表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
難攻不落の黒竜帝  作者: 遊木昌
最終章 極東十王領域
174/181

最終章十八節 確信と未来への期待


 7人の聖職者が一斉に動き出すと、それに合わせて黒が地を蹴って走る。

 黒の周囲を飛び回るように、刃や魔法が黒へと襲い掛かる。

 視界を遮るように、魔法が自分の目の前を照らす。

 わずかな魔力を調整して体内を巡らせる。

 実力以上の力を発揮する為に、黒は『調律』を意識して全身に魔力を巡らせる。

 消費されず残った体内の魔力残滓をかき集め、障害となる魔力を取り払う。

 全身へと微かな魔力が流れるが、今までにない感覚が黒の全身に満ちる。


 始めての調律としては、及第点と言った所だなと黒は自分で自分を笑う。


 今まで以上に効率的かつ正確に巡った魔力が、黒の身体能力を高める。

 閻魔に流れる深紅に色付いた魔力が僅かに光を放ち、背後から強襲を掛けた3人と前方から退路を断とうと迫る4人の正確な位置を黒は把握する。

 構え直し、全身の魔力を閻魔へと集中させ放った渾身の斬撃が周囲の魔力を打ち消し、凄まじい衝撃と共に7人を吹き飛ばし魔力を再び打ち消す。

 血を吐き出し、黒の放った衝撃の凄まじさを身をもって感じたカレアが剣を支えに立ち上がる。

 カレアがそこまで立ち上がるのは、黒と似た『仲間や家族に対する思い』と同じく『狂信者並みの信仰心』であった。


 「……ま……。まけ………か…」


 全身がボロボロに傷付き、流れる血は止まる事なく地面を赤く染める。

 カレア以外の6人は既に意識を失いぐったりとその場で倒れている。

 黒が閻魔を解除し鞘へと納めると、血燐を抜きカレアへと刃先を向ける。


 「俺ですら、驚くほどの信仰心だ。……神父や他の奴らにもそれなりの信仰心があれば結果が変わってたかもな」


 黒が血燐の刀身に残り僅かな魔力を集中させ、カレアへと放とうとする。

 ―――が、それを阻もうとする存在が静かに黒の背後へと近付く。


 「はい、ストップ。君もここで、殺されたくないでしょ?」


 首筋に突きつけられたナイフに黒が気付かない訳がない。

 だが、黒はナイフの存在と背後に現れた存在に気付かなかった。


 「どう? 『無意識』を限定した精神魔法。って言っても、自分も今一良く分かってないんだよねー」


 男がナイフを手元でくるくると回しながら、倒れた聖職者達の顔を覗き込む。

 まるで状況が読めていないこの男は『アホ』だと、見ている者達がこの場に居れば思う筈だろう。

 黒が自分に背中を見せているこの男を敵と認識し、瞬く間に殺すのが目に見える。

 だが、黒は血燐に集めた魔力を解除し、鞘へと血燐を納める。


 「……流石は皇帝だね。僕とやり合うリスクを良く理解している。そして、自分との差もね」

 「差は、対してねーだろ。ただ、この場で戦うには……お前は強すぎる」


 男が笑みを浮かべ、前髪を掻き上げ額の中央に開かれた――()3()()()を見せる。


 爆発的に高まった魔力が黒をその場に跪かせる。

 黒の肌を切り付ける魔力は、今まで感じたことのないほどに黒を刺激する。

 これまで戦ったほとんどの強敵にないタイプな上に、黒に近い実力を有したこの男――。


 (……強いとかっていう次元じゃねーな。ホントに人間か? それとも……神と同等な存在か?)


 黒が閻魔へと手を伸ばそうとするのを男は止める。

 黒も男から敵意が無くなり、押し潰すほどに威圧的な魔力が薄れていく。

 立ち上がった黒に男は手を振りながら、カレア達聖職者を開いた空間へと投げ入れる。


 「凄く、強いね。()()――。でも、君の背中には、守るべき物が多過ぎる。それゆえに、全力を出すまでが遅く。渋っているのが手に取るように分かる」

 「だから、なんだよ。その守る物を減らせば、もっと強くなれるとでも? 目的と手段が矛盾してんだよ」


 男の冷たい瞳を見詰める黒に、男は笑みを浮かべる。

 ただ自分の興味を引く存在であった筈ですの黒に、冷たく凍った心が溶け始め、男の好奇心を刺激する。

 この力を手にいれてから目に写る高みの景色が霞んで行き、強敵との壮絶と思える戦いすらも消えた。

 だが、それでも、戦いを求める自分の血と性分に呆れていた。


 「――名前。聞かせて、誰でもない……。()()()()()


 男が聖職者全員を空間魔法を用いた転移を終えた後に、黒の目の前でそう一言。


 「――人に尋ねる前に、その()()()()()()をしまってからにしろ。……これは、尋問か? 脅しのスキルは高いが、俺は槍一本じゃ口は割らんぞ……」


 黒が男の手に持った槍を指差し、男が驚きつつも光学迷彩の様に姿を消していた槍を黒へと見せる。

 長く、槍と言うよりも鉾のようで――()()()()()()その武器を黒は睨む。


 「凄いね……。迷彩で隠してたのに、魔力も感知できない特別仕様だよ? まさか、勘? それとも、ただの経験の差かな?」

 「さぁな……。ただ、お前の手から歪な気配がしただけだ」


 黒が閻魔の柄に手を置き、反撃だけが可能な態勢を取る。

 男が槍か鉾か剣か分からない中途半端な武器をしまうまでの僅かな動きでさえも見逃さない為に、神経を集中させる。


 「――戦いたくないけど、やるなら容赦しない。抵抗ぐらいするって感じかな?」

 「当たり前だ。……黙って死ぬぐらいなら、片腕から片足は貰ってから死んでやるよ」


 黒が姿勢を低くし、男を視界に捕らえる。

 男が片手に持った槍を握り締め、僅かだが姿勢が前のめりになった一瞬を狙った抜刀術は男の反応速度を遥かに上回る。


 鞘から抜かれた閻魔と男の槍が火花を散らし、男の左腕に切り傷を与える。

 だが、男の右腕に握られた槍が引き絞られ、黒へ投げられる。

 僅かな殺気を肌で感じ、何とか直撃は避ける。

 頬を掠めて、地面深くに突き刺さった槍は余計な破壊などなく槍の矛先だけが地面に突き刺さる。

 瞬時に魔力を矛先に集中し、圧縮させ槍に乗せることでより一点に対する破壊力が強化される。

 刀や剣のように『斬る』や『叩く』よりも、槍の持つ『突く』に特化した形状だからこそなし得た無駄を削ぎ落とした魔力と槍の使い方――。


 「……ホントにそれは、槍か? 槍と鉾は違うが大差はない。だが、それは槍さでも鉾でも――剣でもない。……一体なんだ」

 「……コレは、槍だよ。持つ者によってその形状も発揮する力も違う。元は、中途半端に造られた()()()だよ」


 男は微笑み、槍を軽く手の上で回すと槍の形状が槍から薙刀や斧や大鎌などの形へと次々と変化させる。

 そして、再び槍へと戻すと1振りの剣へと変化させる。

 ――()()()――そう一言でこの武器を1括りしたが、黒からしてみれば失敗作ではなかった。


 (……冗談キツいな。こんな大物が実は、上位に存在していたとはな――)


 男の笑みの裏に、強敵との経験が豊富な黒ですら身の毛がよだつほどの悪寒に黒は震えが止まらない。

 だが、ここで退くわけには行かない――。



 例え、勝てない相手であろうとも、仲間を守るための力だ。

 ましてや、逃げて良い立場でも、俺自身が背中を見せて良い存在じゃない。

 妹や家族の方に、コイツが向かない保証も無ければ今すぐ行く可能性もある。

 なら、ここで死んでも止めてやるよ――。

 黒の覚悟と共に、腰に下げていた『無糾閻魔』と『血燐一刀』が抜かれる。

 男も黒の戦わないと勝手に決めつけていた為、黒の予想外の反応に思わず声が溢れる。


 「あれ? 僕と戦いたくないんじゃないの?」

 「お前が言った通りさ……。俺の背中には、守るべき存在が沢山山のように乗っかってる。一つ一つが小さくとも、その量は凄まじい……。だから、今も逃げる訳にはいかねーんだよ」


 黒の瞳が赤く色づき、額から2本の角が現れる。

 黒竜ではなく、黒鬼の力を用いてこの男と正面切って戦う。

 その為には、無糾閻魔の能力で無力化するよりも、黒鬼の驚異的な身体能力と血燐一刀の持つ『能力』を最大限発揮した上で、ごり押す事にした。

 無茶苦茶な戦いで、勝算も無ければ勝てる保証は無いが――後ろの者達は守れる。


 「じゃあ……。僕はこの一太刀で終わらせるから、君は全力で逃げてね」

 「――橘家が長男…『橘 黒(たちばな くろ)』……。お望み通り名乗ったんだ。そっちも名乗れよ? 全力で逃げるから、聞く前に終わりそうだがな……」


 黒が全身に魔力を巡らせ、高鳴る鼓動を落ち着かせるように一呼吸する。

 男も黒の名を聞いて、微笑み手に持った剣を正面に構える。


 「僕も君達と同じ、下位領域出身の元騎士だよ。そして、君と同じ皇帝(エンペラー)。四大陸が12人の皇帝が1人で、現在は創造神(ザース)の下で戦う下位領域の敵……。――『剣戟(ジャオロ・)森々(クアリス)方天画戟(ホウテンガゲギ)』の『ナハヲ』だ」


 ナハヲの構えた剣が魔力を圧縮し、横に一閃し大気や地面を切り裂き、黒をその圧縮した魔力を爆発的に高め放った一閃が黒を切り裂く。

 前方が更地となり、草木1つ存在しない綺麗に整地された地面を眺めながら、ナハヲが一息突く。

 剣を槍へと変えたその一瞬の隙を今か今かと狙っていた黒が、砂埃の中を飛び出し、音速に近い速度で駆け抜け、血燐でナハヲを切り裂く。

 防御する隙すらも与えず、反応すらも出来ない速度をもって駆け抜けた――。


 黒鬼の魔装を全身に纏い、未来が纏った黒鬼の魔装と瓜二つな姿の黒鬼でナハヲを切り裂く。

 赤色の一本下駄で地を蹴り、黒色の鎧と白色の着物を揺らしながら、一閃で放たれた衝撃を掻い潜る。

 魔力を解いて油断した隙を突いて、反応すら許さないトップスピードでナハヲの真横へと駆け抜ける。

 この一瞬に全てを賭けた黒は、血燐の持つ能力である『超凝縮一点集中』と言う能力で、黒鬼と黒の合計した魔力の8割を血燐に強制的に凝縮し、その一太刀でナハヲを斬った。

 残り1割を魔装へと当て、魔装の持つ固さや攻撃能力を全て、瞬発力と反応速度に片寄らせる事で深手覚悟の最強の一撃で、死を覚悟した一瞬の戦いに挑んだ。


 黒の一太刀で確実にナハヲは―――斬られた。

 だがしかし、無傷なナハヲは自分の読み通りに動いた黒を見て、不適に笑うと黒は血燐を地面に突き刺す。

 血燐を杖代わりに立ち上がり、ナハヲの前に貼られた防御結界が2つに別れる。



 「……予想通り、逃げずに僕を正面から斬ってくれた。全力の結界でも、防げるかは五分五分だったけどね。賭けには、勝った」

 「……まぁ、ここまでやれれば文句ねーだろ。俺1人だったら――」


 黒が笑みを浮かべると、ナハヲは黒の手に持っていた神器()が血燐だけなのに気が付く。

 そして、自分の背後から風を切って迫る飛翔する斬撃の存在に気付くのが一瞬遅れ、黒が血燐を鞘に納めると同時にナハヲが飛翔した斬撃に勢い良くその場から吹き飛ばされる。

 防御が間一髪間に合ったが、地面から引き離されたナハヲの体は消えない斬撃に押され、そのまま後方へと押し飛ばされる。


 「……確かにお前は強いが……。こっちは、1人じゃないんだよ」


 黒の持っていた筈の閻魔の刀身を空高くに振り上げ、ただ真っ直ぐに振り下ろした未来は、自分のごく僅かな魔力と黒の魔力を掛け合わせた斬撃を放った。

 その後直ぐに、未来達は体が光の粒となって行き下位領域への転移に入る。

 黒がふらつきながらも、未来の元へと走り閻魔を受け取る。


 「……絶対に、帰って来てよ?」

 「当たり前だ…。こんな所に、長居したくない」


 黒が一足先に消えた未来達を見送り、色彩神(リム)との繋がりが弱い白と孤児院の子供達とシスターを黒が色彩神と僅かに繋がった魔力で転移させる。




 「――ナハヲ…。再戦が叶えば、本気で相手をしてやる。だから、見逃してくれると……めちゃくちゃ助かる」


 黒が背後に迫っていたナハヲに振り向く事なくそう呟くと、ナハヲは黒の提案を潔く了承する。

 そんな予想外な反応に黒が目を丸くすると、ナハヲは満足そうにその場を後にする。





 上位と下位との戦いと、最後の2人のやり取りを時空の裂け目から遠目に見詰めていた創造神(ザース)は、ナハヲの命令を無視した行動に爪を噛んで苛立ちを押さえる。


 「……ナハヲをここに呼べ。なぜ命令通りにしなかったを問い質す」


 創造神の指示に女性の従者が『御意』と返事を返し、時空の裂け目を去ると直ぐにナハヲの片手を引いて現れる。


 「あっ……ドーモ…。我らが神よ。……見てました?」

 「無駄な芝居はやめろ。結論から話せ、なぜ殺さなかった」


 創造神の傍らに従者の女性と小柄な子供があめ玉をバリバリと噛み砕いている。

 ナハヲが視線をあめ玉を無我夢中で食べている子供に向けると、創造神があることを思い出す。

 そして、ナハヲがなぜ命令にあった黒の抹消を実行しなかったのかを一度考えた。

 そして、傍らの子供とナハヲを見て、ある1つの共通点を見出だした。


 「そうですよ……。我らが神が喉から手が出るほどに欲している『橘の肉体』と『驚異的な魔力の素質』……。この2つを手に入れるために、僕が下位領域に潜って内側から探す。聖職者と異形を使って、侵略行為と共に、素質ある人材を育成する。そして、素質ある人物の内部に干渉して――()()()()()()()()()させ、進化を促進させる」


 ナハヲの話を聞いて、創造神と隣の従者が不適な笑みを浮かべる。

 そして、あめ玉を全て食べ終えた子供が立ち上がり、ナハヲの言葉を遮って、ナハヲの代わりに結論を述べる。


 「――私が干渉して、暴走させた時から僅かな素質はあったけど、ナハヲさんと戦って確信した。()()()()使()()()――…」

 「流石は、鍵子ちゃん。でも、僕のセリフは取らないで欲しかったな~」

 「鍵子言うな…。神から賜りし『代名』で呼べッ!」


 あめ玉の入ったケースをナハヲの顔に投げ付けた子供に、ため息を溢しつつも代名で名を呼ぶ。


 「では、改めて…流石です。『不和を告げる(キー・)鍵の申し子(レベンタ)』殿――」

 「お前も……。直前で、あの男の可能性に気付くとはな。『破滅を告げる(ナハヲ・)神の執行者(ルーゼン)』。少し肝を冷やしたぞ」


 互いに自分の有能さに笑い合うと、神の御前で自由過ぎる2人を警告するように、咳払いする女性に創造神とナハヲとキーが驚く。

 まさか、神も2人同時に驚くとは思わず、顔を赤らめて『少し、大きかったかしら』と小声で呟いた女性に創造神は不適な笑みを隠すように、手で口元を覆う。

 何も無い所から、大きな椅子が創造されその椅子に創造神が座り、横に横一列に並び直し跪く。


 「であれば、一時泳がせ……。力を貯えさせると考えて良いんだな?」


 創造神の問い掛けに、ナハヲとキーが静かに頷き、女性が2人に合わせるように遅れて頷く。

 満足気に微笑む創造神が、自分の計画が遠回しになったりと様々な障害こそあったものの、結果として全てが順調であった。

 大勢の神達が満足そうに行く末を見守る箱庭程度の世界よりも、自らの手と力で1から造り出した世界――。

 試行錯誤と実験を繰り返し、失敗作を多く造りこの度に破壊しようかと考えた。

 だが、結果としては、残して正解であった。


 (色彩神(リム)……。お前が下位領域に手を出した事で、私の計画がより良い物となる。お前の『等しく』分けた恩恵と私の『選ばれた』恩恵の2つを混ぜ合わせれば――ナハヲの様な最高級の素体が出来上がる。……あぁ、もう少しの辛抱で、3つの世界よりも素晴らしく、完成された『世界』が誕生する―――)


 堪えきれずに、漏れ出た創造神の笑い声は、時空の裂け目に響き渡る。

 歓喜とさらなる期待を込めた創造神の高笑いは、その配下である3人の頬も緩ませる。

 全ては、たった1つの世界を創造する為に、多くの命と時間を浪費した。

 ――もう少しで、全てが手に入ると確信している4人は、何一つ知らずに無駄な足掻きをする色彩神とその恩恵を宿した下位領域の者達を嘲笑う。



 「――黒竜帝。もっと、強くなんないと……僕が全部奪っちゃうよ?」

 「ん? 何か言いましたか、ナハヲ?」


 心の声が思わず漏れていた事を気付かれ、手で口を隠したナハヲが首を横に振る。

 ナハヲが『何んでもない』と女性へと告げ、創造神に軽くお辞儀をすると共に、裂け目から下位領域へと降り立つ。

 四大陸側の1つの国近郊に舞い降りたナハヲは、転移した先の森を後にする。

 森を抜け、閉ざされた巨大な城門がナハヲの存在に気付き開かれる。

 歓声と共に、大勢の騎馬隊がナハヲの帰還を出迎える。


 「――我が王よ。いつも通りのお時間の帰還、時間厳守なナハヲ様に頭が上がりません」

 「出迎えは不要だと言った筈だ。だが、まぁ……。民や兵に迎えられるのは、気分が良いな」


 天を仰ぐナハヲは、再戦を待ち遠しいのとさらなる進化を遂げた倭の猛者達に期待を募らせる。

 そして、倭の皇帝『騎士王』と『紅竜帝』などの黒竜の次に警戒すべき者達と、雷帝と同じぐらい期待を抱く未だ見ぬ脅威の予感にナハヲは震える。


 (……我らが神には、悪いが…。僕は、黒竜の強さを限界まで高めたい。例え、僕らの命を危ぶむほどの脅威までに成長して、この喉に牙が突き刺さる結果であったとしても――倭には、強くなって貰わないといけない)


 神が企てた計画よりも、そのさらに先にナハヲは期待を抱く。

 自分達の存在すらも危ぶむ結果に陥ってしまっても、自分の欲望を満たしたかった。

 頂きに至ってしまった者の末路であり、魔神の力を宿した者の宿命である。




 ――()()()――……。



 ナハヲが求める最高のスリルと存在を賭けた大きな大きな戦いであり、その隣にはきっと黒竜が並んでいると確信していた。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ