機動戦艦の頂点と星の王と
『機動戦艦から始まる、現代の錬金術師』は不定期更新です。
惑星アマノムラクモは、普通の惑星とは違う存在である。
普通の定義がまず難しいのだが、一般的な惑星は、大気圏を超えて宇宙に出る。
アマノムラクモのように、大気圏を突破した瞬間に次元潮流の中には出ない。
もしも創造神というものが存在し、世界を作ったとするならば、それは宇宙も含めた全てを作ったのだろう。
でも、アマノムラクモは、その神々の作った世界の外側に存在する。
作られた世界が『都市』だとするならば、アマノムラクモは都市の中を流れる川を流れる、落ち葉のようなもの。
作られた存在ではなく、自然にそこにあって、流れて行くだけ。
事実、アマノムラクモは動いている。
次元潮流という、全ての創造神の世界を繋ぐ、時間と空間の流れの中を。
こんな世界だからこそ、様々なものがたどり着いている。
そして、こんな世界だからこそ、不可思議な生態系を維持している。
ちなみに、まだミサキは知らない。
惑星アマノムラクモは、その存在を、全ての創造神が『恐れている』ということを。
創造神は、他の創造神の作った世界に干渉してはいけない。
それを行うには、始原の創造神の許可が必要。
だが、アマノムラクモは、その許可を必要とせず、好き勝手に干渉することが許される。
正確には、神の加護である機動戦艦で、この地に辿り着いたミサキのみが、その権利を与えられているのである。
………
……
…
アヤノコージ事件から半月。
現在、あのボンクラは自分で脱出ポットの周りに畑を耕させ、野菜を栽培させている。
うん、なんかおかしい。
栽培しているのも、耕したのもアレキサンダーであって、アヤノコージは指示だけして、日夜『探検』という放浪を繰り返しているらしい。
それを俺が知ったのは、オタルにアヤノコージが姿を現したから。
「おおお、この街はなんだ、文明の香りがするではないか‼︎ よし、ここは今日から俺の街だ、俺が支配者にいえすいませんごめんなさい‼︎」
俺が街の巡視をしている最中に、突然森から姿を表し、いきなり目の前で叫び出したから、胸ぐら掴んで右手に『悪魔の右手』を発動しただけなのに。
肝っ玉が小さいなぁ。
「それで、アヤノコージは、こんなところで何をしているんだ?」
「た、探検だ。このあたりの植生、生態系を調査して、食べられるものを探していた。エルフの里に持って行くものができるのは半年先だし、狩なんてやったこともないからな」
「おまえ、本当に生産力ないよなぁ。この惑星では、基本的に生きるためには自分で頑張れ。困った奴には手を貸してやれなんだが、エルフはおまえには手を貸さないからな」
まあ、初見が悪かったからなぁ。
しかも、こいつが持っていた王家の剣、オクタ・ワンから聞いた話だと『ダーツの景品』らしい。
つまり、神の加護である。
こいつのご先祖か何かが異世界転生者で、その時の景品を大切に伝えてきたんだって。
うん、俺、ぶち壊したよな。
やっちまった後でオクタ・ワンに問題ないが問いかけたんだけどさ。
『ピッ……あのような格下の加護など、破壊しても問題ありません』
だって。
刀身は単分子構造の超振動ブレードだったらしく、切れないものはないそうだ。
まあ、それを蒸発させたので、今の王家の剣の効果は『魂のバックアップ』のみだそうで。
話を戻すとするか。
「お、おれは、おれは人に指示をするのが大好きで、自分は成果物を手に入れられれば満足だ。あくせくして汗水流して働くなど、俺の生き様に反する‼︎」
「このクズがぁ‼︎」
「生まれて24年、ずっとこうして生きてきた。この生き方以外は知らない‼︎」
「おまえの腰の剣はなんだ‼︎」
「これは武器だ‼︎切れないものなど存在しない、絶対無敵の覇王の剣。かつて帝国が封印した『超銀河兵器』の起動鍵にして、我が王家が帝国宰相だった時代に賜った、帝国最後の砦だ‼︎」
「変なフラグ立てるなぁぁぉぁぁ」
やべえ、本格的にやべぇ。
こいつ、とっとと追放しないと、また戦火に見舞われるわ。
本当に碌なもんじゃない。
「……まあ、おまえが、その剣の真の力を知らないのはわかった」
「真の力だと? 超銀河兵器以外に、何があるというのだ?」
「ん〜。おまえ、それを両手で構えて、天に向かって突き出してみろ」
「んんん? この平民が、俺に指示するのか?」
「外装甲板のない脱出ポットで、次元潮流に放り出されたくなかったら、早くやれ‼︎」
俺が凄んで見せると、ぶつぶつと文句を言いながらしっかりと構えたよ。
──キィィィィィン
すると、アヤノコージの目の色が黒から真紅に変化した。
「……小娘、我の解放、感謝である。貴様には、我の寵愛を済まん俺が悪かった」
──ゴゥゥゥゥゥゥ
俺の右手に悪魔の波動。
俺の左手に神の息吹。
二つ合わさったらどうなるか、こいつも知っていたらしい。
「おまえが、その剣の中身だな?」
「そんな、お菓子のオマケみたいな言い方をされると心外だな。我は歴代王家の魂の集大成。キングオブソウル。そして、俺を呼び出した理由はなんだ?」
「おまえがこいつを操っていたのはわかる。刀身から発している制御の波動でね。まあ、ぶっ壊したからもうできないだろうけど、おまえ、歴代王家の記憶も持っているんだろ?」
「如何にも。初代皇である中国皇帝『完顔阿骨打』さまが、我をダーツで引き当てた時から、我は皇家に受け継がれる武具となった。一緒に引き当てた『機動要塞・グランドマーズ』の起動鍵でもある」
うん、お前まで余計なフラグを立てるなや。
しかも機動戦艦シリーズじゃなく機動要塞だと?
俺よりもスケールがでかいんだが。
このままだと、アマノムラクモがこいつに乗っ取られかねないわ。
機動要塞から始まる、中国皇帝の再建物語ってうるさいわ。
「ま、まあ、それは置いておくとして、少なくとも知識があるのなら、そのクソガキにものの道理を教えてやってくれないか?」
「……それは、海をゆく魚に鳥の如く飛ぶ方法を教えろというものではないのか?」
「うるせぇ、飛び魚がいるだろうが」
「……失礼。その返しは予想外であった。まあ、このままこやつを放置したとして、どうなる?」
「あと二週間で、次元潮流に放り出す。当然死ぬだろうけど、知らんわ」
「じ、次元潮流とはまた……あい分かった、さすがのわしでも、死した肉体の再生など不可能。こやつが放逐されないように、天啓として知識を授けることにしよう」
「よろしく。おまえが次元潮流の狭間で無限に漂うことがないように、祈っているわ」
「う、うむ、では……」
手にした剣を腰に戻すと、アヤノコージの瞳が赤から黒にもどって行く。
だが、すぐに俺を睨みつけてきたんだが。
「……俺に何かしたか?」
「生きる術を教えてくれる先生を呼んだだけだ。まあ、頑張れ」
「そこのパン屋のパンを寄越せ」
「金を払って買え‼︎」
「これでいいか‼︎」
──ジャラッ
懐から金貨を取り出して、しっかりと支払ったぞ?
金は持っているのか。
いや、脱出ポットに放り込まれた時の待ち合わせだな?
いずれにしても、金があるなら客扱いだ。
「どら、貸してみろ、査定してやるから……」
受け取った金貨を解析。
含有貴金属量に合わせて買い取ると、おおよそ金貨一枚で10万円。
1000ドルってところか。
100ドル紙幣を9枚、50ドル紙幣1枚、10ドル紙幣4枚、一ドル紙幣10枚を手渡すと、紙幣は理解したのか満足そうである。
「うむ、両替、感謝する」
「その言い方がなぁ……まあいい、エルフの里の賠償は終わっているからそれはおまえの金だ、先に買い物をすればいいさ」
「分かっているわ‼︎」
そう叫んで、アヤノコージは雑貨屋に向かう。
「王族だったら、値切るなよ‼︎」
「王族ならば、奉仕してもらいたいものだわ‼︎」
売り言葉に買い言葉。
まあ、あと二週間の猶予で、どこまで変わるか楽しみだなぁ。
◯ ◯ ◯ ◯ ◯
さてと。
アマノムラクモに戻って艦橋に向かう。
気になるワードが出てきたから、先に確認しておきたくなっただけだが。
「オクタ・ワン、機動要塞についての情報開示‼︎」
『ピッ……き、機動要塞ですか?』
「なんで魔導頭脳が狼狽するかなぁ。それも演出?」
『ピッ……雰囲気は大事でございます。では、一連の機動シリーズについて、ご説明します』
詳しい話を聞いてみると、予想以上に頭が痛くなった。
まず、機動戦艦、機動要塞シリーズは、元々は『生物』であったということ。
この広大な世界で唯一、外界と断絶されている場所がある。
そこには全ての世界の意思が集まり、長い時間をかけて形として生み出されている。
闘争本能が集まると兵器に、食欲が集まるとレストランが。
選ばれた住民と、流れ着いたものたちしか存在しない世界では、それらのものは必要とされていない。
皆、何かに追われてやってきたものたちだから。
そんなある日、とうとうその世界にも侵略者がやってきた。
神の眷属である侵略者たちは、兵器として生まれた存在を改造した。
そうして作り出されたものが『機動戦艦シリーズ』であり、用途によって機動戦艦、浮遊大陸、機動要塞という感じに分類されている。
それら作られたものは神々が回収して加護として作り替えていったのだが、いくつかは手付かずのまま放置されているらしい。
時折、その地を訪れたものが偶然手に入れて持ち帰ったりもするのだが、神の力、いわゆる神威なくしては起動しないため、持ち帰ることができるもの=神の眷属となり、長年、放置されていた。
「あ、あたまが痛いわ……それじゃあ、この機動戦艦アマノムラクモも、生物または生命体だったってことか?」
『ピッ……是。私の頭脳は、そもそもその生物をベースとしています』
「はぁ。それで理解したわ。それじゃあ、アマノムラクモと同等の力を持つ存在が、この前のやつ以外にも存在するというのね?」
『ピッ……データベースでは、アマノムラクモを凌駕する戦艦タイプは三隻。ナーヴィス・ロンガ、ヴィマーナ、そして富嶽の三隻です。この前のは船体コードから『尾張』と判明しました』
おやまあ、まだ三隻もあるのか。
こりゃあ勝てないわ。
「ちなみにだけと、機動戦艦、機動要塞シリーズで最も強いのは何?」
『ピッ……ラグナレク。さまざまな別名を持つ、ドラゴン型機動要塞。次元潮流を彷徨う王です』
「うあぁ、そんなものに遭遇したら、生きて帰れなくなるわ。接近したらわかる?」
『ピッ……すでに接触済みです』
「……まさか、あの脱出ポットの本艦の移民船がそうなのか? そうなると、あの王家も化け物だぞ、その王家の剣で起動する機動要塞って、それなのか?」
『ピッ……王家の剣により稼動するのは、機動要塞アクシアです。それでも、アマノムラクモの敵ではありません、えっへん』
あ、なんかイラつく。
まあ、いつものジョークなのは分かっているし、感情もプログラムで表現しているんだからなぁ。
「でも、そうなると、史上最強の機動要塞に、いつ会った?」
『ピッ……いつですか? 今でしょう⁉︎』
「いや、そういうのはいいから……って、まさかだよな?」
思わず足元を見るけど、ここって惑星だよね?
オクタ・ワンは、最初に惑星って説明したよね?
『ピッ……この星の正式名称は、『惑星型機動要塞スターゲイザー』です。形は惑星型と分類されますが、この惑星アマノムラクモは、機動要塞の王である『ドラゴン型機動要塞ラグナレク』が右手に持っている『星型機動要塞』でしかありません』
ん。
んん?
んんん?
「すまん、脳内処理が追いつかないんだが」
『ピッ……ラグナレクから招待状が届いています。受け取りますか? 断るとスターゲイザーが握り潰される可能性がありますが』
「イエスだ、イエス‼︎ なんでこんなとんでもないSF世界に巻き込まれているんだよ?」
『ピッ……すげぇ不思議な世界ですね?』
「そっちじゃねーよ、しかも微妙に変えて、意味が全く違っているし……分かったよ、行くよ、どうやって行くんだよ?」
『ピッ……機動戦艦アマノムラクモです。では、早速向かうとしましょう』
アマノムラクモのバリアシステムが解除される。
そしてゆっくりと上昇を始めると、次元潮流の中へと潜航を開始した。
いつもお読み頂き、ありがとうございます。
誤字脱字は都度修正しますので。 その他気になった部分も逐次直していきますが、ストーリー自体は変わりませんので。
この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。











