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戦公女の婿取り ~婚約破棄された僕だけど、戦公女の異名を持つ公爵令嬢に婿入り(契約結婚)することになりました~  作者: MIZUNA
第二章

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契約結婚の初夜

「アル、素っ頓狂な声を出して急にどうしたんだ」


「いや、だって……⁉」


ソフィは首を傾げるけど、僕の胸がどきどきしてそれどころじゃなかった。


初夜って、あれでしょ。


結婚した夫婦が一緒に、一緒のベッドでくんずほぐれつ夜を過ごすあれだよね。


意識してしまうと、つい頭の中でその情景が浮かんできてしまう。


いや、いやいや、いやいやいや。


駄目だ、駄目駄目。


頭の中に浮かんだ映像を掻き消そうと勢いよく頭を振っていると、ソフィが眉を顰めた。


「本当にどうしたんだ。今度は急に頭を振りはじめて」


「あの、その、初夜って本気で言っているの?」


「もちろんだ。言っただろう、私とアルはもう夫婦なのだ。それを屋敷の者達に行動で示す必要があるとな」


彼女はソファーから腰を上げると、にこりと微笑みながらこちらにゆっくり歩いてくる。


何とも言えない迫力にたじろいで後退りしていくと、足が柔らかい何かにぶつかる。


ちらりと横まで見やれば、それは備え付けの大きなベッドだった。


再び脳裏に『初夜』の単語が浮かび、情景が思い浮かんでしまう。


だから駄目だって。


慌てて頭を振っていたその時、『とん』と胸を押されて僕はそのまま仰向けに倒れ込んでしまった。


「あ……⁉」


ふわりとしたベッドに体が沈んでいく中、ソフィが上に覆い被さってきた。


彼女の凜とした目付きに浮かぶ青い瞳に見つめられると、見入ってしまって目が逸らせない。


胸が高鳴るなか、彼女のさらっとした金髪が僕の頬を擽った。


「追い詰めたぞ、アル」


「そ、ソフィ。その、本当にするつもりなの?」


からからに乾いた口を開いて尋ねると、彼女はやや間を置いてからにやりと口元を緩めた。


「アル。君は私が何をするつもりだというのかな」


「え、いや、それは……」


答えようとした瞬間、彼女はすっと僕の口を手で優しく塞いだ。


「それは、契約結婚の内容に含まれていなかっただろう?」


「え……? あ⁉」


僕がハッとして目を見開くと、彼女は「ふふ、あっはは」と笑いながら体を起こした。


「ソフィ、揶揄ったんだね⁉」


口を尖らせて体をベッドから起こすと、彼女はベッドに座って肩を竦めた。


「すまない、アルの反応が面白くてな」


「酷いなぁ……」


がっくり項垂れていると、「だが……」と彼女は続けた。


「今日は同じ部屋に寝させてもらうつもりだ」


「同じ部屋で寝る……?」


「そうだ、私とアルは夫婦なのだ。偽りの結婚でないことを知らしめる意味でも、周囲には『営み』があったと思わせる必要がある」



「あぁ、なるほど。それはそうかもしれないね」


僕とソフィが運命的な出会いから相思相愛になったというのは、ここでもすでに知られているはずだ。


でも、それを誰彼もが素直に信じるとは思えない。


初夜も過ごした様子がないとなれば、政敵はここぞとばかりに追求してくるはずだ。


「というわけで、今後は寝るときは毎日同じ部屋で過ごすぞ」


「わかりました。毎日ですね……って、毎日ですか⁉」


「何を驚いている。表向き、私達は相思相愛なのだぞ。病めるときも、健やかなるときも一緒に過ごしてこそ出し抜けるというものだ」


目を丸くして聞き返すと、彼女はさも当然のように答えた。


「そ、それはそうかもしれないけど……」


毎日、同じ部屋で過ごす……僕はごくりと喉を鳴らしてソフィを見やった。


さらっと流れるような金髪、空のように青くて吸い込まれそうな瞳。


小顔で整った眉に長いまつげ、小さな口元。


容姿端麗であることは間違いなく、帝都でも滅多にみることのない美人だ。


それだけ美しい彼女と毎日同じ部屋で夜を過ごすって。


いくら何でも、胸がどきどきして心が持たないよ。


どうしようと悩んでいたその時、僕はハッと閃いた。


「じゃ、じゃあ、一週間に一度だけ同じ部屋で過ごすようにしたらいいんじゃないかな」


「アル、何度も言わせるな。相思相愛の夫婦なのだぞ。一週間に一度しか夜を共にしないのは逆に怪しまれるだろう」


「う……⁉ それなら三日に一度はどうかな。それにほら、跡目争い中にうつつを抜かしているなんて言われるかもしれないでしょ」


「なるほど。相思相愛をアピールしすぎても逆効果になりかねない、というのは一理あるやもしれんな」


ソフィは思案顔を浮かべると「よかろう」と相槌を打った。


「アルがそこまで言うのであれば『今後、私とアルは三日に一度、必ず同室で夜を明かす』ということでよいな」


「う、うん。それでお願いします」


三日に一度でも心が持つか心配だけど、とりあえず毎日をソフィが諦めてくれただけでもよしとしよう。


彼女は凄く押しが強いから、こうと決めたら考えをなかなか変えてくれないところがあるんだよね。


「よし、それでは寝るぞ。明日も忙しいからな」


「そうだね。じゃあ、僕はこっちで寝るから」


いそいそとベッドから降りようとすると、がしっと腕が掴まれた。


「アル、どこにいくつもりだ」


「えっと、一緒に寝るわけにはいかないでしょ。だから、僕は備え付けのソファーで寝るよ」


「……駄目だ」


「え……?」


静かに、でも強い決意が宿ったような声に僕が目を瞬くと、ソフィは真顔で切り出した。


「アルも私も長旅で疲れているのだぞ。体力回復と言葉に真実味を持たせるためにも、同じベッドで寝るべきだ」


「でも、それは……」



言っている意味はわかるけど、そういう問題でもないような気がする。


困惑してどう返そうかと悩んでいると、ソフィは口を尖らせた。


「それとも、アルは私と寝たくないのか」


「いや、決してそういうわけじゃないけど……」


「では、いいではないか。さぁ、寝るぞ」


「え、えぇ⁉」


ソフィの腕の力は強く、僕はなすがままベッドに寝かされてしまった。


「ほう、夫婦で同じベッドで寝るというはこういう感じなのか。明日、茶化してくるだろう奴等に良い答えができそうだ」


「あ、あはは……」


豪胆な彼女はそれから程なくして寝息を立て始めた。


普段の強引さが嘘のように静かな様子が気になって見やれば、彼女の寝顔はまるで無垢な少女のように可憐で、綺麗だった。


見蕩れつつも、今ならベッドから抜け出せるかも……そう思ってそっと体を動かすと、「駄目だってばぁ……」と猫なで声のような可愛らしい声が聞こえ、僕の腕がベッドの中でがっしりと掴まれてしまった。


呆気に取られつつも、もしかしたらソフィも普段は気を張っているのかもしれないな。


そんなことを思いながら、僕はどきどきしながら眠れぬ夜を過ごすことになった。



少しでも面白い、続きが読みたいと思って頂けましたら、

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