この世界の魔王(勇者)
今回は魔王のことです。説明ばかりで文章が長いです(;_;)
自分の信念を他のものに理解してもらうのは波波ならぬ努力と信頼がいる。魔族をまとめ魔族に自分の思想を伝えるには『魔王』と云う立場が彼にとってうってつけだった。彼は一介の魔族だったが『どんな事でも手を取り合えば出来る』と言う考えを持っていた。幼馴染だった彼女と両親には包み隠さず話したが、両親は「困った子ね。」と言うだけだった。逆に幼馴染は「凄いね!私、応援する。ううん、一緒に、一緒に貴方と手を取り合えば世界を変えられるかもしれない!」と答え彼と同じ道を選んだ。
二人は様々な知識を吸収し、不可能と言われた『神』との交信、リュート大陸での物流の規制、リュート大陸で初めて導入したと呼ばれている『政治制度』の確率を数十年でやってのけた。ここ80年リュート大陸は『魔王』と『魔王の妻』の二人看板で勢いずいていた。今までの魔族の考えは『弱いやつの話は聞かない』という単純なものだった。二人は強くなる一心で、神が創ったとされ誰も近寄らないダンジョンへ入り無事生還したのだ。二人はボロボロになりながらその洞窟の最深部に辿り着いた。そこで神から二人へ祝福がなされた。祝福を受けたが二人は尚も知識の吸収、まだ解明されていないダンジョン等の調査を行い、彼は向かうところ敵なしの魔剣士になり、彼女は魔法を使えば右に出るものは居ない『魔女』あるいは『賢者』と呼ばれる存在にまでになった。
今まで戦争でしか統率が取れていなかった魔族は、二人の英雄により様々な変化が生まれた。他国との物流交流、政治面での意見交換、得意とする魔法の提供。これまで戦争での敵対しか他国と関わりが無かったが、今では『文化』『技術』『情報』の交流が生まれ様々な種族がリュート大陸へ来ている。リュート大陸は今までにない大繁栄をしていた。そのトップである二人の間になかなか子宝に恵まれなかったが、最近一人娘が出来たと各国へ『魔法伝報』が出された。他国から様々な贈り物が届いたが、それより子供を授かった事に二人は大喜びした。
先に出た『魔法伝報』とは、魔力の浸透しやすい紙を用い情報を魔法で伝えるものである。普通の紙では出来ない上書き、数日前の記事の見直しまで出来るすぐれものだ。これも二人のおかげで世界に広まった。リグレイ大陸の技術とリューネ大陸の魔術の知識が合わさって出来たものだ。これにより様々な情報が一般にも入りやすくなり、物資を運ぶ運送者にも一役かっている。どこで崖崩れが起き、どこで雷撃の雨が降っていて、どこで賊が出たかなど様々な情報が手に入るからである。
魔王と魔王の妻はこの世界で重要人物だった。『だった』とは今はもう「居ない」からだ。その一報が入ったのは突然だった。数日前に娘が生まれたと大喜びしていた人々が今はこの世の終わりと云う表情に変わっている。どんな屈強な戦士が挑んでも歯が立たずその上、挑んできたものに敬意を評し悪い所を指摘してまた挑戦するよう一言加え笑いながら見送る。そんな魔王が死んだと言う事実に人々は信じ、いや、理解出来ない。そしてそんな『良い魔族』に刃を向けること自体今の世界では考えられない。どこかの国が暗殺を試みたが失敗に終わり暗殺者を無傷でその国へ返したのだ。あまつさえ暗殺などと物騒なことをしでかし、その上暗殺者を無傷で返されては面目どうこうではなくなり各国からの圧力も出た。辛うじてその国は存在しているが他の国に監視をされている。そこから暗殺と云う選択はなくなった。影から正面からと両方から挑んで勝てないので彼は『心優しい最強魔王』と呼ばれた。
そんな彼を正面から倒・・殺した者がいる。そのものは異世界からこの世界に迷い込み本人曰く『チート』と呼ぶものを使い魔王とその妻を殺した。そのものを人々は様々な感情を込め『狂った勇者』と呼び全世界に指名手配をしている。この世界で『勇者』とは、勇気あるものと異世界人を示す名前だ。勇気あるものとは、どんな逆向にも耐えやり遂げるもの。言うなれば魔王とその妻は前者である。二人を『魔王勇者様、魔女勇者様』と呼んだものの多い。異世界人が何故勇者と呼ばれているかというと、何度か異世界人によって大きい戦争が集結し、一時的だが平和になったからそう呼ぶようになった。二人を殺した『勇者』は後者の異世界人で、そのものに出会った人から様子を聞くと『亜人、魔族は敵。自分はこの世界を守る勇者だ。』とわけの分からない事を言っていたそうだ。今までも異世界人は迷い込んできたがこんな事を言うものは初めてだった。そしてこの世界の事を何も知ろうとせず魔王城に乗り込み、全てを壊し好きなだけ暴れ何処かに消え去っていった。
魔王城に何かがあったことを『魔王城のスキャンダル』で一儲けを考えていた情報屋が嗅ぎづけた。その情報屋の記事はスキャンダルではなく別の記事で全世界に衝撃を与えてしまった。『魔王城の壊滅と魔王様、妃様の惨殺』この記事は一瞬にして全世界に知れ渡った。記事には『全壊した魔王城の中心に斬り殺された魔王様の死体。門の眼前に首のない妃様の体。数メートル先に妃様の首が落ちており、最近生まれた赤ん坊の姿は確認できず、生存率は無いに等しいであろう。』という文字に世界中の人々は絶句した。一人は嘆き、一人は崩れ落ち、一人は武器を持ち、一人は憤怒し、一人は・・・世界中の人々は悲しみに明け暮れた。魔王城から逃がされた魔族たちは口々に『急に勇者が現れ魔王様と決闘した』と苦虫を噛み潰したような表情で答えるだけだった。城から逃れたものは「あの場所で俺が居れば魔王様を逃がす時間稼ぎになったはずだ。」や「妃様の傍にいれば。」と悔やんでも悔やみきれないと言った感情に押しつぶされている。『勇者』を見つけ出し討つ事で三人が蘇ることはない。しかし人々は自分たちの感情を抑えられない。人々は武器を取り部隊を編成し勇者を探す。そう、『狂った勇者』を。
そろそろシャオを成長させたいです。誤字脱字修正しました。