二章一節 予選
騎士団の推薦枠を賭けた試合宣言され邪馬国の大型闘技場では、多くの兵士や職員が慌ただしく作業をしていた。
「まさか、優秀な戦士を育てるのではなく、見込みのある戦士を候補生から選ぶとは……流石は軍師殿だ」
鎧を身に着けた騎士よ横には、軍師と呼ばれているマント姿の青年の姿があった。
「いえいえ、私は何も。これも全て緋音様の考えですよ」
軍師が鎧騎士と別れ、一人夜道を歩いていると。
「軍師殿、こんな夜分に一人出歩くのは危険ですよ」
屋根伝えに現れた男に軍師は見向きもしなず、通り抜けると。
「まぁまぁ、そんな素っ気ない態度取らないでよ」
屋根伝えにいた筈の男がいつのまにか軍師の隣に立ち肩を組み、軍師の目の前に1枚の写真を見せ目の前で燃やすと、脇の通路に消えていった。
それを見ていた軍師は、笑みを浮かべ羽織を脱ぎ捨てると、背中に4本の剣と竜があしらわれた黒色の羽織に着替え鼻唄混じりに夜道を再び歩きだした。
宣言通り大型闘技場内は沢山の人で埋め尽くされていた、観客や各国で中継するため大量のカメラが設置されていた。
「うわぁー緊張してきたよ……私変じゃないかな?ねぇ、リーラちゃん」
愛莉はリーラの前でターンをして衣装を見せた。
「う……うん、大丈夫だよ。愛莉ちゃんとっても似合ってるよ。」
リーラが苦笑いを浮かべていたのには理由があった、愛莉とリーラは仲が良いが二人が並ぶとスタイルが抜群な愛莉の方が目立ってしまう。
胸は巨乳まではいかないが、それなりに実っており。
腰の括れや手足のちょうど良い細さ、誰にでも優しく接し周りに振り撒く笑顔、クラスの大半の男子は冬服の愛莉より、夏服の愛莉に釘付けになっている。
それらを考慮すると、今回の衣装は奇抜過ぎた。
参加者の服装は男子はロングコートと金色の装飾品をあしらった特注衣装なのだか、女子は着物とミニスカートに同じような装飾品をあしらった服であった。
見た感じ、戦闘に不馴れな衣装だった。
特に、愛莉の姿を見た男子は数人が病院に運ばれた、恐るべし愛莉の魅力スキル。
闘技場の観客席の一角には、騎士団長が一堂に会していた。
「よくよく考えると、こんなに騎士団長が集まる事って早々ないよな…」
「有ったとしても世界の終わりか、大規模戦闘だけだよ」
他校の生徒の話がリーラの耳に入り、本来の目的を思い出した。
「どうしたの、リーラちゃん?」
顔色が優れないリーラを心配して、休憩室から水を持ってきた愛莉もリーラと同じ考えだった。
「これが終われば、大規模戦闘……戦争だと決まって無いでち」
三奈が二人の会話を遮る用に、割って入る。
「そうだよね、三奈の言うとおり………」
リーラは三奈を見つめると、言葉を失った。
それと同じく、愛莉も目を輝かした。
「笑っちゃうよねぇー姉さんの衣装ぉ」
渚が薙刀を担ぎながら笑いを堪えていると、顔を赤くした三奈の可愛いらしい足が顔にめり込んだ。
「服について触れないででち、触れるでないでち!」
ものすごい見幕でリーラと愛莉を睨み付けた。
愛莉は咄嗟に場の空気を変えるため話題を振った。
「そっそう言えば、予選ってまだかなー?」
棒読みであったが、三奈の険しい顔は普段通りに変わっていった。
「予選のことでちか。まさか、聞いてないのでちか?」
三奈の一言に二人共首を傾げていると、通路から碧の姿が見えリーラは話かけようと近くと。
「あら、三奈さん。その衣装可愛いですね、とても似合ってますよ。そのメイド服」
リーラと愛莉が止める前に、碧はメイド服に触れてしまったが。
「そうでちか?似合ってるでちか……」
顔を赤くしたまま何故か照れていた。
「リーラさん少し、お話が」
赤面していた三奈と埋まっていた渚が起き上がり、碧の話に耳を傾けると。
「予選を受けずそのまま本選に出てもらう。選抜組の内定が決まったのでご報告をと……どうしたんですか?」
碧が固まったリーラを揺すると、愛莉が質問をした
「誰が、リーラを選抜組に選んだんですか」
碧は、端末をいじりリーラの前に差し出した。
「兄さんですよ、リーラさんを選抜組に入れ予選をパスさせたのは」
「何のために?」
「理由何て無いですよ多分……見込みがあったからでしょうか?でも、本選で分かることです」
碧は、リーラに書類と数枚のカードを渡すと通路の奥に向かって行った。
アナウンスの放送が始まり、遂に騎士団推薦枠を賭けた予選が始まりあちらこちらで歓声が響き渡っていた、その中で一人フードの下で笑みを浮かべる、老婆。
「始まるぞ、亡霊にとり憑かれた少女と騎士を夢見た悪魔の戦いが……」
老婆の体は、塵となって消えた。




