一章 二十節 贈り物に手を
聖零学院で行われた全校生徒を集めた総会から二日が過ぎた。
聖零学院では、あちらこちらで反生徒会長を唱える生徒が増え生徒会長を辞任させろと反発する者まで出てきた。
「碧ちゃんはちゃんと生徒を纏めてると思うのにね」
反会長の代表から辞任を求められ、理事長は長期任務から帰ってきたら話を着ける事にしようと代表と話すと。
代表は黙って理事長室から出ていった。
理事長はため息を吐くと、評議会と理事長室を繋げる通信魔法を受信する端末が鳴り理事長が端末に触れると。
目の前にモニターが現れ議長の藤十郎が映し出されると、理事長室の周りには人払いの魔方陣が発動する。
ジェット機の中は、リクライニングソファーが並び大型のテレビやワインセラー等が置かれていた、ジェット機には、ミッシェルと千夏、リーラと橘兄妹が座り優雅な飛行機での旅が始まっていた。
「良いのかよ碧、生徒の半数を敵に回してよ」
正面で本を読む妹に尋ねると。
「良いんです、コネだの何だのとリーラさんの『金騎士』の称号を否定するあの人達がいけないのですよ」
「いけない、いけなくないの問題じゃないだろ……唯でさえ色々な奴から目をつけられてんのに」
黒がポケットから数枚の書類を机に置き碧に見せると、碧は驚いた表情で書類を凝視していた。
「今現在で、確認出来てる改造ドライバだけでも数百件それから、古代兵器レプリカ密輸が数件そんでもって、魔術テロ事件数件、大きな事件の前の静けさって奴か」
ソファーにもたれながら話をしてると、隣からミッシェルが暗くなっていた二人の肩を抱き寄せ大声で笑いながら二人を見下ろすと。
「来るなら来いってもんよ、アタシらを怒らしたらどうなるか教えてやるんだよ!」
二人を下ろすと横に長いソファーに倒れるとそのまま眠りについてしまった。
ミッシェルを見下ろしながら黒は額に手を当てこの先の任務が不安と独り言を吐くと、リーラが恐る恐る質問をする。
「任務ってどんな任務ですか?」
申し訳なさそうに挙げた手を引っ込めながら黒達を見ていると、リーラの前に座ると。
「この先の領土は評議会所属の『シャルデーナ皇国』って言って山間の国何だがその先にある霧が消えない場所に古代兵器が在るって噂を確かめに来たんだよ、ついでに古代兵器を回収しにも」
「噂ですよね?霧が消えないってだけの、在るって可能性も限り無く低いんじゃ」
「以上気象や現象があると大抵古代兵器が起こしてたりするもんだ現に何回か有ったからな」
黒が説明をし終わると、リーラが自分の事について聞き始めた。
震える手を握りしめ恐らく不安で押し潰されそうだったのかもしれない、あの時陛下を助けようとした瞬間に自分の中から出てきた制御不能な何かに不安を抱いていたが誰にも相談出来ずにいた。
黒がリーラの肩に手をそっと置くと、誰かを呼んだ。
「起きろ。【黒竜】」
黒の目が青色に変わると全身が光輝き、気付けば目の前に広がるのは。
壁を本んで埋めつくし本棚は天井が見えない程続き下も同様に見えない程長く続いていた。
塔の様な円形の造りをしているこの場所をリーラが興味深く見ていると、黒とリーラが立っている場所にリーラは驚いていた。
それは、宙に浮く浮島見たいな石の土台だった。小さな家だったら建ちそうな程の大きさだった。
すると、下から何が羽ばたく音が聞こえると、リーラが覗き込もうとすると下から全身を真っ黒で目が青色な一匹の竜が降りてきた。
「ここは、俺の魔法で繋げた異空間だ」
リーラの後ろから現れた黒は両手を広げるのと同時に本棚が一斉に動きだし、何冊かの本が黒の前に空中に止まると。
一冊の本を手に取りページをめくると。
「【庭園】とは、古代兵器を造り出した者が己の研究結果や魔法を保存する場所である」
黒が本閉じると、その本は元の本棚の戻ると、また別の本を開くと。
「第八の【庭園】『魔術王の図書館』ここは、魔術王が造り出した魔法が眠る図書館であり、俺が小さい頃見つけて魔術王に魔法を教えて貰った所なんだ」
「魔術王……」
「そう、そんでもってここでオッサンに教えて貰ったのは魔法以外に俺やリーラに眠る魔物『魔物』って呼んでた力の使い方も教えて貰ったんだ」
「『魔物』って何なんですか!?」
「魔術王が残した数多の使い魔の力は膨大だったが我が子同然の魔物達を殺せず、古代兵器の中に封印して永久に眠るようにしたが。
古代兵器が壊れその破片が次元を超え俺達の先祖達の手に渡り。
その力が破片から先祖の体に渡りそのまた子供に膨大な力が受け継がれそうやって別れて行った力は母体であった魔物の力を持った魔物が何千何万と増えて行き何万と増えた力は個々に人格が芽生え己の母体の力と記憶を共有しだした。
また、持ち主が力尽きると先祖の血を引く何年後に生まれた子供に受け継がれそうやって受け継がれていた力が『魔術王の贈り物』敬意を持って『魔物』って訳だ」
「そうだったんだ贈り物だったんだ」
リーラは胸の前で腕を握りしめながら泣いていた。
「他人を傷付ける力じゃなくて贈り物だったんだ」
黒がリーラの隣に座ると、手を握り魔物の力を送るとリーラの頭の中に流れてくる自分の魔物の力先祖いや母体の記憶力の使い方間でもが。
リーラは立ち上がり、右手を挙げ魔物と一緒に母の名を唱える様に叫び。
「我が名は、リーラ・ファルナデス!魔術王の使い魔であり我が力の母体『 幻静なる常闇』母体の名の元に力を示せ!」
右手全体が黒色のオーラに包まれ叫びと共にオーラが強く成っていき。
「示せ!『悪を裁つ常闇 』」
庭園全体を覆い隠す様に現れた黒色のオーラは徐々に大きくなり、オーラから骨の腕、ボロボロな黒色ローブと一緒に鎖で体と大鎌が繋がれた骨の亡霊が現れた。
『我が母の名の元に我が主の問い掛けに応え顕現した。主よ我が力を使え我が母のいや、汝の本能ままに!』
「私の力……皆を守る…絶対に折れない力!」
リーラの体を満たしていた力は混ざった魔力が合わさり消え、常闇色の一色に変わる。
「どうやら、俺と違って『亡霊の子供達』か」
黒竜を見上げ、黒竜は黒を見下ろし二人は笑みを浮かべた。




