第5話 マジックバッグが魅力的
隣の芝生は青い
やっと、僕の服と鎧が乾いたので、……
や、やだ。
やめて!
ぼく、一人でで……
「お姉さんが着せてあげるに決まってるにゃ――――」
……きなかった。
ソルお姉ちゃんが絶叫と共に、僕に襲いかかってきた。
あの……近所迷惑と言う……うん、誰もいないですね。
森の中ですもんね。
ちなみに、心の中では感謝していた。
何故かって?
うん、服は着れるんだよ。
でもね、鎧って、どう着たらいいの?
さっき、ポイントで換装した時は、自動的に装備されてたからね。
隠者の革鎧って、名前地味だけど、かっこいい鎧なのだ。
かっこいいということは、イコール、どう着ていいか分からないような作りをしているってこと。
なので、突撃されてなかったら、多分、
『お姉ちゃん、ぼく、この鎧の着方分からないよお』
って泣きべそかいてたと思う。
そんなことを考えていたら、鎧の装備までが終わった。
一気に事が済み、
「ソルお姉ちゃん、着せてくれてありがとう」
「しまったにゃーー」
はにかみながらお礼を言ったら、悔しがられた。
この感じ、どうも僕がさっき考えたことにソルフェリノも気付いたのだろう。
やーい、あわてんぼさんめ。助かったよ。
脇に置いてあったマジックポーチを腰に装着する。
「準備整ったよ」
「え?それだけでおっけーかにゃ?」
「うん」
「荷物って、それだけかにゃ?」
「そーだよ?」
僕のことをじろじろを見てくるソルお姉ちゃん。
やだ、恥ずかしい。って、この流れはもういいかな?
でも、その視線に若干の邪悪を感じる。
やだ、嫌な予感。
「なんだか匂うにゃ」
「僕、まだ……さっきの……臭い……のこって……る?」
「……そっちじゃないにゃ!荷物、少なすぎじゃないかにゃ?って方!手ぶらでこの世界生きていこうなんて、ほんと、アンリって常識……」
「ち、ちがうよ!ソルお姉ちゃん!違うから!」
僕に、強い口調と常識なしという言葉は、そのままあの事象に直結しちゃう。
僕に効いちゃうから、ほんと、やめて。もう危ないです。
だから、さっさと白状しちゃいます。あの事象になるよりかはよっぽどいいのです。
「なんだにゃ?」
「このマジックポーチなんです」
「その、何にも入りそうにない、単なる装飾っぽいそれがどうしたかにゃ?」
「アイテム鑑定って出来ますよね?」
「もちのろん、得意分野に決まってるにゃ」
「なら、見てみて、お姉ちゃん」
ソルフェリノの賢者レベルは10。
この世界では最高レベルだ。
なので、彼女に判らないことは誰にも判らなくなる……。
頼む!成功してくれ。
「ぬー、むー、うー、……ちーん。うん、判っちゃったかも、お姉ちゃん」
「どきどき」
「えっとねー、『まじっくばっく・特、容量無制限。ただし、生物不可、セキュリティ機能付き』って出たけど、……どゆこと?あんりきゅんわかる?」
おー!良かった。正確な鑑定結果出た。
賢者技能で、キャラクターではないアイテムなら問題なく鑑定できる。と言うか、鑑定って概念自体はこの世界に問題なく存在した!(って、当たり前)
「うん、簡単に言うと、何でも入っちゃう袋ってこと」
「簡単に言うんだね……これって、常識ひっくり返さないかにゃ?」
「でも、べんりだよね」
「うん、これが流通したら、旅がものすごく楽になるにゃ」
「だって、一人旅で野営道具って持ち運べないよね?」
「確かに、だから冒険者はパーティー組んで、馬車を買って、……ってサクセスストーリーを進むしかないにゃね」
おおー、これぞ、ど●●●、古典ファンタジーゲームの世界観そのものだ。
いまじゃ、骨董にしかならない。
「それって、選択肢がないってことですよね」
「うーん、そういうことになるかにゃ?」
そして、成り上がり方が決まってしまう……つまり、自由度がなくなる。それは、今の価値観では、駄作になってしまうのだ。だって、こういう道しかないって提示されると、反抗したくなるでしょ?
自分らしさがどうとか、他の人とは違う何かがーって。
なのに、できない、と言うか、そうしないと成り立たないってなると、そっぽ向いちゃうじゃない。
何でもできる。というのが、今のトレンドだよね。
「ぼくは、いろんなことをできるようにしたいんです。だから、一人でだって冒険できるような補助となる、このマジックバッグは、少しずつ広まった方がいいかなって、思った……んだ、けど」
「あんりきゅーん、えらいぞー☆。そういうことなら、ソルお姉ちゃんだって賛成-。同じ型しかないって、面白くない!うん。ソルはね、面白くないことは嫌いなんだよ~。楽しくしなくちゃね!」
「いいの?お姉ちゃん?本当に、これって世界変わっちゃうよ?」
「おっけーおっけー。でもねー……」
ソルフェリノは、賛成してくれた。
ホッとする。
便利になることはいいことだ。
……最初のうちは、便利になんかならないんだけどね。
まずは、マジックバッグの値段が、商人を中心に沸騰するだろう。
そして、次に裏世界の者たちが躍起になって手に入れるだろう。
マジックバッグだけだと、密輸、裏取引、あらゆる非合法な取引に悪用される。
誰にもばれずに堂々と、空手でやれちゃうのだ。
さすがに、生物不可なので最後の一線は越えられない。
って、ソルお姉ちゃん、なんか、嫌な雰囲気を出してたような。
「でもねー、そんな便利なもの、アンリだけが持ってるっておかしくない?」
「えー?」
「わ・た・し・が、お姉ちゃんです!こういうものはお姉ちゃんが預かるべきなのです!!」
やばい!
やっぱりそういう方向になったか!
そりゃそうだよね。
誰だってほしいよね。
そして、お姉ちゃんに勝てる弟っていないよね。
でも、だ!
ここで負ける訳にはいかない。
「なので、北の遺跡行きましょう!!」
「はい?」
「北の遺跡に、きっと、マジックバックがあります!」
「ほんと~~?」
「多分、本当ですから!なかったら、その時僕の持ってるこのマジックポーチ渡しますんで!」
「約束だよ~~」
「でも、僕の持ち物、一緒に預けちゃうことになっちゃうけど、ねこばば、しないよね?」
こういう時は、上目遣い。
不安そうに語りながら。
ほんと、確認しとかないと、本当に全部奪われたら、ぼく、生きていけないよ?
「だ、だいじょーぶ、だ、よーーー」
え?どうして明後日の方向を見るの?
どうして声が上ずってるの?
ちょ、ちょ、ちょっとーーー
本気で、僕の持ち物奪おうとしてたとか、言わないよね?
『5ポイントを消費して、北の遺跡の宝箱からドロップするアイテムをマジックバッグ・中(ポーチ型・生物不可・能力:中の上(家1軒分ぐらいの収納能力あり)・セキュリティーなし)に固定しますか?Y/N』
えーと、いずれ『はい』にするんだけど、今はキャンセルしておく。
だって、僕たちがその遺跡に到着する前に誰かがその遺跡の銀箱を開けたら、マジッグバックを持ってかれちゃうじゃないか。それってポイントの払い損になっちゃうからね。
それに、こんなもの、ソルフェリノお姉ちゃんじゃないと安心して渡せない。
お姉ちゃんなら間違っても、悪用はしない……よね?
たぶん、しないと思うから。
……他の遺跡から出てくる、ランダムアクセスの結果についてはどうなのかって?
それは気にしないデスヨ。
だって、それに関してはこの世界の意志だから。
出なきゃ、出ないだし、ポコポコ出るのなら、そうなんだろう。
いつの間にか、マジックバッグがやや高いけど、それなりに普遍的に存在している世界になると、便利になるよね。
その分、何らかの抑止策も同時に出てたらいいな。
<マジックバックの悪用に関する抑止策についての検索結果>
・負の称号を持つ者に対して使用禁止
・禁止薬物等の拒絶
・マジッグバックの検査装置の普及
・ライセンス制の導入
・中央管理システム化
・悪人そのものを根絶する
何かルールを決めたら、その穴を狙ってくるのが悪人の習性なんだよなあ。
検査装置も、それを国単位で悪用しそうな気がする。
最後の、悪人そのものを根絶するは、1週目の神様影響完全排除と同じ発想だね。うん、ディストピアになっちゃう。管理社会には、魅力はない。
ここまでお読みくださり、ありがとうございます……なのですが、
この先の展開に詰まっております。
次回、アンリとソルっち、ダンジョンに行く。
なのですが、
申し訳ございませんが、次の投稿は未定とさせてください。
想定以上に難敵でした。
うまく書けたら投稿します。
当面は本筋優先といたします。
11/13追記
難敵すぎて、ダンジョンに行けませんでした。
その前に準備をしないとね。
と言うことで、精霊魔法使いとしてやっておくべきことにスポットを当てたら、
何だか文章が出てきました。
えっと、次回はソルっちが使役する精霊についてスポットを当てます。
どんな精霊が出てくるか、書いてて自分が一番驚きました。
書き続けてさえいれば、どこからか光明が差してくることもあるのですね。
次話投稿は、11/16(木)の夜といたします。