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難攻不落の黒竜帝  作者: 遊木昌
三章 骸の繭と魂の革命家
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三章二節 不穏な影は直ぐ側へ

正面には扉の目の前で黒達を待ち、後ろの窓では魔法を放ちながら暴れる仮面付きの西欧生徒。

レオンは窓枠から外を覗くと、大勢の魔導師と教官が仮面と正面から魔法の撃ち合いをしていた。

「黒……仮面の目的が俺達だとすれば、ここもヤバイ。出来るだけ目立たないように下の階に降りるぞ」

レオンが扉に向かう前に黒がレオンを止めた。

「黒、状況がわかってんのか?」

レオンは腰のホルスターからピストルを取り出す。

「――落ち着け、扉から見て正面に1人と左右に二人ずつ配置しやがる扉を蹴り開けたとしても、横から拘束されるのがおちだ」

黒は血燐を握る力を強めた。

「――なら、答えは1つだな」

「あぁ、1つだ」

レオンと黒の意見が一致する。




仮面の猛攻は更に勢いを増し、幾人もの魔導師を手に掛けた手は血だらけになっていた。

「――ひッ!」

仮面が身動ぐ度に恐怖に支配されていく感覚を、その場に居合わせた者達全員味わっていた。

「――何なんだよ……コイツ」

「来るな! 来るなッ。―――あっ」

「逃げろ! 逃げろぉ!」

仮面に向けて石やその場にあった物を投げた者や、恐怖の余り仮面に対して余り殺傷能力の無い魔法を何度も何度も撃ち、仮面の気に触れた者は、例外無くその頭を消し飛ばされた。

その時初めて、自分が相手にしてる奴との圧倒的な力の差を感じた者もいた。

「勝てねぇよ…勝てっこねえ!」

1人の魔導師に目を着けた仮面は、魔導師の首目掛けて噛み付こうと飛び掛かる。

「「させねぇよぉ!」」

仮面が声のする方へ、上を見上げる。

飛び降りて来た二人が仮面の真上に着地する。


レオンと黒は仮面に隙を与えぬ様に着地と同時に、魔力の刃が起き上がろうとする仮面の体を貫く。

「ギイャアアアアッ!」

奇声は凄まじく、耳を塞がなければ頭がおかしくなる程であった。

「くそッ! ――るせぇ……なッ!」

レオンはピストルを仮面に向けて発砲する。

レオンの銃弾が仮面の額に命中すると、体を小刻みに震わせてレオンに襲いかかった。

「――レオン!」

黒は右腕に魔力を集中させ、仮面を殴るが紙一重で避けられた。

仮面の両手がレオンの首筋に届く寸前で止まる。


「……は……?」

レオンの目の前で停止せる仮面は、体を動かそうとするがピクリとも動かない。

「――レオン! 今の内に距離を取れ!」

「……あ…そうだな」

レオンはピストルをホルスターにしまうと、その場から距離を取る。

仮面の身動きは止まるが徐々に体の自由を取り戻しつつあった。

「覚悟決めろよ……レオン。さっき見たいな奇跡はもう無いぞ」

「その言葉を余裕ぶってる、お前に言いたいよ」

二人は構え、それに習う様に魔導師達も身構える。


「ギィギィャャャャャャ……!」

仮面は空高く跳躍すると、黒達目掛けて鋭い爪を立てて襲いかかった。





その頃、同じ時刻の星零学院では渚の一件で重くなっていた学院内の空気よりも、その場で行われていた会議室の威圧―――いや、周囲を恐怖と絶対的な魔力濃度で支配された会議が行われていた。


「星零理事長……これはどいう事かね? 何ゆえ……何ゆえ、黒に監視者を付けずに長期任務に付かせたのかね………なぜだ!」

髭を生やした、大男が机を叩きつけながら大声で怒鳴る。

「那須様の言い分はごもっとも………ですが。この場は……()()()()()()()()()()()()どうかお静まりください」

眼鏡を掛けた秘書の男が男と理事長の前に立つ。

「秘書ごときが、俺に意見するな……」

「ご無礼をお許しください。ですが、こうでもしないと――」

秘書は会釈したまま後ろに下がると、隣で座っていた茜が口を開いた。

「―――()()()()()()()()……私や碧姉と黒兄の父親……」

茜の目線の先に立ち、窓から空を眺める姿に星零学院の教師一同息を飲んでただ見守るのみであった。


「――橘竜玄(たちばなりゅうげん)

「――竜玄(りゅうげん)……懐かしいなその呼び名……」

竜玄は空を眺めていると、茜の方へ振り向き一直線に茜の元に歩み寄る。

「………え……」

茜は驚きの余り竜玄の手を振り払うが、その手が自分の頭を撫でていたと分かると、少し戸惑っていた。

「自分の子供にすらこんない警戒されてるとはな………竜玄殿はさぞ、厳しい教育をしていたのですかな?」

那須が尋ねると、竜玄はほくそ笑んだ。


「嫌われるのは慣れてる………まぁ、実の子供に避けられるのは少し辛いがな」

竜玄は茜の頭を再度撫でると、満足したのかそのまま理事長の共に別室に移動する事を提案した。

「良いのかい? 久方ぶりの家族水入らずの時間を仕事に費やして」

「良いんだよ……子供達の成長さえ見れればそれで……」

すると、背後から竜玄の隙を突いた攻撃が後頭部を直撃した。

「――ぐッ!」

竜玄は後頭部を擦りながら、後ろを向くとそこには―――

「――茜それに、碧まで」

大急ぎで来たのか碧の額には汗が滴り、二人揃って涙目であった。


「―――パパのバカ!」

「お父様のバカ!」

二人の拳が竜玄の顔をへこませ、そのまま壁に向かって飛んでく。

「竜玄は、自分の子供を相手にするのが苦手なのかねぇ……」

竜玄は剥がれ落ちた瓦礫をどかしつつ立ち上がり、二人を見つめる。

「俺の事を嫌ってないのか?」

二人は首を振りそのまま竜玄に抱き付いた。

「あの場所で……あの頃の橘家の問題上、そのまま家にいたどうなってたかなんてわかってる」

碧は顔を上げて、笑って見せた。

「小さかった茜や私を守り育ててくれたのは、お母様や兄様であり……影ながら守ってくれたお父様がいたからです」

「あ……茜もそう思う……記憶はほとんど無いけどね」

すると、竜玄は瓦礫の上に倒れ込んだ。

「お父様!」

「パパ!」

二人は起こそうとするが、竜玄はすんなり立ち上がり二人を再度抱き締めた。

「勘違いしてたのは、俺。まだ子供なのに俺の心配は何処え消えたのやら」

竜玄は二人の髪がグシャグシャになるほど撫でると、理事長に真剣な眼差しを向けた。


「いくら家の馬鹿息子が他の騎士より秀でても、所詮は封印された騎士だ、他の騎士と大差ない。――そんな奴が一国の問題に首を突っ込んだのはどういう事ですかな?」

竜玄は笑いをこらえつつ理事長を見つめる。


「ははは………私です」

竜玄は理事長の前に立ち、その溢れんばかりの威圧を理事長に押し付けた。

「その件は、まぁ良いでしょう。問題はここからです」

理事長は用意されていた紅茶を一口含む。


「貴女のその豊富な魔導知識を生かして、私の義父――泉家の神器鍛治職人(泉川柳)と力を合わして……黒の黒幻をより黒に合った神器にして欲しいのです!」

頭を下げた竜玄の姿に那須と理事長は慌てふためいた。


「帝王と言う礎を築いた、その一人の頭を下げさせるって……理事長って何者」

秘書が事の衝撃の余りに思わず引くと、理事長は「頭を上げてください」と何度も言うが竜玄は聞かず、何度も頭を下げた。

「何故そこまでして、黒坊主にこだわるのですか。当主殿」

那須が腕組みして尋ねきた、その様子からは想像出来ないほどの怒りと殺意が滲み出ていた。

「那須家の方の面々にもいつかは話すつもりだが、今ではない。それで十分か?」

竜玄がうやむやにしようとしたがかえって那須を怒らせた。

「ふざけんなよ! 本家だろうと分家だろうと、てめえと強さなんて大差ねぇ……いまここで潰すぞ」

「那須様!」

秘書が止めようと駆け寄るも、那須の突き出した拳が竜玄の顔を直撃した。

かのように見えたが、竜玄は人差し指で那須の拳を受け止めていた。


「悪いが、子供の前でも。―――加減は出来んぞ、くそ坊主……」

竜玄は那須の拳を掴み、そのまま力でねじ伏せた。

「ぐわぁぁぁぁぁぁ!」

「次は無いぞ……次は」

竜玄の目付きが、殺意だっていた事に那須は今さら気付いた。

「―――申し訳……ありません……」

那須はそのまま秘書の運転する車で星零を後にする、その場に居合わせた茜や碧は驚きつつも、小さい頃よりよく見ていた大きな父の背中と重なっていた。


「悪いな……理事長先生。身内で揉めてしまって」

理事長は鼻で笑うと、ソファーに腰を掛けやれやれとタバコに火を着けた。

「――禁煙なさるのではないのですか?」

理事長の秘書が指摘すると、理事長は知らんぷりしてタバコをくわえた。

「帝王級の奴が暴れ出そうとしたんだ、命がすり減ったかもしれないんだ、一本位見逃しな」

秘書は溜め息を溢し、茜と碧は理事長の隣で紅茶を啜る。


「―――フッ……この紅茶、俺は苦手だ」

竜玄が通された応接室からは他愛ない昔話が聞こえ、所々で四人の笑い声が聞こえて来た。




「どうしたんだ黒?」

自分の呼ぶ声の方へ向くと、レオンが愛用の銃を手入れしていた。

「いや、少し胸騒ぎがしてな」

「そうか」

レオンは詮索しなず、そのまま銃の手入れを続けていた。

「さっきの仮面が、西欧の秘匿実験だよな」

「可能性としてな。ただ、簡単に実験体を出した所を見ると……俺らの事はバレてるが、余り接触しなずに自分の駒じゃない奴等諸とも消しに来る筈だ」

レオンは銃を構え、メンテナンスの確認を終えると立ち上がり黒に手を差し伸べた。

「助かったよ。あの時、お前が仮面を斬ってくれなかったら……全員死んでた」

レオンはお礼を言うと、黒の部屋を後にした。

その時、レオンは感じた。

テーブルの脇に置いてある血燐を見詰める黒の表情はどこか悲しく……異質なオーラを感じ取っていた。


「――黒。聖騎士にしては、力が無いのかあるのか中途半端な奴だな」

レオンは一人、皆が寝静まった夜の廊下を歩きながら考えていると、目の前を横切る人影に目線を奪われた。



「――コレは……一気に戦況が不利になったかもなー」

レオンの見詰める先には、フリフリ制服姿の女子生徒が一人鼻歌混じりに歩いていた。


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