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【完結】機動戦艦から始まる、現代の錬金術師  作者: 呑兵衛和尚
一つ目の物語〜機動戦艦・出現編〜

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深淵からの挑戦・反撃と、進撃と

『機動戦艦から始まる、現代の錬金術師』は不定期更新です。

 地球の衛星軌道上での観測を終えて。


 及川と郭嘉を乗せたマーギア・リッター『サテライト2』は、月面から射出された『月の槍』の観測調査に向かった。

 マーギア・リッターでの移動なので、それほどの時間は経過しない。

 軽く旅行に向かったような感覚で宇宙空間を飛んでいると、やがて正面に目標である『月の槍』が見えてくる。



『立体軸左方向に移動、そこから回り込んで相対速度を合わせます』

「お願いします。郭嘉さんは、観測を始めてください」

「かしこまりました」


 及川はサーバントとミサキから、マーギア・リッターの操縦についてはしっかりとレクチャーされている。

 それでもこの短期間で自由に操れるようになったのは、魔導具による『知識の刷り込み』の効果である。

 ミサキ曰く『アマノムラクモの国民なら、マーギア・リッターぐらいは自在に動かせないとなぁ』と、冗談混じりにいきなり叩き込まれたのである。

 今の及川は少なくとも、ミハイル少将よりも自由に、そして自在に操ることはできる。


『……相対速度、ゼロに調整』

「観測開始」


 お互いの速度と方角をピッタリと合わせる。

 これで相対速度はゼロとなり、観測が行いやすくなる。

 ぶっちゃけると、宇宙空間上では絶対静止座標系が存在しないため、今回のケースはサテライト2から見た相対速度となるのだが、まあ、それは余談ということで。


「……初期観測完了。及川さん、この月の槍の素材は、鹵獲した謎車両と同一金属です」

「報告にあった生体金属ね。これって、大気圏に突入したら燃え落ちない?」

「まあ、表現が適切ではありませんが、ごく僅かに熱による損耗はあるかと思います。ミサキさまからの連絡では、魔導パルスレーザーでも傷がつかないとのことですので」

「なるほどねぇ。これって、地球に向かって飛んでいるのよね? サテライト2から攻撃して、軌道を変えることはできるの?」

『不可能ではないかと思いますが、相手は未知の存在です。迂闊なことはしないほうが』


 サテライト2にそう告げられて、及川は慌てて両手を前に突き出してパタパタと振る。


「いやいや、しませんよ、ミサキさまの許可も取っていませんから。ただ、可能性として考えただけですよ」

『可能性でいうのでしたら、不可能ではないかと……アラート、緊急回避行動に入ります』


──ガグン

 サテライト2が高速で月の槍から離れる。

 すると、先ほどまでサテライト2の飛んでいた位置に、月の槍から小型の金属片が射出された。

 ツルツルだった月の槍の表面が鱗のように逆立ち、飛ばしてきたのである。


「あ、あれは何かしら?」

「防衛本能ではないかと。もしくは、横を飛んでいた我々が危険であるという解析が完了したとか」

「こっわ。飛んでいった破片の回収をして、戻りましょうか」

「それが賢明ですね、ではその通りに」


 月の槍から距離を取ると、謎の金属片を飛ばしてくることは無くなった。

 それなら安全だと考え、及川は飛んでいったいくつかの破片を回収すると、月の槍よりも先に地球に向かって帰還を始めた。



………

……



「その破片が、これか。なんだろうね?」


 アマノムラクモ、25番格納庫では、及川が回収した10個の金属片が並べられている。

 長さ30cm、最大幅15cm、中心厚1cmの菱形をしており、見方によっては鱗に見えないことはない。


「私と郭嘉さんでもわかりませんでした。ミサキさまの魔法で分かりませんか?」

「試してみるか。解析アナライズ……あ、これはただの金属片だわ、生体金属の死んだやつって言えばわかる?」

「死んだ生体金属? つまり金属?」

「まあ、その認識でもいいよ。なんて説明すればいいかなぁ……カブトムシの殻? そんな感じ」

『ピッ……甲虫の外骨格と思ってください』


 オクタ・ワンのサポートが入ると、及川も理解した。


「あ〜。でも、カブトムシのからって、そんなに硬くないですよね。でも、これはカチンコチンですよ?」

「そこんところ、俺も詳しくないんだけどさ。オクタ・ワン、説明よろしく」

『ピッ……観測データによりますと、地球に存在する甲虫の中でも、最も硬いものになると車両が踏んでも潰れないものがあります。自重の39000倍の重量に耐えられる計算です』

 

 その計算でいくと、重さ4000トンの月の槍は、どれだけの圧力を加えないと破壊できなくなるのか。

 まあ、あくまでも例にだした甲虫の外骨格ならばという仮説でもあり、内部構造その他の要因によっては変動するのがあたりまえ。

 ついでに説明すると、これは金属生命体なので、構造自体が謎そのもの。


「しっかし、こんなものを打ち出すなんて厄介だわ。マーギア・リッターのフォースフィールドで抑えられるか?」

『ピッ……加速によります。サテライト2の観測データ程度の加速度なら、フォースフィールドを貫通することはありません』

「……つまり脅しかな?」


 もっと詳しい情報が欲しいところだが、今の時点ではこれ以上の情報はない。

 加えて、人工頭脳にも真新しい情報はないので、ミサキとしても詰みの状態である。


「これ以上、邪魔をするな。とかですか?」

「そうかもしれないんだけどさ、本当に知的な反応じゃないんだよ。複雑なプログラムに則った行動? 昆虫の本能に近いっていうのもわかる。蟻や蜂だよなぁ」


 やっぱりデータ不足。

 こうなると、月面の地下施設に向かって、内部調査を行いたいレベルだよ。

 そんなことを考えているとさ。


──ピッピッピッ

『ピッ……先日観測したブラックナイト衛星周辺に、重力波動を確認。警戒体制に切り替えます』

「重力波動? またなんか来たのか?」

『……ブラックナイト周辺に、巨大な金属反応が発生.…サテライト1からの映像、だします』


──ブゥン

 正面モニターには、ブラックナイト衛星を中心に合計六本の『月の槍』が浮かび上がっている。

 さらに空間が湾曲して二本の槍が出現し、最終的には八本の月の槍が浮かび上がっていた。


──シュシュシュシュンッ

 宇宙空間なので音は響かない。

 八本の月の槍は、まるで何かに打ち出されたかのように推進を始めると、地球に目掛けて飛んでいった。


「……マーギア・リッター、出撃準備。トラス・ワン、ブラックナイト衛星から飛んでくる月の槍の速度と到達時間の計測‼︎ JAXAとNASAにもデータ送れ‼︎」

『……計測開始。オクタ・ワン、データ送信はお願いします』

『ピッ……了解です。JAXAとNASAにはデータ送信完了。続いて他国にも送りますか』

「頼む。送り先の判断は任せる」


 いきなり月の槍を増やすとは。

 しかも、月からの射出ではなく、ブラックナイト衛星からって、近距離すぎるにもほどがある。


『……解析完了、現在のブラックナイト衛星との距離1260km、時速100kmで降下軌道に入りました』

「……落下地点の予測‼︎」

『……太平洋上、北緯15度東経150度です』

「此処かよ、マーギア・リッター出撃、落下前にフォースフィールドで固定できるか?」

『ピッ……不明。まだ金属生命体のフォースフィールドに対する抵抗値を算出していません』

「了解だ、とりあえず月の槍の前方まで移動、フォースフィールドのネットを展開して止められるかやってみてくれ」


 すぐさまマーギア・リッター16機が宇宙空間に向かって上昇を開始。

 距離的には国際宇宙ステーションまでの距離の約三倍、速度から考えても十分に間に合う。

 一つでも大気圏を突破して、アマノムラクモではなく太平洋に墜落したならば、どんな被害が起きるか判ったものじゃない。


 俺としても、いくつも手を用意しておく必要があるが、現状では打てる手がほとんどない。

 今は祈る気持ちで、月の槍を止められることを祈るだけだ。



 ◯ ◯ ◯ ◯ ◯



「……冗談じゃない、ただでさえ月の槍の対策が難航してある時に、なんで八本も増えるんだよ‼︎」

「知りませんよ。アマノムラクモの緊急通信でしたから。それよりも、観測衛星からのデータは届きましたか?」

「ブラックナイト衛星の定点観測は、JAXAは行っていない。急ぎ天文台に連絡して確認します」


 筑波にあるJAXAの宇宙センターでは、アマノムラクモからの通信を受けて緊急事態態勢に切り替えられていた。

 月の槍の対策で手一杯なところに、あと半日で到達する新しい槍の対策など不可能。

 迎撃するにしても、その手配に時間がかかり過ぎる。


「観測しかできないだと? 弾道ミサイルで迎撃できないのか?」

「ロフテット軌道まで打ち上げられます、迎撃は可能です‼︎」

「防衛省にも連絡だ、データを全て送れ、落下地点の計測も忘れるな‼︎」

 

 月から飛来する月の槍に向かっては、弾道ミサイルはまだ届かない。

 だが、ブラックナイト衛星からとなると話は別。

 十分に迎撃できる距離まで打ち上げることができる『SM3ブロック2A』が有効であると、報告を受けた防衛省も判断。

 すぐさまイージスシステムにより、ブラックナイト衛星から飛来する月の槍を捕捉するべく、イージス艦『まや』が出港することになった。



………

……



 中国国家航天局。

 北京航天飛行制御センター別棟では、月面から回収したプレートの処置について論議が繰り返されている。


「月の槍が、このプレートに導かれているという証拠はない。現に、いかなる解析をもってしても、このプレートから誘導波が発しているという形跡は認められない」

「この未知の金属は、しっかりと解析するべきである。ミサキ・テンドウ氏からの報告データでは、これは生きている可能性があるというのだが。まさか、子供が親を呼ぶように、このプレートが月の槍を引き寄せていると?」

「推測としても突拍子すぎる。が、可能性はゼロではないか。私は、プレートの破棄を推しますな」


 

  国家航天局上層部は、持ち帰ったアストロノーツ達からの報告を聞き、対策を考えていた。

 とにかく、せっかくの貴重なサンプルを、みすみす手放して良いものかという論議にまで発展している。


「失礼します。アマノムラクモからの緊急通信です」

「なんだ?」

「ブラックナイト衛星周辺に月の槍が発生。地球に向けて射出されたということです」

「ミサイル護衛艦の準備を要請しろ、これが成功したならば、140日後の月の槍の到達についても迎撃可能だと世界各国に知らしめてやる」


 意気揚々、やる気は十分であるが、それはあくまでも上層部の話である。

 現場は未だ混乱の極みにあり、さらに八本の月の槍が飛来してくるとなると、手が足りなくなってしまう。


「……報告では、落下地点が太平洋上となっているか。アマノムラクモ沖合の艦隊に連絡して、いつでも退避行動がとれるように伝えておけ」


 すぐさま軍部から太平洋に展開している『アマノムラクモ監視艦隊』に連絡が届く。

 すぐさま監視艦隊は移動を開始し、退避行動を取りつつも、迎撃の準備を始めるのであった。


いつもお読み頂き、ありがとうございます。

誤字脱字は都度修正しますので。 その他気になった部分も逐次直していきますが、ストーリー自体は変わりませんので。


この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。

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