最終章十九節 想像を絶する試練へ
黒は1人静かに天井を見上げていた――。
右腕には点滴が打たれ、上半身の至る所に意味の分からない装置が取り付けられている。
その上、呼吸器と完全に外と隔絶された病室のベッドで、黒は天井を見上げている。
またしても、この光景かと自分で呟いては、惨めにも1人で仕方無いんじゃねと結論を出す。
昏睡状態から目覚めて3日――3日もの間、黒は天井のシミを数えつつ僅かな魔力で造り出したぼた餅で本や携帯ゲームを操作して、暇な時間を潰す。
時々歪み霞む視界と、極度の疲労感に苛まれゲーム機や本が顔へと落ちて着撃する。
だが、3日ともなればそれなりに慣れていき、意識を手離す前にぼた餅を操る事で顔への着撃を減らす。
とは言っても退屈なのは相も変わらず、時折様子や機械のチェックなどに訪れる看護師の顔をマジマジ見詰める。
病室に来る人が看護師しか来ないんだから、仕方が無い。
1人脳内で呟いては、姿が見えなくなった黒帝竜と黒鬼に問い掛ける。
返事は、当然の様に返って来ずに、無駄に広い精神世界で黒は大声を上げる。
寝たきりの病室と孤独な精神世界を行き来し、暇を潰す。
――暇だ――…。
全ては、この一言に尽きる、現在の黒は暇であった。
数週間前までは、上位領域との戦いでちょっとした生死の狭間に立っていた。
どうにか見逃され、難を逃れ上位領域を脱出した。
転移した先の下位領域では、一足先に帰還していた碧や茜が黒を待っていた。
涙目の未来が梓の近くに居て、帰って来たと言う実感が黒を満たした。
そして、上位領域からその存在を引っこ抜いてきた孤児の子供達とシスターが深々と感謝を述べる。
この命あるのは、皆様のおかげ――何だと言っていたが、正直言うと、覚えていない。
きっと、俺や未来達に言っていたのだろうが、生憎と自分は幼児化解除後直ぐに戦闘へと参加した。
言葉で表すならば、安眠していた所を飛び起きて、そのまま直ぐに刀を振り回し、戦ったのだ。
その為、感謝の言葉なんて聞いている余裕も無ければ、返事をする余裕もない。
シスターの背中に隠れて、頬を赤く染めながら母親の薫や辰一郎や梓に『ただいま』と小声で呟き、涙を流す薫と抱き合う白の親子の再会の場面はとても感動的だ。
きっと、涙も出てくるだろう――……だが、俺自身の状態はあまり良くない。
寝起き後直ぐの戦いからか、極度の疲労感と幼児化解除後直ぐの魔力の酷使によって、魔力は枯渇し意識は朦朧とし始めている。
20年ぶりの母と娘の再会で、感動的な感じで締めくくってしまいたいが、それ所ではなくなった。
いち早く異変に気付いた未来が慌てるので、白達も冷静になったらしい。
らしいと言うのも、俺がつい最近目を覚ますと、そう看護師から聞かされたのだ。
再会を喜んでいた白達に申し訳ない事をしたと思ったが、俺自身も相当危険な状態だったらしい。
「正直言いますと、今こうやって私と話が出来ている事も奇跡みたいな物なんですよ」
看護師や担当医がそうケラケラ笑いながら語った時は、涙が出そうだった。
てか、現在進行形で五体満足で回復するかも分からず、不安な患者の前で『生きてるのも奇跡ですよ』とか、言うか? 言って欲しくはなかったな……。
意識が戻ってから2週間が経つと、体から呼吸器やその他の機械が外された。
その上隔離病棟から一般病棟へと移され、外の空気の美味しさを堪能する。
一般病棟へと移って早々に母親の薫と父親の竜玄が見舞いに来た。
「……ホントに死にかけてたんだな…」
母親の心配そうな顔を見て、それほどまでに危険な状態であったのだと再認識した。
竜玄も神父から受けた毒によって、片目の視力と右半身が未だに麻痺していると薫から言われた時は、流石に耳を疑った。
昔からケガすら負わなかった父親が、片目を隠し車椅子で病室へと来た時は衝撃だった。
それほど上位領域との戦いが壮絶で、爪痕が自分達に深く刻まれている証拠でもあった。
「それと……上位から連れてきた孤児の子達とシスターは、信濃の教会に任せたわ」
「だが、もう一組の方は……。そう簡単には、自由には出来んぞ?」
竜玄が真剣な眼差しで俺を見詰めてくる。
片目でも、その目力は強く流石は俺の親父だと思う。
「そうか……。まぁ、彼女達も敵意は無さそうだったし、何より白の事を影ながら気にしてた」
「だが、元は上位の聖職者……。それ相応の力を認められた者達だから、恩恵が与えられたんだぞ」
身勝手にも敵意の有無1つで、敵となりうる存在をこの下位領域に招き入れた黒を叱るように、竜玄の声音が低く憤りを感じさせる。
やはりと言わざる得ないが、彼女達を見捨てて上位に残すのも考えたが、彼女達の行いを考えれば処刑は免れない。
敵となり下位領域に牙を向く事や、彼女達経由で再び下位領域内にて、上位の者達が攻めてくる可能性も否めない。
とは言っても、リスクよりも彼女達の行動によって、今がある事には変わりない。
「確かに、元とは言え敵であったのには間違えはない。だが、彼女達が俺に魔力を与えて、幼児化を解除してくれた。あのままの状況なら、上位の勝ちは決まってた。それなのに、わざわざ俺を解放するか? その上、白の恩恵を移す手伝いすらした。警戒はあれど、疑いは少ないと俺は思うが?」
黒が竜玄と薫に彼女達が、敵にはなり得ないと断言出来るほどの証拠とは言えないが、その確かな事実を告げた。
やはり納得のいかない竜玄だったが、隣の薫が竜玄の耳を軽くつねる。
どうやら、警戒する竜玄とは打って変わって、薫は俺自身に何かしらの考えがあっての事だと、彼女達の身柄をどうするか俺に一任してきた。
もちろん、俺にそんな考えなどある訳もなく、ただ白の事を気に掛けていた良い奴だった。
それに、幼児化解除の強力と俺を結界から出してくれた人達だ。
――言うなれば、恩人である。
そんな彼女達を見捨てる事など出来る訳もなく、何より白がそれを知った時の悲しんだ顔を想像してしまった。
敵であったとしてと、少なからず白とは何かしらの接点があった。
元は下位領域出身とは言え、20年もの時間が存在している白が上手く馴染むには、同じ境遇の者が必要だと思っている。
信濃へと移った孤児の子達とは会おうと思えば会えるが、そう簡単に会える訳でもない。
白にとっての家族が、平和に生活出来ていると分かっていても白は不安で孤独だ。
だが、何も監視を付けない訳にはいかないのは事実であり、他の騎士が彼女達を敵視する可能性もある。
人は未知の存在には酷く怯え、恐怖のような感情を抱きやすい。
嫌悪の感情が、募りに募れば最悪の結果は、内部崩壊であろう。
どうにかして、彼女達の安全を保証したいが、自分が率いている黒焔と竜帝は言い方は悪いが仲良く出来る保証は無い。
敵対はしないとも言えず、未来が彼女達と自然と仲良くなれば、自ずと仲間を心を開く――と思いたい……。
「……黒…。彼女達の事は、あなたに任せたいけど…。今は、それ所じゃないって顔よね?」
薫が酷く悩んでいた俺を見て、彼女達の身柄は自分が責任を持つと言ってくれた。
とは言え、薫自身も円卓の仕事や任務などがあるわけだ。
その上で、彼女達の監視をするとなると、相当な苦労と労力だと思う。
しかし、黒もクソが付く程の生意気で、自分の実力の高さに自身に満ち溢れた者達であれば、軽く叩きのめして、伸びきった鼻をへし折って落胆させた上で、十二単に任せるのだが――……。
そもそもが、彼女達は十分強い訳だ。
正直言うと、上位の恩恵が無くなった彼女達であっても、素の戦闘能力は非常に高い。
十二単に任せれない以上、自分が2人の監視をする事となる。
だが、今の自分にはそんな余裕はない。
だから、円卓のような大所帯ならば、迂闊に動く事も出来ず薫の監視があれば疑いも速い段階で無くなるだろう。
体調が良くなり始めた頃に見舞いに来たノラとじい様から、ノラの一件や騎士団での立場などの話がてら、ノラから聞いた話で特に『姉』が化け物であると言う事を知った。
「黒さん。薫様から、話し聞いてますが……。正直言って、彼女達を円卓に所属させるのは、かなり危険だと判断します」
「その根拠は? それに、メリアナだっているし母さんもそこまで弱くはない。問題があっても、あっちで勝手に解決するだろ?」
心配し過ぎているノラだが、コイツ自身が一番彼女達の危険性や能力を熟知している。
だが、ノラの心配していた点は、円卓とは一切関係は無かった。
と言うよりも、しばらくして俺の元へ駆け込むようにノラが逃げてくるようになったのが良い証拠であった……。
「おはようございまーす。橘さん、ノラ来てますよね? どこですか?」
母親に任せたが、自分も少なからず彼女達の事を心配はしていた。
何しろ下位領域へ連れてきたのは自分であり、彼女達の意志を確認したかも急いでいたので良く覚えていない。
だが、2人とも下位領域には早々に馴染んでいた――馴染み過ぎていた。
時折近況報告として、黒焔の事務員が任務状況や大陸の状況を教えくれる。
その内容では、ステラや綾見達もあまり見てやれてはいなかったが、十二単に毎日しごかれている事や円卓と黒焔での演習や訓練の内容と色々だ。
その中でも、抜きん出て才能を開花させたステラはアッシュの妹分となって、自分と似た能力を有するアッシュと共にその力を高めている。
が――ノラが俺の見舞いに良く行く事や、他の騎士達の仲を彼女達に自慢気に話したらしい……。
そのおかげか、ノラが汗だくになって来ていた病室は、今思えば彼女から逃げる為の避難場所であったのだろう。
そして、この日もノラが病室へと駆け込み、いつものように窓から飛び出して行くのを見届けた直ぐ後に彼女が来た。
……もう、マジで悩みの種に成りつつある。
扉を開け、開口一番にノラの居場所を吐けと、尋ねてくる。
無論、扉から入って流れるように窓へとダイブして行ったノラは既に大和市内か騎士団本部のある方へと消えている。
だが、彼女『セリカ・ゼーデン』は毎度のように俺に居場所を吐けと、脅してくる。
時にはナイフを手に、時には銃を手に、時には自分と仲の良いステラを脇に抱えてと、とにかくノラの尻を追いかけていた。
妹の『アイリッシュ・ゼーデン』が病室に来ては、看護師や他の入院患者の方々一人一人に頭を下げている姿を見てると、涙が出そうだ。
だが、ああも騒がれては堪ったものじゃない――。
ノラには悪いが、見舞いには2度と来れないように出禁だと、団員の者に伝えて貰おう。
(ノラも苦労してんだな……)
心の中でそう呟きつつも完全回復したら、原因である2人を叩きのめす事を決意する。
そんな事を見舞いと姉の粗相の謝罪に来ていたアイリッシュに話すと、妹は『情けは無用です。橘様の気が済むように』と了承してくれた。
すんなり了承するのはどうなのだろうか、仮にも姉だぞ?
黒が眠たそうに、あくびをしつつ自由に動くようになった両腕で見舞に訪れた梓と辰一郎から貰ったダンベルをゆっくりと持ち上げる。
久し振りに動かした両腕の筋力は思いの他下がっていなかった。
その事は素直に嬉しいが、ダンベル程度を持って筋力の状態が分かるわけがない。
ダンベルを上げ下げして、昔から梓から教わった準備運動を手早く済ませ。
ダンベルをお手玉のように投げてみたり、人差し指で回したりと昔やっていた遊びをやっていて、血相を変えた看護師にダンベルを没収された時は心底驚いた。
どうやら、竜人族と人族ではダンベルの遊び方が異なっていたらしい――…。
「にしても、平和だな。上位から連れて来た2人も思いの他、馴染んでた……。なのに、そんな顔色変えるほどの事があったのか?」
深刻な表情で、病院の手前で黒の方へと向いたまま動かない白が言葉を詰まらせていた。
扉を開け、入ろうとしているのは分かるがどうやら後一歩がどうしても出てこない。
窓から流れる風を頬で感じて、数十年ぶりに生き別れた双子の黒と白が言葉を交わす。
なんのしがらみの無い筈の白だが、双子の片割れである黒の隣へと向かうための勇気が無かった。
母親や祖母、妹との碧や茜からは黒が何一つ気にしていない事は事前に告げている。
それでも、白は黒の隣へは行けなかった。
20年近く双子の黒が母親や家族からの愛情を奪ったと教えられ、憎しみと恨みを持っていた。
そして、下位へと攻めた際に黒へと刃を突き付けた。
その上、黒が何よりも大切にしている女性である未来に危害を加え、その身を危険に晒した。
そんな事を聞いてしまった白は、素直に感謝の言葉など出てこない。
未来達が、黒を助けに来ると分かっている上で、黒が一番恐れる危険を未来に与えた。
それなのに、自分は大切な孤児院の皆を助けて貰い、自分の故郷へも帰れた。
幾ら感謝しても足らず、黒に対する謝罪の気持ちも溢れて止まらない。
家族を守るために、自分を犠牲にした白を守るために家族や未来達が奮闘した。
その上、自分だけが傷付かず幸せになって良い筈がない――。
白が胸に手を押し当て、溢れ出る涙と嗚咽を我慢する。
すると、目の前の黒が白へと手招きしていた。
そして、小声で結界を貼った事を伝えた。
『防音』と『視界遮断』の二枚重ねの結界は、内部の音を閉じ込め、外からこちらの姿が見えないような状態となっている。
黒がベッド横の椅子を叩いて、白に『座れ』と指示する。
ゆっくりと近付いて椅子に座った白の白髪の頭を撫でた。
そして、笑顔で白に言った――。
――おかえり――……。
その一言を聞いて、白は大粒の涙を流しベッドに顔を押し付け大声で泣いた。
元は黒やナドネを助けると言う明確な目的があったにも関わらず、自分やあちら側の白の大切な家族を助けた。
白の身を案じずに動けば、黒達がこれほどの傷を負うことも無かった。
そう思うと白の涙は止まらず、静かに黒は優しく白の頭を撫で続ける。
それは、赤ん坊の頃に黒が母親や祖母の姿が見えなくなり、その不安から泣いていた時に白がしてくれたように、黒は白の頭を撫でた。
幼かった頃に、白が黒の隣に居ると伝えてくれた時のように、黒は白に隣に居ると伝える。
20年もの昔に、泣き虫であった黒に同じく赤ん坊であった白が、黒の隣に寄り添ったように、白のその涙が止まるまで黒は白に寄り添った―――。
――と言う感じな感動的な雰囲気で終われれば、どれ程良かっただろうか……。
今現在、俺の目の前には涙を流して泣いている白が居る。
防音結界の内側で泣く白は、誰の意見でこんな服装をしているのだろう。
予想は付くので、憶測だがある程度の経緯は予想出来る。
病室の扉からこちらの様子を覗く茜がすべての元凶である。
白は服装などに違和感を持っていない辺り、そこまで頭が回せる状態では無いのだろう。
だから、メイド服で泣いているのだろう。
きっと、茜に『謝罪や感謝などの気持ちを体で表現する服』とか何とか言って、白にメイド服を着させたのだろう。
妹を疑う事なく茜のコスプレ衣装に袖を通して、俺の前で泣いている。
端から見た絵面は凄まじいの一言に尽きるだろう。
「……ありがとう。助けてくれて、私を救ってくれて」
白が感謝を言葉にするが、そんな言葉など服装のインパクトによって、右から左に流れていく。
俺の素っ気ない返事を笑みで受け止め、茜よりも胸が大きな白は息苦しいのを我慢しつつも、胸の布を指先で弄る。
「なぁ……。その服が茜に勧められたのなら、それは間違いかもしれん。何て言われたか知らんが、感謝を伝えるのにメイド服のコスプレはありえんだろ?」
「コス……プレ………? ――ッ!?」
白が自分の服装を見て、自分が今どのような格好なのかを理解し、頬を赤く染め。
瞬く間に、顔全体を真っ赤に染めて、病室の前で笑いを堪える茜に気付いた白が光の灯っていない瞳で茜の手を引いて、病室を後にする。
白が自分の気持ちに区切りが付けれたのならば、問題は無い。
泣いて、全てをさらけ出せたのならば、俺は満足している。
これからは、家族の一員として、共に生きていける。
それだけで、傷を負った価値がある。
多くの者達が黒の見舞に笑顔で来ていた――だが、内心は今回の戦いや今後の不安を顔に出さないように堪えていた。
退院直前になって、黒は翔と色彩神を呼んで、揃って病室に訪れる。
日が傾き、静かな病室に冷たい風と2人の不安そうな顔が夕日に照らされる。
「――未来には、一人で来て貰った時に話した。白や妹達も止めはしなかった。親父や母さんも妹達同じ気持ちだな……。ただ、辰一郎と梓だけが不安そうだったわ…」
数日前に、母方の祖父母である川柳や千湖の2人が訪れ、全員の前で俺は話をした。
川柳と千湖は何も聞かなかったと病室を一足先に出ていった事が鮮明に記憶している。
茜と碧が涙を我慢しつつも2人を抱き寄せた母さんの胸に顔を埋め、白と梓と共に出ていった。
俺の前に残ったのは、負傷してはいるが歩けるようになった父の竜玄と祖父の辰一郎の2人だけだ。
「お前が決めたのなら、俺は構わない」
「僕も、竜玄と同じさ……。でも、ホントに無理なら諦めて良いんだ。仲間の子達や僕らが付いている。それだけは、忘れないでくれ」
2人が病室から出て行く。
みんなの心配する気持ちを胸に、前々から2人に話していた内容に付いての返事をするため、翔と色彩神を前に、ただ笑みを浮かべた。
「未来は、泣いてたか?」
翔の質問に俺は、答えれなかった――……。
だからなのか、話をはぐらかせようと色彩神に話を振るが、翔が俺の胸ぐらを掴み上げてきた。
言いたいことも、翔の気持ちも手に取るように分かる。
この事を、ハートや暁に告げていないのは、翔も理解している。
きっと2人なら、自分の力の無さを悔いてしまうからだ。
俺と翔が手にした―――。
いや―――これから手にする力は、誰かの涙の上に成立し、代償と共に覚醒する。
十五解禁を手にした黒と翔は、その先の領域に挑戦する事が可能であった。
人知れず試練に挑み、失われた身体の一部を元に戻した翔は、死ぬほどの痛みを負わされる試練をクリアした。
激痛と戦いに勝利した翔とは別に、黒はその挑戦を受ける事となる。
挑戦する必要は無いが、得られ恩恵は凄まじく。
ナハヲと同等の力へと押し上げつつ、黒が宿した黒帝竜と黒鬼の力を凌ぐ新たな恩恵を授かる事が出来る。
翔の『復元』のように、色彩神の恩恵である『魔物』のさらに頂きの――12体の魔神――……。
その恩恵を受ける条件は、たった2つに試練への合格だけである。
『十五解禁の取得』と『魔神に選ばれる』この2つの条件に当てはまり、これから起きる魔神からの試練をクリアする。
それだけで、黒は力を得る事が可能で、十五解禁と魔神の加護を用いて創造神と衝突する。
魔神が一体何人もの騎士に資格を与えたのかは、知らないが誰れもが簡単に得られる恩恵でも加護でもない。
死ぬ可能性すらあり得る試練に立ち向かうべく、黒は色彩神の魔力を受け取り、神器に移っていた魔物を内に宿す。
試練への始まりを意味する意識の混濁と、開かれた額の第3の瞳が怪しく光る。