一章十六節 記憶と目覚め
「全員!この場から逃げろ!速くッ!」
黒が叫んだ、魔力を最大限まで高めた一撃を繰り出す。
男は片手で弾き、黒は空中で体勢を変えようとした瞬間。
右腕から、大量の血が流れた。
苦痛を耐え黒は一歩下がろとしたが。
「させませんよ~」
黒が下がると同時に懐から出した、拳銃が黒の
額に触れた。
「させないわよォ!」
ミッシェルが飛び出し黒を助けようとしたが、ミッシェルの背中に大量の刃物が刺さり男が拳銃をミッシェルに向け6発全て発砲し終わると、背後に回った緋音と碧に掌底で勢いを殺し、回し蹴りで壁側に吹き飛ばした。
周りの称号保持者は、苦痛に顔を歪ませながら男を見ていた。
勝てない。現在この場に居合わせている保持者の中で其なりの修羅場を潜って来た、ミッシェルや碧ですら勝てなかったいや、勝つ可能性など元から無かったのかもしれない。
「まさか、元聖獣連盟議長の『波瀬神威』さんじゃないですか」
黒が憎悪に満ちた顔で波瀬を見つめていた。
「そんな、恐い顔しないでよ、僕だって不本意だったんだもんッ」
顔を脹らませながら黒を見つめていると。
「お!来た来た」
そこには、紙切れと石の様な破片を持った、澤本隊員の姿だった。
「澤本、お前まさか!」
伊倉が拳銃を取りだし止まるように命令したが止まらず男の方に歩み寄った。
「あ~やっと、こんな糞みたいな服が脱げるぜ」
隊員服を脱ぎ捨てると、何もない空間から白色のローブが出てくると、澤本の体が一変した。
顔には、大きな刺青が浮かび上がり左右の目の色が変わたのだった。
手に握られていた、紙切れと石を波瀬に渡すと、波瀬が懐から出したのは錆びれた小型な剣だった。
錆びた剣を邪馬国の王が見ると。
「やめろォ!」
隊員を押し分け波瀬に掴み掛かろうとした瞬間、間に入った澤本が拳銃を王に向け、発砲した。
リーラは、現実を見ていた。一瞬だったのかもしれない自分の立っている場所は普通の人間の領域だったのだから、ミッシェルや千夏、緋音や碧そして、黒達称号保持者の立っている場所は人間の域を越えていた。
やはり普通の人間世界では無かった。
騎士とは何なのか分からなくなってきた。
人間の領域を越えた人達と一緒の領域の等行ける筈がなかった、自分の力を見謝っていた。
そんな時、自分の後ろを押し分けて波瀬に向かっていた陛下がいた。
(そんな所は、普通の人間が行って良い場所じゃない!そこは人間の域を越えてる!)
リーラの手が陛下の裾の触れた。だが、発砲音が聞こえた瞬間。
「ッ!イヤァァァァァァァ!」
昔の記憶と繋がる。
思い出したくない光景、数多の人形に殺される母と父そして、それを動かす、仮面の男。
その場で起きた咄嗟の出来事に黒や波瀬、他の皆が驚愕を露にしていた。
「逃げるぞ!澤本!」
「へ?」
澤本は状況が読めていなかったが分かった事が1つあった。
「皆伏せろォ!」
黒の声が響く瞬間に、王室は、真っ二つになっていた。
黒は確信していた、リーラの体全体を覆い隠す程の黒色のオーラとオーラの先に現れた全身をボロボロなローブを纏い全身は骨で出来ており尚且つ、身の丈以上の大鎌を持った幽霊いや、死神の姿だった。
「あの土壇場で覚醒とかマジかよ」
邪馬国襲撃事件では、大規模な損害は有ったが死傷者は少なかったのが幸いであり、陛下や人質は皆無事だったと報道された。
邪馬国襲撃事件から2週間が過ぎた頃、黒は碧と一緒に聖獣連盟大和支部に来ていた。
「橘 黒様、碧様ですね。こちらに」
案内されるがまま支部長室に連れてこられ、中にはあちらこちらに包帯を巻いたミッシェルと車イスの千夏がいた。
「失礼します、聖零学院リーラ・ファルナデス候補生入ります」
ドアノブを捻る音と共に三つ編み眼鏡女子生徒が入って来た。
「あら?リーラちゃんッお久しぶり~また会ったね」
ミッシェルが手を振りながら挨拶をすると、リーラは軽い会釈をして支部長の前立つ。
その後小一時間説教を受けた、リーラの様な『銅騎士』成り立ての候補生を作戦に入って尚作戦を続けた事で怒られたが、今度は世界評議会本部に呼ばれリーラはガチガチになりながら本部に行くと。
「君の今までの行動は目に余る、銅騎士にも関わらず無断での作戦参加。並びに、無許可でのドライバ仕様」
リーラは心の中で(終わった、私の騎士団に入る夢が)と思っていた、が。
「そして、これまでの活動報告書を見る限り、『銀騎士』を繰り上げ『金騎士』の称号を与える。これで、君も正式な騎士だ」
称号管理官の言葉にリーラは涙を堪えきれずにいた。
リーラや碧達は本部を出て帰路に入っていた。
だが、黒だけは残り本部長室に顔を出すとそこには。
「あらあら、聖獣連盟の重鎮である。『巳様楓季』と『龍馬一敬』じゃねえか」
黒髪で淑やかな顔立ちの女とボサボサな髪型で袴姿の男が机に座っていた。
本部長室の机に座っていた一敬が降りると、そこには、世界評議現議長の『獅子都藤十郎』がいた。
黒は一歩前に踏み出すと老人の杖に目がいった(外見はただの老人だが、杖にしている鯨王の骨で作られた杖って何て物持ってんだよ)
鯨王とは、世界のありとあらゆる均衡を保っている十王の一角である。
その、鯨王の骨は触れた者の魔力を吸い続けると言う伝承がある、幾ら杖に加工してあるとしても、その効果は消えないだろう。
「すまんかったな、残って貰って」
老人が喋りだしたが、黒は言葉を遮るように要件を口にした。
「リーラの死神の件だろ?」
先ほどまで、笑顔だった顔は険しい顔付きになっていた。




