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彼は魔物としての人生を歩む  作者: 優
第一部 特異種
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第一話 特異種

 

 冒険者としての心得というものがある、仲間を決して裏切ってはならない。油断をしてはならない。そして恩人に敬意を。その三つである。

冒険者とは職業柄、荒くれものや自分の強さに慢心し無謀な戦いを挑むものが後を絶たない。そんな彼らに心得を教えたのはユーリーであった。


 今まで五段階あるD~Sランクの中でDやCランク相手に講習し教育を施してきたAランクのユーリーは最初二つの心得を唱えていた。

三つ目の心得は恩人であり師であるユーリーに対して弟子達が作ったものである―――。



 数多の冒険者が集い合う国、グラノール王国。

グラノール王国には冒険者本部があり、冒険者達へ依頼の斡旋をしている。

その冒険者達が集う、ギルド本部内である噂が流れていた。


「SランクとAランク冒険者が災厄に挑んで全滅したらしい」

「らしいな、ギルドは隠しにしてるが……、俺達のこれからが危ういかもしれんな」


 冒険者内に秘かに流れる噂。

その噂は徐々に広がりつつある、魔の王が生まれ魔物の活性化させている張本人、そして上位冒険者が倒すことが出来なかった相手であると。


「聞くにユーリーさんもそこに居たとか……」


 その噂の中にユーリーの名前もあった。

現在のBランク以下の冒険者にとってユーリーは厳しさもあり優しさもある有能な師であった。

ランクはAであるが、人助けを最優先する行為がSランクに上がる事が出来なかったというだけで実力は保証されていた。


 ユーリーの死を皆嘆き、冒険者としての心得、恩人に敬意を払う。

ユーリーが死んでも尚ダンジョンで新人の冒険者を見守るという意を込めて恩を受けた四人の冒険者達はパーティを組みユーリーが初めて攻略したダンジョンへと向かった。


 その行為に意味があるかは冒険者にとってどうでもよかった。

追悼の意を込めて行う、ユーリーが残した一本の剣をダンジョンの最奥へ納めようと考えたのであった。


 四人の冒険者、アンリ、カーマ、トゥーリー、ブルームの四人のBとCランクの冒険者は現在。

グラノール国から馬車を走らせて四時間の位置にある、ユーリーが発見した新人冒険者用のダンジョンに来ていた。


 そのダンジョンを目の前で、三人の新人と思わしき冒険者がダンジョン内から飛び出してくる。

三人の表情は恐怖に染まっており、アンリ達に気づく間もなく走り去っていった。


「なんだ彼奴ら……」

「逃げてきたんだろう、あれはもう冒険者として生きていくのは無理だな……」


 四人は新人の背中を見つめ昔を思い出していた。

アンリは、新人の時によく魔物を恐れていた、そんなアンリを冒険者として生きていく技術を教えたのがユーリーである。

そんな昔の出来事を腰に差したユーリーの剣を撫でながら思い出していた。


「アンリ、ユーリーさんの剣を無くすなよ?魔物に取られたら怒るからな」

「カーマは臆病だね、そんなへましないよー。初心者のダンジョンで遅れをとる私じゃないよ」

「それは心得に反してるぞ。初心者のダンジョンとはいえ油断せずに行こう」


 ただ、そのダンジョンに出現する魔物は、スライムやスケルトンやゾンビといった複数人で戦えば新人でも容易に倒せる魔物しか出てこない。

階層も十階と浅く、Bランクならば最奥まで行くのに二日もあれば行ける程のダンジョンだ。


 四人のパーティは前衛のカーマとブルーム。そして後衛支援にトゥーリー、回復役としてアンリが居るバランスの取れたパーティ。

油断せずにといった手前、バランスの取れた四人がいくらミスをしようとも負ける心配はほぼ皆無であろう。


「よし、行くか」


 手荷物の確認を終え、武具類の点検を終えた。

ダンジョンはその性質上、無限に近い魔物が生息している。いくら倒そうとも現れる魔物、そして毎回ダンジョンの内部構造も変わる以上、食料や予備の剣の準備を怠ってはならない。


 準備も終え、ダンジョンに足を踏み入れた四人は四方が石壁で作られた武骨な通路を歩いていく。

明かりはランタンとアンリが使う光魔法のみでマッピングしながら新調に迷わないよう奥へ奥へと進んでいく。


 奥へ行くと、魔物と遭遇する確率も増え、最初に現れたのは二匹のスライムであった。

半透明状の液体が波打ちながら転がって移動している、もう一体は液体には肉片が漂い黒く染まっていた事もあり魔物同士で争った後だと分かった。

スライムを倒すのは簡単だ、液状の体を構成する為の核、所謂心臓部分を破壊すれば倒すことが出来る。


「おかしいな。魔物同士で戦う事なんてあるのか?」

「聞いたことがない……気がする」


 魔物の食料とは空気中に漂う魔素である。

人間を襲う理由は魔素の吸収効率が良いと研究者が解明しているのだが、魔物同士では仲間意識からか分からないが争う事はないとされている。

だが、目の前にいるスライムは明らかにゾンビらしき魔物の身体の一部が液状の体内に浮いており捕食した後だと分かる。


「ダンジョン内部で何かやばい事が起こってるのかもしれない」

「取り合えず倒すか」


 セオリー通りに前衛二人が前に出てスライムの魔石である核を狙う。

半透明状のスライムは愚直に剣の間合いまで詰めると、その勢いのまま剣先で核を狙い突きを放つ。

カーマの腕前ならば、一発で核を壊すのは容易く、魔石は貫かれ体を保つことが出来ずにそのまま溶けるように液体へと変わり石畳を濡らした。


 二匹目の黒いスライムも同様にブルームが剣先をスライムへと向け狙いを定め刺突する。

だが、刺突しようと剣先を突き立てた時、通常のスライムでは考えられない動きをした。


 体の一部を触手のように伸ばし、ブルームの足に絡み突くと触手を縮め移動しブルームの足に張り付く。

あり得ない行動に一瞬戸惑いを見せるが、Bランクの冒険者であるブルームは数多の戦闘経験で引きはがさないと危険だと察知した。


 刃が足を傷つけるのも厭わず、黒いスライムの核を突くとずるずるとスライムは足から剥がれ落ち動かなくなる。

先ほどまでスライムが張り付いていた足の部分は防具が溶け露出した肌は焼け爛れていた。


「待っててブルーム、すぐ直すね」


 すぐさま駆け寄ってきたアンリが爛れた足に手を翳し淡い光が漏れ始めると徐々に治癒していく。


「特異種……」

「特異種?なんだそれは」

「最近ね、研究者が発表した事なんだけど。特定の条件を満たした魔物は特異種に変化するって聞いたの。通常では考えられないくらい強くなったり特殊な魔法を使う魔物もいるって」

「魔物の王の影響……なのかな。これはより気を引き締めなきゃいけないな。待っててくださいユーリーさん」


 新たな特異種の魔物を倒した四人は更に新人用のダンジョンではあり得ない怪我をした事で、より気を引き締めた。


 数分でブルームの怪我が治り、戦いに支障が無い程回復すると更に奥へと目指し四人はダンジョンを進み地下へと降りる階段を下ったのであった―――。

 次の話は、別の日に投稿します!

気になる方はブクマ等よろしくお願いいたします!

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