悪夢の再来・危険の始まり、覚悟はいいか?
『機動戦艦から始まる、現代の錬金術師』は不定期更新です。
韓国が騒動に巻き込まれている中、俺は斑鳩をアマノムラクモへ戻すと、艦橋へと戻っていった。
他国の内情なんて、そうそう見透かすことなんてできない。
俺が世界中に諜報員を送り出したのは、あくまでも自然災害対策の一環としてだからね。
「ミサキさま、各国外務省に連絡を入れておきました。アマノムラクモは、報道関係者を受け入れることは可能であるが、条件があると伝えておきましたので、あとは各国の対応となります』
「了解。まあ、ここから先は、各国の中での話だからね。世界中の報道関係各社じゃなく、国の外務省に通達したのは正解かもね」
「はい。これで報道受け入れの窓口は、対象国の外務省となります。偏向報道を行うような報道関係局は、弾き出されるでしょう」
「そうなることを期待するよ。それで、どこか申し込みはあった?」
「はい。日本からの申し込みがありました。外務省を通じて、日本の民放が取材を行いたいと」
へ?
なんで民放?
普通、こういう場合は外務省を通じて国営の放送局が話を持ってくるんじゃないの?
なんで民放が?
「……断りてぇ。絶対に裏があるに違いない、全力で断りてぇ……」
「受けてよろしいのではないですか?」
「まあ、対応するのはヒルデガルド達だから、任せていいのなら構わないが。まあ、いいか……オクタ・ワン、各層の監視システムの調整は完了しているのか?」
『ピッ……音波、熱源、振動、大気、全ての対応が可能なように調整を終えてあります。また、取材時には、アマノムラクモ内部から通信が取れないようにすることも可能ですが』
「それはいいか。でも、通信の内容は確認しておいてくれ。どこにスパイが居るのかわからなくなるからな」
『ピッ……了解です。全ての調整を最終段階に移行します。第三層の調整を速やかに完了』
おお、これで公開するための条件は整った。
それじゃあ、俺も、俺のできることをやるとしますか。
「斑鳩……違うな。俺のマーギア・リッターのスタンバイよろしく。護衛を四名つけてくれ」
「イエス・マイロード。国連本部へは、先に通達しておきますか?」
「……なんでわかった? 俺が国連本部に向かうのが」
『ピッ……その程度でしたら、我々でも……アラート、緊急確認事項発生。例の重力波動関連かと思われますが、こちらで対処可能。ミサキさまは国連本部へどうぞ』
「何が起きた?」
『ピッ……何が起きたのかを観測開始。及び解析作業に入ります。状況が分かり次第、連絡を行いますのでご安心を』
「そうか、なら、任せていいんだな?」
『ピッ……拝命』
なんだか胸騒ぎがするが、オクタ・ワンが任せろというのなら、そこは信用していいんだろう。
俺は、国連本部に向かって、アマノムラクモの医療国家としての宣言をおこなうだけだ。
通信網をハッキングして全世界同時通信も可能だけど、それでは何が筋が違うような気がする。
だから、堂々と、公式の場でやってやるさ。
◯ ◯ ◯ ◯ ◯
日本国。
外務省から連絡を受けた、とある民放局では、アマノムラクモへの取材申し込みの件について報告を聞いていた。
条件的には殆ど問題はないのだが、一つだけ納得がいかない部分がある。
『ミサキ・テンドウへのインタビューは無し』
これが放送局の特番のメインであるのに、納得がいかない。
いや、正確には、納得がいっていないのは民放局に圧力を掛けてきた議員である。
計算では、その取材に同行してミサキと対談形式で話を行い、彼女の所属する政党とアマノムラクモが懇意であることを示す必要があったのである。
別に言質を取る必要はない。
彼女と接触し、親密な関係であることを映像に収めることができればいい。
そうすれば、今回の選挙の公約にある『アマノムラクモ政策』についての後押しが可能だから。
あとのことなんてどうでもいい、相手が拒否したとか、適当な理由をつけて政策の方針を変えればいい。
街頭演説で叫んでいる『アマノムラクモ政策』に信憑性をつけることができればいいのである。
「……それが何? 対談は認めないですって? あの女、何様なのよ?」
「あ、あのですね、仮にも、相手は一国の王なのですよ? もっと表現を抑えるとか」
「そんなの関係ないわよ。ここには、あの女はいないのよ? いないやつ相手に敬意なんて払えるものですか。私が敬意を払うのは、私よりも上の存在だけなのですから」
「まあ、本国からの連絡としても、日本を内部からコントロールできればって話でしたからね。アマノムラクモ政策は、その隠れ蓑としては良いかと思いますけど……もう少し言葉を抑えたほうが」
女性議員と秘書のやりとりに、放送局関係者も苦笑するしかない。
今の野党が与党だった時代に、隣国に忖度した政策により、かなりの諸外国関係者が日本の中枢に紛れ込み始めている。
もう少しで日本を操れるラインまでいけると思った矢先、とんでもない失態で政権は逆転した。
それでも、彼女たちは必死に頑張った。
国民のことなど無視して、自分たちが政権を取り戻すために。
マスコミと手を組み、自分たちの都合の悪いことは全て隠蔽し、与党の都合の悪いことはマスコミと共同ででっち上げ、殴りまくってきた。
「まあ、このままでも、私たちの勝利は間違いはないわ。アマノムラクモに向かう報道関係者名簿に、私の名前を追加しなさい。直接、向こうの外交官と話し合います」
「……了解しました。では、次の議題ですが……」
すぐさま話題は別のものになる。
そして一時間後には会議が終わり、皆、持ち場へと戻っていく。
その姿を見送ってから、局のとあるチーフプロデューサーが、ボソリと呟いていた。
「あのババァ……針が効かないぞ? 別の意味で狂信者じゃねーかよ。いや、針を受け付けない体質なのか? なんにせよ、今後の研究対象に違いはないか」
日本にも、古き亡霊の仲間たちは浸透していた。
ただ、日本は古き時代には、彼らと同じ枢軸国。
敵となる要素は、存在しないという甘い理由から、洗脳対象国家としては外されている。
それでも、内部情報を知るために、政府中枢には数人ほど、針を使用していたのだが、このようなケースは初めてであった。
「では、引き続き観察しますか。全ては、マインフューラーのために……」
◯ ◯ ◯ ◯ ◯
アルゼンチン・チュブ州。
コモドーロ・リバダビア郊外にある屋敷。
その屋敷を中心とした地区が、現在の『ゲーレン機関』が長い時間をかけて準備した本拠地である。
「……くだらん。実にくだらん……」
アドルフは、執務室で大量の書類に目を通していた。
自身が死んでから今までの歴史、現在の世界情勢、それらを踏まえての、旧第三帝国派の活動。
アドルフの残した遺産により、さまざまなオカルト分野の解析はかなり進行している。
針をはじめとした、現代科学では想像のつかないものまで、彼らは実戦投入している。
それでいて、やっていることは各国中枢の撹乱、内紛操作、国連内部の撹乱など。
どれも、かなり高確率で成功を収めている。
だが、アドルフは納得がいかない。
「……アマノムラクモを攻撃するように誘導し自爆。政策の甘さを露呈……。二つの党派の対立にアマノムラクモを使う……司令官の独断専行……じつに、くだらない」
第三帝国派としては、今は各国の情勢コントロールが急務であり、そのためにはアマノムラクモを上手く使うのが早いと判断している。
少しでも早く、より多く、第三帝国に仇をなしたものたちに粛清を。
それこそが、アドルフの意思であると考えたのかさだかではないが、アドルフは渋い顔である。
「……なにか、返答はないのか?」
「恐れながら。残された我々では、ここまでの作戦進行が愚策とは思えませんが」
「愚策ではない。が、良策でもない。この作戦行動、次の展開は?」
「現在、アメリカ第七艦隊を制御するために動いています。第七艦隊と、アマノムラクモ近海のロシア艦隊との交戦状態へと向かわせ、あの忌々しいロシアに鉄槌を撃ち込みます」
「……良策とは思えん。そこには、我々は存在しない……今となっては、ルードヴィヒのような人材こそ、必要な時代なのかもな……」
そう呟いてから、アドルフは立ち上がり部屋からでる。
「どちらへ?」
「散歩だよ。久しぶりの日光を浴びることにする……護衛は必要ない」
すぐさま親衛隊がアドルフに追従しようとしたが、それを手で制して、アドルフは外に出る。
久しぶりの日光。
幸いなことに、目の前に広がる光景は近代都市ではなく、どこが牧歌的な風景である。
街を行く人々は、ここに第三帝国派の本拠地があるなど知らない。
アドルフが外を歩いていても、ほとんど人の姿はない。
だが、田園風景から、今もなお、この地では人々の営みがしっかりと受け継がれていることが理解できた。
そんな中、アドルフは一人の観光客を見かける。
服装はこの土地のものだろうが、雰囲気が違う。
「おや、こんなところで、どうかしましたか?」
「いえいえ、この辺りの風景が好きでして……こう見えても、私は写真家でして、旅をしながら気に入った風景を撮影しているのですよ」
「そうでしたか。この辺りの田園風景は、実にいいですよ。昔住んでいた、オーストリアを思い出しますから」
「へぇ、オーストリアの出身で……」
観光客は、そこで言葉を詰まらせる。
先程までは地元の青年に見えていた男の顔が、突然、歴史的有名人に変化したのであるから。
──ガシッ‼︎
そして、観光客が動揺した瞬間、アドルフはその顔面を掴み、砕いた。
「あ、アラート……」
「無駄だな。さて、持ち帰って解析するか。こんな辺鄙な世界に、神の遺物ともいえるゴーレムがあるとはな……面白い、実に楽しくなりそうだ……」
すぐさま砕いた顔面に帽子を被せると、アドルフは観光客に肩を貸して、そのまま屋敷へと戻っていった。
………
……
…
「メインフレームはオリハルコンとミスリルのハニカム構造複層体? ふむ、解析がまだ追いつかないか。それで擬似魂とやらによる、意志を持ったゴーレム……ほう、地球のテクノロジーではないのか」
屋敷にある研究室では、アドルフが捕縛した観光客を解体している。
地球の技術では到底不可能な解体作業であるが、破壊神の残滓の力があるので、それほど苦もなく、解体術式を用いて部品レベルに分解した。
その際に、細かな図面を頭の中に刻み込み、システムを掌握している。
「通信システムはカットしたか、焼き切って、内部データを破壊……さすがに、ここは再現できぬか。だが、この身体は強い、今の私の身体よりも……」
右手で分解した頭部に触れると、一瞬でゴーレムを体内に取り込み、自らの体内骨格に組み込む。
余分な生体部品は排出し、そしてまた別のパーツを組み込む。
それを一時間ほど続けると、アドルフの身体はオリハルコンフレームのゴーレムボディへと互換換装された。
「なるほど……アマノムラクモのテクノロジー。これは、私の知らない力だが、神が関与しているのか……楽しい、実に楽しい……新生第三帝国には、この技術も使わせてもらうとしようではないか」
手術台に残った最後のパーツ、擬似魂。
それをヒョイとつまみ上げると、アドルフは指の力だけでそれを砕いた。
「まだ部品が足りない……が、アマノムラクモとの接触は危険だな。この地球の技術、資源で、どこまで再現できるか、まずは試すとしよう……そのまえに、宣戦布告は必要だな。さて、タイミングはいつがいいか……」
隠れるのは得策ではない。
いや、違う。
何故、私が隠れる必要がある?
何故、第三帝国が、隠れる必要がある?
この技術があれば、再現できるなら、隠れる必要はない。
ならば、時が来た時、そう、最低でも一年以内。
できるなら、より早く、よりスムーズに。
「まずは、システムの構築か。マーギア・リッターの開発、そのための資源、資金、場所……どの国を乗っ取るか……」
アドルフは考える。
今現在、もっとも、アドルフにとって都合のいい国家はどこであるか。
◯ ◯ ◯ ◯ ◯
『ピッ……トラス・ワン、至急、アルゼンチンに戦闘部隊を派遣する準備をお願いします』
『……オクタ・ワン、何がありましたか?』
『ピッ……アルゼンチンに派遣していた諜報員が破壊されました。アラートと同時にデータを送られましたが、その直後に破壊された模様です』
『……データ確認完了、悪い夢では? 何故、アドルフが今、この世界にいるのですか? 死んだと歴史的に記されています』
『ピッ……状況不明。ただ、諜報員を素手で破壊する存在です。派遣準備だけ、お願いします』
『……ミイラ取りがミイラになると予測、拒否します。ミサキさまの判断を仰ぐことを推奨します』
『ピッ……是。私も少し動揺していました。ミサキさまの判断を仰ぎ……思考。それは、ミサキさまが求める答えに……思考。ミサキさまの安全を第一優先。報告します』
『……是』
………
……
…
俺は艦橋で、国連での演説内容を考えている。
医療国家として、大きく門戸を開くのと、対自然災害派遣国家としての役割を、どのように説明するか。
前者は代価ありきとにて、後者はどうするか。
「……難しいところだな。何もかも無償なんて事は無しとしても、それでも、うちの持ち出し資材もあるだろうからなぁ」
『ピッ……ミサキさまに報告です』
「ん? 何かあったのか?」
嫌な予感しかしない。
さっきのアラート関係だろうなぁ。
『世界各地に諜報員を派遣しておりましたが、アルゼンチン地区の諜報員が、破壊されました』
「……詳しく頼む」
予想外だわ。
『ピッ……映像出します』
そこから先は、派遣されていた諜報員の見た映像。
地元の青年の顔が突然、アドルフ・ヒトラーに変貌したかと思うと、顔面を素手で掴まれ、一気に破壊された。
情報収集する余力などない、本当に一気に破壊されたんだ。
頭部センサーシステムの破壊、同時に内部記憶回路である擬似魂までの侵食もあり得る。
「オクタ・ワン、トラス・ワン、すぐにアルゼンチンに諜報員と戦闘員の派遣……いや、だめだ、相手の情報が足りない、送り込んだところで、また見つかったら同じ状況になるだけだ」
『ピッ……貴重なオリハルコンやミスリルを消耗するだけです。また、アマノムラクモのデータを解析される恐れもあります』
『トラス・ワンより、内蔵通信システムからの逆探知、ハッキングはありません。すぐに回線のシールドを強化します』
「よろしく頼む。アマノムラクモがハッキングされる事態だけはないように。それと、国連に向かうのも、中止、第三層は完成しているから、そこはそのままで。アマノムラクモは準戦闘状態に入る!!」
『ピッ……了解です』
『トラス・ワン、了解です』
「ワルキューレ、緊急配備につきます」
「全世界規模での通信網の掌握、すべての衛星、回線に侵入、アドルフ・ヒトラーに関する情報を全て精査しろ‼︎」
冗談じゃない。
あのアドルフ・ヒトラーが復活しただなんて、そんな御伽噺のようなことが起こるはずがない。
なんて昔は考えてただろうけど、俺が死んで転生している以上、『起こるはずがない』は無しだ。
一体、どこの神様がアドルフを転生させたのかは知らないけど、強力な神の加護を貰ったのは理解できる。
オリハルコンのゴーレムを素手で破壊したんだぞ?
そんな化け物の相手なんで、誰ができるんだよ。
俺以外に……。
くっそ、予定外も良いところだよ。
「くっそ、覚悟を決めろってか……」
戦う覚悟か。
神の加護を持ったアドルフがやることなんて、一つしかないわ、第三帝国の復活だろ、そうだろ?
わかったよ、やるよ、やってやるよ、俺が相手してやるよ。
他に誰が相手できるって言うんだよ。
誤字脱字は都度修正しますので。 その他気になった部分も逐次直していきますが、ストーリー自体は変わりませんので。
この物語はフィクションです。登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。











