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姦~魔禍霊噺~  作者: 乙丑
第六話・封(ほう)
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「大宮くん、志水はまだ現れませんね?」

 小料理屋の前に車を停め、店の入り口を見ていた阿弥陀がそうたずねる。

「やはり嘘だったんでしょうか? それともすでに来ていたという可能性も」

「どちらも否定できませんからね。これは根比べでしょうか?」

 阿弥陀は、店から出てきた砂川に視線を向ける。

「――彼は?」

「えっと、おそらく店主の砂川ですね。多分店が終わって帰宅する途中でしょう」

 大宮も、砂川を目で追った。

「手に持ってるのはアタッシュケースみたいですね」

 気になった阿弥陀が車から降りようと、ドアノブに手をかけたその時、砂川は路地裏の方へと入っていってしまう。

 それと同時に、志水が店に近付いているのが、阿弥陀の目に入った。

「わたしは志水をどうにかしますから、君は砂川を」

 大宮はうなずき、砂川が入っていった路地へと向かった。


「これはこれは志水さん、夜分どうしたんですかな?」

 店の近くまでやってきた志水に、阿弥陀は声をかけた。

「あんた、この前の」

 志水は驚いた表情を浮かべる。

 志水の頭から、整髪剤のツンとしたにおいがし、阿弥陀は思わず鼻を手で抑えた。

「あら、覚えてましたか? で、今日はなんの用事で?」

「あんたには関係のないことだろ?」

 と、志水は阿弥陀から視線を逸らす。

「いや、そういうわけにもいかないんですよ。ちょっとあなたには聞きたいことがあってね」

 阿弥陀が志水に近付くや、

「お、俺はなにもやってねぇよ」

 後退りするように、志水はたじろぐ。

「まだなにも云ってないんですけどね?」

 あきれた表情で、阿弥陀は首をかしげた。

「あ、あんたたちには関係のないことだ。それに、俺はこれからそこの店に用事があるんだよ」

 志水は目の前の小料理屋を指差す。

「ところで、ちょっと気になることがありましてね」

「……なんだよ?」

「殺された角川の頭は二回殴られた痕があったらしんです」

 そう言われ、志水は怪訝な表情を浮かべる。

「それじゃぁなにか? 犯人は兄貴を二回殴ったってのかよ?」

「それから、この前あなたが言っていたことですけど、明らかに矛盾してますよね? 本当は……」

 阿弥陀は言葉を止めた。

 彼の胸元に、妙な冷たさが走ったからだ。


「それ以上話すなよ? 俺はなにも悪くないんだからな」

 志水の手には拳銃が持たれており、銃口は阿弥陀の胸元を突き刺している。

「こんなところで銃を撃って大丈夫でしょうかね?」

「あんたが余計なことを言わなければいいだけだ」

 拳銃を持つ志水の表情と手が震えている。

 あまり使い慣れていない。

 阿弥陀は瞬時に判断した。

「一応聞きたいんですけど? どうしてあなたは角川を殺したんですか?」

「殺してなんかいねぇよ。ただ心配になって倉庫の中を見たんだ。入り口の前に兄貴が倒れていた。その時にはすでに死んでいたんだよ」

 志水の供述には妙なところがある。

 阿弥陀はそう思ったが、もしかすると――。

「あなたは倉庫に入る前に人影を見たんでしたね?」

「ああ、そうだ。そこの店で働いている草屋って女だよ。間違いない」

 志水はハッキリと言った。

「でもですね、あの晩はゲリラ豪雨で視界が最悪だ。車の中で目撃していたとしたら、あなたはどうやって逃げていった人影を草屋と判断できたんですか? それに海に落としたという証言も矛盾してますよね?」

 阿弥陀が詰め寄ると、志水は拳銃の引き金を引いた。


 ――は?

 志水は釈然としない表情を浮かべる。

 拳銃の引き金を弾いたのに、銃声が響かないのだ。

 そして、拳銃の先に目をやった。

「……はぁ?」

 志水は、目の前で起きていることに、まったくと云っていいほど理解ができなかった。

 拳銃の先が、ドロドロにただれていたのだ。

 しかも、弾丸もろとも、原型がないほどに。


「な、なにが起きてるんだよ?」

 あまりにも現実離れしている出来事に、志水は表情を強張らせた。

「あまり、力を使いたくはないんですけどね」

 阿弥陀は、照れ臭そうに言った。


 阿弥陀とは、『アミターバ』というサンスクリット語が語源とされている。

 意味は『無限の光をもつもの』であり、無明の現世すべてを照らす光の仏にして、空間と時間の制約を受けない仏である。

 それは言い換えれば時間そのものを操ることの出来る神仏。

 つまり阿弥陀は、拳銃の一部の時間を操り、鉛が固まる前までの状態に戻したのである。


「あ、あんた……、何者なんだよ?」

「まぁ、暇を持て余しているただの老人ですよ」

 阿弥陀の眼光が鋭く光る。

 それこそまさに、目の前の人間を食らわんが如くの恐怖があった。


「う、うわぁあああああっ!」

 その眼光におののいた志水は、逃げるように、砂川と大宮が入っていった路地へと入ってしまった。

 阿弥陀はすぐに携帯を取り出し、

「大宮くん、そっちに志水が逃げて行きました。発見次第身柄を確保してください」

 と大宮に連絡を入れ、自分も路地へと入っていった。



「まったく、いったいどこまで買い物に行ってるのよ」

 と、小学生くらいが乗るほどの大きさがある自転車を押している信乃は、あきれた表情で、浜路を一瞥していた。

「ごめんなさい」

 信乃のうしろを、浜路がトボトボと付いて行くように歩いている。

「そうやで。欲しい本があるんやったらお姉ちゃんに云えば注文してくれるんやさかい」

 と、二人の上空で浮かんでいる真達羅がそう言うと、

「いち早く読みたいって気持ちはわからないってわけじゃないけどね」

 信乃はちいさくためいきを吐く。

「ごめんなさい」

「ごめんは一回でいいの。何回も云ってると嘘に聞こえるからね」

 信乃はそれ以上は責めもしなかったし、理由は聞かなかった。


 浜路は、ふたつ隣りの町にある本屋まで行っていたのだ。

 その帰り、自転車のタイヤが捨ててあった古釘を踏んでしまいパンクしたのである。

 歩けない距離ではなかったが、すこし道を間違えただけでも迷ってしまう。

 そう思って心細くなってしまい、信乃に連絡を入れたのだ。


「しかし、自分らには厳しいくせに妹のことになると甘いなぁ信乃はんは」

「えっ? なにそれ、嫌味?」

 信乃が真達羅を睨んだ時、二人(と一匹?)の横を、初老の男性が通り過ぎた。


 その一瞬、信乃と浜路はその老人を目で追った。

「どうかしたんか?」

 二人の険しい表情に、真達羅は首をかしげるような仕草をする。

「――浜路、今の人」

「やっぱり、お姉ちゃんもそう思った?」

 浜路がそう言うと、

「さっきの人から血の臭いがした。しかもかなり古くて錆びたような臭い」

 そう信乃が云った時である。


「あれ? 信乃さんに、浜路ちゃん?」

 うしろから聞き慣れた声が聞こえ、二人がそちらに目をやると、

「大宮さん?」

 と発した。

「二人とも、どうしたんだい? こんな時間に」

「いや、わたしたちは浜路を迎えに行っていてその帰りなんですけど」

 信乃がそう説明する。

「――ごめん、話はまた今度」

 大宮は侘びを入れると、砂川を追った。

「なにかあったのかな?」

 信乃はすこしばかり考えて、

「――真達羅、浜路のことお願いね」

 と、自転車を浜路に渡し、大宮の後を追った。

「ちょ、ちょっとお姉ちゃん?」

 浜路の呼びかけは虚空に消えた。



「砂川さん……」

 フェンスで先のない場所で砂川に追いついた大宮が、そう声をかける。

「あんたは?」

「警視庁刑事部の大宮といいます」

 そう云って、警察手帳を砂川に見せた。

「もう追ってきたのか」

「そのアタッシュケースの中を見せていただけませんか?」

「断ると言ったら?」

「無理矢理にでも見せてもらいます」

 大宮が言った時、砂川はフェンスの外側に、アタッシュケースを放り投げた。

「な、なにを?」

 大宮は、慌ててフェンスへと走っていく。

 フェンスの外はダムとなっている。

 アタッシュケースは、そのダムの貯水池の中へと沈んでいった。

「これでいいんじゃよ。これで」

 砂川はその場にへたり込んだ。


「どういう意味ですか?」

「あんたたち警察は、わしを疑ってきたんじゃろ?」

 その言葉に、大宮は怪訝な表情を浮かべたが、

「いえ、まだ犯人を特定しているわけではありません。重要参考人として、あなたには来てもらいますけど」

 と、真意を答えた。

「そうか。だがそれも時間の問題だ。わしはあの晩角川を倉庫に呼び出して、うしろから殴ったんじゃよ。それこそ包丁の背でな」

「どうして刺殺ではなく、撲殺にしようとしたんですか?」

「刺殺にしようとしたら、犯人は鋭利な刃物を凶器に使ったと思うじゃろ? じゃからあえて撲殺にした」

「つまり、捜査を撹乱させようとした」

 大宮の問いかけに、砂川はうなずく。

「でも、妙ですね。あなたが殺したとしたら、なぜ被害者は二回も殴られたんでしょうか?」

 それを聞くや、

「二回? わしは一回しか殴っていない」

 と、砂川は、驚いた表情を浮かべた。

「つまり、砂川さんは一回しか殴っていないってことですよね?」

 少女の声が聞こえ、大宮と砂川は声がした方に振り返った。


「信乃ちゃんか……」

 砂川は、顔を背けた。

「信乃さん、砂川さんとは知り合いだったのかい?」

 大宮にそう聞かれ、信乃はうなずく。

「たまにおじいちゃんに連れていってもらうことがあって」

 信乃は砂川を横目で見る。

「そんなことより、さっきガイシャは二回殴られたって」

「うん。おそらくガイシャは気を失っているだけだったんだと思う。殺したと思い込んでいた砂川さんは、意識の確認を取らずに、その場から立ち去った」

 大宮は砂川を見る。

 それを答えるように、砂川はうなずいてみせた。

「つまり、ガイシャは一度目を覚ました後、誰かに殺されたということになりますね」

「それが致命傷になった。その時の傷跡がハンマーのような鈍器で殴られた痕だったから、砂川さんが使用した包丁の背は、あくまで気を失わせただけだったんだ。もちろん頭に損傷は与えていただろうけどね」

 大宮はそう答えると、砂川に視線を向け、

「砂川さん、重要参考人として、署まで来てもらいましょうか?」

 と言った。

 砂川は歯向かうわけでもなく、大宮に従った。



 大宮が携帯を取り出し、近くの警察署に連絡をしている時であった。

 阿弥陀から逃げていた志水は、息も絶え絶えに走っている。

 ――くそっ! こんなことで捕まってたまるかよ。

 志水が必死の表情を浮かべながら、路地を曲がった時だった。


「赤は好きか? 青は好きか? 白は好きか?」

 と、赤いコートの男が、志水にたずねた。

 志水はその男を怪我んな目で見たが、構っていられないと考え、通り去ろうとする。

「答えられぬものは……」

 赤いコートの男は、振り向くや、志水の後頭部を、ナイフの背で殴り、気を失わせた。

 そして、隠し持っていたナイフを、志水の身体に刺した。


「お姉ちゃん」

「浜路、あんたなんで帰ってないの?」

「それがなぁ、わてやと不安っていうてな、信乃はんの後を追ったんよ」

 真達羅が苦笑いを浮かべて、説明する。

「あんた、十二神将よね?」

「まぁ、遠くの神より近くの家族といったところか」

 真達羅は大宮を見る。

 すでにパトカーが二台ほど来ており、砂川は車に乗り込んでいた。

「さてと、後は阿弥陀警部が志水を抑えてくれるかどうかだ」

 大宮が連絡を入れようとした時、

「どうかしたの? 浜路……」

 信乃の服の裾を、浜路は怯えた表情で握りしめる。

「なんか、変な臭いがする」

 ――変な匂い?

 そう言われ、信乃は鼻をヒクヒクと動かした。

「血の臭いだ」

 信乃は臭いがした方に振り返り、険しい表情を浮かべた。

「誰かが殺されたんやろうか?」

「まさか、志水が?」

 大宮がその場から離れると、信乃と浜路もその後を追った。


「大宮くん、そちらはどうなりましたか?」

 阿弥陀と合流した大宮は、

「砂川さんの身柄は確保しました。そちらは?」

「こっちは志水を探している最中ですよ」

「逃げられたんですか?」

「こう道が入り組んでいると……、おや?」

 阿弥陀は、大宮のうしろを一瞥する。

「信乃さんに浜路さんじゃないですか?」

 大宮のにおいを追っていた信乃と葉月が合流する。

「これは好都合。ちょっとこの近くで整髪剤の臭いがしないか調べてくれません?」

 いきなりそう言われ、信乃と浜路は首をかしげた。

「いったいどういう?」

「ちょっと人探しをね。お願いできますか?」

 信乃は乗り気ではなかったが、

「信乃さん、お願いできないかな?」

 大宮にそう言われるや、

「まぁ、大宮さんがそこまで言うんなら、手伝わないわけじゃないですけど」

 と言った。


 信乃は鼻を頻りに動かす。

「――こっちです」

 においを感知し、信乃は路地の奥へと入っていった。

 信乃を先頭に、大宮たちも後を追った。


 先頭を歩いていた信乃は、臭いを探るように周りを見渡していた。

 血の臭いが、そこに近付けば近付くほど強くなっていく。

 人の気配がしない。それと同じように、妙な気配もしなかった。

 路地を曲がると、街灯もなにもない真っ暗な場所に出る。

 その先から、強い臭いがされていた。

 ――この先だけど……。

 鼻を抑えながら、目を凝らして先を見ようとしたが、暗くてよく視えない。

「あがぁ、うがぁ……」

 なにか、呻き声のようなものが聞こえ、信乃は誰かがいると察する。


「信乃さん、どうかしたのかい?」

 追いついた大宮たちも、暗闇の方に目をやる。

「たぶん、あっちの方に人が倒れているようなんです」

 信乃はそう言うと、携帯を取り出し、カメラモードにした。

 そして、暗闇を照らすと、一瞬、誰かが倒れているのが、目に飛び込んだ。

「阿弥陀警部、もしかしてあれって志水では?」

 暗闇に浮かんだシルエットを見るや、大宮がたずねた。

「ええ、間違いないですね。連絡を入れてライトを持ってきてもらいましょう」

 阿弥陀は、近くの署に連絡を入れ、ライトを持ってきてもらおうようにお願いする。


 その間、大宮は自分の携帯のカメラモードを使って、ライトを暗闇に向かって翳した。

「うぅ、あぁ……」

 暗闇に隠れている志水は、意識を朦朧とさせている。

 大宮はそう思った。

「志水、大丈夫か?」

 そう声をかけながら、ライトを頼りに近付いて云った。

「暗くてよく視えないな」

 そう思い、大宮は、一瞬だけフラッシュを焚いた。


 ――え?

 信乃と浜路は、その白い光に映った志水の状態を見るや、口を手で抑えて、その場に跪いた。

「ふ、二人とも、大丈夫か?」

 大宮がそう信乃たちに声をかける。

 ――なに? 今の……。

 信乃と浜路は、身体を震わせた。

 一瞬見えた志水の身体の形態が、まったく理解できないのだ。


「阿弥陀警部、ライトを持ってきました」

 警官二人が、大きなライトを持ってくる。

「それじゃぁ、道の先を照らしてください」

 そう言われ、警官はライトを暗闇に向かって炊いた。


 志水の姿が完全に照らされるや、

「うげぇえええええええええっ!」

 信乃と浜路は、その場に胃の中のものを吐き出した。

 吐き気と気持ち悪いのが重なって、不愉快になっている信乃は、涙を浮かべながら、志水を一瞥しようとしたが、できなかった。


 志水の上半身前面が、それこそ、理科の準備室や、保健室にあるような、人体模型と同じような状態だったからだ。

「た、たすけ……。たすけ――」

 理解できないのは、そんな状況であるにもかかわらず、志水に意識があることだった。


「大宮くん、これって……」

「え、ええ。以前殺された萩原純夏さんとおなじような状況です」

 阿弥陀たちの会話を、信乃は耳をかたむける。

「い、以前にも似たことがあったんですか?」

「ええ。そちらの犯人は逮捕できたんですけどね。でもこれは」

 阿弥陀は志水の後頭部を懐中電灯で照らした。

「なにかわかりましたか?」

「殴られた形跡がありますね。それも、角川と同じように細長いもので、おそらく包丁か何かの背で殴られたんでしょうか」

 阿弥陀の説明に、信乃と浜路は、妙な既視感があった。

 それは昨日のことだ。

 包丁の背で気を失わせ、身体を捌く……。

「もしかして、活け造り?」

 信乃がそう言った時、

「か……あ……ろ」

 と、志水は譫言を云って、絶命した。


「大宮くん、信乃さんと浜路さんをご自宅まで送ってあげてくれませんか? こっちは私がどうにかしますから」

 阿弥陀にそう言われ、大宮はうなずく。

「信乃さん、浜路ちゃん、大丈夫?」

「は、はい……」

 信乃と浜路は、志水の遺体を見ないように、視線を逸らしながら立ち上がる。

「車は小料理屋の近くに停めてるんだ。そこまで歩けるかい?」

 そう言われ、二人はちいさくうなずいた。


 大宮の車に乗り込み、鳴狗寺へと向かっていた信乃は、

「大丈夫? 浜路」

 口に手を当て、顔を俯かせている浜路に声をかける。

「さっきので気分が悪いんだ。窓を開けようか」

「お願いします」

 信乃がそう言った時、浜路はちいさく、

「お姉ちゃん……、あれってやっぱり妖怪がしたのかな?」

 とたずねた。

「そりゃそうでしょ? あんな非現実的な殺し方をするなんて、妖怪以外の何物でも――」

 信乃は言葉を止める。


 阿弥陀に言われて、整髪剤のにおいを追っていた。

 それが強くなると同時に、血のにおいも混じってくる。

 誰かが襲われ倒れていると信乃は思った。

 それから、いつものクセで、妖怪の仕業ではないかと思い、気配を探っていたのだが、結局は見付からなかったのだ。

 一瞬、砂川がやったのではと思ったが、人を気絶させ、解剖する時間が果たしてあっただろうか。

 大宮に追われていたのだから、おそらくなかっただろう。

 つまり、志水を殺した犯人は――妖怪じゃない?


「……っ!」

 信乃は、その考えを、口にはしなかった。

 自分が納得いかないことなのに、他の人に話しては、余計に混乱してしまうと思ったからだった。


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