プロローグ~2~
ようやくプロローグみたいなものが終わります。
この世界で俺は『修羅』と名乗っている。前の世界では何て呼ばれていたかな?もう忘れてしまったよ・・・
今の体は俺の世界の人間のもので、『神』として存在することが難しくなったのでこの男の体を借りた。この男は俺と一緒にこの世界の神に助けられた。いや、表現が違うな。この男は俺の傍にあった死体だ。死体、そう死体だ。この男は、力が弱くなった俺をこの世界へ連れてくるため使った入れ物だった。短くツンツンした黒い髪、黒い目、引き締まった腕、すらっと長いがしっかりと筋肉が付いている足。腹筋は割れているが、あまり筋肉は付き過ぎていない。顔は、まぁ普通だ。どんな世界でも通用すると言っても過言ではないほどの普通だ。最初はこの世界の『神』が肉体を提供すると言ったが、俺は断った。断ったのは、この世界で唯一俺の世界のものがこの男だったからだ。
『神』として戦いを見る為、威厳が目に見える装備をと言われた。そしてこの世界の『神』の彼女に渡されたのが今の装備だ。400年間第三者としてこの格好で見てきたが、そろそろこの格好はしんどい。だって、全身黄金のフル装備だぜ。どこぞの○雄王か!しかし、他にいい装備が思い付かないのでこれを装備するしかない。ん?普段着?普段着は・・・白いTシャツと黒い半ズボンぐらいしかないので『神』としてはどうかと自分でも思うが・・・っと、こんな考えを巡らせることができるのも久しぶりだ。この男に同化してから考えが偏った方向に行く。この男の知識と考えのせいだろ。助けてもらって何もしないのはいけないと直ぐ思い立ち、何か出来ることはないかと提案し任されたのが今の神職だ。こんな事を考えるのもこの男に同化した為だと俺は推測する。この男がニホン人だと思ったからである。礼儀を重んじる国の人間をニホン人と前の世界では括っていたので、直ぐ思い出しこの男はニホン人だと定義した。俺は前の世界の『神』だが、全てを知っているわけではない。前の世界でもこの世界でも『神』は多く存在する。そのトップだったのが俺や彼女だ。彼女『ミスラ神』はこの世界のトップだ。
そんなことを考えていたら何か状況が変わっていた。満身創痍で左片膝を付き右手で負傷した左腕を庇う『魔王』、その魔王の首元に剣を突きたてニヤケた表情でまだまだ余裕の『勇者』。二人は何やら話をしているようだった。
「最後に言い残すことは無いか?あれば聞いてやらんでもないぞ。」
「ならば、我以外のものにはもう手を出さんでほしい。」
魔王は切実に勇者に頼む。
「・・・でもタダってわけにはいかないよ。」
そう言うと勇者はうっすら笑いを浮かべる。
「ならば、我の命を渡そう。」
魔王はそう言うと目を瞑り体から力を抜いた。
勇者は無言のまま魔王の命をロングソードひと振りで奪った。
静寂が訪れこの戦いは終わった。今まで見てきた戦いならばこの場での戦いは収まる。その後、どちらかの軍勢が行動を起こし、蹂躙するか最後の悪あがきとでも言える仲間達等の攻撃がある。しかし、この場には『魔王』と『勇者』しか居ない。魔王軍は勇者が来たと同時に魔王の命令でここ『魔王城』からほぼ全てがこの場から退去。勇者には仲間はいない。いたとしても、既に勇者の玩具にされ殺されるか正気ではいられなくなり、戦いには到底参加出来ない。しかも少しでも違うことを言えば殺され、その力につけ込もうしたなら良くて廃人になる。その為、今ではあまり勇者に近づくものも居ない。この勇者は歴代の悪人すら恐れるであろう思想の持ち主だ。俺もこの勇者を少し危険視していた。考えが偏りすぎて幼稚、なのに力を持っているせいで否定するものを悪とし消す。俺以外でもこの男を危険だと判断するものもいたが皆手が出せないでいた。この世界のものなら彼女『ミスラ』や他の『神』がなんとか出来るのだが、異世界から来た人間なので手出しが出来ない。この男はたまたま空いていた異世界と繋がっていた穴から出てきたのである。他の世界のものに手を出すのは『神』といえどよっぽどのことがないと出来ない。その結果、少しずつ世界の流れがおかしくなっていきつつある。しかし、俺はこの世界のものではないのであまり深入りすることが出来ない。
「あひゃひゃひゃ、馬っ鹿じゃねーの本当に命を差し出したよ。」
勇者は笑いながら魔王からロングソードを引き抜き魔王を笑う。
「そうそう、何が『我以外に手を出すな』って?はっ、そんなこと俺様がいつ承諾した!」
勇者はそう言うと魔王の亡骸などには興味を持たず、魔王城を破壊しだした。
勇者は動くもの城を切り刻み楽しんでいる。魔王城に住んでいた小さい魔物、動物、柱は魔法を浸透させた魔法剣を使いバターのように切り裂いている。まだ神の俺が居るにも関わらず好き勝手に暴れている勇者。勇者というかこちらが『魔王』だな。まぁ俺に攻撃してこない事をみると、動かない俺に興味がないか、はじめから気づいていなかったと俺は考える。無駄な破壊行為が俺に飛び火しそうなのでこの場から離れる事にした。飛び火したところであまり被害は出ないと思うが、鬱陶しいので御免こうむる。自分の祀られている所へ直ぐ帰ろうと思ったが、一応『城』なので門から帰ろうと思った。ただの神の気まぐれだ。
俺は勇者に背を向け出口である門へ歩き出した。
しばらくして城の外にある門が見えてきた。ふと城の状態を確認するため振り返った。
そこには城らしきものがあったとしか分からないガレキの山が佇んでいた。柱の残骸、大きな石畳の破片等々が山のように折り重なっている。
「ガキのお遊びにしては規模がでかいな。」
ふと俺はそう言葉を出した時、がらがらと目の前のガレキから女の魔族が出てきた。女の魔族の顔は埃まみれだったが、一瞬息を呑むような妖艶で綺麗な女性だった。人間なら直ぐ魅了されかねないが神の俺にはなんの感情も生まれない。女は赤ん坊らしきものを抱えていた。
「この子は魔王さまと私の子供です。」
俺はこの世界に来て初めてびっくりした。
この女は神である俺が見えている。見せようとし現れる『戦い』や祀られている『神域』ならまだしも、『見えないようにして立ち去ろうとしている俺』が見えていた。
「・・・なのでどうか、どうか、この子だけでも連れてここから逃げてください。」
俺に構わず話しかけ子供を俺の両腕へ預ける女。ここから逃げろとこの女は俺に向かって言う。直ぐ解ったが俺が神であることを女は分かっていなかった。まぁ遠からずここから去るのだからいいが、この子供など俺はどうすればいいか分からん。女に返そうとしたが、
「はやくその子を 」
そう女は何か言おうとしたが、その続きはもう聞けない。勇者のバスターソードが女の首と胴体を分離させた。
「こいつ何もないところに話しかけてやんの。もう狂ったか?」
そう言うと勇者は剣の先にある女の顔を見て「うわっ、もったいない事したっ!」とちょっぴり残念そうである。
勇者の反応を見ても分かるように俺が見えていない。女にあった子供を守ろうとする母性本能か、あるいはただの奇跡か分からない。しかし、女は俺に子供を持たせたおかげで子供は俺と同様勇者には見えていない。
「まぁいいや、何処かにもっといい女がいるだろう。もう飽きたからいいや。」
そう言うと勇者は移動魔法で何処かに飛んでいった。
俺は仕方ないので子供を連れて祀られている場所へ帰ることにした。
そろそろ本編が始まります。