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【完結】機動戦艦から始まる、現代の錬金術師  作者: 呑兵衛和尚
三つ目の物語〜監視者との再会編〜

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方舟

『機動戦艦から始まる、現代の錬金術師』は不定期更新です。

 彼は、ずっと眠っていた。


 遥かなる母星から、大勢の人々を乗せて旅をしてきた彼は、この地球にたどり着いてから、静かに眠りについた。

 彼の元より離れたわずかな人類は、彼の眠る霊峰の麓で、いつか他の仲間たちがやってくるのを、静かに待っていた。

 


 遥かなる母星、マスチーフ星系に存在した惑星ステラプレイズは、異界から姿を表した竜種により、崩壊の危機に直面。

 それらと対抗するべく、星の民は『生きている金属』を操り、さまざまな兵器を開発。

 だが、それが星を滅ぼすきっかけとなった。

 竜種が求めていたのは、まさに『生きている金属』であり、それを得るために他の星々を彷徨い、破壊し、全てを喰らっていた。

 結果、生きている金属の半分以上が喰らわれたものの、残った金属で星の民は船を作り上げ、滅びゆく星に別れを告げて旅立った。


 星から脱出した船は全部で150。

 新たな星を探すべく、監視者という端末を送り出し、可能な限りの星系の星々を調べていた。

 その中の一つ、太陽系第三惑星が、生命体の居住可能な惑星であるという報告を受けた方舟106番艦は、すぐさま移動を開始。

 長き時を超えて、ようやく地球に到達した。


 そこで、彼の仕事は終わり。

 彼らは、その力の殆どを失い、眠りにつくしかなかった。

 最後に、己の体を削り、この星の環境に体を調整するべく、『バイオナノマシン』として、星の民の中で眠りについた。

 いつか、再び眠りから覚めるときが来るようにと、祈りを込めて。


 生きている金属。

 彼らは、星の民がその存在に気づくまでは、ずっと主人と共に眠っていた。

 彼と共に旅をした、たった一人の主人。

 帰る故郷を失い、異世界から転生した主人。

 生きている金属は、神が彼に授けたせめてもの祈り。


 二十四の伝承宝具の一つ、リビングアーマー。


 主人の命令により、さまざまな武器、防具に姿を変化させることができる『リビングメタル製の、生きている鎧』。

 決して傷つくことなく、いかなる攻撃にも耐えられる。

 その力で、彼は主人を守った。

 星に存在した魔王を滅ぼしてからも、彼は主人と共に歩み続けた。

 そして、主人の最後の時。

 彼は、最後の主人の命令を聞いた。


『この星の人々を、護って欲しい』


 それが至上命令であるならばと、彼は眠りについた。

 まだ、この星の人々は危機に直面していない。

 いつか、本当の危機が訪れた時、その時は星の民のために戦おうと。


………

……


「デカイな」

「ああ、すごく大きいな」

「なあメリクリ。ちなみに俺のマテリアルライフルを、どう思う?」

「凄く……大きいです。って、何を言わせるんだよ」


 廃村にあった地下通路。

 そこを通り抜けて辿り着いたのは、巨大な空洞。

 そして、そこにあった巨大な宇宙船。

 卵を横に平たく潰した感じの、白銀色の金属。

 その近くには、数人の死体が転がっている。

 

「服装から察するに村人か。人数は三人、残りの村人は逃げ延びたようだな」

「どこへ? どうやって?」

「まあ落ち着け。恐らくだが、村人は地球防衛軍の兵士に追われていた。それは何故か分かるか?」

「おおかた、この船の秘密を知るためか?」

「そうだ。地球防衛軍の奴らは、この船を使って形勢逆転を考えている。奴らの正体については、ミサキさまでも解析できていないが、俺は、この船にこそ秘密が隠されていると思った」


 淡々と話をしているようだが、現在は戦闘中。

 地下道を抜けて空洞に入った直後、ディーガイズは謎の集団により攻撃を受けていた。

 その装備があまりにもバラバラであることから、傭兵もしくはその類かと予想化してみたのだが、全員が地球防衛軍の兵士だとなると合点がいったのである。


 そこからはディーガイズのターン。

 飛んでくる銃弾など気にすることなく、話をしながらの殲滅作戦。

 少なくとも、三人の村人が殺された以上、ここの兵士たちは殺しても構わないとガーデンツィオは判断した。

 民間人を守るのが兵士であり、それを殺すような兵士は生きている価値なし。


 この信念のもとに、ガーデンツィオは走った。

 援護射撃にAA12ショットガンをぶっ放す仲間のスパイス。

 ナイフ片手に突っ込んで、相手の関節や動脈を狙うメリクリ。

 さらにグレネードランチャーをばら撒くランドグランら、仲間の援護を受けつつ、目の前の兵士たちを血祭りにあげて。

 決してミサキには見せられない、血まみれの特殊部隊は、空洞に集まっていた300人近い地球防衛軍の兵士を殲滅した。



 ◯ ◯ ◯ ◯ ◯



 彼は目覚めた。

 彼から受け継いだバイオナノマシンを受け継ぐ存在が、彼の元に逃げてきたから。

 

「ハルア、ナージャス、カマ、ナラ、アリアジル‼︎」


 緊急事態。

 彼らは危険から避難してきた。

 ならは、星の民の子供達を守るのが使命。


──シュンッ

 彼は懐を開いて彼らを受け入れた。

 その直後、大勢の兵士たちが駆けつけてくる。

 彼らからも、バイオナノマシンの反応がある。

 彼らもまた、星の民の子供たちか。

 ならば、受け入れよう。


 懐を大きく開いた時、最初に逃げてきた子供達が撃たれた。

 

 何故?

 子供達同士で争うの?


「ガアナ、ド、ズル。ザ、ビキシリ。ナルラ……」


 撃たれた子供が叫んだ。

 そうか、彼らは、敵なのか。

 急いで子供たちだけを収容すると、私は懐を閉じた。

 三人の子供たちが殺された。

 そして、彼らは私を調べ始めた。

 残念だが、私は子供達に手を出さない。

 子供達を守るのが、私の使命。

 主人に与えられた絶対命令。

 だから、沈黙した。

 

………

……


 彼らは、私を調べ始めた。

 もう何日になるだろう。

 私を調べたければ、言葉を紡ぐだけ。

 でも、それができないということは、彼らは劣化している。

 体内のバイオナノマシンも、本来の仕事を終えて眠りについていたのだろう。

 その証拠に、バイオナノマシンからの声は、私には届かない。

 

 おや、誰か来たようだ。

 突然現れた来訪者達に向けて、外の子供達は武器を手に戦った。

 やめろ、戦いはやめろ。

 それは危険だ、すぐに戦いはやめるのだ。


 彼らの中のバイオナノマシンに向かって叫ぶ。

 だが、声が届かない。

 そして一人、また一人と子供たちが殺された。

 頼む、やめてくれ。

 ここで血を流すな、あのひとの子供たちを傷つけるな。

 頼む。


 モウヒトリノ、ワタシガ、メザメルマエニ。

 


 ◯ ◯ ◯ ◯ ◯



 完全なる殲滅。

 倒れている地球防衛軍の兵士に、生存者はいない。

 ただ、ここからどうするべきかは、判断が難しい。


「さて。熱いシャワーを浴びて一杯やりたいところだが、まだ任務は終わっていない……」

「そうだな。この中に逃げた人たちに、詳しい話を聞きたいところだが」

「俺のグレネードでも、こいつは無理だ」


 笑いながら、ガンガンと壁を殴るランドグレン。

 すると、壁の一部が光り輝くと、ゆっくりと隆起し始めた。


「……全員、下がれ‼︎」


 ガーデンツィオの叫びに呼応するかのように、全員が下がって武器を構える。

 すると、隆起した壁が液体のように分離し、そこから銀色のマネキンが生み出される。


──シャルルルル

 全身から針のようものを生み出し、触手のように転がっている地球防衛軍の死体に突き刺すと、何かをゆっくりと吸い上げ始めた。


「子供たちを守る……星の民を守る……お前たちは、敵だ……ころ」


──ドゥン‼︎

 銀色のマネキンの頭にグレネードを撃ち込むランドグレン。

 だが、吹き飛んだ頭は水銀のように液化し、そこにも針を突き刺して吸収している。


「なあ、ガーデンツィオ……ここはアーノルドの出番だと思うんだが」

「同感だ。だが、確かまだフレームしかできていないはずだよな?」

「つまり、ここはかなり不味いと?」

「片手でショットガン回してリロードするやつぐらいじゃないと、勝てないんじゃないか?」

「そうだな。つまりは」

「「「「逃げろ‼︎」」」」


 ディーガイズの全員が叫びながら走る。

 

 その背後では、頭を再生したマネキンが周りを見渡してから、ゆっくりとディーガイズを追跡し始めた。


 命令……星の民を守る……奴らは、星の民を殺したから……命令……星の民を守る……奴らは、星の民を殺したから…… 命令……星の民を守る……奴らは、星の民を殺したから……。


 同じことを呟きつつ、地球防衛軍の死体から『壊れたバイオナノマシン』を回収したリビングアーマーは、主人の命令を守るために、ディーガイズを追いかけ始めた。


 

いつもお読み頂き、ありがとうございます。

誤字脱字は都度修正しますので。 その他気になった部分も逐次直していきますが、ストーリー自体は変わりませんので。

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