城下町? 港町? 魔導王国?
『機動戦艦から始まる、現代の錬金術師』は不定期更新です。
毎週木曜日更新予定です。
はい、説得力ありませんね。
今日は朝から、艦橋で会議。
以前の、地球にいた時の機動戦艦アマノムラクモの立ち位置を考えて、この惑星アマノムラクモでも街を作るかどうか検討を始めていたのである。
エルフ族が来る前なら、生身の住民は俺一人だったから必要ないんだけど、エルフの森……グランドリーフ大森林からもエルフたちが時折り遊びに来るので、受け入れる皿は用意した方がいいという話になった。
とにかく、この星では戦争なんて起こらないので、サーバントたちもそこそこに暇している。
それなら、街を作って商業まがいのことを始めてみるのもいい。
「確かに、港町は有効ではあるよなぁ」
「エルフの村では手に入らない加工品や道具などを販売するとよろしいかと」
「魚介類の加工もできますし、何よりも『塩』は必需品です」
「あの森のあたりって、岩塩は?」
「その向こうにある『ヒマヤラ山脈』にも存在を確認できていません」
「そうかぁ。じゃあ、塩の精製工場をつくる? いや、錬金術で塩だけを抽出するのもありか?」
「塩田を作って、希望するエルフたちにも教えてあげると良いかと」
技術の発展だね。
「マイロードの技術に頼りっぱなしでは、文明は育たなくなります。また、エルフの文化は魔法文明ゆえ、工場建設というのも、少し違うかと」
「それで、塩田を作るのか。ちなみに俺は、塩田の作り方なんて知らないが?」
「オクタ・ワンのデータベースを参照します」
「さすがは世界の生き字引って感じだよなぁ。オクタ・ワン、いけるのか?」
『ピッ…… 流下式塩田で行くのが望ましいかと』
ふむふむ。
必要なのは揚水システムか。
高いところまで海水を上げるための水車も用意する必要があると。
それで塩を得るためには、なかなか時間と手間暇が掛かるのだが、それが労働であると。
「よく考えているなぁ」
「はい。地球にいた時の教訓を生かしています」
「教訓ねぇ……まあ、その辺りは任せるさ。さて、俺にできることは……」
ふと考える。
今の現状を考えるに、いきなり科学文明を発展させるのは得策ではない。
むしろ魔法文明に偏っているのは、エルフたちの信仰の関係もあるのでやむなし。
それなら俺は?
俺にできることは、魔法と戦闘。
それならやることは一つ、作るでしょ‼︎
「……少し篭る。あとは任せた」
「御意」
さて、何を作るかなぁ。
◯ ◯ ◯ ◯ ◯
俺専用ラボに引きこもる事三日。
天鳥船の転送システムやら、ワープドライブやらをひっくり返しつつ、のんびりと解析。
さらに、うちにある『魔導転送システム』まで解析したので、俺の理論が正しければ、アレが作れる。
「ふむ。できたけど、名前をどうするか。魔導時空湾曲システム……マナドライブ、マンシェンドライブ……と、マナドライブ、これでいいか」
出来上がったのは、腕輪型の個人用転送装置。
これで好きな時空、好きな場所にいつでも転移できる。
「テスト……俺のいた地球は無理だから、他の場所……と、そうかそうか」
参照する座標軸は、魔導転送システムの送り主。
送信者座標を指定して、そこに転移するという大技。
転移座標軸に物質が存在し、転移を阻害する場合。
そこから離れた場所に転移するような、安全装置も付け加えてある。
これも、魔導転送システムに組み込まれていたのだから、送り主の文明は、かなり高度な魔法文明に なのであろう。
しかも、タイマー付きにしたので、指定時間がやってくると、強制的に元の世界に戻って来るようになっている。
「さて、これで完成。撤退時間は転移後、一時間。それじゃあテストしてみますか」
──カチッ
腕輪に魔力を込めて、転移スイッチを押す。
ここまでの工程は、オクタ・ワンなら確認しているはずだから、止めないということは安全である。
そうでないなら、我が家の過保護魔導頭脳やワルキューレが無理矢理でも止めに来るはずだからね。
──プシュゥゥゥゥゥ
ゆっくりと足元に魔法陣が生まれ、俺はその中にゆっくりと沈んでいく。
『ピッ……失念してました』
「お、オクタ・ワン、見送り?」
『ピッ……術式確認の結果、その魔法陣は作動しないと思っていました』
「そっちかーい⁉︎ それじゃあワルキューレたちが止めに来なかったのも?」
『ピッ……発動に失敗して、落ち込んだミサキさまを慰めようとパーティーの準備をしているところです』
「あ〜、我が娘たちは可愛いなぁ‼︎ それじゃあ、この動いて俺の首まで転送終わっているのは、どう言うこと?」
『ピッ……無事をお祈りします』
──グッ
思わず右手を魔法陣から突き出してサムズアップ。
「アイル、ビー、バック」
『ピッ……アイルーが帰ってくる。PC版のモンハンライおっとっと。楽しみですね』
知らんわ、そんなの。
あ、意識が遠くなっていくわ。
◯ ◯ ◯ ◯ ◯
「……それで、この子がいきなり商品棚に飛び込んできたと?」
のんびりとした午後、特にやることもないのでカナン魔導商会にやってきたのはいいのだけれど、倉庫管理を任せていた子が、大慌てでやってきた。
「は、はい、空中に突然魔法陣が光ったかと思いますと、この方がドサッと降ってきました」
「へぇ。どこのドイツだジャーマンだ。鑑定……ほう、ほうほう」
鑑定してみると、どうやら異世界の住人。
魂の色は男なのに肉体が女、神域調整された半亜神で、神の錬金術の継承者。
そんなわけわからんのが、なんでここに。
「……あ〜、腕輪型の魔導転送システムかよ。これってうちの術式を解析して組み込んだのかぁ。すごい子だわ」
「そうですか……でも、困りました」
「ん? 何かあったの?」
「王城からの発注品が、全て壊れました。この方が飛び込んだ棚ごとです」
「……よし、損害賠償を請求しようじゃないか」
──スパァァァァァン
空間収納からミスリルハリセンを引き抜いて、女の顔面に力一杯叩きつける。
「フベシッ‼︎ い、痛いわ痛くないでも心が痛いんだけどあんただれ?」
「カナン魔導商会オーナーのマチュア・ミナセ・セカンドだよ。あんたが突っ込んで破壊した魔導具、弁償してもらいましょうか?」
「い、え、あ? うぉあい‼︎ これはまた、とんでもないことに」
あ〜、反省はしているみたいだけど。
そもそも、なんでこんなところに飛び込んできたんだ?
「それで、弁償その他のことは後回しとして、なんでうちの転送術式を解析して、ここに飛び込んできた? ことと次第では、すり潰す」
「いやあ、天鳥船が手に入ったので解体して解析していたら、亜空間転送システムの概略が手に入ったので、魔導転送システムの術式を解析して組み込んだ個人用転送装置を使って実験したら、ここ」
床を指差しながら、笑っている。
うん、大したものだわ。
「成る程なぁ、そう言うことなら仕方ないか。私もやったことがあるような気がするから。MAD魔導師って、そんなものよね。それじゃあ。これ、請求書ね」
すぐさま用意してもらった請求書を差し出すと、真っ青な顔になっている。
「え、ええ、ええっと……お金ないです。物販払い可能ですか?」
「構わないわよ? でも、そこそこ値打ち物じゃないと駄目だからね。あんたの壊したそれって、正午に皇帝陛下に献上する物なんだからさ」
「ヒッ‼︎ こ、これはどうですか? 神の供与物、機動戦艦の残骸ですが。神威を伴った装甲材です」
そう呟きながら差し出してきた金属片。
これって、この前までうちの商会で売り出していた超大型浮遊戦艦シリーズの尾張じゃない。
確か、あの神様が回収したはずだけど、この子がぶっ壊したの?
見かけによらず、恐ろしい子だわ。
「ふぅん。この装甲材をみた限り、魔導ジェネレーターとかもあるはずだけど? それと搭載機動兵器。それも寄こしなさい。魔導パルスカノンとかも装備していなかったかしら?」
──ギクッ
「あ、あの、その辺りは俺の機動戦艦に組み込んだので、もうないです」
「機動兵器入ったのであるでしょ? よこしなさい」
「うっす」
諦めたようなので、私の空間収納に彼女の無限収納をリンクしてもらい、受け取る。
そのついでに魂の読み取りをしてみたのだけれど、私の知らない創造神の管理……って、時空神ア・バオア・ゲー? アホマチュアの管理世界じゃないのよ? 何やらかしたのよ、あいつは。
「……はい、これで完了。もう悪いことをするんじゃないわよ」
「さーせん。それで、出口はどこですか?」
「そこの階段の隣の扉が、裏口になるから。納品の場所の邪魔をしないように、出ていきなさい」
「誠に申し訳ありませんでした」
肩を落としてトボトボと、女は建物から出て行く。
まあ、申し訳ないけれど、アホマチュアの管轄のドリフターに干渉しないほうが、今後のためだからね。
◯ ◯ ◯ ◯ ◯
ぬぁぁぁぁぁ。
せっかく手に入れた機動戦艦の残り素材、纏めて巻き上げられたわ。
たしかに俺が悪かったけどさ、あそこで壊した物だって、そんなに高そうじゃなかったぞ? ダイアニウムとか、ハイパーミスリルとか、精神感応金属と賢者の石の複合素材とか。
あまつさえ、オリハルコニウムってなんだよ?
光と闇の合成金属って、それってアトランティスの遺産じゃねーのか?
うん、俺が悪かったわ。
時空転送の余波で、修復不可能にしたのは俺だからさ。
「さて、それは良いとして、マナドライブは正常に動いているから問題はない。さっき、面白い素材を色々とみれたことだし、少し買い物をして帰りましょうかね」
のんびりと街の中を散策する。
スチームパンクなヨーロッパの印象。
魔導蒸気機関車が走り、乗合馬車が横行している。
電気らしいものはないけれど、魔導機関の小型化に成功している世界らしい。
見た感じだと、一般市民に混ざって冒険者らしき人もいるけれど……あ、冒険者ギルドみっけ。
くっそ、一時間で帰還するから、余計なところに足を踏み入れたくはないんだよなぁ。
何はともあれ、鍛冶屋だ鍛冶屋。
あのさっき見たハイパーミスリル、あれを手に入れたいんだよ。
「よっしゃ、善は急げだ‼︎」
俺は走ったよ。
金ならアメリカとロシアからふんだくった分があるからな。
………
……
…
「と言うことで、転送は成功したんだよ」
アマノムラクモに戻ってきて。
キッカリと定時に戻ってきましたよ。
そりゃあもう、鍛冶屋を回って希少金属を探して。
あの国では流通していないらしく、隣国の有名な鍛冶屋でしか取り扱っていないらしくて、思わず途中の居酒屋でやけ食いしてましたともさ。
支払いはドルで問題なかったのだけど、なんで俺の世界のドルが使えたのかさっぱりわからん。
ひょっとして夢かと思ったけど、機動戦艦の残骸がごっそりとなくなっていたから、そう言うことなんだろうなぁと、理解したわ。
「そうでしたか。でも、ご無事で何よりでした」
「今度からは、単独での転移はお控えください」
「しばらくはパスするわ。転移時の時空振動で、周辺の物品に危害が出ることが分かったからさ」
本当に、今回はいい教訓になったよ。
いつもお読み頂き、ありがとうございます。
誤字脱字は都度修正しますので。 その他気になった部分も逐次直していきますが、ストーリー自体は変わりませんので。
この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。











