二章五節 新たな出会い
老婆を下敷きにしたとどう時刻、ローブの集団が次々とアジト内に戻り始めた。
「司教様……あぁ司教」
化け物も同様にアジトに帰り始め、ハートが待機しいる北側に逃げた者達も等しくアジトに戻り始めた。
「何が起きたんだ?」
不思議に思ったハートは直ぐに、敵の集まる所に行こうとするが。
男がハートの隠れる木を見つめていた。
それだけならまだしも、ハートは男の殺気に身動きが取れなかった。
(くそっ……動けよ、動け!)
男はハートを背に、アジトの中に消えていった。
黒は碧に魔力を分け与えると、碧が殺女の治療を始めた。
「殺女さんの容態は?」
車イスの少女が心配になって、近寄ると。
「ステラちゃん……大丈夫よ」
殺女が少女の声に反応したのか、少女の手を握った。
「よかった……ホントによかった」
少女が涙ぐみながら殺女の手を強く握りしめた。
「ステラ……ステラ?まさか、ハルベーゼ王国のステラ・ハルベーゼ第一王女が何で此所に……てか、死んでなかったか?」
ステラは涙を拭い、黒に挨拶をした。
「ご機嫌よう、ハルベーゼ王国元第一王女ステラ・ハルベーゼです。以後お見知りおきを」
ステラの挨拶に驚きはしたが、お辞儀をすると、塵が黒達を包み込み足元に巨大な魔方陣が形成された。
「まさか、あのババァ!」
ババァの方を向くと、血だらけのババァが塵を操っていた。
「これで、計画が完成する!」
「くそ!」
黒は鞘ごと黒幻を老婆に投げつけるが、老婆を貫通して壁に刺さる。
瞬時に黒は老婆に向け黒炎を放つが、躱され黒幻に炎が当たっただけであった。
「くそっ、子供だけでも逃がす、近くに集まれ!」
下層に居た子供全員に転送魔法を使い、地上の茜の所に飛ばした。
「子供!?どうしたの?」
困惑していたが、直ぐ様二人の魔力が遠くに飛ばされた事を感知すると。
「急いで子供達を安全な所に、敵の目的は子供達よ!」
数十人の子供達を連れ、魔導師数名が大和に転送していった、茜は急いでアジトに侵入するが、残されていたのは。
老婆と白ローブの死体と下層で壁に刺さった黒幻だけであった。
「…黒兄…碧姉…」
茜が黒幻を強く握りしめ、遠くから微かに感じる黒達の魔力は今にも消えそうだった。
起きたら、辺り一帯が地中海風の家屋が建ち並んでいた。
「何処だ、ここ」
黒が辺りを見回しても、家屋が建ち並んでいるだけであった。
すると、目の前から白ローブと共にステラを車イスごと抱き抱えた殺女が走ってきた。
「兄さん、早く!」
殺女の後ろから走りながら白ローブ達の足止めをする碧が見えたので、黒は腕を捲り綺麗に整備された道路に向け魔法を放った。
「防御魔法【盾となれ】」
道路が突き抜け碧達の後ろに壁が現れた。
「小癪な、迂回して仕留めろ車イスのガキは殺すなよ大事な計画の一部だ」
「詳しく聞かせてよ」
迂回しようとした手下達を難なく制圧すると、指示を出していた指揮官らしき男がうるさく吠えていた。
「私を殺しても無駄だ、計画は既に始まっているんだ。お前達がどうしようと計画は覆らない!仲間同士仲良くくだばれげぇ」
男が喋り終わる前に黒は、男の首を蹴り飛ばした。
「あーやっちまった。話聞けなかった」
黒が辺りを見回しても他の手下達は既に話せる者はいなかった。
「まっ、アイツが喋らなかったと思えば良いんだよ。そうだよ」
一人納得している、白ローブの一人が動きだし、黒に向けナイフを投擲してきた。
透かさずないとを掴み取り投げ返すが、相手の動きが黒より早く、腹部に蹴りを食らった。
「存外対したことねぇな」
白ローブの下で笑みを浮かべていると。
「いや、そうでもねぇぞ」
白ローブの脚を掴み、手前に引きバランスを崩した瞬間を見計らって、白ローブを家屋に叩きつけそのまま腹部に裏拳で追撃をすると倒れた。
「対したことはねぇがなかなか骨のある奴だな」
腹部を押さえつつ、背後に回った小型監視カメラを血燐で切り裂くと、白ローブの肩を蹴り起こした。
「監視は無くなったんだ、起きて事情を教えろ」
白ローブは立ち上がり、ローブを脱ぎ捨てた。
「俺の名前はロークだ、あんたは?」
「俺は、橘黒だ」
すると、ゴミ箱から小さな子供が現れ、ロークの後ろに隠れた。
「誰だ?」
「俺の妹のキークだ」
ロークは妹を撫でていると、更にゴミ箱やら屋台の下から老若男女関係なく現れた。
「どうなってんだよ、家が有るのに使わないのか?」
黒が尋ねと、ロークが妹を抱き抱え答えた。
「この家は罠だ、入ればローブの奴等に見つかって殺される」
黒が血燐を鞘に収めると、上空から落ちて来た碧と再会した。
「無事だったか」
「えぇなんとか、ステラさんと殺女さんも近くで隠れてます。所で彼らは」
碧が警戒してドライバを構えると、黒がドライバを下ろさせ敵意が無いことを知らせると、キークが碧に近き飴を差し出した。
その後、ステラ達と合流した黒達はローク達が暮らす地下まで降りていった。
地下は普通に町があった、壁や天井はコンクリート製で出来ていたが、どの建物もトタンや廃材等で出来た手作りの建物だらけで、とても先程の地中海風の家屋とはかけ離れていた。
「見ての通りボロいけど、寝る場所には困んないぜ。それと、飯も旨いから大抵のとは忘れちまうよ」
角を曲がると、多数の飲食店が建ち並んでいて旨い料理の臭いがした。
少し歩いた先にあった焼き鳥が美味しい店に入り、ご飯を食っていると、道の方から悲鳴が聞こえ急いで飛び出すと。
血だらけの黒色の狼と灰色のローブを着少女が歩いていた。
「白ローブの仲間かも知れん殺せ!」
石や棒切れが少女に当たり頭部から血が垂れていた。
「邪魔だ、俺がやる!」
焼き鳥屋の店主が銃を片手に飛び出し少女に向け発砲した。
狼が少女を庇い倒れると、店主は透かさず少女に向け発砲するが、飛び出した黒が銃弾を切り落とした。
「何すんだ、あんた!」
店主が黒に銃口を突き付けると。
「オッサン待ってくれ。おい橘、何してんだよそいつ敵かも知れんのだぞ」
ロークが店主を止め、黒に近づくと。
「コイツは敵じゃねえ。俺の仲間だ」
すると、碧が野次馬を掻き分け倒れた狼の側に座り治療を始めた。
「久しぶりだな。ヘレナ」
ヘレナが黒に向き直すと、灰色のローブを脱ぎ捨てバックから黒色のローブを取りだし着替え、黒の前で片膝をついて頭下げた。
「敬礼しなくていい、昔じゃねえんだから」
「いえ、私にとってコレは普通なのです。どうか……我々の元にお戻りください」
ヘレナが頭下げ続けていると、傷が治りかけの狼も頭を下げた。
「もういい勝手にしろ」
「戻られないのですか?」
ヘレナが質問すると。
「色々片付いたら、考えとく」
一気にヘレナの表情は明るくなり、立ち上がるが空腹のため倒れこんだ。
ヘレナを交えてと事情をロークから聞いた。
「ここは元々ただの農村だったんだけど、 白ローブの集団がここを占拠して都市を造り上げたら村人を殺して始めたんだ。だから、俺達は殺される前に地下に隠れたんだ」
「だから、 ゴミ箱から出てきたんだな。じゃあ奴等の計画は知ってるか?」
黒が尋ねると、騒がしかった店が静まり返った。
「目的は、理想世界の実現。世界の再創」




