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主人公はやっぱり可愛い

 王立学園に到着して二日後…。


 今日はいよいよ、運命の入学式だ。



 ここでついに、主人公であるマリーの登場だ。そして、学年を代表して挨拶をするオリバーの顔も拝めるだろう。…後は運良く、他の攻略キャラたちにも会えたら万々歳ね。


 そして、この入学式はロータスにとっても大事なイベントになる。今年の特待生枠として紹介されるマリーの成長した姿を見て、ロータスは学園内にいるマリーを探す。…それが一つ目のイベントだ。ゲーム内でも一番最初のミッションに設定されているイベントであり、二人は感動の再会を果たす。


 …ちなみにだけど、ロータスの限定スチルもこの場面で見られる。が、これは二人の幼少期の思い出であるため、恐らく私が覗き見することはできない。…死ぬほど悔しい。


「それでは新入生の皆さんはホールへ移動してください。」


 アナウンスが流れ、学生寮の部屋から人がぞろぞろと出てくる。学生寮にいる人たちは大概、私のように地方から通っている貴族だけ。王都に住んでいる人たちはそりゃあ実家にいた方が暮らしやすいだろうから、わざわざ寮に入るなんてことはしない。


 でも、前世で一人暮らしが長かった私にとっては、制限はあっても寮に入っている方が断然マシだった。…私にとって今の家族は他人同然。そんな人たちに圧をかけられながら過ごすよりは、気を許せるメイドと一緒に暮らした方が何億倍もいい。


 …そう言えば、マリーも学生寮に入っていたわよね?確か、住んでいる場所が王都の東隣にある領地だとストーリー内で出てきたはずだから、私が王都に辿り着くまでに通った領地ではなかったと思うけど…さすがに領地名までは覚えておらず、思い出せなかった。


 マリーは特待生で入学したということもあり、学費や寮費が無料、そして研究室への出入りが自由となっており、それはそれは貴族の令嬢方の反感を買った。…でも、平民なんだからそれぐらいの待遇は当たり前でしょ!とゲームプレイ時は思っていた。


 転生後もその考え方に変わりはなく、何ならマリーと友達になってしまえば私も研究室に入り浸れるのでは?と思うくらい。…だからこそ、見つけられるなら早めに見つけて声をかけておきたいのだ。


 そう思って辺りを見回したけど…ブロンド髪の同級生は見つけられなかった。



 諦めてホールへ向かうと、学科別に座るように指定されていたので、これは絶好のチャンスだと心の中でガッツポーズをした。…なぜかというと、私とマリーが所属する薬草学科は、高位貴族のみが所属する特別学科と同じくらいそもそもの募集人数が限られており、今年の入学生徒は10名程度だと聞いていた。


 それなら、マリーの隣に座りさせすれば話しかけるタイミングはいくらでもあるということ。そう思って、少し駆け足気味に薬草学科の場所を探した。


 すると、ブロンド髪のサラサラロングヘアが視界に入った。…遠くからでもわかる。あれは絶対にマリーだ。


「あの…、薬草学科ってここで合ってる、かな?」


 ごく自然に、私はマリーに話しかけた。


 私の方を振り返ったマリーに、思わず見惚れる。


「はい、ここで合ってますよ。」


 

 かっ…可愛い…!え、何?天使?


 サラサラなのにふわっふわな髪、長い睫毛に大きく綺麗な瞳、エメラルドグリーンの瞳がキラキラと輝いていて、肌は陶器のようにすべすべで真っ白。高い鼻に、薄くて形の整ったピンク色の唇…。


 お人形さんですか?というくらいに整った顔に、健康的な身体。…まさしく、『シクガ』主人公のマリーがそこには存在した。


「あ、りがとう。」


 これは、攻略キャラたちも虜になるわけね…。女の私でもときめいちゃうくらいに可愛いんだもの。というか、ゲームをプレイしている時はさほどマリーの顔を見る機会がなかったから、マリーの顔なんて意識したことなかったけど…こんなにも可愛かったのね。


 マリーの隣に座ると、いい匂いがした。花の、香り?


「…初めまして。同じ薬草学科に入学するツバキ・セヘルスよ。貴女のお名前をお聞きしても?」


「マリーと申します。…ツバキ嬢は、あのセヘルス辺境伯のお嬢様、ですか?」


「ええ、そうよ。マリーさんもご存知で?」


「も、勿論です!セヘルス家が製造されている商品は、自分で働いたお金で何とか買える贅沢品でして…。でも、それを使ってから肌の調子がとても良いので、まとまったお金が入れば買わせていただいているのです。…本当に良い商品ですよね。」


 突然目の色を変えて話し始めた彼女に思わず困惑した。


 …というかまさか、ゲームのヒロインがウチの商品を購入してるだなんて思ってもみなかった。


「…お褒めの言葉ありがとう。というか、マリーさんって…働いているの?」


「あ、はい…実を言うと、私…平民出身でして、薬草を使った薬を売って生計を立てていたのですが、今回特別に王立学園に入学させていただくことになったんです。」


「そうだったの…!マリーさんは私と同い年なのに立派ね。あ!というか、お父様もそんな話をしていたわ!私と同学年で、薬草学科に入学する薬師の方がいるって…マリーさんのことだったのね!」


 事情を全部知っている私が大袈裟に反応しても、マリーは天使の笑みを浮かべていた。…私って、思った以上に演技上手い?


「…そう言われるのは二度目ですね。貧民街では、出来ることをするのが当たり前ですので。」


 そう言って虚空を見つめるマリーが、誰かのことを思い出しているように見えた。


「二度目、というと…以前誰かにも言われたことがある?」


 思わず、そう聞いてしまった。


2025.1.25


更新頻度が下がってしまい申し訳ありません。少しバタついており、出来る時に更新再開していきます。

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