髪で可憐な少女から禍々しいほどの魔力が出ており、それに飲み込まれそうになっている事を。
「ム、パパでは無いが客とはミスラの奴か?」
男の思考が蘇ったのは黒髪の青年から言葉が出た時であった。
「ッ!!」
男は急いで戦闘態勢に入る。
「ん?ベリルではないか。久しいな。」
「え゛」
先ほど俺は社に入るよう言われ社の一室で修羅様と向かい合っている。
「あの、修羅様よろしいでしょうか?」
「ん?なんだ?」
「パパこれ何~」
「それは鎧と言って・・」
俺は今とんでもないものを見ている。修羅様が子供を膝の上に乗せ子供が質問していくものに一つ一つ答えている。そしてその子供は膨大な魔力を持ち無邪気に修羅様の膝をペチペチ叩いている。
「その子は?」
「あぁ、拾った。」
「へっ?」
「わたしはぁ~パパのむしゅめの~シャオ!」
「おい、それは誰に教えられた?」
「みしゅらおねぇちゃん。」
「・・・ミスラめ要らん知識をシャオに教えたな。」
「で修羅様話を戻します。」
「おう。」
「その膝の上にいるのがシャオ様。あなた様が拾ってこられた魔族の娘ですな。」
「その通りだ。」
「むぅ~違うの!しゃお、シャオはパパのむしゅめなの!」
「は、はぁ。」
修羅様に事情を聞くとシャオ様は近くの荒野で拾った魔族の娘で、荒野で生活できるようになるまで面倒を見るそうだ。
「で、ベリルお前は何故正装で俺のところまで来た?」
「はい、あなた様にお願いがありまして。」
「ん?願い?」
「はい、おそらく貴方様が立ち会ったであろう『勇者と魔王』の戦いの件でございます。」
「それがどうした。」
「はい、その・・」
「歯切れが悪いなどうした。」
ベリルは表情は険しいまま瞼を涙でいっぱいにし涙を流しながら、震える声で修羅に自分のここまで来た経緯を話した。
「一言で言おう、神はどちらにも肩入れせん!」
「し、しかし!」
「勇者の容姿を教えろだ?なんで俺があんな白魔術ばかり駆使し、白のシルバーがかった甲冑、白のロングソードに白い兜って装備の男の容姿を言わなきゃならんのだ。一回しか見てないんだ俺にわかるわけない。それに今はその装備もしているか分からん。顔はヒューマンで少し平たく左頬にホクロがあるなんて覚えてない。」
「しか・・あッ!」
ベリルは俺の言葉を理解した。そして、「ありがとうございました!」と土下座をし俺の社から飛び出ていった。
「ふぅ、あれは俺から聞き出すまでここを動かない気だったな。これでいいかミスラよ。」
俺は社の玄関付近に声をかけた。
「ありがとう。」
「お前も聞いたことだ。そんなにあのガキは危険なのか?」
「今はまだ断定できない。」
そう言うとミスラは立ち去ろうとしていた。
「待て。」
「まだ何か用?」
「お前シャオに変なこと教えるな。」
「あら?何のことかしら?」
「しらばっくれるなそのせいで俺は・・・」
「じ、じゃ私はこれで!!」
「ちょ、チッ逃げやがった。」
私は正直驚いている。ここ数ヶ月で修羅の態度に感情が出てきている。今までこんな事無かった。あの子との生活で徐々に感情が成長しているのね。ベリルと言ったかしらあのドワーフ。あの者にははっきりシャオちゃんの魔力が見えていたみたい。変な噂が出ないといいけど。修羅にもシャオの素性を隠すように伝えてあったから良かったけど。彼女は私たちにも大なり小なり影響を振りまくかもしれないわね。
今後の二人の成長を最高神ミスラは楽しみにしている。
そろそろ修羅の教育編に移ります。少し修正しました。