表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/41

第一話「双子」

 一月上旬の深夜二時過ぎ。

 肌を刺すような寒さの中、ひとけのない路地を歩く三人がいた。

 

 一番前を歩くのは社会人と思しき大人の女。

 年齢は二十代後半といったところだろうか。黒のスーツの上にコートを羽織っている。

 

 何より目を引くのは、着ている服ではなくその身体的特徴だ。

 肩まで届く長さの金色の頭髪に、碧い瞳。

 どうやらこの女は東洋人ではなく、西洋人らしい。

 

「少々予定よりも遅くなってしまいましたが、無事に双子を回収できました」


 金髪の女はスマートフォンで誰かと通話をしながら歩いていた。

 通話しながらも時々振り返っては、後ろを歩く二人の姿を確認する。

 

「………………」

「………………」


 何も言わず、金髪の女を見る二人。

 後ろを歩く二人はまだ幼い少年と少女だった。二人が小学生と中学生のどちらに見えるかと問われれば、小学生と答える者の方が多いだろう。

 そんな二人の関係は双子の兄妹。金髪の女が言っていた双子とは二人のことだ。

 

 二人は白い息を吐きながら、ゆっくりと歩み続ける。


「しかし、純一郎……。本当に、後は任せてしまってもよろしいのですか? 双子を匿う当てはあるのですか?」

『安心しろ、ナターリア。当てならある。後は俺に任せておけ。本当に、よくやってくれた』


 金髪の女――ナターリアは、安心しろと言われながらも不安げな表情を隠しきれない。

 だが、通話相手には当然その表情はわからない。

 

『とにかく、当初の予定通りあの場所まで来てくれ。それからは俺が一人で双子を連れて行く。その後ナターリアはしばらく休んでいていいぞ』

「わかりました。あの場所、ですね。……それにしても」

『それにしても、なんだ?』

「何か、妙なんですよね……。双子を狙う組織は一つではなかったんです」

『一つではない?』

「はい。双子を狙う組織は『違法点』の他にも存在するように見えました。それも、一つや二つじゃありません」


 ナターリアの言葉に何か心当たりがあるのか、通話相手はわずかな沈黙の後、


『……様子を見たほうが良さそうだな。引き続き、情報収集の方も頼む。くれぐれも、安全第一にな。こちらも情報が入ったらすぐ連絡する。以上だ』

「了解しました。では、失礼します」


 通話を終了したナターリアは、立ち止まってすぐに双子へと向き直る。

 

「後三十分ほど歩くことになりますが、体調は大丈夫ですか?」

「………………」

「………………」


 双子は黙ったまま、ナターリアの背後にある電信柱を見ていた。

 

「……大丈夫、ということで良いのでしょうか」


 困惑しながらも、ナターリアは再び前へと進む。

 深い夜の静寂に響く双子の足音を聞きながら、目的地へと急いで向かう。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ