一章十八節 円卓と六人の禁忌
扉の先は、壁やシャンデリア、カーテンから椅子の見渡す限り全てが豪華と言う言葉が似合う程の出来だった。
だが、その豪華な内装よりも大理石製の円卓に腰を下ろしている者達に黒は危機感を感じていた。
「これはこれは、皆さんお揃いで」
黒の立っている場所の一直線に座っていた男が立ち上がり、黒達に近付き会釈をする。
「皆様、お待たせして申し訳ない……少々準備に手間取ってしまって」
藤十郎が先程近付いて来た男と握手を交わしていると、扉から一番近くの椅子に座っていた金髪ツインテ女子が口をへの字に曲げながら黒を睨むと。
「おやおや、糞ゴミが何しに来やがったんだよあぁ!?」
女子とは思えない程の清く正しい言葉使いではなかったが、お構い無しと黒も挑発に乗った。
「あれれ~?可笑しいな~ガキが居るぞこんな所に、ガキは早く学校行って算数でもしてな糞野郎!」
負けじと歪み合っていると、何処からともなく炎で出来た鎖が二人を拘束して各々の席に着かせた。
「歪み合う場所じゃねぇだろ」
頭髪は真っ赤に染めてあり、片方の耳には十字架のピアスを着けて尚且つ円卓に両足を乗っけた男が歪み合っていた二人を拘束していた。
「フフッ、何やかんやで皆さんは昔と変わりませんね」
修道服姿の黒髪少女は笑って黒達を眺めていた。
「そうだね、姫ちゃん」
ポニーテールを揺らしながら、学生服の女子は歪み合っている三人を見つめる。
「そろそろ良いかな?」
咳払いをしながら藤十郎が騒いでいた者達を席に着かせ、巳様と龍馬と紬を自分の座った席の後ろに立たせると。
円卓の真ん中が開き、中から映像が映し出された、同じ位に豪華な椅子に腰を掛けていた三人が映し出されると。
藤十郎が口を開け、三人の通称を口にした瞬間、皆真剣な眼差しになった。
「世界評議会並びに聖獣連盟を統括する三人……『亡霊の金騎士』か」
「皆様、映像からで誠に申し訳無い」
真ん中の赤色のローブを纏った一人が前に出て男の声の様な太い声で名前を順に呼んだ。
「聖獣連盟直属防衛組織…『禁忌の聖騎士』
第一席『戦神』ハート・ルテナワークド
第二席『炎神』アルフレッタ
第三席『黒竜帝』橘 黒
第四席『理想郷』ヴォルティナ・ハーウェン
第五席『海竜帝』紅美月
第六席『聖女』笹草姫、以上の騎士達の立ち会いの下『世界評議会議長』獅子都藤十郎の報告を提示する」
藤十郎の提示した案件は聖騎士達を唖然とさせた、アルフレッタが円卓から足を下ろすと。
「黒、お前は……知ってたんだろ?“古代兵器”が動き出したのよ」
“古代兵器”とは、世界の破壊すら容易い程の兵器である。普段は眠っていたり地中や秘境の奥地に等で発見されやすい、ここ地球でも同じ海底や山の奥地に存在しているのが確認されたが殆どが稼働停止の状態で発見されていたが、今回の場合は違っていた。
“古代兵器”が活動し尚且つ、一般人に被害が出ているとの情報であった。
アルフレッタが黙っていた、黒の胸ぐらを掴み掛かると叫んだ。
「何故黙っていた!」
アルフレッタが全身に炎を纏い黒を壁に放り投げたが、すんでの所で受け身を取った黒を追い討ちするように跳躍し黒の脇腹や頭に音速で繰り出された拳は壁と地面を抉るのには十分だった。
だが、黒は瓦礫から這い出ると、首筋を指差しこう告げる。
「悪いけど、昔の騒動で親父から制限掛かってるから分かんないんだよ」
ロングパーカーに付いた埃や破片を払いながら獅子都が提示した情報を通信機にコピーすると。
「この件は俺らが担当するは、ついでに試したいこともあるしな」
通信機をポケットに雑に突っ込むと、円卓を後にしようとした時、黒に話しかけたのはハートだった。
「先日起きた邪馬国襲撃事件で見られた力は、『魔物』のに類似していたがどう思う」
ハートの真剣な眼差しを見つめると、呆れた様に振り向きリーラの力について語った。
「リーラの力は紛れもなく、『魔物』だ。だが、クラスは俺と同じか、あんたと同等のクラスだ」
「まさか、私と同じ神級クラスの魔物だとだが、一般人が神級クラスの魔物を使役するのはあり得るのか?」
「別にどんな種族でも体内に魔物使役しているし大半は覚醒する前に亡くなるけど、竜人族は産まれながら覚醒してるだけであって、リーラみたいに何かの影響で覚醒する事が多い」
なるほどっとした表情をすると、黒がハートに向け笑みを浮かべ、右手から黒色の靄を出すと。
「ついでに、リーラの件と一緒に古代兵器の件もこっちで何とかしとくわ」
「頼んだぞ」
藤十郎が黒に座標を通信機に送ると。
思い出したかのように、アタッシュケースをハートに投げる中には。
「妹が作った試作段階のガントレットだけど威力は俺のお墨付きだ」
ハートが中を確認すると、白色のガントレットが一つだけ入っていたが、ハートが疑問に思った事を口にした。
「どっちの妹だ?」
そんな事かと、素っ気なく黒が反応する。
「二人目の妹だ」




