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【完結】機動戦艦から始まる、現代の錬金術師  作者: 呑兵衛和尚
三つ目の物語〜監視者との再会編〜

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人間の心、獣の魂

『機動戦艦から始まる、現代の錬金術師』は不定期更新です。

 呆然。


 オクタ・ワンからの通信で、俺はモニターを国会議事堂から防衛省庁舎に切り替えたんだが。


──キン‼︎

 画面が切り替わった瞬間に映ったのは、サーバント諜報員の『林』こと林秀貞の首が飛ぶ瞬間。

 いや、待って、ミスリル軽合金製サーバントだよ?

 それがなんでこうも簡単に?


「ま、いや、そうか、そういうことなのか?」


 理解するまでに数秒。

 なんのことはない、あの有川とかいう男は、林を構成するミスリル結合を切断しただけ。

 そんなの無茶だと思うだろうけれど、俺は錬金術を使って素材を切り出すときは、分子結合レベルで鋏を入れることができるからね。

 それと同じことを、あの軍刀が行ったということなのか?

 しかもだよ、今、リアルタイムで朔夜の速度についていけるのもどうよ?

 正直なところ、相手したくない存在であることは間違いはない。


「オクタ・ワン、有川について詳細を調べられるか?」

『ピッ……出自などは可能ですが、血脈その他に至る場合は、少々お時間を頂けると』

「何分?」

『ピッ……一人の人間の過去に遡るゆえ、一週間は必要かと』

「そうだよなぁ。そんじゃよろしく。あと、ここはオルトリンデに任せるから、俺の代わりに細かい指示を頼むわ」

「かしこまりました。オペレート権限を承ります。これより忍者部隊の指揮系統を私が」


 さて、軽く背筋を伸ばしてから、俺も戦闘用装備に切り替える。

 言っとくが、俺は非戦闘要員なので、防衛用装備だけだからな。


「ヒルデガルド、護衛を任せる。俺に手を出すものは、問答無用で」

「ナノレベルで分解します」

「いや、せめて気絶に留めて。話ぐらいは聞きたいから」

「頭部さえ残しておけば、あとは増殖装置で生命維持は可能では?」

「物騒すぎるし、そこで星澤知事が引き攣っているからやめい。では星澤知事、私はこれで失礼しますので」

「あ、ああ、はい、ありがとうござました」


 頬をヒクヒクしながら、星澤知事が頭を下げた。

 それじゃあ、全身を魔力コートして、車内の簡易型モノリスで座標指定転移開始っと‼︎



 ◯ ◯ ◯ ◯ ◯



──ガガガがガギィィィィーン

 床を、壁を、天井を。

 有川義光と朔夜の二人が駆け回りつつも刃を交える。

 そもそも人間でない朔夜の動きに、人間である有川がついていけるのは何故なのか。

 しかも、重力を無視した立体機動など、専用装備を持たない生身の人間では不可能。


「林の首を飛ばした挙句、唾を吐き捨てるなど言語道断‼︎」

「ほう、貴様ら異星人にも、仲間の死を憂う気持ちがあるとはな」

「直すのはミサキさまでござる‼︎ それを貴様は、唾を吐きかけてばっちくした‼︎ 断じて許すべからず」


 ばっちくって。

 何故に但馬の方言なのかと棚橋は突っ込みたいが、それよりも目の前の人外の戦闘から目を離せない。

 ほんのわずかでも、目を離すと自分が死ぬかもしれない。

 かろうじてまだ捉えられているからこそ、棚橋らは命がこの場にとどめられているといっても、過言ではないだろう。


「しかし、有川とか申したな。見た感じ、そなたは【戦士の血脈】ではござらぬか?」


──ピクッ

 有川の頬が一瞬だけ引き攣る。


「正解でござるか」

「だからどうした‼︎ 俺は、この力を神が授けてくれたなどと信じてはいない。この身体は、俺の両親が与えたものだ‼︎ この力も、命も、神の声を聞く力も‼︎」

「神の声かぁ。それって、念話みたいなものじゃないか?」


 有川の言葉に、棚橋の後ろから姿を表したミサキが問いかける。

 まさに今、ミサキが最前線に姿を表した。


………

……


「君は誰だ、何処から入ってきた‼︎」

 

 隊員の誰にも気付かれずに、この最前線に姿を表した俺に、棚橋隊長は問いかけるけど。

 軽く右手を前に出して一言だけ。


「スターゲイザー星王のミサキだ。朔夜、リミッターを25%開放許可」

「了承‼︎」

「スターゲイザーの星王だと‼︎」


 俺の声に朔夜と有川が同時に反応。

 壁を蹴って加速し、俺に向かって凶刃を構えて飛んでくる有川と、さらに加速して俺の前に壁のように立ちはだかる朔夜と。


──ガギィィィィーン

 そのどちらよりも早く二人の間に立ち、有川の刀に向かってカウンターで拳を叩き込み、砕くヒルデガルド。


「マイロード。お怪我はございませんか?」

「俺は無事だけど、やる気フルパワーの朔夜の心が少し壊れたかな?」


──ドンッ

 刀を砕かれた有川が着地と同時にバックダッシュ‼︎

 すぐさま腰から銃を引き抜いて構えると、一瞬で全弾を撃ち尽くした‼︎


──ガガゴゴゴギィィン

 俺の前に立っていた朔夜が、右手一つで全ての銃弾を受け止める。

 右手の指の間には、有川の放った銃弾が全て受け止められている。


「ふっ……全弾命中でござるなぁ」

「いや、当たったのかよ‼︎」


 朔夜の体の正面には、確かに有川の撃った銃弾が直撃している。

 それが身体から弾けるのを右手で受け止め、指の間に挟んだだけ。


「な、なんだと? 44口径を受けても無傷だと?」

「はっはっはっ。こういう格言を知っているでござるか? 銃は最後の武器でござると」

「巫山戯るな‼︎」


 素早くリロードして銃を構え直すと、また一秒間に全弾打ち尽くす。

 六連装リボルバーを一秒間に全てって、何処の早撃ちガンマンだよ。


──ドンッ

 六つの発砲音が一つに重なって聞こえるのだが、今度は朔夜の体からも金属音は聞こえない。

 彼の前に立っているヒルデガルドが、本当に全弾素手で掴み取っている。


「朔夜はまだ遊びが多すぎます。このような場合は、より効率良く、無駄のない動きが要求されます」


──シュンッ

 そう呟くと、ヒルデガルドが一瞬で有川の間合いに入り、膝蹴りを腹部に叩き込んだ。


──ゴギバギッ

 うわぁ。

 何本か砕いたな。

 腹を押さえたまま、有川はその場にしゃがみ込んで。


「……見たか。これが、この力が、異星人の本気だ……グブッ……こんな化け物相手に談話だ交易だ? 奴らは、コイツらブボッ……人間などゴミ程度にしか見ていない……ガバァッ……」


 口から大量の血を吐き出しつつ、有川が叫ぶ。

 その姿を見て、奥にいた兵士たちが銃を構えて走ってくるのだが。


「ミサキ様‼︎」

「チッ‼︎」


──ドッゴォォォォォォン‼︎

 何があったかわからない。

 ただ、俺の前に朔夜が飛び出し、ヒルデガルドがフォースシールドを展開したらしい。

 気がつくと俺は空。


 見える光景は、大爆発を起こした防衛省庁舎最上階。 見事なまでに、形もなく吹き飛んでいる。

 棚橋たちの姿は……。

 朔夜と火、林が抱えているから無事のようだが。

 林の頭、何処かに吹き飛んだな。


「自爆とは。敵ながら天晴れというところですか」

「何が天晴れだよ。死して屍拾うものなし、じゃねーぞ。やりたいことをやって、信念のままに死ぬ。それで何が変わる? 生きているからこそ、声は届くんだ‼︎」


 そもそも。

 奴は地球防衛軍の指揮官であったにもかかわらず、終始、日本の事を憂いでいた。

 だからといって軍事クーデターなんて許されることはない。

 ここが日本だからこそ、流血は最小限で留められていた。

 これが日本外なら、最悪は戦争状態となり国内紛争により多くの被害者が出ていたことだろう。


「これで、日本の政治家は変わるのでござるか?」

「いや、無理だろう? 所詮は軍事クーデターの首謀者が死んだだけだよ。いくら声を上げて叫んだところで、国民の心に響かないと何も変わらないよ」


 有川義光か。

 誰もお前のことなど覚えないかもしれないから、せめて俺だけでもお前を忘れないでやるよ。


………

……


 ミサキが防衛省庁舎を後にしたのち、国会議事堂を占拠していた地球防衛軍は速やかに降伏。

 その身柄は確保され、これから取り調べが行われる。

 テレビのニュースでも。この時間のことは大々的に報道されたものの、有川義光の叫びについては、全ての報道機関が電波に流すことはなかった。

 まるで、それを聞かれるとまずいかのように報道管制が引かれ、この件はアメリカやロシアの地球防衛軍と同じように、『スターゲイザーとの国交を反対するものたちによるクーデター』として公的に処理されることになった。


 あ〜。

 納得いかねぇ。

いつもお読み頂き、ありがとうございます。

誤字脱字は都度修正しますので。 その他気になった部分も逐次直していきますが、ストーリー自体は変わりませんので。

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