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【完結】機動戦艦から始まる、現代の錬金術師  作者: 呑兵衛和尚
四つ目の物語〜可能性未来防衛戦〜

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202/251

進化する人類、進化を終えた人類

『機動戦艦から始まる、現代の錬金術師』は不定期更新です。

 予想はしていた。

 俺が今まで相手をした敵の中でも、最も恐怖を感じた存在だからな。


 ダルメシアン星系で出会ったハストゥール等の神々については、そもそも敵として認識していいものでもないし、敵ではない。

 失った未来で戦ったヒトラーは確かに脅威であったけど、今となってはやりあう必要も存在も確認できていない。

 月の監視者たちは、対応策はしっかりできていたので問題はない。

 あの神々の機動戦艦も、ハストゥール等と同じで例外だ。

 あれこそ神々の鉄槌そのものであるし、俺は最終的には『無かったことに』にして、やり過ごしたようなものだから。


 だけど、有川義光は別だ。

 あれは、あいつだけは分からない。

 

「オクタ・ワン、有川義光についてわかった事はあるか?」

『ピッ……全て不明。地球防衛軍として、日本方面司令官として活動していた事以外は、特段変わらない人間というデータしか存在しません。現時点では、行方不明として処理されています』

「そうだよなぁ。そして、生きている。神楽、日本の地球防衛軍のバイオナノマシンの活動はどうなっているんだ?」


 そう後ろに向かって問い掛けるが、何も返答はない。

 恐らくは、フルパワーで演算処理をしているのだろう。いつも天井を見てボーッとしている時は、位相空間の本体とコネクトして処理作業をしているらしいからな。


「マイロード。神楽は仮眠状態です」

『ピッ……連続八時間以上の位相空間直結は、ハードに過度な負荷が掛かりますから』

「あ〜、そりゃそうか。ノアがヨーロッパ方面の復興に回っている以上は、バイオナノマシン関係は神楽しか対応できないからなぁ」

『ピッ……そこで、もう一つの監視者の起動を要請します』

「もう一つって、月から回収したやつか?」


 オクタ・ワン曰く、神楽がマザーであるのなら、月から回収した監視者も指揮下に入る可能性が高いらしい。

 その辺りはトラス・ワンと神楽で詰めてもらうことで話は終わらせると、俺はオクタ・ワンと有川対策の話し合いを続けることにした。



 ◯ ◯ ◯ ◯ ◯



 日本国・国会議事堂。

 その日も、委員会室では『対異星対策委員会』の話し合いが続けられている。


「蓮明議員の案ですと、北海道の一部をスターゲイザーに割譲する形になりますが。それだと無人島を与えるのと同じではないですか?」


 この日の質問は、先日の蓮明議員の爆弾宣言について。

 日本国政府はあくまでも『無償貸与』を原則として話し合いを行う予定であり、すでに渡島大島を視察した星王ミサキとの会見も終わらせている。その上でミサキが求めたものは、【渡島大島】の一択。

 返答期限は二週間、それ以内に返答がなかった場合は、スターゲイザーは日本から手を引く。


「日本の領海内の無人島を譲渡したとして、そこに軍事基地施設を作られた場合の対応に不備が生じる可能性はあります。ですが、北海道の内陸部なら、最悪は北部方面師団に動いて貰えば良いだけ。海上自衛隊では、あの巨大な戦艦相手には何もできないでしょうからね」


 完全な偏見であるが、直接移動する手段が無人島の場合は船もしくは航空機のみ。

 それも着陸するのは不可能な無人島では、何かあっても対応することができない。

 だが、北海道内陸部ならば、地上部隊の派遣など様々な対応策が可能である。

 蓮明議員がそう叫ぶと、委員会のメンバーも腕を組んで考え込んでしまう。


「しかしだよ? 日本国内に外国ができるようなものじゃないか」

「海外には、そのような国がいくつも存在します。それを踏まえた上で考えるならば、周辺から監視される立場というのがどれほど精神的負担が大きいか、わかるかと思いますが」

「……事は、日本国の領土に関するものだ。それを二週間で結論を出はなくてはならないのだぞ?」


 スターゲイザー容認派の議員が反論するが、それを待っていたとばかりに蓮明が壇上に上がる。


「それこそ、我が国に対する内政干渉そのものではありませんか。相手は、我が国が周辺国家に対して抱えている諸問題すら理解しているのです。そのような高度な知能を持つ種族が、我が国の国内規定についてのことを知らないはずがありません」

「つまり、何が言いたいんだ?」

「スターゲイザーは、日本国を悪役として手を切り、他国と条約を結ぶ気なのではないでしょうか。そもそも、こちらの提案と彼方の求めているものに格差がある以上、速やかに手を切るという選択肢をなぜ選ばないのか」


 そこまで言い切ると、蓮明は一息入れて一言。


「今の日本政府は、日本を切り売りして叩くに尻尾を振るということに他なりません。今回のスターゲイザーの件で、それが露見したではないですか。このまま結論を出せず、期限前に本会議にて決議する。圧倒的数の暴力で、日本政府の身勝手な政策により、日本国がどんどんと切り売りされないことを祈ります」


 そこまで言い切ると、蓮明は席に戻った。

 そこから先も、同じような意見や提案はあったものの、別の候補地の無人島を用意するか、速やかに北海道内陸部を割譲するか。

 または、速やかにスターゲイザーと手を切るか。

 この三択に絞られたものの、結論はまたしても先延ばしとなってしまった。



………

……



 北海道札幌市、北海道庁知事室。

 ロスヴァイゼはスターゲイザー大使としてこの地を訪れると、すぐさま知事に面会を申請。

 ミサキが用意した書簡が本物であると確認できたので、すぐさま面会が許されたのである。


「無人島ではなく、この北海道の地の一部を割譲するという話しが出ているそうですが。それは可能なのですか?」


 まずはロスヴァイゼがジャブがわりに、最近の北海道のテレビで流れている噂についての真偽を確認しようと質問する。

 これに対して、北海道知事の星澤幸雄は届けられている書類を手に、ゆっくりと説明を開始する。


「現状の法律では、日本国内の土地を海外に割譲するという例はほとんどない。だが、今回はそれを行うようにという話にもなり始めている。これが国家としては、非常に難しい問題であるのは理解できますか?」

「それは、日本国の言い分であり、私たちには関係ありません。ミサキさまの仰った言葉の真意、それを日本政府がどう捉えるかですわ」


 ミサキが首相官邸で行った会談での、最後の言葉。


『二週間。その間に答えがもらえない場合、日本との交渉は全て中止します。幸いなことに、日本の周辺国家は私たちの提示した条件をいくつも用意してくれているようですから』


 ロスヴァイゼは、この『答え』がどのようなものか、非常に興味があった。

 ちなみにミサキはというと『法整備その他で時間が必要だから、あと一ヶ月結論を待って欲しい』でも、構わないと思っている。

 是にせよ非にせよ、保留にせよ。

 答えがもらえるのなら、それはそれで構わないと思っている。


 だが、日本政府は違う。

 渡島大島を渡すか、渡さないか。

 この二択についての返答を出そうとしているのである。


「……まさかとは思いますが、スターゲイザーは答えを求めていないと?」

「さぁ? 答えをもらうように告げられておりますけれど、それがどのような答えなのか、私は存じません。ただ、いくつかの答えに対しての回答は預かっております」

「これは、ここだけの話で例えばですが。答えの一つが【渡島大島の割譲は不可能だが、北海道の地の一部を割譲する事は可能である。、そのための法整備も行うため、あと三ヶ月の猶予が欲しい】だとしますと、これに対する答えはありますか?」


 星澤知事の賭け。

 まだ期限前であるにも拘らずの、『ここでのみ、例えば』ということを前提とした答えの引き出し。

 帰ってくるのは沈黙であることぐらいは覚悟していたが、ロスヴァイゼは静かに口を開いた。


「では、三ヶ月後に良い答えがもらえることを待っています。交渉の第一優先権は日本国とし、スターゲイザーは他国との交渉も開始します」


 まさかの答えに、星澤知事はあんぐりと口を開く。


「これも、この場のみ、例えばの答えですわ。ですので同じ回答が正式な場であった場合、同じ答えが出るとは限りませんので」


 そう告げてから、ロスヴァイゼは立ち上がった。

 そして窓辺に向かうと、遠くを睨む。


(……敵対反応。この波長は何者でしょうか? 今まで感じたことない……危険な反応です)


 ロスヴァイゼのセンサーに感知できるような、敵意。

 これがなんなのか、今は分からない。

 それでも、この気持ちの悪い感覚には、ロスヴァイゼもどうにか耐えることしか出来なかった。


いつもお読み頂き、ありがとうございます。

誤字脱字は都度修正しますので。 その他気になった部分も逐次直していきますが、ストーリー自体は変わりませんので。

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