四章二十七節 この血の高ぶりは
綾見とロークがブェイと銀隠目掛けて拳を降り下ろす。
地面は割れ、連鎖するように辺り一帯が崩れて行く。
元々崩れかけていた会場が、試合を行っていた痕跡する残らない程に崩れた瞬間であった。
「くそッ! 黒焔はこんな大物を隠してやがったのか?」
ブェイは辺りに点在する瓦礫や破壊された支柱を手で触れ、その形を変形させる。
蛇のように蠢く瓦礫や支柱に翻弄される綾見とローク。
「ブェイッ! アイツらは図体がデカイぶん、俺達のように小さくて素早い存在を捕らえきれない。お前のその【造形魔法】で奴らの視界を塞げ!」
「――いつから、俺の魔法がッ…造形だと気付いた?」
「初めからッ……だッ!」
銀隠は嵐魔法で小さな瓦礫を空へと浮かせ、綾見の首筋に向けて放つ。
体が大きくなった所で、綾見とロークの二人がブェイと銀隠の連携に付いて行く事は難しい。
仮にも、二人が禁忌魔法を手にするのが、会得するのが数週間早ければ同等だったのかもしれない。
次々と形を変形させ襲い掛かる瓦礫と、嵐魔法の大出力の風が綾見達の身動きを封じる。
しかし、体を大きくするだけの魔法が禁忌に指定される筈がない。
「――! 逃げろ、ブェイッ…!」
銀隠が風を操り、ブェイを会場から遠く離れた町まで吹き飛ばす。
「――っぅ…! 何しやがッ……!」
直後、ブェイと銀隠の目の前に凄まじい熱量の炎が燃え広がる。
魔力を均等に巡らせる特殊な素材や、瓦礫の下に積み重なっていた鉄骨が一瞬で溶けていた。
鉄と同様に炎が通った道一帯が焦げ、鼻を突く異臭が辺りに立ち込める。
地面と瓦礫が溶かされた場所からは、煙と一緒に高濃度の魔力が流れる。
もしも、ブェイが銀隠の魔法で飛ばされずにあのまま立っていたら、考えるだけでも恐ろしい。
良く見ると、綾見の全身を覆う黒竜の鱗が大きさを増し、鱗同士の間隔が狭まってきていた。
「まさかッ…! あの姿が本来の姿じゃないのか!?」
銀隠はロークの腕を駆け上がり、ロークの肩を利用して綾見の顔を力強く殴り付ける。
銀隠の魔法を上乗せした攻撃にその場でよろめきつつ、未だ完全な力に目覚めていない綾見は、数枚の鱗が剥がれた頬を手で触れる。
しかし、時間が立つと綾見の頬に空気中の魔力が集まり。
薄い膜を作り出し、膜の下から剥がされた分の鱗が新たに形成される。
「――まるで、ブェイだな。魔力があれば半永久的に鱗を生成出来るとか…」
銀隠は綾見に気を取られ、直ぐ真横に立っていたロークの拳を避ける事が出来なかった。
「ヒャッ…! ハァァァァァァァァァァァッ―――!」
巨人と大差ない巨大なロークの拳が人間サイズの銀隠を襲う。
ロークはそのまま拳を力強く振り抜き、空気を叩く鈍い音と凄まじい衝撃が銀隠の体を襲い近くに点在していた瓦礫の山を吹き飛ばす。
衝撃が止むまで地面を転がり、その銀隠の姿にブェイは絶句する。
銀隠は、反逆者側でも相当な実力者の分類だ。
評議会や連盟の中で活躍する金騎士以上の上位称号保持者と同等な力を有する。
そんなに男が油断したとは言え、たった一撃で無力化する攻撃など見たことがない。
それこそ、騎士団を率いる団長クラスの金騎士でも自身と大差ない騎士を無力化するのは至難の技だ。
それをこうもあっさりと、金騎士ですらない黒の抑制監視者が実際に行った。
「ちくしょう。悪い…暁―――」
ブェイは天を仰ぎ、綾見の腰から伸びる巨大な竜の尻尾に瓦礫諸とも吹き飛ばされる。
その姿をただ見詰めるしかなかったマギジは、悲鳴と涙を流しブェイと銀隠がいる会場へと目を伸ばす。
マギジは、二人の名を声が枯れるまで叫ぶが、その声は虚しくも瓦礫の音で掻き消される。
「後ハ…オ前ダケダッ! ――暁ィィィッ!」
綾見が暁目掛けて飛び掛かり、全体重を乗せた拳を叩き込む。
地面は綾見の重さと力によって、岩盤が捲れ上がり凄まじい音が響き渡る。
綾見に続く様に、ロークも暁へと攻撃を食らわせようと姿勢を低くし瓦礫を掴み瓦礫で落ち潰そうと試みる。
「―――僕の…邪魔をするなァッ!」
暁は自身を中心に周囲一帯を強大な魔力で吹き飛ばすと、辺りは更地へと生まれ変わる。
魔力によって押し飛ばされた綾見とロークが瓦礫に押し潰され、押し上げられた瓦礫が更地となった会場を囲む。
まるで、巨大な即席のコロッセオが誕生し、そこには共に向かい合った二人が存在するのみ。
「黒ちゃん、遂にこの時が来たんだ。君をこの……理不尽な世界から解放してあげる」
「お前を……殺す…?」
首を傾げる黒に暁は動きを止める。
「黒…ちゃん……? ――まさかッ!」
暁が一歩近付くと黒の頬からは、涙が流れる。
自身の頬を伝う涙に黒は再度首を傾げ、暁の方を向く。
その一連の動作に暁は何かを期待したのか、黒の元へ走る。
――――暁は、自身の胸に感じる違和感に気付き歩みを止める。
「ゴホッ……ゲボッ!? 」
胸に手を当て、自分の手を確認すると掌は真っ赤に濡れていた。
胸に空いた大きな風穴に、意識が一瞬で持っていかれる。
「……嘘…でしょ…? 黒ちゃん……ッ! 黒……ちゃ―――」
自分の目の前で仰向けに倒れる暁を黒は不気味な笑みを浮かべ、暁の頭に足を乗っける。
次の瞬間には、暁の首から鈍い音と大量の血飛沫が上がる。
「ギィヤァハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ――――――ッ! ヒィハハハハハハハハハハハハハハハハ――ッ!」
おぞましいほどの笑い声に、空間を開いて現れたマギジがその異様な光景にその場で膝を折る。
アリスの神器『巨大空海戦艦』が悪天候の中を進み、黒の頭上で動きを止める。
空海戦艦から降りてきた黒焔騎士団団員達も、マギジ同様に困惑する。
「黒兄……」
茜が黒の元へと歩み寄ろうとするのを、アリスが止める。
「――ッ! 黒焔騎士団全団員に命令するッ! 目の前の黒を敵と認識しろ!」
団員達がアリスの命令に困惑する。
何人かは構えを取るが、大半の団員達は構えを取らずにただ呆然と黒を見詰めていた。
「……クソ…傀儡魔法【傀儡の人形兵】」
「……え?」
「…何で…なの?」
アリスが傀儡魔法を発動させると、全ての団員達が一斉に黒を取り囲むように移動する。
茜とリーラが黒を見ては自分を何度も繰り返し見直し、頭で現状を整理しようとする。
魔法で団員達を強制的に戦わせる事を決意したアリスに碧は、大声でアリスに訴え掛ける。
「なぜ何ですか。兄さんは、敵じゃない筈です。兄さんは兄さんですッ!」
「――2年前を知らないガキが私に、口を挟むなッ!」
アリスが地面に触れ、傀儡魔法で操った瓦礫を黒目掛けて放つ。
「ヒッ…ヒヒヒヒヒヒヒ――」
ゆらりゆらりと死角や目で捕らえれる筈の無い攻撃も、黒は全て躱わす。
そして、黒の歪んだ顔が自身の正面に立つ茜とリーラを捕らえる。
「…嫌だ……嫌だよぉ……黒兄…」
茜の頬を涙が伝うが、黒は二人の元へ走り出す。
「何で…黒兄と戦わなくちゃならないの…? ねぇ……答えてよ! ――アリスさんッ!?」
茜の叫びにアリスの意識が一瞬だけ茜の方に向き、その一瞬にの隙で茜との間合いを詰めた黒に、アリスは反応出来なく茜は動けない。
傀儡魔法の弱点は、使用者の意識が逸れている間は傀儡に掛かった者は動く事が出来ない。
つまり、反応できる距離にいたリーラや最速の雷魔法を使う碧ですら反応出来ても体が動く事を拒む。
茜の首筋に黒の爪が迫る。
「――【迅雷】ッ!」
黒の直ぐ真横に現れた雷を纏った翔が黒の脇腹を捕らえ、両足で蹴り飛ばす。
凄まじい雷が周囲に轟き、地面を抉る程の電撃はその場に強力な磁場を発生させる。
瓦礫の壁にめり込む黒に追い撃ちとばかりに、磁場でかき集めた鉄骨と砂鉄を組み合わせた槍を何十本も投擲する。
更に槍を避雷針に仕立て、槍に向けて落ちる巨大な落雷は周囲の瓦礫諸とも地面を吹き飛ばす。
「――今だ。大輝ッ!」
大輝を呼んだ翔は手で触れた地面から、砂鉄をかき集め黒に纏まり付いた瓦礫を包み込む。
「猛々しく在れ――【王狼】ッ!」
遠く離れた位置から翔の魔物が力を解放し、砂鉄の塊を蹴り飛ばす。
地面を抉りながら、吹き飛ばされる塊は既に鉄球のような見た目へと成り果てていた。
「――ッ! よくも…よくもよくもッ! 暁をォォォォ――ッ!」
マギジが単身で地面を転がる鉄球に向けて空間を開き、腰から取り出した小刀で黒へと挑む。
しかし、翔と大輝が黒を遠くへ追いやったのには理由が存在した。
鉄球から滲み出すように流れる高濃度な魔力にマギジの全身に悪寒が襲う。
その場で立ち止まるマギジを道化は肩で担ぎ上げ、一目散にその場から離れる。
「全く……困ったお嬢さんだよ。ブェイさんと銀隠さんはちゃんと無事。暁は…まだ分からないがきっと大丈夫だよ」
道化は涙を必死に堪えるマギジを慰めつつ、仮面の男が待っている丘上へと向かう。
「いやー…アイツの抑制監視者君達、強くなったね。あまりの強さにおじさん腰抜かしゃった」
「全く……貴方が二人を止める手筈ですよ? それだから、ブェイさんと銀隠さんが無駄な傷を負ったのですよ?」
道化はやれやれと息を吐き、マギジに代わり空間を空間を開く。
「でも、まぁ……コレでハッキリした。黒は俺の封印を誰かに無理矢理解除されたな」
そう言って、仮面の男は仮面を取り外し、怒りを露にした顔を道化に晒す。
そのあまりの殺気と威圧に、道化は膝を折る。
「道化…。各地に飛ばしたお前の分身で川柳さんに報告を頼む。『黒は手に落ちた』…と」
道化は静かに頷き開いた空間をフラフラなマギジを連れて入っていく。
マギジは申し訳なさそうに竜玄に謝罪する。
「…すいません。私……目の前で皆がやられて…それで、それで――」
未だに震えが止まらないマギジを竜玄は優しく頭を叩く。
「気にしたら敗けだ。この戦いは、暁と皆の戦いだ」
そう言って竜玄は一人その場に残り、黒と黒焔騎士団がこれから導き出す答えを確かめる。
ほどなくして、鉄球が四方へと飛散し中から騎士とは思えない程に禍々しい魔力を纏い。
犬歯を剥き出しに翔と大輝を睨む黒が立っていた。
「嫌だな…この感じ、2年前を思い出す。また救えないのか……」
翔が弱音を吐くと大輝が翔の肩を力一杯叩く。
「翔が、弱音を吐くとは珍しいですね。そんなんじゃ皆さんに笑われますよ?」
大輝が後ろで固唾を飲んで見守る黒焔騎士団団員達と、手を合わせて祈る茜と碧。
静かに俯くアリスの姿に、翔と大輝は体に丁寧に巻かれていた包帯を取る。
「今度こそ……お前を魔物になんかさせねぇからな。――黒ッ!」
「二度も同じ苦しみを貴方には与えません!」
大輝は【王狼】の力で黒の間合いを一気に詰め、黒の防御が薄い脇腹を狙って肘を叩き込む。
しかし、大輝の肘は黒の脇腹手前で薄い膜状に展開された砂鉄に阻まれる。
「砂鉄魔法…【磁力の砂鉄壁】」
大輝の肘に纏まり付いた砂鉄は大輝を空高く放り投げ、そのまま地中に叩き込む。
砂煙を巻き上げ大輝が砂鉄を振り払うと、黒は目を守るために視界が一瞬遮られる。
そこを狙って、翔の雷が黒の体を貫く。
「【昇雷】ッ!」
黒の体を貫いた雷が黒を空高くへと連れ去り、急降下する黒目掛け。
大輝と翔の拳と蹴りが炸裂し、黒を空中で1回転させる。
「――オラッ!」
「――ハァッ!」
止むことのない連激に黒は防御すら出来ず、二人の猛攻を受ける。
「良いぞ。その調子だッ!」
「頼みます。……団長正気に戻して下さいッ!」
多くの団員達が大輝と翔に黒を正気に戻してくれると信じる。
団員達が黒が正気に戻る事を祈る最中で、碧はアリスを見詰める。
「アリスさん……兄さんのあの姿に心当たりがあるのですか?」
碧がいつもよりも険しい顔で、アリスを睨み問い質す。
「……今は、あの二人が勝ってくれる事を祈りましょう」
アリスはそうはぐらかし、碧から離れる。
だが、碧はそんなアリスの態度に我慢の限界に達する。
「何ですか、その態度はッ! 今さっきも『2年前を知らないガキ』って、アリスさんは何を隠してるんですかッ!」
「――2年前の惨劇よ! あの日あの場所で、黒が何をして誰を殺したかをこの目で見たのよ! 目の前で大勢の人間が、四方を囲む火の海の中を走り回りながら恐怖の存在から逃げる。今の団長を止めないと…2年前の悲劇がまた起こってしまうの!」
息を荒くするアリスは額に手を当て落ち着こうと息を整える。
周囲の団員達は、アリスが感情を露にした事で実際に起きている事の重大さを思いしる。
「お願いだから…団長を救うのを手伝って…」
アリスは碧の手を握る。
その手は少し震えており、自分が知らない兄の秘密をアリスや他の者達が熟知していることに……胸の奥のざわめきが止まらない。
「……まず、どうするんですか? アリスさん」
碧はそっぽを向いてアリスに尋ねる。
子供のように駄々をこねて、アリスを困らせた自分が恥ずかしくアリスの方を向けない。
「まず、この場にいる全員で、強力な障壁魔法【城壁はより高く】を掛けて、翔と大輝が黒を安心して止めれる空間を作るの」
アリスの作戦を聞いた騎士達は、各自の城壁を貼る位置に付き全魔力を注いだ魔法を貼る。
黒は大輝と翔の二人との戦いを途中で止め、今だ城壁がアサイン部分を狙って跳躍する。
「おいでッ! 【爛陽竜】!」
「焼き払えッ! 【紫電竜】!」
黒を挟み込むように現れた姉妹の竜系魔物の同時攻撃に、黒は黒い魔力を纏い防ぐ。
その間、城壁は完全に貼られ黒と翔が城壁の中に立っていた。
「あれ? ……大輝さんは?」
1人の団員が呟く。
確かに城壁の中に立っているのは翔と黒だけ、大輝の姿は無く。
翔はアリスに向けて、親指を立ててどや顔を披露する。
「……まさかッ! そんな――」
アリスが城壁に手を当て、必死になって翔に向けて叫ぶ。
しかし、翔の耳にはアリスの声は届かない。
瓦礫の下から綾見とロークが元の姿に戻り、碧達の元へ歩み寄る。
二人の頭上から一人の人間が息を荒くして降ってくる。
「――大輝さんッ!」
ロークの背中に落ちてきた大輝を綾見がゆっくりと立たせるが、大輝の体は既に瀕死の状態であった。
直ぐ様、治療を受ける大輝は一命を取り止めたものの状況は極めて不利。
頼みの綱であった二人の内の一人が瀕死の状態。
黒との戦闘中に限界が来た大輝を翔が城壁外へと放り投げ、それに気付たアリスは城壁の前で崩れる。
「黒団長と一騎討ち何て、無謀すぎるよ……」
アリス同様にフラフラな翔が城壁を叩き、血を吐きながらも声をあらげて翔を呼ぶ。
「なぁ…覚えてるか? あの時、もしも大輝が近くに居たら…俺がお前を恐れずに助けていれば……あんな惨劇は無かったのかな?」
翔は天を仰ぎ深呼吸をし、その場で数回ジャンプする。
黒はその場で歩みを止め翔を見詰める。
正気に戻ったのか、それとも何かを感じ取り進むのを止めたのか。
定かでは無いが、二人の動きは止まり城壁を貼る者や黒と翔を固唾を飲んで見守る者達。
間合いを詰めず、止まる二人は異様なオーラを放つ。
帝王級の称号保持者同士の戦いは団員達の視線を釘付けにし、ヘリやドローを飛ばした報道機関もその一部始終を世界に配信する。
『世紀の一騎討ち』『反逆者を打ち倒した次は仲間同士での戦い。一体彼らに何が…』
世界中に生配信している全ての報道機関は、黒と翔を写している。
「ケリ……付けようぜ、黒。2年前の分もな」
黒に近づく翔に、黒は獣じみた唸り声を挙げて威嚇する。
黒の威嚇に気にも止めずに、更に距離を詰める翔に黒は鋭い爪で襲い掛かる。
「――轟け、雷帝【建御雷神】ッ!」
翔の頭上から巨大な雷が落ち、頭上を覆っていた城壁が一瞬で吹き飛ぶ。
地面を穿つ落雷に団員全員が驚き、その中でたった1人が笑みを浮かべる。
「翔。貴方は目立ちたがりじゃないですよ。誰よりも輝いてるだけですよ」
翔の周囲が落雷により稲妻が走り、翔の間合いを詰めようとした黒の右腕を稲妻が吹き飛ばす。
盛大に右腕から煙が立ち、頭で理解できない現象に黒は首を傾げる。
「おいおい…。昔のアイツならこんな静電気ぐらい軽くあしらってたぞ?」
翔の髪は逆立ち、全身から滲み出る魔力は全身の細胞一つ一つを刺激し、その姿に見いってしまう。
黒の人間としての血が直ぐにでも翔の元から離れるように警告を出す。
しかし、竜人としての血が自分と同等かそれ以上の力を有する者との戦いを求める。
それは、黒だけでなく。
遠くから二人を見詰めていた碧と茜も同様に城壁にかじり付くように見いっている。
『…我らの血が……高まるのを感じるか?』
『強き強者の魔に、我々竜は惹かれていく……コレが力なのですか?』
碧の魔物【紫電竜】が碧に問い掛け、茜の魔物【爛陽竜】も同様に問い掛ける。
その質問に確かな答えを持ち合わせていない二人は、心の底で問い掛けに答える。
「この気持ちは、この感じはまだ分からない。でもきっと、いつか分かる気がする」
2体の竜は静かに二人の主の中に戻り、再度眠りに着く。




