第1話 今度はきっちり制度設計を
これまでのあれこれにつきましては、
『ゲーム世界に転生したと思って好き勝手したら破滅した』
を参照ください。
4話完結ですので、さらっとお読み頂けるかと。
(本作品とは違う意味で灰汁が強いのですが……)
「おお、勇者よ、またまた死んでしまうとは情けない……のぢゃ」
むかっむかっとした。
ここは、この世ではないどこかだ。
それぐらいは当然知ってる。
だって、リセットしたんだもの。
全く同じ白髪のおじいちゃんがいる。
だから、俺は勇者ではない。
あなた、神様だよね?教会の神父じゃないよね!
「ほっほっほ、言ってみたかっただけぢゃ」
だから、冗談好きだな、このじじい。
「でぢゃ、面白かったかの?」
唐突に、聞かれた。
「面白いわけあるかーーーー」
即座に否定すると肯定された。
「ぢゃな」
俺がリセットを掛けた世界では、人の命なんて……
って、もういっか?この下り。
「うむ、そろそろ苦しくなってきたのぢゃよ」
「そうだな!」
「つーか、ゲーム世界じゃなかったのかよ?」
「ゲームの様にするとは言ったが、あくまでお前さん限定じゃったからの」
「おかげでいきなり殺されかけたんですけど!」
文句を言わないと気が済まない。
「手を抜きすぎなんだよ、あんた」
「だってのう、こんなことをするの、わし、初めてじゃったからのう。勝手が分からんで」
「にしちゃ、ミッションとか、ボーナスポイントシステムとか、その中でも特に特売とか、ネタ満載だったんだが」
いろいろと足りないものばかりだったのだが、きらりと光るものだってあったのだ。
「実はわし、お前さんが元いた世界のオブサーバーじゃからのう。見てはおったのじゃ。じゃから、その中から面白そうなもんをやっては見たんじゃがのう。付け焼刃じゃと、なかなかうまくはいかんのじゃ。……そう言ってくれると嬉しいのじゃ」
え?現代世界にも見識あるんだ。
「つーても、わし、こっちの世界の神様じゃから、ついていけんことも多いのじゃよ」
魔法とかがバリバリあるファンタジー世界と、科学技術バリバリの現実世界じゃ、確かに相容れないよなあ。
「あんた神様だろ?なんで俺の言うことに反応してるんだ……」
「だって、暇じゃから」
複数の世界にかかわってるのに何を言うのか?
「確かに、そういう話は聞くけど!」
普通、神様に対してこんな口調でやらかしたら怒るんじゃないか?
……にしては、のほほんと受け流されているんです。ちょっと怖い。
「で、さっきの話に戻るんじゃが、お前さん、最後に特売ストアでリセットを購入したのじゃったな?」
「ああ、そうだよ。解説一切なかったけど、あの場面で正解はあれ一択だったろ?」
「その通りじゃな。なので、今度はもう少しお前さんの希望を聞いてから、あの世界に再び送り出そうと言うことにしたのじゃよ」
おっと、そういうことは、早く言ってくださいな。
「キャラ設定はどうするのじゃ?ちなみに、変更する度に初期ボーナスポイントは減らすぞい」
結局ポイント消費型の初期設定いじりかよ?
出来ないと言うよりかはよっぽどいい。
「だったら、キャラはそのまんまがいいな。目的は、永く楽しく生きることってのは変わらないからな」
「つまり、できるだけポイントは多く持っておきたいと言うことじゃな……」
「あたりまえです」
「なら、お伴もそのままソルフェリノにお願いするが、問題ないかの?」
「えー、いきなり俺を殺しに来たあの凶悪ハーフエルフですよね」
「あれでも、あの世界では最強クラスのチート娘じゃよ?」
鑑定したからな。そのくらいのこと……
「あれで最強か?」
「そうなんじゃ。職業スキルの上限は基本的に各々10じゃからの。限界突破すれば、その上もあるのじゃが」
「おい、そのことを最初に言え!」
鑑定しても、その数字の意味が正確に分からなければ宝の持ち腐れにしか過ぎない。
「それはすまんかったの。お詫びに何かつけてもよいぞ?」
おっと、言質ゲット。
ここは、初期ボーナスポイントを……
「すまんのう、初期ボーナスポイントは100、それ以上は付けられんのじゃ」
あ、先手打たれた。
でも、なら考えていることがある。
「ステータスウィンドウ、いや、こう言い換える。システムウィンドウの使い勝手を良くしてくれ!」
「どうすればいいのじゃ?」
「ヘルプ機能の追加と、EDLPの実現だ!!」
そう、俺がしくじった主な要因は、勘違いだ。
勘違いを防ぐにはヘルプ機能、特にポップアップヘルプとオンラインヘルプを実装すればいい。
知識チートになる?
当たり前じゃないか。
チートしなくてどうすんだよ?
「ヘルプ機能については心の声が聞こえてきたからの、こう見えて、わし、知識神じゃから、ヘルプは追加できるのじゃ」
このじじい、知識神だったのか……
「で、EDLPって、何のことじゃ?」
「Everyday Low Pointの略、いつだってカカクヤスク。特売なんていらねーんだよ!」
99.5%オフの在庫処分をされるよりも、上質な物をいつでもお安くしてもらう方が、長い目で見ていいに決まっているのだ。
と言うか、今回の失敗その2は、特売につられて選んじゃいけないものを選んだってのがある。
今考えれば、『神様影響完全排除』なんて、自己矛盾以外の何物でもない。
「言われてみればそうじゃな。EDLPの方が、面倒くさい手間も減るのじゃよ。今度からは特売ストアはやめる代わりに、ポイントショップの価格を下げておくのじゃ」
「それは助かります。よろしくお願いします」
毎日、日替わりで特売商品を考えるのは手間なのだ。
自動的に毎日2割引きとかの方が、長期的に物事を考える時に計画的にできる。
「ところで、ちょっと聞いてもいいか?」
「なんじゃ?」
「あの世界、俺がいなくなった3秒後、どうなったんだ?」
「何を聞きたいとか言えば、そんなことかの?その答えは、『そもそもその3秒後と言うのは存在しない』じゃな」
「え?」
「だって、お前さんが『リセット』したんじゃから、その時点で終わりじゃ」
「と言うことは……」
「心配せんでも、やり直しじゃから、どうってことはないのじゃ」
ちょっとだけ罪悪感が沸いたが、そもそも1回目の話はなかったことになった。
「お前さんにはのう、新しい風を吹き込んでほしいのじゃよ」
「はい?」
「お前さん、行ってみて分かったじゃろ?」
考えてみる。行ってみて、感じたことがあった。
「古臭い……な」
「そうなのじゃよ。この世界は、古臭くなってしまったのじゃ。このままじゃ、いずれ消えるのじゃ」
それは困る。永く楽しく生きていきたいのだ。
「ポイントシステムを利用して、じっくりと、ゆっくりと世界を改変していってもらいたいのじゃ」
「そんなの、神様がちゃちゃっとやっちゃえばいいのでは?」
「お前さん、わしの才能のなさ、気付いとるくせに」
あ、ばれました?
知識を司る神ではあるが、現代世界はオブザーバーでしかなく、理解できていない。
今の潮流は、ファンタジー世界にいくつもの変革を求めている。
おそらく、転生し直して暮らし始めればもっと変えるべき個所が見つかるだろう。
ファンタジー世界で快適に暮らす。
あくまで、ファンタジー世界であることは変えずにだ。
うん、今度は間違えないようにしないとな。
「でも、やっぱりボーナスポイントは100だけっすか?」
「じゃから、それがゲームの一環じゃよ。すぐにすべて変えてしまうと、お前さんが生きる意味を失くしてしまうのじゃ。つまらなくなると、永い命は辛いぞ?」
生きる意味が無くなると辛い、か、俺にはまだ分からない感覚だ。
「ともかく、もう戻ってこないでほしいのじゃ」
「リセットしたら戻ってきますけど?」
「今度は、リセットの価格設定は10000ポイントもしくはお前さんが死んだ時に全ポイント消費にするからの。特売もないからそうそう簡単には戻らせないのじゃ」
「わかったよ、せいぜいがんばらせてもらうさ」
そうして、俺は2度目の転生をすることになった。
うん、これからは僕だね。
はじめまして。
僕はアンリ、アンリ=クロスティカだよ。
この世界で快適に暮らすためにやってきたんだ。
よろしくね。
キャラクターステータス……
名前:アンリ=クロスティカ
種族:エルフ
性別:男
年齢:22
器用:+3
敏捷:+3(行動順序:20)
知性:+3
筋力:+1(装備可能重量:8)
HP:12
MP:20
ボーナスポイント:104
職業スキル:精霊魔術師1 狩人1
一般スキル:料理3 解体3
称号:2度目の転生人
英雄ポイント:15
神様「今回、HPとMPを種族初期値範囲に収めたのじゃ。
じゃから、その分ちょっとだけボーナスポイントを
おまけしといたのじゃ」
ここまでお読みくださり、ありがとうございます。
本来ならもう少しストックを作ってから投稿しようかとも思ったのですが、
(よくある物語の後書きでもそんなこと書いたばっかりですが)
さすがに遅くなりすぎるかなと思いましたので、投下という判断に至りました。
11月に入ると実家に帰省というイベントのため、しばらく執筆も投稿もできなくなるのです。
次話投稿は、10/29(日)に致します。おそらく午前中?
次回、初っ端だからこそのポイントチート炸裂!
ソルフェリノと合流するまでは、数話短い頻度で投稿する予定です。