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覚醒③

「なぁ、いつまで歩くんだ?」


誠は歩きながら聞いた。


しかし、銀髪の男は黙って歩き続ける。


「ここはどこなんだよ」


誠が何を言っても反応しない。


あの白い部屋から出てからどれくらい歩いたのだろうか


歩いても歩いても同じ視界が広がっている。


両側にはドア、天井にはシャンデリアが一定の間隔についている。


(なんなんだ?ここは)


誠はきょろきょろしながら心の中で思う。


(それにしても、あの男の格好・・・。 こいつは一体何者なんだ・・・ 見るからに危険すぎる!! 俺こいつに一度殺されてるもんな・・・)


男の腰には日本刀が付いていて、さらに背中には「滅」の刺繍が縫い付けられている。


誠はそれを見て、悪寒がした。


(でも、このままじゃ今度は確実に殺される気がする・・・ 何とかしないとな・・・)


誠は辺りを見渡し、武器になりそうなものを探した。


しかし、その考えはすぐに却下された。


例え武器を手に入れたとしても、果たして銀髪の男に勝てるだろうか。


相手は間違えなくその道のプロであろう。返り討ちにあって逆に殺されるのは目に見えていた。


誠は悩んだ末、やはりこれしか選択肢はないと思った。


(逃げるしかないか・・・)


誠は逃げるチャンスがないかと伺っていると50メートルほど前方に曲がり角がある。


(よし。とりあえず、こいつから離れれば何とかなるかもな・・・)


現状での誠から曲がり角までの距離は約30メートル。


曲がり角に近づくにつれて、誠の心臓の鼓動は次第に大きくなっていく。


20メートル


10メートル


・・・


(今だ!ここを曲がって一気に振り切れば・・・!)


「逃げられると思ったか?」


(!?)


誠が全速力で走りだそうとした瞬間、今まで話しかけても口を開かなかった男が話しかけてきた。とても殺気立った声色で。


それと同時に誠は首筋に冷たさと痛みを感じた。


「言ったはずだ。仕事を増やすな・・・! 少しでも動いてみろ、このまま薙ぎ払うぞ!!」


銀髪の男は誠の首筋に刀を添えて、動けない誠を見下すように言った。


「くっ…!」


動きたくても動けなかった。動けば容赦なく首をとばすという殺気が刀からヒシヒシ伝わってくる。


傷も血が垂れる程度のものでしかなかったが、何倍も痛く感じた。


しばらくの沈黙の後、銀髪の男はゆっくりと刀を誠の首から離し、刀はカチンっと音を立てて腰についている鞘に納めた。


その音が合図となるように、誠の身体から大量の汗が吹き出し、その場に膝から崩れ落ちた。


誠は手を床に付き、肩で呼吸をしている。


それを見た銀髪の男は、呆れたように言った。


「何やってんだ。 立てコラ」


銀髪の男は誠の腕をつかみ、無理矢理立たせた。


誠は掴まれた手を振り払い、自力で立ち肩で息をしている。


「・・・お前何か勘違いしてないか? 言うことを聞いていれば危害は加えん」


(は?)


予想外の言葉であった。


「そ、そんなの信用できるかよっ・・・!」


「信じるか信じないかは貴様の好きにすればいいさ。だが、また妙な真似したら容赦しねぇぞ・・・ 素直に従った方が利口だと思うが?」


銀髪の男の言うとおりだろう、誠は認めざるを得なかった。


銀髪の男が言っていることが本当だろうが嘘だろうが今はまだ生きていられる。だとすれば、男の言っていることが嘘だとしても

今より有利な状況になる可能性だってある。


「・・・わかった」


誠は自分自身を納得させ、男に従うことにした。


「やけに素直だな」


銀髪の男は嫌味な笑みを浮かべた。


「勘違いするなよっ! てめーはあとで必ずぶっ飛ばす!!」


誠は中指を立て男を挑発する。


しかし、銀髪の男は目もくれず、くだらんとばかりにゆっくり180度回転して再び歩き出した。


「なっ・・・!!」


誠はなんか反応しろよと声を上げようとしたが、またややこしいことになりかねないということもあり、そのまま言葉を出さず飲み込んだ。


二人は同じ景色の廊下を歩きだした。

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