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情報整理②

 私はロータスルートしか進めていなかったけど、沙耶香のようにゲーム自体をやり込んでいる人は自分の推しだけではなく、他のキャラルートでもストーリーを進めていたり、全員の好感度を均等にしたり、敢えて全員からの好感度をどん底まで下げたりするルートを模索したりする人もいた。


 そんなどのルートの中にも、ツバキ・セヘルスという令嬢の名前は存在しなかった。…ただ、『シクガ』はリリースされてから日が浅いゲーム。配信されていないエピソードがまだまだあったはず。…私の感覚的には、やっと折り返し地点かな?という印象だった。


 そのため、まだ出てきていないキャラがいてもおかしくはない、とも思う。そうなった場合、あくまでも私の勘ではあるけど、ツバキ・セヘルスは主人公であるマリーを虐める悪役令嬢側だろう。


 マリーは植物に愛された天才薬師で、学科の特待生枠として入学している。一方ツバキは、セヘルス家繁栄のために薬草学を学んで来いと、何の才能も無いのに家柄だけで放り込まれたようなものだ。…マリーを妬む未来が安易に想像できる。

 

 

 ……でも、私には使命がある。マリーを妬んで虐めるなんて、そんな暇をしている場合ではない。せっかくこの大好きな『シクガ』の世界に転生できたのだ。それなら、存分に推し活してやろうじゃない。


 私はもう1枚紙を用意し、大きな文字で目標を書き起こした。



 『推しの限定スチルをこの目で見届けたい』これが、一番の目標だ。私が廃課金勢になってまでもコンプしたロータスの限定スチル。最初の限定スチルは、全キャラ共通で過去編なのでそれを見ることは不可能だけど、それ以外は全て回収するつもりで臨みたい。


 そして…そのためにも私が頑張ることは一つ。『推しと主人公が結ばれるために全力でサポートする』これに尽きる。


 勿論、ロータスのような顔良し、性格良しな人が現実世界にいたら…私は間違いなくその人を好きになっていたと思う。ただ、ロータスに対しての私の想いはそんな単純なものではない。


 好き、なのは好き。何なら大好き。…でも、だからと言ってロータスとどうにかなりたいわけではない。私はマリーに一途なロータスだからこそ好きなんだ。

 それならば、ロータスとマリーをくっつけるためにも私はサポート役に徹するのが理にかなっている。幸いにも、マリーとツバキは同じ学科だ。仲良くして、それとなくロータスとの仲を取り持つように動けば…自然に限定スチルを回収できる日が来る!


 よしっ!と一人でガッツポーズをしていたところで、ノックの音が聞こえた。


「お嬢様、そろそろお食事の時間になります。」


「わかったわ、すぐに準備して向かうわね。」


「かしこまりました。」


 さぁ…いよいよ家族とのご対面だ。ヘマをして怪しまれないように、なるべく大人しく過ごそう。…今日と明日の朝食さえ乗り切れば、私は王都に移動し学園の寮に入ることになるから、当分家族と会わなくても済む。


 私は情報整理のために使った紙を引き出しに仕舞うと、自分の部屋から出た。ドアの隣にはマーサが待っていて、何の違和感もなく私を先導してくれた。

 …本当にできるメイドだ。こんな優秀な人材を、私の専属メイドとして雇用してくれるなんて、両親は娘思いなのだろう。


「お嬢様。」


「どうしたの?マーサ。」


「…言動にはお気をつけ下さい。当主様は、鋭い観察眼をお持ちの方です。私は食事中の発言が一切できませんので、お嬢様を救えるのはお嬢様自身です。…そのことを、お忘れなきよう。」


 あくまでも前を向いたまま淡々と話すマーサに、本当に徹底しているなと感心する。


「忠告ありがとう、マーサ。私、頑張るわね。」


「…はい。」


 マーサと小声で話している間に、大きなドアの前に辿り着いた。マーサが小さく頷く。…どうやらここが、食堂のようだ。

 私は、意を決して重いドアを開けた。広すぎる食堂の真ん中に用意された長テーブル。そこには、すでに男女二人が座って待っていた。



「遅くなりました。お父様、お母様。」


「ツバキ、朝は体調が優れなかったと、そこのメイドから聞いたけど…もう大丈夫なのかしら?」


「…はい、大丈夫です。朝は頭痛が酷くて起きられなかったのですが、少し休んだことで良くなったみたいです。」


「それなら良かったわ。…さぁ、座って。昼食をいただきましょう。」


「はい、失礼します。」


 マーサに聞いたところ、ツバキはとても真面目で礼儀を大切にする令嬢だったようで、例え家族であっても自分より年上であれば敬語を使うような人らしい。

 正直、その方が助かる。他人行儀で良いと言われているようなものだから。あとはテーブルマナーができればいいけど…こちとら何年社会人をやってきたと思っている?そんなものは朝飯前なのよ。


 そう思いながら、コース料理のように運ばれてくる料理を一口頬張った。


「…美味しいわ。」


 思わずそう呟いてしまい、ハッと我に返る。私にとってはご馳走でも、ツバキにとってはいつもと変わらない昼食に違いない。

 わざわざ感想など言わない方が良かったか?と思い、二人の顔色を窺ったけど…特に気にする様子もなく、お母様に至っては「あら、本当に美味しいわね」と賛同してくれた。

2024.12.12


2024.12.19 追記

王都までの移動時間を考慮して、修正入れております。



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