第9話
「サミュエル殿下が、なぜここに?」
そう、気がつく間に話していました。
エドワード王国は隣国の隣国で、
距離はあリますけれど、行けない距離ではない、だけどあんまり関わりがない、という、なんとも微妙な感じの王国なのです。
そしてサミュエル殿下は、エドワード王国皇太子殿下。
なぜ、あなたがここに?
「ここを通りかかったから、が正解だけれど、きっと君は私が なぜここを通ったのか? を知りたいのだろう?」
「はい。」
実際そうなのです。
この塔は城の中でも隠されているようにそびえ立つ塔なのです。
城に勤める者でも知っている方がいらっしゃるかどうか、なのになぜ貴方がここを通ったのかが知りたいのです。
「去年の今日、君と、目があった。といえばわかるだろうか?」
「去年の今日、目があった…。」
まさか、あのときわたくしの歌を聞いていたのが、サミュエル殿下だったというの?たしかに、この行事は各国から多くの方々が招かれていて、居てもおかしくないのだけれど。
「席を外してもらえるか?少し彼女と話がしたい。」
そう、殿下がつぶやくと一緒に塔に入って来ていた殿下の護衛が部屋をでていきます。
「メルリーも外してもらえるかしら?」
「承知しました。」
パタン、
最後の一人が出終わると、しーんと静かになります。
席を外させるなんてそうそうあることではございません。きっと、わたくしを幽閉した自国の皇太子に気を使ってくれているのでしょう。
「すこし、長い話をしようか。」
殿下の言葉は二人しかいない塔の一室によく響いた。