二章九節 降臨されし大樹
暴風が吹き荒れ、霧が視界を妨げ目の前すら危うい中で黒達は敵の本拠地目指して進んでいた。
「なあ……霧の中を進むのは言い案だけどよ」
ロークが先頭の黒に小声で話しかけた。
それに続いたのか、殺女とステラまでもが、同じ不満を漏らした。
「白ローブに変装する意味あった?」
ローク達の服装は、全身隅々まで白ローブと同じ見た目であった。
「衣装はいんですが……私は何で顔まで変えないといけなかったんですか?」
ステラに至っては、顔全体を特殊メイクで変えられていた。
「まあ、ステラの姉ちゃんは顔がバレてるから仕方ないけど。てか、誰が諸々の準備したんだよ」
ロークの質問に黒と直ぐさま反応すると、カッコイイ決めポーズと共に名乗り出た。
「軍事機密や情報操作隠蔽から暗殺や破壊工作。何でも御座れ!」
「私達、橘家に掛かればハッキングなんてお手のもの、特殊メイクで変装すればあら不思議、誰にもバレずにお仕事解決!……何やってるだろ私……」
黒のテンションに影響された碧が1人で葛藤している中で黒はそのままのテンションで説明を続けた。
「この変装、そう易々見破られる事は有りません。安心して潜入に専念できます」
黒が立ち上がり変装の自慢をしていると、黒達の声に気付いたのか向かいから白ローブの数名が近付いて来た。
(どうすんだよ、バカ野郎!敵さん来ちゃったよ!)
ロークが怒りを露に黒に詰め寄ると。
(安心なされよ……こう言った危険な時こそ、安心安全の橘ブランド)
黒は懐から橘製のカプセルを取りだし、敵目掛けて投げ付けた。
(橘製『簡易魔術カプセルⅥ』!)
投げ付けたカプセルが敵に接触すると同時にカプセルから紫色の煙が挙がり、数名の白ローブが一瞬で眠りについた。
「今の…何だよ」
ローク達が目を丸くするなかで、またもや、ローブ数名がやって来た。
(また、来たぞ。早く次の橘ブランド出しやがれ!)
ロークの焦りも黒は理解していた。
眠った仲間を見付けてしまったら、警戒され唯でさえ失敗するリスクが高い作戦が更にリスクが高くなってしまう。
徐々に距離を近くなっていき、倒れたローブの直ぐ側に来ると、透かさず殺女が飛び出した。
「オラァ!」
剛腕から繰り出される、攻撃は意図も容易くローブ達を無力かさせるレベルであった、殺女の咄嗟の行動に黒とロークは硬直していた。
咄嗟の機転によってどうにか難を逃れるが、敵の本拠地には高い壁が聳え立っていた。
「たっけー。コレは登るの大変だぞ」
壁を見上げながら、辺りを歩いているとロークは地下水路を見つけた。
「どうだ、罠か?」
音魔法を使って水路を調べる碧にロークが尋ねると、碧は何とも言えない表情をしたまま首を横に振った。
「わかりません。余りにも複雑かつ深すぎて、音が広がる範囲には何もありませんけど……その先は何とも」
碧の音魔法は半径5キロまで音を広げ、反響音で隠れた敵や不審物を感知するのに長けているが、碧ですら分からないと言うことは、相当複雑かつ深いのだと黒は考え、二手に別れる事を提案した。
「敵の本拠地で、二手に別れる何て危険過ぎるぞ」
「ロークさんに同意見です!大間かな敵の人数、相手の戦力が分からない以上は別れない方が良いと思います」
ロークとステラが反論するなか、殺女は黒の意見に賛成した。
「何でだよ、殺女の姉ちゃん!二手に別れたら敵に囲まれたらどうす…るん……だよって、そうか!そう言う事か。そのための変装か!」
ロークは手を叩き黒の作戦に賛成すると、ステラも合意した。
(全くそんな事考えてなかった…)
黒はロークの考えのまま二手に別れ、変装して内部から侵入するのを、ステラ、殺女、碧に任し水路からは、ロークと黒で向かいヘレナとの集合場所に向かた。
その頃、茜達は山岳地帯を通り過ぎ、荒野に差し掛かっていた。
「距離にして、六キロです。もう間もなく敵の本拠地が見えてきます」
偵察部隊からの通信の通り、茜達の目と鼻の先には城の様な建物と、改造ドライバで豹変した化け物が大規模の進軍を始めていた。
徐々に近付いて来る化け物達に、騎士達は怖気いていた。
「何なんだよ、あの数……こっちの倍以上あるぞ!」
「勝ってこ無い…」
騎士達が怯えるなかで、ただ1人馬から降り、先頭に立った。
「怖気付いたのなら結構。ただし、この軍団が進む先にはあの子供達……俺達の国が後ろにはある事を忘れるなよ」
ハートの言葉を聞いた騎士達は次々と一歩を踏み出し、剣を構え、雄叫びを挙げながら突き進んだ。
すると、茜達の上空に1つの大樹が、雄叫びを挙げていた騎士の前に落ちてくると、化け物を下敷きにした。
茜は震えを止めることを出来ずにいた。
「この溢れんばかりの魔力……心地好くて大好きな匂い!」
泉も茜の手を握り、笑みを浮かべた。
「やっぱり……親子だねぇ」
泉と茜の見上げる先には、1人の女性がいた。
チャイナドレスに身を包み、スレンダーな足は妖艶な魅力がありながらも、髪型をツインテールにして少し幼さを醸し出すその女性は笑みを浮かべながら、雲の上から伸びる大樹に立つ姿は、まるで女王のようだった。
「おい!どうしたんだよ、黒!」
黒はロークと入った、地下水路を戻り入り口から空を見上げた。
「天から大樹が伸びてやがるな…てか、おい!黒どうした?」
ロークは黒を揺さぶり意識を取り戻させた。
「悪いローク。援軍は来たし、碧達も多分大丈夫だろ……あの女王様のことだ」
黒のテンションは上がり、ロークと共に地下水路を突き進んだ。
「さて、おいたが過ぎるのはあなた達?…まっ、関係無く全員。お仕置きね」
大樹が二つに別れ巨大な腕えと変わり、化け物目掛けて振り下ろされた腕は地盤ごと化け物を木っ端微塵になり、壁上にいたローブ達は城壁諸とも砕けていった。




