一章二十二節 濃霧の先
森の奥地に足を踏み入れるたび、魔力濃度は濃くなる一方であった。
森林での姿形の見えない兵器の探索、初めてのリーラに取って体力的にも精神的にピークに達していた。
(ヤバイ……魔力濃度が濃すぎる!)
今にも倒れそうな体を魔力で強制的に動かしてたが、直ぐに魔力が無くなり倒れ、意識を無くした。
その後、意識を無くしていたリーラが目を覚ますと、目を開けるとミッシェルの背中の上でリーラは目を覚ました。
「無理しなくていいのよ」
「そんな、ミッシェルさんに迷惑が掛かります。何より足手まといは嫌なんです!」
ミッシェルの背中から降りようとしたが上手く力が入らなかった。
「魔力回復に体力使ってるから、今はしっかり休んでおいてね」
「分かり……ました……」
リーラがミッシェルの背中で目を閉じると。
やがて、小さな寝息が聞こえていた。
黒は単身濃霧の中を高速移動していた。
碧達を比較的濃度が低い洞穴で待機させ、濃霧から聞こえる錆び付いた機械音と時折聞こえる咀嚼音が何故か黒の血が騒いでいた。
否、黒の本能が濃霧の先に居る者に反応して、全身が疼いて疼いて仕方がなかった。
移動を止め、樹木の枝で立ち止まり意識を集中させ【庭園】に意識を接続する。
目の前で鎮座する、黒竜に体を預け。
浮島から飛び降り、更に下層まで降りていった。
「おい……オッサンどう言うことだ……体が疼きやがる」
「久方ぶりに来てその反応かい?もっと他に無いの?こう……『苦難を乗り越えて来た仲間同士が、互いに硬い握手をして次なる冒険のため。一時的な別れ』的なの無いの?それに、オッサンじゃなくてお兄さんねっ」
第八庭園の最下層には、小さな木製の家が建っておりドアを開けると、数々の魔法道具や薬品が棚や机に散乱していた。
「ここに来たと言うことは、私の力がいるのかな?」
椅子から立ち上がり、お茶の準備を始めた。
「俺の体は、黒竜に任せてあるから大丈夫だけど、さすがに長時間も任せておけないからな。早速結論を教えてくれ」
「せっかちだねえ~まっ良いけど。なら、始めようか」
黒の体を動かす黒竜は、直ぐ様碧達の所に戻り兵器の場所まで碧達を誘導していると。
唐突に霧が無くなり、目の前には色鮮やかな花が咲き乱れ多種多様な動物が生息していた。
「これは、どう言うこと?」
碧が花に近付こうと一歩進むと。
「…なっ…」
碧の真横には、全身を黒色のローブで身を包んだ“亡霊”が立っていた。
碧は咄嗟に息を潜めミッシェル達に合図を出すと、一旦木の上に登って様子を見ていると。
「嘘でしょ……アイツ気付いてる!」
碧の言葉通り、亡霊は碧とミッシェル達の方向に顔を向けたまま動きを止めていた。
「アイツが本気なら、今頃終わってるかもね」
千夏が両手からナイフを取りだすと。
「カカッ……コイ……オマエ……オナジ」
亡霊が言葉を発すると、背中から長剣を構えた。
「やっぱり来るんだ」
碧はドライバを構え、ミッシェルは全身に魔力を流し体制を整える。
「皆さん、私から提案があります」
リーラの唐突な言葉に碧やミッシェルがビックリすると、千夏はリーラに笑みを浮かべると。
「聞かせて、提案って奴を」




