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きっとこの気持ちは彼方まで  作者: 桃ヶ谷悠
第三章 集縁
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第19話 紅白戦(中盤)

 紅白戦二回戦



 チーム分けの結果、紅チームが俺・聡・美桜、白チームが彰人・空音・瀧宮さんとなった。


「じゃあルールはさっきと変わらず、互いのチームで投げ合いバッティングを競う。その際守備は配置しないが、キャッチャーの場所はバッティングネットを置く。点数はフォアボールが1点、内野ゴロは1アウトになるけど1点、外野ゴロは2点、ホームランは3点、あと瀧宮は初心者だからボールが前に飛んだら全て3点な。紅白戦は5回までとして、5回の裏終了時に同点であればサドンデスで決めよう。これでいいか?」


 彰人が皆に問いかける。

 すると一人渋い顔している人物に気が付く。

「どうした聡?何か納得いかないところがあるなら気にせず言えよ?」

「うーん、そのなんだ・・・確かに今回のチーム分けは3人ずつに分けられて一見公平に見えるけど、力量のバランスがちょっとこっち不利じゃないか?」

 言われれば、白チームは初心者の瀧宮さんがいるにしても、野球経験者の天才が二人。紅チームは全くの初心者はいないものの、白チームに比べて劣っているのを感じた。


「そうだな、じゃあこうしよう。野球経験者の俺・蒼太・空音の得る点数は半分にする。それと俺自身も120kmくらいに球速を抑える、これでどうだ?」

「そうれくらいならいい感じの試合になりそうだな。いいぜ!それとこっちが勝ったら彰人の家でパーティーだから忘れるなよ!」

「望むところだ」

「よーしそれじゃあ二回戦はじめよー!」

「そうだね」

「が、がんばります・・・」

「うぬ!!」

「やるか!」

 こうして1回の表、じゃんけんの結果、紅チームが先行でゲームが始まる。


 試合が始まるまで俺たちは自軍のベンチで作戦会議をしていた。

「今回はバッティングだけだから特にサインとか決めないけど、できる範囲で作戦を考えていこうと思う」

「そうだな。この勝負、まず相手チームで誰を一番注意しなければいけないか・・・・わかってるな、お前ら」

 聡が俺と美桜に問う。すると、

「私の事か!!」

「相手チームだっつってんだろ!!!てかこっちだとしても美桜はありえねぇよ!!」

「なにおー!!私より注意しないといけない人がいるなら言ってみなさいよー!この馬鹿アフロ!!」

「馬鹿はお前だろ!!大体お前は———」

「ふごっっつ!!」

「ぶへぇぁ!!!」

 俺は二人を制止するためチョップとビンタをした。

「お前らの声でか過ぎなんだよ!もっとトーン落として話せ!」

「いだい~」

「なんで俺はビンタなんだよ・・・」

「ちょっとアフロに手を入れるのは、な」

「なんもねーよ!!」


 3人で騒いでいると彰人がやってきた。

「ほら3馬鹿チーム、もう試合始めるぞー」

「3ばっ・・!!」

 彰人の発言を撤回させようと思ったが、相手チームのメンバーを確認して言葉が詰まる。


「わかったよ・・・じゃあ聡、行って来いよ」

「おう!一発でかいの決めてくるぜ!」



 碌な作戦も考えられずに試合は始まった。


 聡がバッターボックスの横で素振りをしている隙に、美桜と話し合って打順を決めた。結果、俺ら3馬鹿チームの打順は聡・美桜・俺の順に決まった。

(正直全員要注意だが、一番は何といっても彰人だろう。投手としても打者としても脅威になる。次いでオールラウンドプレーヤーの空音、当たれば3点の瀧宮さんの順に注意していこう)


 聡は素振りを何度か済ませると、バッターボックスに入った。

「バッチコーーーイ!!」

 バットを長く持ち、彰人を迎え撃つ。


 彰人は大きく構え、第一球を投げる。ボールは真っ直ぐストライクゾーンど真中目がけて進む。


(もらったっっ!!)

 聡は初球からフルスイングでバットを振り抜く。


 キンッ!


 金属音が響き、ボールの飛んだ先を追う。しかし前方のどこにもボールは飛んでいないようだった。

 見ればボールは後方、バッティングネットの中に収まっていた。

「っち・・・もうちょい上か」

 どうやらボールの下の方を掠らせたようだった。

 

 聡は次の球に備えて再びバット構え直す。しかし———

「アウトーーーーーー!!」

「って、うええええええええ!?」

 聡が優未の発言に吃驚する。

「待って待って優未ちゃん!今バットにボールが当たったの聞こえたよね?」

「うむ」

「あれれー?ならファウルの判定だと思ったんだけどな―?」

「うむ?」

「あーなるほどなるほど・・・優未ちゃん、よく聞いてね。一人当たり3球空振りないし、ストライクゾーンに3球入る、またはボールが前に飛んだら交代なんだよ。今回はバットにボールが当たったけど、ファウルと言って・・・」

「ふぁうる・・・?ようわからんのう」

「えーとね、もう少し詳しく説明すると・・・・」


 聡が優未に解説しようとすると、彰人がマウンドから声をかける。

「で、優未、判定はどっちなんだ」

「む~~~・・・とりあえずアウトにしようかの!!」

「っておい!!」

 聡は反論しようとした。しかし、

「聡、優未の決定は絶対だ」

「んな、無茶苦茶な・・・」

 何も言い返せず、たった一球で聡はベンチに戻った。



 その後の再会された試合展開は、どうにか大きなトラブルなく進んだ。


 最初に注意していたように、彰人は脅威となっていたが、ハンデのおかげもありいい勝負展開で5回の最終回を迎える。

 そして先攻の俺達はこの回計4点を得て、21対18の3点リードのまま最終回の攻撃を終えた。

「なんとかここまでこれたがリードは3点のみ・・・蒼太あとは頼むぞ」

「まかせとけ」


 5回の裏。

 彰人と空音にも少しだけ疲れが出たのか、長打を打つ回数も減り、瀧宮さんもボールに当てることは殆どなくなってしまった。

(このまま勝ってしまっていいんだろうか・・・瀧宮さんに楽しんでもらいたいが、ベンチにいる聡の視線が必死で怖い・・・瀧宮さんには試合が終わってからでも何か他の方法で楽しんでもらおうかな)


 

 白チームも順当に打っていき2アウトで21対20.5。

 0.5点差で迎える打者は彰人。


 紅白戦もいよいよ終盤に差し掛かった。

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