一章八節 銅騎士と第二の出現
大きな爆発が起きたのと同時に、ヘカトンケイルの体が灰になり消えた。
「っしゃぁ!?」
「やった!やったぞ!!」
「やりましたわ…私達…やりましたわ…」
歓喜に震え仲間同士で喜び、抱き合いながら泣く者、力尽きその場でしゃがみこむ者がいた。
「リーダーやりましたっすね」
渚が傷口を治療しながら、リーラに近づくと。
「お前はバカでちか!全然良くないでちよ!」
三奈が怒りながら、渚が治療したばかりの傷口を殴りつけた。
三奈が殴りつけた傷口を押さえながら、不満げな顔でリーラを見ると、リーラの目線には、教師達が集まり話合ってるが、ただ事ではない様子だった。
「先生、またヘカトンケイルが現れたのですか?」
先ほど喜び合っていた生徒の一人が教師に聞くと。
「いや、実は……ヘカトンケイルが出現した事に問題があるのではなくて……」
教師が生徒の質問に悩んでいると。
「出現に問題があるんじゃなくて、『出現方法』に問題があるんだよ。まぁ、それは置いといて……」
生徒の質問に答えたのは、侵入者だと追われてた橘黒だった。
刀剣型神器『黒幻』を腰に差すと、真剣な目で生徒全員に尋ねた。
「私の蒼白色のドライバを持ってる人知りませんか?」
唐突に自分の紛失物を知らないかと言われたのならまだ分かるが、それを持ってる人知りませんか……生徒達に心辺りは無かった。
「え…知らないの?」
蒼白のドライバこと、『叢雲』を持ってる生徒がいない以上探すのを断念するしかないと思っていると。
「コレ、あんたの?」
後ろから声を掛けた方に向くと、蒼白のドライバ『叢雲』がその生徒の手の中にあった。
「ありがと!何処にあったの……」
そこにいたのは、理事長に会う前に激戦?を繰り広げたレイピア持ちが居た。
その瞬間……
「お前が盗んだのかぁ!!」
返しに来た相手がレイピア持ちだっと知った瞬間に叢雲で頭を叩こうとした瞬間。
黒はベンチで、目を覚ました
一瞬で距離を詰めた妹、『碧』のハイキックで黒の頭蓋骨は鈍い音を出しながら、意識の中に沈まず、碧に叩き起こされ、深く反省することになった。
【ヘカトンケイル】を撃退してから2日が過ぎた頃、理事長の元に1通の手紙と一緒に『銅色の懐中時計』が入っていた。
理事長が手紙を読んだところ。
「王立星零学院騎士団候補、『リーラ・ファルナデス』貴殿を、大型異形種通称【ヘカトンケイル】討伐を評価して、世界評議会直属の『銅騎士』の称号を与え証として銅色の懐中時計を授ける。」
理事長が手紙を読み終えると、リーラの目から自然と涙が出ていた。
「まさか、リーダーが『銅騎士』になるとはねぇ」
「そうでちよ、でも……当然と言えば当然でちよ」
渚と三奈は泣き崩れて立てなくなっているリーラを起こすために、隣で喜びを分かち合った。
理事長室に不穏な空気が満ちていた。
「まさか、学院側に裏切り者それも、ヘカトンケイルを呼び出す程の力を持ってる裏切り者……対策は考えてあんのかよ、理事長」
黒がドライバを台の上に置きソファーに座り理事長の方に向くと、いつもは柔らかい笑顔の理事長が険しい表情になっていた。
「無論、このまま捨て置く訳でわない。ただ、現段階ではヘカトンケイル以上の異形を従える可能性もある、生徒や一般市民を犠牲にしたくない、だからこそ、お前を呼び戻したのだよ『黒』」
黒はテーブルに出された紅茶を口に含むと。
「俺紅茶苦手だわ」
正面には綺麗に脚を揃えて紅茶を飲んでいた碧が、テーブルに紅茶を置くと。
「私は、好きですよこの味」
「やっぱり、碧ちゃんは分かるね、この紅茶の良さが」
そんな、ガールズトークで盛り上がっていると、電話が鳴りだし、理事長が電話の内容を二人に言った。
『王都周辺に【ヘカトンケイル】大量出現。
王立星零学院騎士団候補の生徒は一般市民の避難誘導並びに迎撃に対処出来るように。』
アナウンスが終わると同時に生徒は混乱した、一般市民の避難誘導を開始した。
それを聞いたリーラはドライバを取りに理事長に行くとそこには、銃型ドライバを腰のホルスターに入れ狙撃銃『豊和M1500』をケースにいれ、星零学院の制服から黒を基調にした戦闘服に着替えた碧がいた。
「リーラさん、何でここに……あっ、ついでにそこの黒タイツと取って下さい」
リーラが碧の黒タイツを取って渡すと、颯爽と理事長室を後にして出ていった。
何かを思い出したかのように理事長の方を向くと。
「単刀直入言います、ドライバ『我王の腕』を貸して下さい!」
リーラがそう言うと、理事長は口を開けると。
「許可出来ません」
「何故!なんでですか!」
リーラが声を挙げて言うと、貴女には早すぎる【ヘカトンケイル】が一体だけではなく数体いる中で、使え慣れていないドライバを使っていては足手まといになるから、などとまだまだリーラ自信未熟であることを言われ、言い返すこともできなくなっていると。
「理事長、参加は駄目でも、見るだけならいいんじゃないか?」
後ろから声を掛けたのは刀剣型ドライバと神器を腰に差す、黒だった。