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ビスマルクが泣いてるゾ☆

作者: 水底 宇宙

ドイツは先進的で~(えっ

ドイツはリベラルで~(おぉ…

グリーンでクリーンで~(そ、そお?

見習うべきですっ(ほんとに?


という会話が最近あったので軽く冷戦後のドイツの危うさを見ていきたいと思います。


現代経済オンラインの川口 マーン 惠美氏の寄稿、ドイツ関連記事を読んで大いに触発されました。

https://gendai.media/list/serial/gendaibusiness/schduagert

EmberFlightの第一章で日本の平和ボケを叩きすぎたので罪滅ぼしでドイツも叩いておこう、というわけではないですが、どの国もそれぞれの課題があるよねーといういとをかしです。


もう一つ、この問題を理解する背景として必要なファクターが地理。下記YouTube動画の解説がとてもよかったです。

残念だったねえドイツちゃん。君の立地はハードモードなんだよぉ。


「ドイツが強すぎる」問題:もう誰もが忘れた、そもそもNATOが必要な理由

https://www.youtube.com/watch?v=cSbPfhoiwbQ


 ここで話したいことは多少回りくどい説明を重ねるが、シンプルなストーリーだ。

 個人の体験→社会・政治経済→社会心理、という三段のうち、二段目の「社会・政治経済」を、戦後ドイツの現実に沿って見取り図にする。

 仮説の芯はこうだ。

 ドイツでは大事件が起きてマジになると、人々はまず“わかりやすい言葉スローガン”で世界をつかみ直し、それが少し遅れて“法律や儀礼(制度と慣行)”に落ちる。

 スローガンだけが先走ると現場は空回る。

 一方で制度化から入ろうとして足踏みしているとスローガンは空語になり、突き上げを食らう。

 以下は、その往復運動が選挙や政策、外交でどう見えたかの読み解きだ。


【選挙の揺れものがたり(主要政党は略称も併記しておく)】

 ドイツの総選挙は二票制だ。

 第一票は「小選挙区の人(候補者)」、第二票は「政党そのもの」へ。議席の大枠は第二票=比例で決まる。日本感覚でいえば「比例の得票が議席配分の土台」です、という話。


 統一後の1998年、社会民主党SPD(社民)と緑の党Bündnis 90/Die Grünen(緑)が勝ち、「赤緑連立」が誕生した。ここで原子力の段階的撤退と再生可能エネルギー推進という筋道が引かれる。

 

 2005年、キリスト教民主同盟CDUとその姉妹政党・キリスト教社会同盟CSU(二つ合わせてCDU/CSU=「同盟」)のメルケルが登場し、SPDとの“大連立”時代に入る。

 2009年はCDU/CSUと自由民主党FDP(自民)が組み、市場設計とユーロ危機対応が前面に。

 2013年、CDU/CSUは大勝した一方で連立相手のFDPが議席ゼロに転落。(議席獲得に必要な阻止条項の比例得票率の5%ライン足切り)

 2015年の難民流入のあと、2017年にはAfD(ドイツのための選択肢、右派ポピュリズム)が12.6%を得て初の連邦議会入り。

 2021年はSPDが第一党に返り咲き、SPD・緑・FDPの「信号機連立(赤=SPD、緑=緑、黄=FDP)」が発足。気候とデジタルと財政規律、三つの「正しさ」を同時に回す難易度の高い操縦が始まった。


 この年表、覚え方のコツは「事件→反応→組み合わせの組み替え」。景気や安全保障のショックがあるたび、政党の組み合わせが入れ替わる。つまり選挙は巨大な“揺れ”の可視化装置だ。


【エネルギー転換Energiewendeの骨と肉(EEGとGEGの意味をやさしく)】

 EEGは「再生可能エネルギー法」。太陽光や風力で発電した電気を“いくらで買うか”のルールを決める法律で、昔は「固定価格で必ず買います」、最近は「入札で決めましょう」に寄せてきた。

 

 ここで重要なのは、発電所を建てる場所と送電線の太さは魔法で増えない、という当たり前の物理。

 北の海沿いで風が回っても、南の工業地帯まで電線が細ければ詰まる。だから「安全・環境・競争力」を同時に満たすために、発電のペース配分と送電の拡張を“同時進行でチューニング”している。


 GEGは「建築物エネルギー法」。俗に“暖房法”。新しく入れる暖房は原則「熱の65%を再エネで」という未来の宿題をつけた法律だ。

 いきなり全国一斉に変えると家計も産業もパンクするから、自治体の熱計画(地域でどう熱を作り、どの配管を使うか)と歩調を合わせ、例外規定や補助もセットにして段階的に進める構図になっている。


【原子力の出口と“例外ボタン”】

 福島事故のあと、ドイツは「原子力からゆっくり降りる」を決め、最終的に2023年4月15日、最後の3基(イーザール2、エムスラント、ネッカーヴェストハイム2)を止めて全廃に到達した。ここで一つ、人間らしい揺れがある。

 2022年、ロシアの戦争でガスが細ると、政府は「冬を越すために一部の石炭火力を一時復帰させる」スイッチを押した。理想(CO2を減らす)と現実(電気と熱を絶やさない)が衝突したとき、国は“短期の例外ボタン”を押し、翌年以降にまた止める道を選んだ。

 理念と生活を両方守るには、こういう「二象徴管理(理想と現実の二枚看板)」が必要になる。


【外交の重心移動。オストポリティークからツァイテンヴェンデへ】

 冷戦期の“東方外交”(オストポリティーク)は、東側と話し、緊張を解き、つながりを強くしていく路線だった。

 

 統一後もしばらくは「交易を通じて変化を促す(Wandel durch Handel)」の信念が続き、ロシアのガスに頼る度合いが高まった。

 2021年にはドイツのガス消費の約55%がロシア由来だった、と自ら公表している。

 ところが2022年の戦争で、それが22%へと急落。ノルウェーなど別ルートへの切り替え、そして節約で凌いだ。


 このショックを受けて、ショルツ首相は2022年2月27日、「ツァイテンヴェンデ(時代の転換点)」演説で針路を切る。

 防衛費に特別基金1000億ユーロを投じ、欧州の抑止態勢を強化し、エネルギー調達を組み替える。

 

 さらに2023年、初の「国家安全保障戦略」を掲げ、国内外の安全保障を“総合戦インテグレーテッド・セキュリティ”として束ねた。

 対中では「デリスキング(依存を減らしリスクを分散)」の方針が初めて国家文書に明記され、EUの考え方と足並みをそろえた。

 昔の「交易が世界を良くする」という一枚看板は、今では「交易は続ける、でも偏りは減らす」という二枚看板になっている。


【移民・難民の大波と、国の反応】

 2015年、ドイツに来た人はとても多かった。庇護申請の登録は約47万件、入国時の一次登録(重複含む)は最大で約110万人。

 最初は“歓迎文化”が国を包んだが、自治体の処理能力、住まい、学校、就労という現場の限界が見えてくると、制度は受け入れから統合・抑制へと振り子のように揺れた。

 この「振り子」を数字で追えるように、政府の年次報告が積み上がっている。


【揺れの読み方。悪癖と処方箋】

 ここまでを一本の筋に通してみよう。

 ドイツには時々、正しい言葉がとても強くなる瞬間がある。

 

 脱原発、歓迎文化、平和主義。

 これらは“道徳の言語”として強力で、みんながうなずける形で外に掲げられる(外在化)。

 だが、言葉が強すぎると、法律やお金や時間や配線とぶつかったときに、現場が硬直する(過剰な内在化=儀礼化)。

 

 そして現実が割り込むと、石炭の一時復活、防衛費の大増額のような「例外ボタン」が押される。

 そのたびに理想と実務の縫い目が少し裂ける。これが“悪癖”の正体だ。


 選挙は、その悪癖がどこまで進んで、どこまで戻ったかの「定期健診」でもある。

 2017年にAfDが伸びたのは、移民・治安・地域の不安が“言葉の強さ”だけでは処理できないところへ来ていた、というシグナル。

 2021年の信号機連立は、気候・デジタル・財政という三つの正しさを同時に回したい、という国民の願いの表明。

 つまり、いずれも“象徴(言葉)”と“実装(制度)”の配列を変えたいという意思表示だ。


 じゃあどう直すか。象徴は個人の生活にまで翻訳して見える化する(料金、健康、快適、安全保障という言い方で)。

 制度は儀礼化させず、例外ボタンの条件と期限を最初から明記する。

 言葉の熱と、手順の冷静さ。その両方を接続する設計が必要になる。


――――――――――


用語メモ(物語に出すときは括弧で添えておくと親切)

SPD=社会民主党。中道左派。労働と福祉を重んじる。

CDU=キリスト教民主同盟。CSU=キリスト教社会同盟(バイエルン州政党)。二つで「同盟(Union)」。

FDP=自由民主党。中道リベラル。市場と自由を重視。

Bündnis 90/Die Grünen=同盟90/緑の党。環境と人権、ヨーロッパ統合に積極。

AfD=ドイツのための選択肢。右派ポピュリズム政党。

第一票/第二票=小選挙区候補への票/比例代表の政党票。議席は基本、第二票の配分で決まる。

Energiewende=エネルギー転換。電力・熱・交通の低炭素化を長期でやる国家プロジェクト。

EEG=再生可能エネルギー法。再エネの買い取りルール。固定価格→入札制にシフト。

GEG=建築物エネルギー法。新設暖房の再エネ比率など“熱の世界”のルール。

Zeitenwende=時代の転換点。2022年、戦争を受けた安全保障とエネルギーの大転換。

BAMF=連邦移民難民庁。移民・庇護の統計と行政の要。

BMWK=連邦経済・気候保護省。エネルギー政策の主管。BASE=連邦放射線防護庁(原子力の監督情報)。BNetzA=連邦ネットワーク庁(電力・ガス・通信の規制官庁)。


資料の入り口(一次・一次準拠。)

連邦選挙管理庁(Bundeswahlleiter)…各選挙年の公式結果。

Clean Energy Wire と Agora Energiewende…ドイツのエネルギー政策の要点解説。

連邦政府サイト…ツァイテンヴェンデ演説、国家安全保障戦略、対中戦略の本文。

BAMFの2015年移民報告…庇護申請と到着登録の実数。

BASE(原子力全廃の公式タイムライン)、BNetzA(ガス供給の年次回顧)。

本編、だいぶマイルドな表現に留めましたが、ほんと危機意識高すぎて過剰反応した結果事態をエスカレートさせよりやばい混乱を作りこんできたのは割とドイツだっていうのは国際情勢を見渡す時に見落としてはいけない要素です。

一方、四方を危険な隣人に囲まれた国の不安としては当然だということも隣国は押さえておくべきで、そういう意味でEUに向かったのは大英断だったはずなんです。

ただ、そのバランサーになるべきEUの中で独り勝ちしてしまったのがアウトだっただけで。

草葉の陰でビスマルクが泣いてるぞ☆




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