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難攻不落の黒竜帝  作者: 遊木昌
一章 漆黒の楔編
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一章四節 リーラと『神器』



「会長。…車の用意が出来ました」

 「えぇ…直ぐ行きます」

 星零学院の制服に身を包んだ1人の男性が同じ制服を着こなした女子生徒を呼ぶ。


 「もう、行くのか? 」

 杖を突きながら、修道服姿の老婆が女子生徒に尋ねた。

 「はい。それに、理事長も早く帰って来ないとうるさいので。それでは、大変お世話になりました。」

 「良いんだよ良いんだよ、またおいでなさい。でも、今度は妹さんとお兄さんとで来なさいな」

老婆がニッコリ笑い、女子生徒の手を優しく握る。


 「貴方の『運命』に…幸がありますよう」



「――はい!」

女子生徒は満面の笑顔で返し、執事が用意した黒塗りの車へと乗り込もうとする。

 しかし、老婆は何かを思い出したのか急いで修道院へと戻ると若い修道生と一緒に黒色のジュラルミンケースを女子生徒に手渡す。

 「コレは…何でしょうか?」

 女子生徒は手渡されたケースの蓋を開けて中身を確かめる。

 中には、刀身も鞘も何もかもが真っ黒な色で統一された刀が厳重にしまわれていた。

 「――あの子に渡しといておくれ。あの子事だから、お婆様に受け取りに来るように言われたのを忘れていると思うの。それに……コレが必要になってくる時期かもしれん。貴方は何も知らないかもしれないけど……いつか真実を知る日が来るわ」

 黒色の刀を受け取り、深々と頭を下げ小さな修道院を後にした。



そして、現在。

 黒がその場で起こした事は、他の生徒達を黙らせるのには、申し分なかった。

 バリッスを片手で殴り飛ばした事に生徒達が沈黙しているのではない。

 生徒達が黒へと向かおうとして足が一歩一歩重く感じるのは、単純に黒との力の差が彼らの戦う意欲を無くさせる。


 「……無理じゃないですか…あんな化け物と戦おうとか…」

 「学院始まっての、大事件ですよ」

 「理事長先生! 早くあの侵入者をどうにかしないと、学院の生徒達危険が及ぶかもしれません! 一刻も早く確保しなければ生徒が危ないですよ」

爪を噛みながら女教師は鋭い目付きは、中庭で1人佇む男に向けられていた。

 「問題無いでしょう。生徒に被害が出ても、死ぬことは無いでしょう。ましてや…そう簡単に死んでいては、騎士にすらなる資格はありません」

 理事長がお茶を啜りながら、女性教師にもお茶を淹れるように秘書に頼む。

 「何故…。理事長はそこまで落ち着いて居られるのですか! この学院始まって以来の事件、大事件ですよ!? それをお茶何かを飲みながら平然と……」

 女性教師が言葉を言い終わるよりも先に、理事長の隣に居た女子生徒と男子生徒の刀と薙刀が、理事長に迫ってい女性教師に向けられていた。


 「これ以上進まねぇ事を、オススメするでち」

長いマフラーをした女子生徒は刀を片手で回しながら、理事長の前に立つ。

 「俺的には進んでくれた方が、この先の展開が面白いんですけどね」

長身のマスクをした男は薙刀を肩に担ぎ、眠たそうにあくびをして女子生徒の隣で座る。

 「コラコラ…お前達もその辺にしときな。それとあんた達もリーラの所に行きなさい。リーラがドライバを持って行ったからって、リーラが勝てる保証はないんだよ?」

 理事長の突然の発言に、その場に居合わせた者達全員が凍りついた。


 「理事長! リーダーがやられるって言いたいのかよ!?」

 長身の男は、机を力強く叩き理事長の胸ぐらを掴み無理矢理に椅子から立たせる。

「そうだち! リーラちゃんがやられるはずないっち!」

 マフラーをした女子生徒が刀握る力を強くしながら言い放、刃先を理事長の目に向ける。

 だが、一瞬の内に理事長の隣に居た秘書が目に止まらぬ速さで刀を持つ女子生徒から刀を奪い取り、理事長の胸ぐらから男子生徒の手を離させる。

 理事長は襟を直し、中庭へと振り替える。


 「なら…見てみなリーラでも、勝てない根拠を――」



 リーラは歩きながら考えていた、自分の兄弟子の力は昔理事長から聞いた事がある。

 「――私にはリーラさんが来る前に、三人の弟子がいたんだよ。一人はリーラお前と同じ同年代でこの学院『星零学院』の生徒会長をしている子。そして、その子の妹で今は別の学校にいる子。そして、その子達のお兄さんであり……」



 「現在、最強と言われている騎士団『異を穿ちし者(グラパイアス)』の団長を倒した男――」


「本当に居るとは思っていなかった…でも、私にはドライバがあるから互角位には渡り合えるはず…!」

 リーラが三階へと着くと辺りには、バリッスを治療している下級生達がいた。

 相当強い力だったのかバリッスの意識が目覚めても、動ける状態ではなかった。

 「リィ…ダァ……」

 自分を呼んでるバリッスの傍らに行くと、何かを必死に伝えようとバリッスが唇を小刻みに震わせながら掠れた声をあげる。

「あ…いつ……魔法…意…外に…も何かある…ぜぇ……」

 そう言い残し、意識を無くしたバリッスを見てリーラはドライバの入ったジュラルミンケースを握る力を強くする。




 修道院から帰る道のりで、男子生徒が生徒会長である女子生徒に質問をした。

 「…会長はその、黒色のドライバはなにか知ってらっしゃるのですか?」

 男子生徒は女子生徒の膝の上に大切そうに置かれている白色のジュラルミンケースに入った黒色のドライバを指差す。

 「えぇ、知ってるわ。だって、私の兄さんが使っていて壊したものだから」

 女子生徒が少し間を開けて答える。

 「これは、兄さん専用と言っても過言ではない物。まだ発見されていない物や発見された物は、そのほとんどが古代兵器を使用者に最も適した形に造形し直される。名を――【神器】今現在では、異形に対して絶大な対抗策として世界各地で集められている物なの」

 ドライバとは異なり、ドライバ以上の力を奮うことが可能な古代の兵器。

 ドライバは古代兵器の一部やその機能を複製し、多数の武装に組み込んで作られている為、ドライバと古代兵器の間には大きなスペック差が存在する。

 ドライバ十数本を同時に使用すれば、古代兵器と同等な力を発すると言われている。


 「そんな物をお持ちだとは、会長のお兄さんはさぞかし高名な方なのですね」

 男子生徒はなぜか恥ずかしそうに会長の顔をチラ見しながら、話を続ける。

 だが、会長はどこか心配そうな顔で窓から見える景色を眺める。

 「……兄さんは、高名なんかじゃない。ただ()()()()()()()だけの人。()()()()も無い…ただ力を求めた一人の男――」

 会長は、膝に置かれているジュラルミンケースを撫でるように触る。

 しばらく車が道なりに進み、学院の側へと近くなりに連れて、会長の顔色が変わる。

 それと同じように、男子生徒も腕時計で時間を確認する。


「おかしいですね。この時間なら今は授業中のはず、星零学院から感じるこの嫌な魔力は何でしょう?」

 「…兄さんね。理事長に呼ばれてた筈だから……もしかして、何か問題を起こした? それか、理事長が何か余計な事をしたかですかね」

 男子生徒は、急ぎ学院に戻るように運転手へ告げ徐々に速度が増す。



 窓に目に写る景色が、先ほどまでの自然豊かな森から様々な住宅街や巨大な建築物であるマンションなどが建ち並ぶ景色へと変わる。

 生徒会長である女子生徒は、星零学院全域に怪しげな雲が掛かっていることに、その時は気付いていなかった。


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