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プロローグ
部屋の空気がスーッと冷たくなった。
窓が凍りつき、天井の照明も輝きを失った。
あたり一面に魔法陣のような紋章が浮かび上がり、青く光っている。
暗くなった部屋には発煙性物質がたちこめ、その中に身もだえした黒い影が悲痛の声を上げた。
それに呼応するように、あちこちからこの世のものとは思われない無数の叫び声が聞こえる。
硝酸の煙が何かの形を取り始めた。
そこから細い煙が何本ものび、蜘蛛の足のように空気をかきむしりながら周囲の様子を探っている。
と、突然、その動きがけいれんしたみたいに止まった。
階段に通じるドアが大きく内側にたわみ、それは、目に見えない何かが出現しつつあることを告げているようだった。