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彼は魔物としての人生を歩む  作者: 優
第一部 特異種
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第五話 黒いスライム .1

 グラノール国の冒険者ギルド本部内は騒然としていた。

新人冒険者用のダンジョン内部にて、特異種と思われる魔物の発見報告はギルドを混乱させるに十分な理由だった。


 あのダンジョンは、新人の登竜門とされている。

まずダンジョンに慣れる為にとギルドから斡旋していた程だ。新人の生存確率も9割強と高く内部調査もせずに安心しきっていた。

最近になって、三人の冒険者が帰ってこない事があったが、過去にも事例があり問題視せずに流したのであった。


 そして、事が起こった。

最初は、新人が恐怖のあまり普通の魔物をより大きな魔物へと見間違えた戯言だと一掃した。

だが、その次の日に帰ってきたアンリ達Bランク冒険者の証言も新人と一致した事から、最重要案件へと変わる。

新人三人に貴重なBランク冒険者を無謀にも特異種の出るダンジョンに向かう許可を出したのだ。ギルドの責任問題にまで発展してもおかしくなく、早急に対処しなければならない案件だ。


 ギルド本部内にある会議場に、アンリ達と新人三人、ギルドマスターに副マスターを含めた重鎮が数名が集まっていた。

ギルドのNo1,2が集まる重要な会議、新人達は居心地の悪そうに忙しなく周りを見渡している中、ギルドマスターが深く息を吐き本題へと入った。


「ギルドマスターの、グラムだ。今回起きたダンジョン内部での出来事を細かく報告してくれ」


 カーマは、今回の出来事を事細かく話し始めた。

ダンジョンへ向かった経緯、特異種であろうスライムの存在、魔物同士での共食い、そして鬼の様な魔物の事を。


「なるほど。Bランクの四人パーティで、苦戦する程の敵か……」


 グラムは逞しい腕で顎髭を触りながら考え込む。

冒険者にランクがあるように魔物にもランクが存在する。スライムといった比較的に弱い魔物が最低ランクであるF、アドルノルフといった災厄級の魔物はSSランクとなる。

Bランクの冒険者四人で困難となると、A~Sランク級の魔物に値し、討伐に相応しいランクの冒険者を集めなければならなくなる。

頭が痛くなる問題が起き、グランは唸り声を上げる。


「すいません。付け加える事があります」

「ブルームだったか?これ以上何か頭を悩ませる問題でもあるのか?」


 少し考え込み、ブルームは口を開いては閉じてを繰り返していた。

いうべきか言わないべきか、これを言えば自分が頭のおかしい人物だと思われるかもしれない。だが、言わずに犠牲者が出るのは耐え難い。

意を決して、ブルームは言葉を選ぶように話し始めた。


「鬼は、剣を使うと報告しましたが。剣をただ振り回すのではなく剣技を使っていたような気がしました。それも身に覚えのある剣技で……」

「魔物が物を考え、力のまま剣を振るうわけでは無かったのか。剣技を使う魔物……、何が起こっているんだ」

「自分にもわかりかねます。そしてもう一点、気になることが……。あの剣技には見覚えがありました」


 ブルームは身体の一部かの様に振るう見事な剣捌き、見惚れる程滑らかな重心移動、そして当てられた殺気やピリピリと張り詰めた空気感が似ていた。

そして極めつけはブルーム達を倒す程の力を持ちながらも実質的な被害は無しである事もグラムに伝えた。


「害があるのか無害なのか等どうでも良い。魔物は人間にとって脅威でしかない以上、様子を見る猶予は無い。被害が出る前に討伐を決行する」


 話は以上だと一方的に会話を打ち切り、グラムは席を立ち会議室を後にした。

残された七名の冒険者は各々で考え事をしていた。最後にブルームの発言が引っ掛かりを覚える。

だが、あの魔物は特異種。普通の魔物と同一と考える事自体が違うのだと考える事をやめアンリ達も会議室を出たのであった。



 アンリ達がダンジョンを脱出して一日が経過していた。

ユーリーはいまだにダンジョン内部に居た。このダンジョンは比較的に弱い魔物ばかり存在している。

自分の魔力の強さも微々たる魔力をいくら集めたところで打ち止めになってきたのを感じる。


『頃合い……か』


 時間的にも出現する魔物を考えても、頃合いだと感じたユーリーは溜め込んだ魔物の肉を一気に喰らい上へと目指していく。

次へ向かう場所は既に決まっている。飽くなく探究心を求める者達が集う国、マレフィント王国。


 ただ、暫くは身を隠す必要があるだろう。

ダンジョン内部でユーリーが居ないと分かれば捜索隊がユーリーの居所を探すだろう。

もし見つかれば逃げる以外の選択肢がない以上、身を隠せる森の中が妥当であろうと考えた。


 マレフィントの付近には研究者達が求める植物が生い茂った森がある。

その森の名は迷いの森と呼ばれ、その性質を知らぬ者が侵入すれば出る事は困難な森型のダンジョンが存在している。

一度訪れた事もあり、性質を熟知しているユーリーはそこへ一旦身を隠すことを選んだ。


 三階、二階と魔物と遭遇しながらも難なく倒し出口へと向かって歩き出す。

浅い階層程、魔物は弱く。一匹に掛ける時間は数秒で終わる中、次々と魔物を倒しながら先へと進んでいくと階段を発見する。


『あれは……一体』


 一階へ上がる階段の前、そこに蠢く一匹の黒いスライムが居た―――。

次の話は、別の日に投稿します。


続きが気になる方はブクマ等よろしくお願いいたします!



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