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台本、セリフ、声劇台本 まとめ  作者: 紫蛇ノア
声劇台本
2/13

夏の匂い(関西弁男子×1推奨 標準語切替&性転換OK)

「春の香り、好きやな」


 僕はおもむろにそう呟いた。

 君は隣でそっか……と微笑んだ。


「だって、君の匂いやから」


 高校二年、春の暮れ。

 君を君やと思ったあの季節。

 ふと降り出した雨に立ち尽くした靴箱の前、眉間にしわ寄せとった僕の目の前に、ずいと差し出された桜色の傘を今でも覚えてる。

 やり方は不器用やったけど、真っ赤に染めた頬を長い黒髪で隠した君は、家近くやから使って! なーんて嘘をついたんだっけか。

 雨のなか走り出した君の背に、僕は声をかける勇気もないまま……、次の日、熱出して学校休んだ君の家にお見舞いに行ったんやっけ。

 そんなこんなで仲が良なった梅雨初め。連絡先交換して、たまにする他愛ないやり取り……。

 やけど、笑顔の文字を見るたびに、君の笑顔がチラついて離れへんかった。

 ドキドキんなか、勇気振り絞って誘った夏の花火。はしゃぐ君が眩しくて、話しかけるアイツにむっとして。

 そしてあの秋の夕立。

 桜色の傘、忘れた君に紺の傘を差し出して、いつもより手がふるえる相合い傘。妹とは気分の違う相合い傘。

 ……あんときはできひんかった相合い傘。

 肩突っつき合わせて、男女二人恥ずかしげに……、並んで歩いて家の前に来たとき……、今やと叫んだ恋心。

 今はもう、僕らの間にはチビがおる。

 二人であんとき色の傘持って、小さなこの子を守ってる。


「君が、好きやで」


 君はまた、小さく微笑んだ。

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