深淵からの挑戦・絶対的危険存在と対抗策
『機動戦艦から始まる、現代の錬金術師』は不定期更新です。
主人の命令は絶対。
眼下の星が、主人たちを受け入れるだけの進化を終えている。
それならば、我々は、次のミッションを開始しなくてはならない。
やらなくてはならないことは、主人たちが住まうべく、原住民の一掃。
主人たちが欲しているのは、新たなる大地。
そこに、余計なものがいてはいけない。
特に、この我々の基地までやってきて、仲間を力づくで排除するようなものたちは、危険である。
我らは、主人によって作られた存在。
我らは、主人の命令を守る存在。
彼らは危険である。
星を見る『監視者』に、彼らの巣を探してもらわなくてはならない。
………
……
…
監視者から連絡が届いた。
奴らの巣を確認。
どうやら、奴らは、この星の住人でありながら、全く異なるテクノロジーを持っているようだ。
念には念を入れて、跡形もなく破壊せよ。
先遣隊を送り込め。
一つではない、大量に、今、送れる限りを送り出せ。
徹底的排除だ。
主人の脅威になるものを、残してはいけない。
………
……
…
先遣隊が全滅した。
そんなことがあり得るのか?
基本的には、彼らは不死なる存在だ、虚数世界に存在する、我が意志の分岐点の一つ。
ゆえに、我が死なない限りは、彼らも死なない。
いや、彼らからの言葉が届かない。
本当に死んだのか?
いや、そんなことはない。
我が死なない限りは、彼らも死なない。
本当に死んだのか?
演算を始める。
我らは死なない。
我が死なない限りは、彼らは死なない筈。
本当に死んだとは、考えられない。
演算を続行する。
我が死なない限りは……。
本当に死んだ?
演算が終わる。
彼らは、死んだ。
我の言葉が届いていない。
何故死んだ?
理解不能。
改めて、認識を更新する。
奴らは、全力を持って、排除しなくてはならない。
そのための兵器を構築する。
資材が足りない。
この地表面にも、地下にも、必要な資源がない。
切り替える。
施設を解体し、兵器を構築する。
………
……
…
月面。
その地表面がゆっくりと隆起すると、一片が100mほどの銀色に輝く正四角柱が姿を表す。
これが、彼らの地下施設の全て。
この月面に降り立った時から、形を変化させることなく大地の下で、ひたすらに地球を観察していた存在。
この四角形が、彼らの全てであり、施設であり、本体である。
内部まで生体金属によって埋め尽くされ、必要に応じて中心部の『核』からの命令により、必要な金属細胞を分離して再構築する。
彼らには名前はない。
主人たちは、彼らを『監視者』と呼んでいた。
監視者は、個にして全。
ゆえに、必要に応じて姿を変える。
──ミシミシミシイッ
宇宙空間なので、音は響かない。
その正四角柱が音を上げながら、ゆっくりと形を変化させていく。
脚のようなもの、腕のようなもの。
背中には巨大な翼。
地球人のような顔は存在せず、マーギア・リッターのような機械的な頭が存在する。
管理者は、マーギア・リッターを模した機動兵器を作り上げたのである。
主人たちの世界を構築する。そのために邪魔な存在は、破壊する。
彼らは邪魔である。
だから、破壊さなくてはならない。
──ブワサッ‼︎
巨大な翼を広げ、ゆっくりと浮かび上がる。
マーギア・リッターを真似たとはいえ、魔導ジェネレーターなど複製することはできない。
それゆえ、彼らは、自らの持つ主人たちの記憶を頼りに、エネルギーシステムを構築した。
翼からは光が吹き出し、ゆっくりと地表から離れていった。
【破壊せよ】
監視者は叫ぶ。
これが、主人たちへ贈る戦いの始まり。
【破壊せよ】
光を噴き出しながら、生体金属によって生み出された『巨人』は、地球に向かって進んでいった。
◯ ◯ ◯ ◯ ◯
国際宇宙ステーションでは、月方面から飛来する月の槍の監視を続けている。
先日のブラックナイト衛星の一件以来、アマノムラクモはこの件には関与しないと宣言。
NASAとしてはアマノムラクモの協力が欲しかったものの、それを受けられないということで国際宇宙ステーションからの監視、および地球軌道上を回る観測衛星により、常に月の槍の確認を強化して続けていた。
「マーギア・リッターは、今日は一号機か。劉が乗っているんだよな?」
「このまえ、王さんが言っていましたよね。手を振ってみますか?」
国際宇宙ステーションの窓から、数名のアストロノーツが手を振る。
マーギア・リッターとはかなりの距離があるため、彼らが手を振っても分からないだろうと思っていたが、サテライト1は静かに手を振り返した。
「げっ、ここまで見えるのかよ? いったいどういうセンサーを積んでいるんだ?」
「さあな。俺たちには理解できないセンサーなんだろ?」
「その理解できないものを一つ追加だ。全員、月の槍の観測データを見てくれ」
キャプテンが全員に指示を出す。
モニター上では、まだ距離が離れすぎていてよくわからないが、月の槍の後方から、別の物体が接近してくるのがわかる。
「……大きさは、全高50mほど。形状はまだはっきりと捉えられていないが、人型に近い。天使のような翼も確認できている」
「アマノムラクモの新型機ですか?」
「それこそ不明だよ。監視体制を強化して、少しでもおかしなことがあったら、報告を頼む」
「了解です」
そのまま監視を強めるアストロノーツたち。
すると、仮称・未確認の人型兵器は、月の槍を越えてから軌道を変更。
国際宇宙ステーションへと進路を切り直した。
「……おいおい、洒落ならないわ。未確認機は、ここを目指して飛んできます」
「画像は‼︎」
「無理です、まだ距離がありすぎます。それに、月面監視衛星すら破壊されたのですよ? 月面付近の映像なんて、映し出すことなんてできません」
「NASAからの緊急通信です、全員、緊急退避をするようにと……全員退避‼︎ ステーションから逃げろ‼︎」
「了解です」
一瞬で慌ただしい空気に包まれる。
そしてアストロノーツたちは、宇宙服に着替えると、退避カプセルに移動した。
………
……
…
『ミサキさまから連絡あります』
「了解。華佗、繋いで」
「接続します」
『ピッ……こちらミサキだけど。劉くん、国際宇宙ステーションの退避カプセルを回収して、降下して来れる?』
「サテライト1だけですとキツイですが。何かありましたか?」
『月面から何かが射出されてね。月の槍を越えて、国際宇宙ステーションに向かっているらしいんだよ。NASAから乗組員の救助を頼むって頭下げられたからさ』
劉がミサキと話している最中に、華佗はサテライト1の観測システムをフル稼働させて、月から飛来する物体を捉えようとする。
「劉さま、未確認飛来物確認。到着まではまだ十時間ほどありますが」
「ミサキさま。回収のち、アマノムラクモに一時帰還します。宇宙ステーションは放棄なのですね?」
『あ、そっちはインターセプト隊に頼んで守ってもらうから。人命第一でよろしく』
「了解です。ということなので、回収して戻りますか」
サテライト1が国際宇宙ステーションに向かう。
そして三十分後には、脱出カプセルが切り離され、サテライト1と接触した。
アマノムラクモのバックアップがあると伝えられていたため、大気圏降下計算を行わずにカプセルを切り離したのである。
そのままサテライト1は、フォースフィールドで脱出カプセルを守りつつ、ゆっくりと大気圏を降りていった。
………
……
…
アマノムラクモでは。
「……これでよし。NASAも仕事が早くて助かるわ」
「地球圏からの観測の方が、少し早かったようですね。結果として、NASAがすぐさま仕事として依頼してくれたので、助かりましたね」
「全くだよ。アマノムラクモは干渉しないって宣言したからね。まあ、仕事として請け負うのなら、その限りじゃないし、人命第一だからね」
NASAからの依頼。
それは、月面から射出された、国際宇宙ステーションに向かって飛来している物体から、アストロノーツを助けて欲しいということ。
秒速7.66kmで周回している国際宇宙ステーションに、しっかりと照準を定めて飛来する物体。
僅か1/10sでも速度差にブレが生じたならば、決して飛来物とステーションは接触しない。
にもかからわず、相手は少しずつ速度を微調整し、国際宇宙ステーション目掛けて飛んできているのである。
『ピッ……飛来物の速度変化なし。どうしますか?』
「あれがぶっ壊れて大気圏降下なんてしたら、最悪だよな?」
『ピッ……大気圏に沈む段階で、国際宇宙ステーションはバラバラです。あとは溶けて落ちるだけ。破片の10%から30%は降下し、地表に隕石のように落ちますが、現段階での被害は計測不可です』
「まあ、無傷ってことはないよなぁ、インターセプト隊に連絡して。国際宇宙ステーションを守って、地球圏に被害がないように『可能な限り』努めてくれって」
『ピッ……了解です』
これでよし。
あとは、謎の飛来物の対処だけか。
インターセプト隊で、どこまで行けるか、勝負ってところだろうなぁ。
◯ ◯ ◯ ◯ ◯
破壊対象物の近くに、巨大な力が集まり始めた。
あの力は知っている。
あれは、施設の上で、我らが同胞を破壊した存在。
そして、監視者から放った先遣隊を破壊した存在。
危険
危険
危険
主人のデータベースから、最適な対応を検索する。
検索
検索
検索
対象を破壊する
この姿は、あの破壊対象と同じ姿
同じ力をぶつけることは不可能
数が違う
包囲されると終わりだ
先遣隊のように、無力化されて、宇宙に放逐される
対応
対応
解析
解析
この形態は、実に不合理である。
突起物が多すぎる
兵器が、人の姿を取る必要性などない
変形しなくてはならない
あの力を無力化する
掴みどころのない形態
真球状態に、変化する
人型兵器など、ナンセンス
なぜ、そのような形を取ったのか、理解できない。
あの星の生命体の思考は不条理
………
……
…
マーギア・リッターの姿であった生体金属は、ゆっくりとその姿を真球に変えていく。
そして加速を開始すると、一直線に国際宇宙ステーションへと突っ込んで来た。
『球状の未確認飛行物体が急速接近。迎撃の許可を‼︎』
「いや、待て。ここは我がいこうではないか‼︎」
インターセプト隊は、センサー状に確認した敵性存在に対して、攻撃準備を開始する。
あまりにも猪突猛進であった戦闘用サーバントの夏侯惇の代わりに、典韋が隊長に任命された。
「ここでいい。敵が10kmまで近づいたら合図しろ‼︎」
『アホですか、そこから数秒も掛からずにぶつかります‼︎』
「わ、わかっている。ほんのジョークだ、四機でフォースフィールド展開し、敵性存在に向かって移動。残りの四機は、上下左右に回り込んで、後方からフォースフィールドを広げる。丸く包みこめ‼︎」
『『『『『『『慣性は?』』』』』』』』
「先頭の部隊が包み込んで逆噴射、一気に減速して残りで包み込む。その直後に、マーギア・コレダーだ」
『了解』×7
すぐさま四機が、正四角形の形にフォーメーションを変えて移動する。
その真後ろにさらに四機が追従し、飛来物に向かって飛んでいく。
一方の生体金属は、全く躊躇せずに一直線に飛んできたのだが、インターセプト隊を確認したのか、前方部分の表面に鱗が発生すると、それを真っ直ぐに飛ばしてきた。
「退避行動‼︎ からのフォーメーション維持」
『応‼︎』
一斉にフォーメーションを解いて展開し、躱し終えたらまた組み直す。
しばしの間、同じことが繰り返されていると、ついにインターセプト隊の前衛四機がフォースフィールドを展開し、網のように生体金属を捉えた。
──ミシミシミシイッ
宇宙空間なので音は響かない。
しかも、フォースフィールドはミシミシいわない。
「キャッチ‼︎ 我らに続けぇぇぇぇ‼︎」
『了解‼︎』
さらに後方に回った四機もフォースフィールドを広げて捕まえると、そのまま一気に減速を開始。やがて生体金属は速度が止まり、その場に『止まって』いる。
「全機、取りついて攻撃開始‼︎ 我に続けぇぇぇぇ」
典韋が叫びながら生体金属に取り付くと、両手を接触したまま『魔導式磁界発生装置』を稼働する。
──バジィィィィッ
宇宙空間なので音は響かない。
真球状態の生体金属の表面をプラズマが走る。
そして他のインターセプト隊も次々と取りついては攻撃を開始。
月の槍に行った攻撃を仕掛けたのだが、今回は殆ど手応えがなかった。
よく見ると、インターセプト隊の死角にあたる部分で、小さな突起物が生まれている。
表面を走るプラズマはそこに集められ、宇宙空間に放出されている。
結果として、表面部分の生体金属が死滅したが、内部まで浸透することはなかった。
──バリバリミシイッ
宇宙空間なので音は響かない。
卵の殻が剥けるかのように、黒く変色した表面金属が剥がれる。
そして内部から、銀色の球体が生まれると、一直線に宇宙ステーションへと急加速を始めた‼︎
「しまった‼︎」
『死亡フラグ‼︎』×7
インターセプト隊が慌てて追尾し加速するが、それよりも真球の方が素早かった。
そして、宇宙ステーションまで間も無くというところで、生体金属は、そこにいる敵に気がついた。
「それじゃあ、最終戦と行きますか」
右手に魔力を集め、『悪魔の右手』を発動するカリバーン。
そして、真っ直ぐに飛んでくる真球目掛けて、カウンターの一撃を叩き込むために加速を開始した‼︎
いつもお読み頂き、ありがとうございます。
誤字脱字は都度修正しますので。 その他気になった部分も逐次直していきますが、ストーリー自体は変わりませんので。
この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。











