第二話「一日目」
朝。カーテンを閉め切った薄暗いアパートの一室で、布団に包まったまま動かない青年が一人いた。
青年の名前は柳沼純。
つい先月十九歳になったばかりの純は、最寄り駅から電車で一駅先にある大学へ通う大学一年生だ。
年が明けてから一週間ほど経過した今日は、冬季休業が終わり大学の講義が始まる日でもある。
つまり純は今日、朝から大学へ行かなければならないわけだが……。
「………………ぐぅ」
純はまだ夢の中だった。それも当然、純はつい四時間ほど前まで起きていたのだ。
年末年始、純は実にぐうたらな生活を送っていた。
去年のクリスマス前までバイトをしていて金にある程度余裕があったのも悪かった。金銭的余裕は純に精神的余裕を与えたのだ。
食料を買い込み、一日中引きこもってゲームをする日々。
腹が減ったら飯を食い、眠くなったら横になる。
いつ何をしても文句を言う者はいない。一人暮らしという環境が純を無敵にしていた。
そして今日も、大学へ行かずにぐうたらな一日を過ごす。
……はずだったのだが。
「………………ん?」
突如、室内に響く甲高い音。コンコン、コンコンと、継続的に発せられる。
「……な、なんだぁ……?」
純は目を覚ます。純はすぐに音の正体がドアを叩く音だと理解するが、この時間に訪問してくる者の心当たりなどない。
「……どうせ、宗教の勧誘か何かだろ」
そう決めつけ、純は再び眠りにつこうと目を閉じる。純はショートスリーパーではない。四時間睡眠じゃ足りないのだ。
しかし、純が目を閉じてもドアを叩く音が止む気配はなかった。それどころか、ドアを叩く音は激しさを増していたのだ。
「…………う、うるせえ……!」
純は体を起こし、玄関まで向かう。これ以上我慢できるわけがなかった。
(誰だか知らねえが、ここはガツンと言ってやる……!)
そう思い、純はドアスコープを覗くこともせずに勢いよくドアを開ける。
そして目の前にいる人物へ向かって、
「おい、さっきから――――」
純は文句を言おうとするが、相手の姿を確認して口ごもる。
「おう、やっと開けてくれたか。久しぶりだな、純」
「お、親父……!?」
純の目の前にいたのは、純の父親だった。
父親の名前は柳沼純一郎。
純一郎はロングコート羽織り、ポケットに手を突っ込んだまま純の方を見ている。純はそれなりに身長の高い方だが、父である純一郎は純よりも長身だった。
ボサついた髪に、そこそこ伸びた髭。
今年で五十歳になる純一郎だったが、顔に刻まれた皺は少なく、年齢のわりにはまだ若く見える。
純が高校生の頃から、年に数回くらいしか顔を見せることのなくなっていた純一郎。
そんな純一郎が朝っぱらから訪問して来た。
純が驚くのも無理はないが、純が本当に驚いたのは別にあった。
「なあ、親父。色々と言いたいことはあるけど、とりあえず……」
「とりあえず、何だ?」
「自首しよう。俺も警察署まで付いていくからさ」
純の目線の先。
純一郎の背後に隠れるよう二人寄り添う少年と少女。
純一郎は、純の知らない少年少女を連れていたのだ。
「ご……誤解だ誤解! この子たちはな、深い訳があって父さんが保護することになったんだ」
「深い訳があって保護、ねぇ……。物は言いようだな」
「本当に訳ありなんだ。話せば長くなる。とりあえず中に入れてくれないか? もちろんこの子たちもな」
「おいおい親父、見ず知らずの子供二人を連れ歩くだけでもマズイのに、部屋に連れ込んだらいよいよ犯罪じゃねーか?」
「この子たちを死なせないため、と言ったらどうする?」
「死なせないため……?」
いきなり物騒な言葉が飛び出し、怪訝な顔をする純。
「とにかく、入るぞ。この家は父さんの家でもあるんだからな」
「ちょっ……!」
困惑する純を気にも留めず、純一郎は二人の子供を引き連れ中へ入ろうとする。
「おっ、おい親父! そういや何で鍵使わなかったんだよ? チャイムも鳴らさずバンバンドア叩きやがって……」
「鍵は手元になかったんだ。急いでいたものでな。チャイムを鳴らさなかったのは、鳴らしても意味がないと思ったからだ。ここのアパートのチャイム、音が小さいだろ? 純が起きるとはとても思えん」
「だからってドア叩くなよ……。近所迷惑だろうが」
「両隣も下の階も空き部屋だ。何の問題もない」
「問題ないわけあるかよ!」
……これ以上騒がれても面倒だ。
そう思い、純は純一郎から事情を聞くためにも純一郎たちを部屋へと入れる。
「おいおい、随分散らかってるな。掃除してないのか?」
部屋に散乱した読みかけの雑誌や空のペットボトル、ゴミの入ったコンビニ袋などを見て純一郎が言う。
「今日掃除するつもりだったんだよ」
「ウソつけ。まあ、今は座れるスペースがあればいいさ」
足元のゴミを部屋の隅に寄せ、胡座をかいて座り込む純一郎。
「ほら、お前たちも座れ」
言われて、二人も座り込む。少年は正座で、少女は体育座りだった。
「さて、純もだいたい察してくれていると思うが、今から話すことは冗談抜きの真面目な話だ。ちゃんと聞いてくれ」
「ああ、わかってるよ」
たまに電話してくることはあっても、年に2~3回しか会いに来ない父。
その父が、事前に連絡も寄こさず唐突に見ず知らずの少年少女を連れてやって来た。
しかも、連れてきた少年と少女はどこか普通ではない。外見こそどこにでもいる十代の子供といった感じだが、どうも様子がおかしい。
(この二人、どこ見てるんだ……?)
純が純一郎と向き合って座る中、少年と少女は部屋の隅の方を見ていた。そこに何か面白いものが飾ってあるわけでもない。特に何もないのだ。
それでも表情を一切変えることなく、二人は部屋の隅を見つめ続ける。まるで、そこに何かあるかのように。
「純? やっぱりこの二人が気になるか」
二人の様子に気を取られていた純に、純一郎が話しかける。
「えっ? ……そりゃ、気になるよ。この二人は一体何者なんだよ? 二人の親は……」
「親はいない」
「いないって……」
「そういうことだ、察しろ」
「……………………」
少ない言葉で済ませようとする純一郎の、いつになく深刻な表情を見て純は察する。
少年と少女がすぐ近くにいる手前、これ以上二人の親について追求するわけにもいかない。
(あれ……?)
ここで純は、あることに気づく。
純が二人の親について聞いた時、純一郎は「親はいない」と答えた。
それぞれの親がいないと捉えることもできるが、そもそも二人が兄妹で二人の親が同一人物だという可能性もある。
「……待てよ。この二人って、兄妹なのか?」
「ああ、そういえば言ってなかったが、この二人は双子の兄妹なんだ」
「双子!? い、言われてみれば、似てるような……」
少年と少女は双子の兄妹だった。
さらっとして柔らかそうな栗毛色の髪。兄の方は短髪で、妹の方は髪を肩の辺りまで伸ばしてリボンをつけていた。
綺麗な澄んだ瞳に整った顔立ちは、無表情さも相まって人形のように見える。
兄も妹もモコモコとしたダウンジャケットを着ているが、それでも華奢な体付きをしているとわかる。
まだ幼く、どこか透明感のある双子の兄妹。
純は双子の年齢を予想する。だいたい、十歳くらいだろう。
「えっと……」
純はその予想が当たっているのか確かめるべく、双子に年齢を訊こうとするが、
「……親父。二人の名前は?」
名前を知らずとも、年齢を訊くことは可能だ。むしろ本人に年齢も名前もまとめて訊いてしまえば済む話ではある。
しかし、純はそうしなかった。何となく、双子に訊くよりも純一郎に訊いた方が早く済むと純は思ったのだ。
「二人の名前か。それはだな……」
ただ名前を言うだけなのに、考え込むような素振りを見せる純一郎。
腕を組み、しばらくうつむいた後、
「忘れた」
と純一郎は答えた。
「は? 忘れた?」
「そう、忘れたんだ。一度、双子の個人情報が書かれた書類に目を通したことはあるんだがな。一回見ただけじゃ覚えられん」
「名前も知らない双子の兄妹を連れ回してるのかよ、親父は」
「そう言われてもな。この子たちに聞いても名前を答えてくれないんだ。そして二人を名前で呼ぶ者も近くいない」
「じゃあ、親父は二人のことを『お前』だとか、二人称代名詞でしか呼ばないって言うのかよ」
「そうするしかないだろ? 勝手に名前を付けるわけにもいかない」
「それはそうだけど、何かこう、他にもっとマシな呼び方があると思うんだ」
「例えば、なんだ? 言ってみろ」
「それ、は……」
文句を言っておきながら、特に何も思い付いていなかった純は、黙り込んでしまう。
もう、なんでもいい。とにかく意見を出してやる。これで何も思い付きませんでしたじゃ、格好がつかない。
「ふ、ふた……」
「ふた?」
「双子兄と、双子妹ってのはどうだ……!? ただ『双子の兄の方』だとか、『双子の妹の方』って呼ぶよりは短くていいだろ?」
「ま、まあそうだが……。我が息子ながらつまらないセンスだな。そのまんまじゃないか」
「つまらないセンスで悪かったな……。とにかく、この二人が双子の兄妹で名前が不明ってのはわかった」
そして恐らく、両親とは死別していることも。純にとってはその一点が一番強く印象に残った。
「で、何で親父がこの双子を連れて俺のところまで来たのか。この双子がどういった存在なのか。それについてこれから話してくれるんだよな?」
「ああ、話す。まず、俺の言った言葉で純も気になっただろうと思うが……」
「この子たちを死なせないためってやつか」
「そうだ。それを聞いて、純は何を思った?」
「訳がわからないと思ったよ。俺の部屋に入ったら治る病にでも罹っているわけじゃないんだろ?」
「当たり前だ。そんな病あってたまるか。……そうだな、死なせないってのは少し大げさな言い方だったかもしれない。やつらも別に、殺すつもりではないからな」
「やつら……?」
純と純一郎が話している間も、双子は揃いも揃ってあらぬ方向を見つめていた。純たちの会話の内容を気にする素振りも一切見せず、置物のように動かない。
「なんだよ、やつらって……。もしかして、双子は何者かに追われているのか?」
「その通りだ。双子はとある組織に狙われている。だから、この部屋に匿う必要があった」
「狙われているって、何でこんな子供二人が狙われてるんだよ? 知ってはならない秘密を知ってしまったからとかか?」
「そういうわけじゃない。双子が狙われるのは、双子それ自体に価値があるからだ」
「価値って……」
「純。もし、この双子に世界の法則を変え得る力があると言ったら、お前は信じるか?」
「え……?」
純一郎の口から飛び出した突拍子もない言葉に、純は戸惑う。
世界の法則を変え得る力……?
何だ、それは。あまりにも抽象的な上に、双子とその力がどう繋がるのかわからない。
「信じるも何も、何を言っているのか意味不明だよ」
「だろうな。けどお前なら、信じてくれるはずだ。能力者の母を持つ、お前ならな」
「………………………っ!」
母という言葉を聞き、純の表情が強張る。
純と純一郎の間では、一年に一回墓参りをする時にしか母のことを話題に出さなかった。母の死について話すことを純が強く恐れていたからだ。
なぜ、純は母の死について話すことを恐れていたのか。
それは十年前。純の母であり、純一郎の妻である柳沼佳苗の死に絶望した純一郎が、一時期人が変わったようになったことがあったからだ。
……いつも優しくて大好きだった父親の見せた、無関心で冷たい眼差し。
幸せで、温かくて。いつまでもこんな日々が続くと思っていたのに――。
母が死んでから、父は父ではない何か別のモノになったのだと純は思った。
母の死を起因とする周囲の変化は、当時九歳だった純にとってあまりにも過酷でショックの大きすぎるものだったのだ。
今でこそ父である純一郎は元の父らしい調子を取り戻しているが、それがいつ変化してしまうかわからない。
ふとしたきっかけで、妻の死による悲しみを強く思い出してしまうかもしれない。
だから純は、純一郎の前で母の話をしないようにしてきた。
けれど、純一郎から母の話を振られたら、だんまりを決め込むわけにもいかない。
「……母さんと同じ、能力者なのか……?」
「そうだ。この双子は能力者だ。それこそ、世界の法則を変えてしまうほどのな」
純は双子へと視線を向ける。
この、何を考えているのかまるでわからない二人が能力者? 世界の法則を変え得るほどの? 信じられない。
「えっと……。とにかく、この双子は能力者だからどこぞの組織に狙われている。親父はそんな双子を組織から守っている。そういうことなのか?」
「そういうことだ。もし組織に捕まれば、双子は死ぬまで利用され続けるだろうな。父さんは、それを阻止しなきゃならない。どうしても成し遂げなければならない、ある目的のためにな」
「目的って何だよ?」
「今は教えられない。だが、近いうちにお前にもちゃんと話そうと思う」
「近いうちって……」
「悪いが父さんは、超多忙なんだ。今からすぐにここを離れてやらなきゃいけないことがある」
そう言って純一郎は立ち上がり、左手につけた腕時計の示す時刻をチェックする。
「三日間だ」
「はぁ?」
「今日から三日間、双子をこの家で預かってほしい。事情がわかったなら言うまでもないと思うが、くれぐれも双子を外に出すなよ?」
「おい、親父……? それってつまり、三日間俺にこの双子の面倒を見ろってことか?」
「そうだ」
「………………」
いきなり見ず知らずの子供を連れてやって来た父。きっと面倒事を押し付けられるんだろうなと、純はある程度は予想していた。
しかし、まさか三日間とは……。
半日でも一日でもなく三日間。修学旅行かよ。
「……あのな、親父。俺、大学生。今日から講義、始まる。わかる?」
「どうせサボりまくってるんだろ。三日間くらい問題ない」
「ぐっ……!」
図星だった。そもそも今日もサボる気だった純に反論の余地はない。
「悪いが、お前にしか頼めないんだ、純。どうか、この双子を頼む」
「そ、そりゃ、事情を知った以上追い返す気もないけどさ。双子兄ならともかく、双子妹は……ほら、女の子だろ?」
「そうだな」
「見たところ着替えとか生活用品も持ってないみたいだけど、俺は女じゃないからどんなもの買えばいいかわからねーぞ?」
「ああ、それなら安心しろ。俺だって十二歳の女の子の世話をお前に全て任せるほどデリカシーのない男じゃない」
純はここで初めて双子の年齢を知る。十二歳。双子は小学六年生だろうか?
「安心しろって、何か用意してあるのかよ」
「この家に女の助っ人も呼んであるんだ。今日の昼頃には来てくれるはずだ。もちろん、お前も知ってる女性だ」
「俺も知ってる……?」
「とにかく、頼んだぞ! どんなに遅くても三日後にはまたここへ来る。じゃあな!」
「ちょっ……!」
話しながら玄関のドアを開け、純一郎は去っていく。
「親父のヤツ、急に来たかと思えば、もう去って行きやがった」
しかもただ去って行っただけでなく、双子を置いて。
去って行く純一郎の後ろ姿が見えなくなったところでドアを閉め、双子のいる部屋へと戻る純。
「さて、どうすっかな……」
純はこれまでの情報を整理する。
まず、双子は凄い能力を持っていて、その能力のせいでとある組織に狙われていること。
親父は双子をその組織から守っていて、三日間俺の家に双子を匿う気だということ。
(それにしても、女の助っ人も来るって……。何勝手に呼んでるんだよ、親父……!)
純一郎は純も知っている女性が助っ人だと言っていた。
(俺が知っていて、親父とも関わりのある人物か……)
純にその人物の心当たりはあった。
けれど、確信はできない。もう、五年ほどまともに会ってない。そんな人物が来てくれると純には思えなかった。
(何にせよ、双子の面倒は見てやらないとな)
なぜ、素直にそう思えたのか。この時の純にはまだはっきりとわからなかった。
ただ、一つ言えること。それは、双子の支えにはなってやりたいということだった。
(二人とも、何を考えているのかサッパリわからないし、自分たちがどんな状況にいるのかもわかってなさそうだけど――)
感情らしい感情を未だ見せない双子の兄妹。無表情で、一見落ち着いて見える二人だが、
(両親を失って、よくわからない周囲の事情に振り回されて、平気なわけがないんだ……)
何より、純自身も似たような経験をしているから――。
似たような境遇の者を見て、放っておけるわけがなかった。
「……話を聞いてただろうからだいたいわかると思うけど、今日から三日間よろしく頼むな」
純は双子に向かって話しかけるが、返事はない。
双子兄も双子妹も、座り込んだまま部屋の隅を見つめている。
「えっと、この部屋、寒くないよな? 暖房効いてるから大丈夫だとは思うけど……」
相変わらず返事はないが、双子はようやく純の方を見て微かに頷く。
(よ、良かった……。日本語はわかるみたいだな!)
この調子でどんどんコミュニケーションを取ろう。今の純は前向きだった。
「腹、減ってないよな? 腹が減ったり、寒かったりしたらちゃんと自己主張してくれよ? 何か言ってくれなきゃ、何も出来ないからな」
返事はない。それどころか、頷きもしてくれない。
(振り出しに戻っちまった……。さっきから表情も変わら……って、あれ?)
ここで純は気づく。双子の表情が少し変化していることに。双子は二人とも、何かに耐えるような表情をしていたのだ。
よく見てみると、体も少し震えている。額に汗もかいている。顔もほんのりと赤くなっていて、どこか体調が悪いように見える。
(まさか、風邪でも引いたのか? ただ暖房が暑すぎるってわけではないよな……?)
そんなことを考えている間にも、双子の様子は変わっていく。
さっきまで置物のように動かなかったのに、そわそわと落ち着かない素振りを見せているのだ。
「ど、どうした……!? 体調でも悪いのかよ?」
双子は揃ってぷるぷると首を横に振る。体調が悪いわけではないらしい。
「でも、ただならぬ様子って感じだぜ……? 一体、どうし――」
「お、おしっこ……」
と、双子は同時に言った。消え入りそうな小さな声で。純が初めて双子の声を聞いた瞬間だった。
純が初めて聞いた双子の言葉は「お、おしっこ……」だった。
「おしっこって、おしっこしたいならおしっこしろよ馬鹿!」
「トイレ、どこ……?」
「見てわかるだろ、すぐそこだっ!!」
立ち上がり、今にも漏らしてしまいそうなのを必死に我慢している双子妹が先にトイレへと駆け込む。
双子兄は、苦しそうに身を捩らせながら双子妹がトイレを終えるのを待っていた。
「ど、どういうこっちゃ……」
これでは先が思いやられると、純はため息をつく。
十二歳の少年と少女が、トイレへ行きたいと主張もできないのか?
「そうだ、きっと遠慮深いだけなんだ……。そういうことにしておこう」
こうして柳沼純と双子の共同生活が始まった。