第8話
今日の護衛さん方は未だ息のかかっていない無口な護衛さん。交代し今からやってくるのはわたくしの元侍女メルリーなはずなのですが…。
遅いですね…。
いつもなら、たたた!っと可愛く階段を上がる音が聞こえてくるのですが…。どうしたのでしょう。心配です。
心配という思いを込めて歌を歌いましょう。こういう思いは歌に込めるといがいと伝わるものです。
クルクル回りながら歌います。
たまには、こうやって歌うのもいいですね。
舞踏会のようなワルツとか、そんな素敵なものではないですけれど、気持ちが楽しくなります。
伸びた髪が一緒に舞うのも、また楽しいのです。
た、た、た、
いつもよりゆっくり上がる階段の音。
いくつもの音が絡み合うような音。メルリー、何かあったのかもしれません。
ドアノブをひねる音がして回るのをやめ、止まろうとしたのですが…。
クルクル回るといきなりは止まれないのです。
足元がふらつき、くらっといき…………、ませんでした。どなたかが支えてくださったのです。
きっとメルリーでしょうと思い、目を開けると、そこにはわたくしを見つめる翠の瞳が…。銀色の髪色で翠の瞳の貴公子。
わたくしは知っています。
そう、彼は
「エドワード王国、サミュエル殿下。」