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難攻不落の黒竜帝  作者: 遊木昌
四章 焔の魔女と悪魔の瞳
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四章二十節 各々の道


 ザウラとロークとの衝突が始まってから、二時間が過ぎた頃。

 ようやく、ローク膝を折らせる事が出来たザウラは、荒い息を吐きつつ。

 「もう…諦めろ。お前じゃ、俺には…勝てない。……もう、十分だろ?」

 ジープから離れた位置でロークとザウラを見守る綾見。

 大量の出血で立っているのも不思議な位のローク。

 当然意識は、いつ途切れてもおかしくない状態である。

 そんな極て危険な状態だと言うのに、ロークはザウラの前に立ち続ける。

 身体中を切り裂かれ、至る所から血が流れる。

 見るからに、出血多量で死ぬのではないかと言う一歩手前まで来ている。

 とてもじゃないが、今のロークはザウラと拳を交える所か一歩でも踏み出せば繋ぎ止めていた意識は途切れ、自身の血で出来た血の海に倒れるだろう。


 しかし、それでも――ロークは立つ。



 「何で……。そんな体になっても立っていられるんだよ、諦めろよ! 勝てる保証なんざ、1ミリも無いんだぞ!? お前が今すぐ諦めて、地面に倒れれば終わるんだぞ? いつまでバカ見たいに立ってんだよ。倒れよ……」

 ザウラは拳に力を入れ、ロークの顔を殴り付ける。

 何度も何度も繰り返し殴り付ける、次第に口が切れ、血が口から溢れる。

 それでも、立ち続けるロークにザウラは次第にイラつき、力を込めて今まで以上の力で殴る。

 ザウラの拳を避ける事の出来ないロークは、ザウラの拳を正面から受け、顔面は見るも無惨に血と傷でボロボロになる。

 しかし、それでもロークは()()()()()()()()()



 「いい加減にしろよ! 勝てもしない相手に、いつまで立ち向かうだよ。次は死ぬぞ! そん何になっても、意地を通す気なのか? それほどお前が立ち続ける理由を教えろ! 死ぬまで意地を通す程の意地に、俺は興味が湧いてきたぞ!」

 ザウラは拳に残りの全魔力を込める。


 「さっさと……喋らないと。死ぬぞ!」

 ザウラの拳がロークの顔面に当たる直前で止まる。

 「はッ……とっくに意識なんざ無くしてたか……。言ったろ、コレがお前の限界だ。理解しろ」

 ザウラは後ろへ振り向きジープに向かって歩き出すが、背後から感じる殺気に気付く。


 「……てめぇ、殺さねぇと分からない奴だな!」

 ザウラは拳に再度魔力を込め、振り向くと同時に拳を突き出す。

 拳がロークの顔面に向かって飛んで行く、その拳は先ほどのように直前で止まらずに確実にロークを殺しに掛かる。


 「あんたの……求める強さって…………何だ?」


 「――ッ!?」

 唐突な質問と自分の顔を襲う強烈な痛みに、ザウラはよろめきその場で膝を突く。

 「あんたに…とっての強さって何だ? 限界って…何だ? お前の限界と俺達の限界……あんたのと同じと思うな…よ…」

 ロークの顔面はボロボロでどこをどう見ても、立っているのがやっとな状態なのは見れば分かる。

 なのにロークは立ち続け、ザウラに手を伸ばす。


 「強くならないといけない……それには、理由があるんだよ。……誰かを守れるよう……誰かに守られるだけのままじゃ……駄目なん――」

 言葉の途中でロークは倒れてしまい、結果的にはザウラの勝利となるがザウラにしてみれば、本当の結果がうやむやになる結果になった。

 当然の如く、ロークがザウラに思いっきり啖呵を切って述べていた『本当の限界ってのを、俺が教えてやるよ』など口先だけの戯言となる。


 しかし、ザウラからしてみれば殺す気で叩きのめした筈の男が、自分の攻撃に耐えなからも立ち続けようとした覚悟の理由が知りたくて堪らない。

 「全く、化け物かよ。黒焔騎士団の連中は……でも、あの覚悟は生半可な覚悟じゃなかったな」

 ザウラが自分が乗ってきたジープに乗り込むと、治療のためにロークを別のジープに乗せるように別の団員に命令する。

 命令を受けた団員がジープにロークを乗せ、治療を続けながら本部に向かう。





 「それで、遅くなった訳か……バカだな」

 本部に置かれているアルフレッタの執務室には、1人呼ばれたザウラがアルフレッタの前に立つ。

 「誠に申し訳ありません。しかし、ローク殿がどうも昔の自分と重なってしまって、俺と同じ結果になってしまうなら。団長自らが彼らに修練を付けても、自分の限界を知って絶望するだけだと思い。踏み留まるように提案した所…どうも、彼らなりに譲れない所があったのでしょう」

 ザウラがアルフレッタに事の経緯を細かく報告していると、執務室の扉が勢い良く開かれる。


 「アルフレッタさん。()()()()()()

 アルフレッタがザウラの影になって見えないので体を捻り、扉から現れた人影を確認する。

 「やっと来たか。ロークは寝てるから、お前が一歩リードだぜ。綾見!」

 扉を自らの手で開けた綾見の瞳からは、闘志と決意が感じられる。

 「まず、俺は何をすれば良いんですか? アルフレッタさん」

 アルフレッタは椅子から立ち上がり、綾見に付いて来るようにだけ伝える。

 綾見は素直にアルフレッタの指示に従う。

 その姿は、アルフレッタにキレた時とはまるで別人のように直前であった。

 「1つ訪ねるが、俺を殺そうとしていた。前までのお前は、どこに消えたんだ?」

 アルフレッタは悪魔の様に頬り少し釣り上げて微笑み、綾見に答えずらい質問をする。

 綾見は悩みつつも、アルフレッタの質問に答える。


 「あの時は、確かにアルフレッタさんを……お前を殺そうとした」

 その答え方に、ザウラは綾見に掴み掛かろうとするが、アルフレッタがザウラを止める。

 「――あの時お前は、俺らを弄んで遊んでいた。そう見えていたかもしれないけどそれ以上に、俺達の本気を出させた。本気を出させた上で、その実力を図っていた。それなら分からなくもない」

 綾見は自分の右手に蒼炎を出し、操るように炎形状をコントロールする。

 「未知の力を持った奴に力の使い方を教える。そのためには、まず、アルフレッタさん自身が俺達の力を知らなきゃいけない。だから、俺にワザと本気を出させるようなマネをしたり、ロークに俺をぶつけたり。全部あんたの作戦何だろ?」

 しかし、アルフレッタは綾見の考えに首を振る。


 「本気を出させたのは確かに、作戦の内だ。でも、ロークにお前をぶつけたのとお前達に力の使い方を教える為じゃない。いや……正確には、さっきまでそうだったが………。事情が変わった」

 そう言うと綾見の腕を思いっきり引っ張り、執務室から放り出す。

 しかし、その先は執務室の外ではなく。


 濃い霧の中だった。

 綾見はアルフレッタが力任せに霧の中へ放り投げたので、霧から出ると直ぐにバランスを崩しその場に倒れる。




 「何だ、もう来たのか。アルフレッタは仕事が速くて助かるよ」

 綾見は自身の目を真っ先に疑う。

 確かに、アルフレッタが目の前に現れた時は相当驚いた。

 だが今は、それ以上の驚きであった。



 「禁忌の騎士(ネオ・パラディン)の第1席…【戦神 (オーディン)】のハート・ルテナワークド。まさか、次の相手はあんたなのか?」

 「察しが良くて助かるよ。卑怯時は思われるけど、相手に負かされたら、禁忌自体が弱いと思われるかもしれない。それは、黒焔だけの問題じゃなくなる。禁忌全体の問題何でね」

 ハートは綾見が地面から立ち上がる事を確認すると、腰にさげていた鞘から剣を取り出す。


 「さ……かかってこい。魔物(ギフト)も所持していない、雑魚を相手取るのに()()()()()()()()()()からな」

 「言ってくれるねぇ……覚悟しとけ。その鼻へし折ってやるよ」





 「ここは…どこだ?」

 目を覚ますと暗がりでも印象的なシャンデリと、気分が落ち着く香りを放つお香が幾つも乗った台車がまず先に目に入る。

 ふかふかのベッドから起き上がり、辺りを見回すが人は1人として確認できない。

 ふと、何気なく立ち上がり歩く。

 しかし、ロークの記憶が正しければザウラとの一対一での戦いで、軽く全治1ヶ月以上もの傷を負っていた筈。

 それとも、自分が知らないだけで1ヶ月もの間も寝ていたのかも知れない。

 部屋の扉を開け、辺りを見て回る。

 白塗りの壁と真っ赤な絨毯と壁に置かれている花瓶や絵画も見るからに高価でその中で絨毯など、特別な生地を使った高級品だろう。

 並の稼ぎでは、とてもじゃないが揃えることは出来ないだろう。


 「こらー…。病人が勝手に外を出歩いちゃ行けないぞ」


 ロークの背後から突然声が聞こえ、ロークは条件反射で背後の人影を蹴り飛ばす。

 「――しまッ…!」

 ロークが慌てて振り返ると、そこには翡翠色の髪をした女性が白衣姿で手元のナイフを片手に持った状態で立っていた。

 彼女の体には、傷1つない状態でロークの前であくびをする。


 「…ふァ……あぁ、すまない。少し寝不足でね。滅多に連絡を寄越さない昔の知り合いが、久々に連絡したと思いったら機械の製造を頼んで来てね。全く……私の都合も考慮してほしいよ」

 彼女は肩から下げていたポシェットから、目薬やメイク道具を取り出し。

 ロークの前でちょっとしたメイク直しをする。


 「ん…? あッ! そうだった、自己紹介がまだだったね。私の名前は『ミシェーレ・オンズマン』君は知ってるかな? 【戦神(オーディン)】の称号も持ってる男の名前を」

 「まぁ…俺らの騎士団がその【戦神】と同じ所属何で勝手に耳に入って来る。それよりも、どうやって俺の蹴りを躱わした?」

 ロークはそう尋ねると、ミシェーレを睨む。


 「ふふ…。そんなに暑い視線を送らないでくれ、私に惚れているのかね?」

 「なッ…! んな訳ねぇだろ!? バカにしてのか!」

 ロークは顔を赤く染めながら、ミシェーレに食って掛かる。

 そんなロークをミシェーレは軽く額を小突く。

 すると、小突かれただけのローク体から一気に力が抜け落ちる。


 「まったく、私の仕事を増やすのが得意だね。君の体は既に限界だ。どんなに動きたくても、動いては駄目だ」

 ロークに釘を刺し、軽く指を鳴らす。

 すると、通路から多数の砂鉄が集まりだすとロークの体を包み込み、持ち上げる。

 「なッ…! 何だよコレ!」

 必死に暴れるロークだが、体全体を包み込砂鉄は今のロークの力ではびくともしない。


 「決闘まで時間が無いのに、良く怪我をするね。コレじゃ試合所か、その辺の子供に負けちゃうよ?」

 ミシェーレは砂鉄を器用に操り、ロークを元居た部屋のベッドまで連れて行きベッドの上へと放り投げる。

 柔らかなベッドに無理矢理固定されたロークだが抵抗はやめずにいた。

 しかし、数分後に体力が徐々にきれていき、抵抗を止める。



 「うむ。よろしい! そんな君には、当然時間は無い。相棒の綾見君は、既にハート君と手合わせしてる頃かな?」

 それを聞いたロークは何が何でも、ハートの所へ向かおうと全身に魔力を巡らせる。

 「おいおい! 無理無理…諦めなよ。その傷は完治してない。今動いたら、寿命が縮むぞ?」

 ミシェーレは砂鉄で小さな人形を作りながら、必死にもがくロークを眺める。

 「オメェに……俺の何が分かる! 命位賭けねぇと……あの人達に救って貰った。恩を返せねぇんだよ!」

 歯を食い縛り、全身に力を入れるロークの顔目掛けて、ミシェーレは拳を叩き込む。


 顔から血が流れている事など、ミシェーレはお構い無しに何度も殴り続ける。

 しばらくして、息を上げていたミシェーレがボロボロのロークの胸ぐらを掴み。

 自分に顔を近付けさせ、ロークよ傷だらけの体が未だに軋む状態である事を承知でロークに現実を突きつける。


 「コレが……お前の力だ。傷が完治してすらいないお前が、今のハート君と手合わせ出来るとホントに思ってる? 冗談でも思ってたら――現実を見てみろよ。このざまだよ…」

 ミシェーレはロークの胸ぐらから手を離す、静まり返るロークはそのままベッドに頭を倒す。

 砂鉄が体の拘束を解いた事など、ロークは既に知ってるが動く気すらない。


 ――否。

 『動けない』のだ。

 体が自由でも、心が死に、強さを求めていた事を忘れる。

 全てを諦めた頃になって、ロークの隣に1人の男が運ばれて来る。

 全身血だらけで、所々から未だに血が流れており出血多量で死ぬ恐れがあった。

 それでも、その男は平然と立ち上がり一言ロークに向けて叫び、手当てを受けたその直ぐ後に部屋を飛び出して行く。


 ようやく気付いた、自分が何しに此処に居るのかを。



 「ミシェーレ! いや…ミシェーレさん。治療は?」

 「とっくに終わってる。見れば分かるでしょ?」

 ミシェーレはロークに上着を投げ渡し、上着を受け取ると豪華で高価な花瓶などがある廊下を走り抜ける。


 『もしも、花瓶が割れてしまったら』

 そんな事は、今のロークの頭の中には存在しない。


 廊下を抜け、真っ白で巨大な空間に辿り着く。


 「頑張るね。それじゃ、とりあえずどっちからかな?」

 指を鳴らすハートの背後から石像の化け物が2体現れ、二人に向けて進む。

 石像が一歩進むだけで地面が揺れ、その重量が凄まじい事は容易に理解できる。

 石像が天高く振り上げる腕。

 しかし、その腕は虚空を切り、石像の足下に転がり落ちる。



 「「両方同時で……お願いしますッ!」」

 拳を付き合わせるロークと綾見。

 その二人が発する自身に満ちた瞳。

 それは、先ほどまでハートが相手をしていた綾見からは微塵も感じられない物であった。


 「二人係ならば勝てると思ってる? でも、流石にコレは…()()()()()()

 構えを取るハートと同じく、構えを取るロークと綾見は二人がアルフレッタとの手合わせの際に全快で発動した魔法。

 「それが、【蒼炎魔法】と【獣魔法】か……」

 二人を見詰めるハートの顔色が変わる。


 「残念なお知らせと良い知らせがある。どっちから聞きたい?」

 「まずは、残念なお知らせからでお願いします」

 「自分も、綾見と同意見です」

 ハートの問に応えつつも、二人はハートとの距離を見計らいつつ全身に魔力を満遍なく巡らせる。


 そして、刹那の戦いが始まる。



 両者が同時に踏み込み、一瞬にして間合いを積め、息の合った。

 蒼炎の渦と獣の鉤爪がハートの両側から迫り来る。

 息の合った連携は、金騎士(アソーバ)級でありながら団長のハートを冷や汗が出るほど追い詰めていた。

 「驚くほどの速さと、正確さだな。でも、魔力管理がなってない」

 その直後、綾見とロークを襲う倦怠感に二人は驚きそのまま倒れる。

 呼吸を荒くなり全身に感じる倦怠感は増すばかり、いつしか二人の体は完全に動きを止める。

 人間の魔力量は人各々の量や濃度も違うが、二人は訓練をしているため一般人よりもその量は多い。

 しかし、ロークと綾見が発動していた魔法は相当な量の魔力を消費する。

 それでも、5分も持たないほどではない。

 綾見は自身の不自然さに、辺りを見渡すとある事に気が付く。



 「この部屋……()()()()()()()のか!」

 「ご名答! この空間に、魔力を吸収する効果を付けてみた。どうだ? 少しは、考えながら戦う必要性が身に染みたか? …あれ?」

 ハートが綾見の気付いた仕掛けに、「よく出来ましたー」と先生みたく褒めようとするが、思いの他二人の魔力量が無く。

 二人の体は限界に来ていた。


 「あッ! やべッ……あッ! あぁ!?」

 慌てふためくハートを横目に、綾見は意識を無くす。



 ミシェーレは頭を抱える。

 「ハート君。私に睡眠時間と言うのは、存在しないのかな? ねぇ?」

 「いや……ホント。すいません」

 ミシェーレの前で正座する現在のハートからは団長としての威厳は感じられない。

 そして、ハートを見下ろすミシェーレはゴミを見るような瞳を向ける。

 2つのベッドで体を休める綾見とロークは、ミシェーレが放つ威圧感な体が休まらない。

 「二人共。魔力が回復したら、直ぐにハートの所に行きなよ。あんまり時間も無いから」

 砂鉄を片手に弄りながら、砂鉄で作られた人形が綾見の包帯を取り替える最中。

 ロークはミシェーレに質問する。


 「あんたは、何者なんだ。団長のハートに怒鳴る何て、普通の奴じゃねぇよな?」

 「いや、私は普通の人間だ。少々他よりも天才ッ! な……女の子だ」

 軽くその場でターンをし、ロークに向けて可愛くウィンクするミシェーレの動きに綾見は笑いを堪える。


 「おう? 今笑った奴は誰じゃ?」

 白衣の下からぞろぞろと砂鉄が流れ、巨大なチェーンソーへと姿を変える。

 「いや……何でも無いです」

 死ぬ予感がした綾見は素直にベッドの上で横になる。


 「さて、話が逸れたが……。私は見た目とは裏腹に君達よりも、偉いのだよ! だからこそ、ハート君を怒鳴る事も出来る」

 腰に手を置き、どや顔で腰のポケットに入っていた騎士である証明の懐中時計を見せびらかす。

 懐中時計は、銅や銀よりもさらに上の階級である金色に輝き、金騎士(アソーバ)である事を誇らしげなミシェーレ。

 しかし、二人はそんなミシェーレとは違っていた。


 「俺らは、銀だけど。そんなに金と銀って差があるのか?」

 ロークが尋ねるとミシェーレは鼻を高くして答える。


 「差って言っても、懐中時計はただの証明書みたいな物であって、それ以外の用途は無いらしい。銅と銀は一般的な騎士に送られる階級で、その人物を『銅』『銀』『金』の種類で識別するの。騎士団内の依頼や仕事もこの階級で決められいる物が多い。それと、軍事機密関係の資料の閲覧制限も階級で決められている」

 「ってことは、銀だの金だのって言う枠組みはただの、判断基準ってことですか?」

 「そうなるね。だから、新米騎士の卵や候補生達の目標にするべきじゃ無いんだよ。本来なら」

 その時、ミシェーレは表情を変え真剣な眼差しで綾見達二人を見詰める。

 一呼吸置いて、少し申し訳なさそうに口を開く。


 「…君達は、銀騎士だと言ってたね? なら、その先を目指してみないか?」

 ミシェーレが二人に手を差し出すが、ミシェーレの背後に立つハートが普段見せる事の無い殺気だった顔でミシェーレの肩を掴む。

 「――ミシェーレ。二人にその決断を迫るのは、役不足だ。本来なら、約半年の時間を使って導き出す答えだ」

 ハートはミシェーレの肩を掴む手に力を込める。



 「それに……()()()()()()()()()()。その道を狭めてはならない」

 ハートは項垂れるミシェーレの頭を優しく撫でる。

 「君の事だ。僕の心配でもしてくれたんだろ? 大丈夫だよ。僕の騎士団も黒の黒焔も大丈夫」

 そう言い残し、部屋を後にしようとしたハートを呼び止める綾見がベッドから起き上がり尋ねる。

 「どうい事だ? 意味深な捨てゼリフ吐いて、何の事か説明してくれ。頼む……それが、強くなる為の事なら尚更だ」

 深々と綾見は頭を下げハートに説明を求めた。


 「全く……ホント。君達黒焔の騎士達は、回りの考えを否定して進むよね。良いよ黒が君達をバーバラに託した真意と、バーバラがアルフレッタに頼んだ案件。アルフレッタが僕に提案した内容とか、諸々全て君達に話そう。本来なら……黒から君達が良かったのだけれどね」

 そして、語る。

 黒がバーバラに決闘に勝つ為に修業目的とは別に綾見とロークの二人だけに求めた目的。

 その為に、動いたバーバラとアルフレッタ。


 「黒が君達に求めたのは、強くなる事ではなく。本来なら進む事が出来た幸せで平和な道。そして、修羅の如く血だらけの荊の道。その2つのどちらかを決めて貰いたかったんだよ」

 「それなら、俺は抑制監視者(ストッパー)に指名された時に覚悟している! 俺は…黒焔の為に死ねると」

 そんな後の覚悟を踏みにじるように、ハートは1つの質問をする。


 「なら、君は()()()()()()()どっちかしか守れない。そんな時は、どっちを()()()()()?」

 ハートは痛い所を突いて来る。

 ()()()()()()()じゃなく()()()()()

 切り捨てる前提での質問であった、当然綾見は心の中で「両方守る」と言う自身は合ったが、切り捨てる前提での質問に戸惑う。


 「ほら。君は、『両方守る』って選択肢しか持ってないだろ? どちらか両方を確実に守る何て、都合の良い時代じゃねぇだよ!」

 ハートは、怒鳴り綾見の胸ぐらに掴み掛かり鋭い眼で綾見に問い質す。

 今まで見た事の無いハートの本気の瞳と考えたくない事実を綾見に突き付ける。

 「――そんな生半可な覚悟でこの先やって行ける訳ねぇだろ! その覚悟を見定める為のバーバラさんの所での修業だったんだ。ステラとか殺とかは、黒焔を止めて一般人に変われる。でも、抑制監視者は違う。その監視対象が死ぬか、自分が死ぬかでゴールが決まる」

 ハートは綾見の胸ぐらから手を離し、力無く倒れる綾見は床に座り込む。


 「冷たい事を言うようだが、この先の強さを求めるなら――()()()()()()()()()()()()()()()()。自分の身を犠牲にする覚悟何て、その気になれば誰でも出来る。でも、誰かを犠牲にする覚悟は人各々で違う。黒は、お前に本当にこの道を歩むか歩まないかを決めてほしいだと思う。本来なら……もっと長い時間が必要だが、お前達や黒には時間が無い。今決めてくれ」

 すると、1人ベッドで休んでいたロークが立ち上がりハートの真横に立つ。


 「俺は、元よりその覚悟は出来てる。それに、俺は()()()()()()()()()()って決めてるからな」

 ロークは1人部屋を後にしようとする。

 しかし、扉を越えた一歩手前で止まり、首だけ後ろに向けて綾見に提案する。

 「ハートさんは言ってた。『両方守るって選択肢しか持ってないだろ。どちらか両方を確実に守る何て、都合の良い時代じゃねぇ』って、なら――()()()()()()。そして、お前は()()()()()()()()()()()()()()()。1人だと守る物は限られるけど…2人なら、大概の物は守れるだろ?」

 そう言い残し、ロークは部屋を後にする。


 「確かに……1人でも無理でも、2人なら出来る。その為に力を付ける!」

 綾見は床を思いっきり叩き、立ち上がる。

 その瞳には決意を新たに、覚悟と言う炎を灯したかの様な瞳をしていた。

 「なら、残り少ない日数で僕が出来る範囲まで君達を強くしよう。おいで、君達二人を黒ご驚くほどの強さにしてあげよう」

 そして、つい先ほどの白い空間へと足を入れるロークと綾見の二人。

 そこには、アルフレッタとザウラの姿があった。


 「すまんな、ハート。内のザウラがどうしても、ロークに会いたいって言うからな」

 ザウラがアルフレッタから一歩前にでて、ロークに近付く。

 「この前、お前に俺は限界について尋ねた。その答えをまだ聞いていない」

 ロークは考える間も無く答える。


 「俺は自分の限界を決めてないだけだ。自分の命が有り続け体が壊れ無い限り。日々俺の限界の上限は上がり続ける」

 「なら、心が壊れたどうする?」

 ザウラは自分の胸に手を置き、ロークに再度尋ねる。



 「壊れない。壊れる筈がない。だって、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。心を壊してる時間すら惜しいからな」

 そう答えると、ロークはザウラの肩に手を置きそのままザウラの横を通り過ぎる。

 通り過ぎる際に、ロークはザウラの耳に聞こえる声で呟く。


 「――だから、ザウラ。あんたももう一度挑戦したらどうだ? 自分の限界とやらに…」

 それを聞いたザウラは清々しいほどの笑顔でロークに答える。


 「生意気なガキに、言われるまでもねぇよ」


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