五章三十節 かの要塞は空を覆い隠す
ラックの猛打を大鎌で防ぎ続ける蜘蛛の表情は歓喜そのものであった。
久しく忘れていた強者との命を削り合う戦いこそが――命を感じる。
肌を切り付けるようなピリピリとした緊張感と立ち合いを楽しもうとするどこか、ネジの外れた感覚が脳内を満たす。
(良い……良いぞッ!三千年ぶりの高揚感だッ!二年前は、身体を貸したに過ぎず。ゲームに参加は出来なかったが……こんな奴らと戦えると分かれば、俺がゲームを仕掛けていたぞ!)
大鎌を振り回し、ラックの反応を確かめる。
確実に蜘蛛の動きに付いてくる身体能力も驚愕だが、それ以上に大鎌をギリギリの所まで躱さずに、全て紙一重で躱す。
躱した次の瞬間に、透かさず攻撃を加えると言った。
命知らずな戦い方に、蜘蛛の気分はさらに向上する。
「もっと、俺に本気をぶつけろッ!……生きてるって実感を、くれぇぇぇぇぇぇ――ッ!」
ラックの魔力が籠った拳と蜘蛛の大鎌が衝突し、大気を震わせるほ2つの凄まじい魔力が互いに反発し合い、高濃度魔力領域を造り出す。
――凄まじい爆音と塵一つ残さず辺りを吹き飛ばす魔力の爆発が、ラックと蜘蛛を飲み込む。
幾度も地面を転がり、巨大な岩に背中を勢い良く叩き付ける。
ラックが意識が戻す頃には、蜘蛛の姿は何処にもなく。
相当な時間も意識を失っていたのか、微少であった筈の魔力がほぼ完全に近いまで回復していた。
遠くから微かに聞こえる数名の声と共に、認識のある魔力反応に気付き、ボロボロになった身体を起こす。
そこは、予想を遥かに越えた世界が目に飛び込んできた。
ラックが吹き飛ばされた場所から少し歩き、丘上から嫌な魔力反応がラックの全神経を切り付ける。
飛び込んできた衝撃の光景に、ラックは言葉を失う。
――大勢の騎士がドライバや神器を手に、空中で佇む超巨大要塞を前に茫然とする騎士達。
雲を突き抜けるほどの巨大な要塞が、数えきれない程の砲門を地上へと向ける。
そして、凄まじい魔力の砲撃が雨のように降り、大地を火の海へと変える。
咄嗟にラックが持てる魔力全て使い、前線に集まっていた騎士全員を要塞から遠い彼方へと空間諸とも飛ばす。
最大範囲の魔力探知を行い、先ほどの砲撃で被害を受けた者達の無事を確認する。
後方部隊と前線部隊の無事を確認し、ラックは膝から崩れ落ちる。
咄嗟に、近場で意識を取り戻した笹草がラックを支え透かさず回復魔法を施す。
「……状況は?…あまり、良くはないと思うけど…」
「…はい……。状況としましては、ほぼ全ての異形は殲滅されましたが、橘様と対峙していた鴉が……。突如、異なる3つの魔力を用いて、あの要塞を建造しました」
ラックが魔力探知を行うと、要塞の内部には鴉と思われる反応と黒と暁から奪った魔力の反応を感知する。
詰まる所、鴉と暁――そして、皇帝級の黒竜の魔力を注いで造り出した要塞。
――正に、難攻不落の要塞が目の前に出現した。
「――橘くんは?……まさか、あの中に?」
「はい……暁様と翔様も一緒に……」
ラックが舌打ちをすると、要塞の砲門がラックの元へと集まった後方部隊の者達を照準に納める。
そして、凄まじい魔力砲がラック達の頭上へと降り注ぐ。
「我に光を――【戦神】」
「猛々しく在れ――【王狼】」
2体の魔物が迫り来る魔力砲を相殺し、光の槍が要塞に向けて放たれる。
光の槍が弾け、魔力砲を圧縮した光魔法が吹き飛ばす。
「一旦離れるぞ!ここだと、要塞の射程に入りすぎだ!」
駆け付けたハートがラックを無理矢理立たせ、背後から迫る砲撃を相殺し続ける。
「大輝ッ!お前が全員を連れて下がれ、大勢で一ヶ所に集まれば的を絞れる。守りやすくなる!」
戦神が槍や剣と言った光魔法で造り上げた武具を駆使して、砲撃を相殺する。
ハートの全身に酷い火傷と、魔力酷使から来る負担からか血管からは血が流れ、呼吸も荒く。
口元からは、既に吐血したと思われる痕が見える。
笹草の回復魔法が優秀とは言え、回復したのは傷と微かな体力のみ。
回復仕切れていない身体に、さらに鞭を打って負担を加えれば最悪死ぬ可能性がある。
ハートの魔物が顕現体から、魔力体へと戻り相殺していた魔力砲がハートを抜ける。
迫り来る砲撃にラックの魔物【時乃姫巫】が反応する。
浮遊する刃で魔力を相殺するが、既に2人とも限界に近くなっていた。
大輝が射程範囲を抜け、守りに入ったとしても守りきれるとは限らない。
3人で、魔力砲を相殺し続けるのは厳しい状態であった。
休む間もなく、次々と打ち上げられた砲撃が次第にその数を増やす。
そして、相殺仕切れなくなった魔力砲が、騎士達に襲い掛かる。
「誉れを我に――【炎神】」
「闇を纏え――【魑魅魍魎の主】」
闇と炎が彼方から飛来し、魔力砲切り裂く。
顕現した炎神がその剛拳で魔力砲を跳ね返し、要塞に取り付けられた数門を吹き飛ばす。
小刀で空間に傷をいれ、現れた魑魅魍魎が魔力砲へと体当たりし相殺する。
魔力酷使から、佐奈はその場で崩れ落ちるが一瞬の窮地を救っただけでも相当な活躍であった。
駆け付けた医療部隊が佐奈の治療を始め、横目に佐奈の心配をしていたアルフレッタが鼻で笑う。
「おい、ハート…佐奈が命掛けたんだ。――へばってんじゃねーよッ!」
さらに火力を増した炎神の拳が数十もの魔力砲を弾き、要塞へと跳ね返す。
フラフラだったハートに気合いを入れ直させたアルフレッタが、全身に魔力を巡らし炎神へと魔力を注ぐ。
負けじとハートも戦神に魔力を注ぐが、吐血と共に崩れ落ち魔力が一気に消える。
顕現させた魔物も消え、ハートの空いた穴を狙って魔力砲が放たれる。
視界を覆い隠す程の魔力砲が、ハートの遥か上空から放たれた砲撃によって相殺される。
全員が頭上を見上げると、アリスの神器である戦艦が高度を下げつつ、要塞へと砲撃を開始する。
見れば、甲板では紅とウタカタの姿も確認出来た。
頭上に佇む戦艦から飛び降りたウタカタと紅が、全員を包み込む巨大な結界を張る。
激流の盾と溶岩の盾が迫り来る砲撃を前にしても、びくともしない。
ウタカタが扇子で口元を隠し、目の前を明るく照らす魔力砲の尽くを地面を打ち上げるように現れた炎の柱が魔力砲を防ぐ壁となる。
「――皆さんはここで、お待ちください。大輝さんや佐奈さんばかりに、出番が回ってきて……ユタカタも私も欲求不満です」
「そう言えば……大輝と佐奈ちゃんとかは、都とか遠出してても、ウタちゃんは雑務処理しかしてなかったよね」
紅が頬を掻きながら、ハート達に目線だけ向ける。
この目線は、戦わせて良いのかと言う判断をハート達に丸投げした行為であり、アルフレッタとハートが首を横に振る。
一足遅く、ウタカタの魔力が高まり綺麗な緋色の髪を紐で縛り、優しさその物だったウタカタの雰囲気が一転する。
巫装束を風に靡かせ、要塞から次々と液体となった異形が大地を埋め尽くす。
「邪魔だァァァ――――ッ!」
ユタカタの雄叫びが木霊し、紅蓮の炎を纏った拳が目の前の異形を殴り飛ばし、凄まじい衝撃が周囲の異形を巻き込む。
異形達が動き回った事によって生じた砂塵も、高濃度領域すらもユタカタとウタカタの2人を前に無へと帰る。
大型、中型、飛行型、甲殻型、小型、ありとあらゆる異形種を前にしても、ユタカタの猛攻は止まる気配はない。
炎が異形種の身体を燃やし、叩き込まれる拳が内臓を破壊する。
――閻魔と言う称号保持者が、阿鼻叫喚の地獄絵図を造り出すとすれば、今の光景はその力の一端なのだろうか……。
ユタカタか異形を殲滅している間に、魔力回復に勤める笹草は後方から駆け付けた医療部隊と共に負傷者の救護に当たる。
紅、アリス、アルフレッタ、ハートの四人が結界内部に留まり結界の維持に全力を注ぐ。
銀隠やブェイと言った戦える者達は、ユタカタだけでは対処できな程の量に膨れ上がった異形を押し止めるために前線へと向かう。
回復魔法や手当てが行える者達は、後方部隊と共に結界内部に残り負傷者の救護に当たる。
額に汗滲ませて、多くの者達が結界の内部に止まる。
外の世界は、既に金騎士以上の者達か万全な者達でしか対応出来ない状態となっている。
前線に向かったとしても、即座に異形に返り討ちとなる志願兵や騎士を前に、震える者達。
そして、碧と茜の二人の背中を優しく抱き締めるのは、腹部に包帯を巻き付けたマギジが、要塞へと向かった3人の男の子の無事を祈る。
――――要塞が出現する数時間前――
幾度も刃を重ねた黒と鴉は、自分達の限界に近いところなど既に越え、どちらか一方の隙を狙った攻防へと移り変わる。
黒に抜刀術を使わせる隙を与えず、鴉に神器を使わせる隙を与え無いように両者の刃が火花を散らす。
黒の呼吸が乱れ始め、次第に鴉の表情に余裕が戻りはじめる。
黒が鴉を蹴り飛ばし、間合いから退いたとしても直ぐ様背後に回った鴉が黒の頬を叢雲で切り付ける。
咄嗟に刃先から逃れた黒を、追い詰めるように逃げ場のない斬撃が四方八方から襲い掛かる。
全身を切り刻む苦痛に耐え、黒幻の刃先に集中させた魔力を解き放つ。
地面を切り上げ、砂埃と共に飛翔する斬撃が鴉の胸を切り裂く。
しかし、依然として余裕な鴉に黒の呼吸は終始乱れ、追い詰めるように刀を握る拳が力みだす。
圧倒的な力の差だけではなく、何処まで冷静で物事に対処するかの違いもあるだろう。
空が出ていた時は、鴉には確かに余裕がなかった。
黒に変わった際にも、あまり余裕などある雰囲気でさなかった。
「……二年前、君達黒焔と対峙した時……僕は心底敗北と言う物を味わった。出来れば、使いたくはなかった切り札『記憶改竄』を使わなければならない状況に、屈辱と言う物も味わったよ」
鴉が叢雲を鞘に納め、黒の間合いに侵入しないギリギリを保ちつつ、話を始める。
「君は、僕に敗因を教えてくれるとか、何とか言ってたけど……そらは、今の君にも当てはまる。―――油断と力量を見謝った事だろ?」
踏み込んだ黒を止めるために、黒の腕を掴み鞘に納めていた叢雲で一閃する。
飛沫を上げて、腹部から流れる出血の多さに黒の視界が霞む。
振り下ろした叢雲が黒を地面に縫い付け、目にも止まらぬ速さで黒へと襲い掛かる斬撃の嵐に、黒は魔力を防御へと回す。
鈍い音と硬い金属音が鳴り響き、吹き飛ばされた黒は満身創痍。
「2年前は、君達。皇帝と呼ばれた十二人の騎士共を心底舐めていた。だから、記憶を真っ先に改竄し存在を異空間へと封印した。でも、黒竜帝と雷帝だけは、封印を破壊し異空間から何度も脱出した。そして、君の騎士団が誇る部隊。四天や十二単将が僕の前に立ち塞がった」
叢雲と黒幻が火花を散らし、余裕な鴉が淡々と話を続ける。
「咄嗟に理解したよ。天城未来と言う存在が、君達の記憶を繋ぎ止めていると……。だから、仲間である暁に未来を殺させた記憶にすり替えた。でも……君は止まらなかった」
黒の腹部に蹴りを叩き込み、苦痛で動きを止めた黒へと蹴りを叩き込み遠くへ飛ばす。
「そして、僕は君の心を破壊した。己の手で殺したと言う記憶に改竄する事で、ようやく君は壊れた。同時、十二解禁がその時の最高到達点と言われていた解禁の段階を全て外し、周囲の有象無象全てに破壊をもたらし―――」
「だから、お前は俺に負けたんだよ」
鴉の言葉を遮るように、黒が言葉を発し黒幻の刃先を鴉に向ける。
「2年前は、確かに記憶を弄られ自分の不甲斐なさに、仲間達を危機に晒した。未来を危険な目に合わせたかもしれない。だが、記憶を弄ったからと言って、俺がお前に向けた殺意は止まらなかった……。そうだろ?」
「あぁ……そうだ。君は僕に向けていた矛先を決して、外さなかった。常に僕の視界には、君がいた。君だけが存在していた――ッ!」
一気に間合いを詰めてきた鴉に、黒は目を閉じ全神経を研ぎ澄ます。
「泉流抜刀術……【白袖切り】」
黒の手が一瞬だけ消え、鴉の足下を通り抜けた不思議な感覚が鴉の脳裏を過る。
黒の横一閃を叢雲で受けるが、鴉の背後を切り裂いた斬撃破に鴉はその場から退く。
しかし、鴉の視界全てを覆い隠すように現れた斬撃が、鴉を何処までも追跡する。
「2年前、お前が俺達に負けた敗因は……未来に手を出した事だ――」
追跡する斬撃にばかり気を取られ、上空から鴉に向けて急接近する飛翔体に気が付かず。
雲を突き抜ける稲妻が大地を穿ち、鴉の死角であった真下から跳ねるように雷光と共に繰り出された蹴りが鴉を、雲よりも遥か上空へと連れ去る。
「―――何処を見ている…。そっちは――残像だ」
鴉が叢雲を振るい蹴り挙げてきた人影を切り裂くが、刃先は空を切り。
鴉の視界を埋め尽くす金色の鎧兜が一斉に、鴉の身体を叩きのめす。
数十数千数億と、身体の隅から隅まで電撃と強烈な殴打が鴉の身体を外側と内側から破壊する。
「グゥガァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァ――ッ!?」
鴉の呻き声を掠れさせる程の落雷と放電が続けざまに放たれ、上空の翔と地上の黒がニヤリと笑みを浮かべる。
「雷魔法――【雷王の紫電】ッ!」
「黒竜魔法――【黒鳴竜の雷砲】ッ!」
上空から降り注ぐ紫色の雷が鴉を地上へと叩き付けるために、降り注ぐ。
一撃で大地を穿ち、塵すら残らない程の電撃が鴉の防御へと回した魔力を上回る質量で襲い掛かる。
地上で待ち構えていた黒が自身の指先で、降り注ぐ落雷の間に見えた鴉を狙う。
空のように、指先で狙い澄まし背後から顕現した黒竜とはまた違った雰囲気の黒竜を顕現させる。
「――墜ちろッ!」
黒の指先の直線上に姿を現した鴉が、黒の放った雷光に呑み込まれる。
翔の雷と黒の雷光が交わり、空を覆い隠していた雲を吹き飛ばし、稲光と轟音が空高くから響き渡る。
丸焦げになったとしても、鴉の身体は再生し仮面を一枚消費する事で命を繋ぐ。
さきほどの連携は、鴉の身体を炭に変える程の熱量と魔力をしており、先ほどから黒が急激に弱くなったのは、単なる――振りであった。
鴉の眉間にシワが寄り、鴉の額に何本もの血管が浮き彫りとなる。
「だから、言ったろ?――油断と力量を見謝ったのが、お前の敗因だって…。2年前と今回で、二度も敗北を味わう事になるな」
再生したての鴉を嘲笑うかのように、鴉を地面に叩き付けた際に生まれた窪みを見下ろす様に黒が立つ。
「ぼ…僕を………僕を見下すなァァァ―――ッ!」
窪みから這い上がって来た鴉が耳をつんざくような気色悪い声を挙げ、黒と翔目掛けて飛び掛かる。
現在の黒からは、先ほどのような猿芝居はする必要がないと判断されたのか、黒幻を振るい鴉の片腕を吹き飛ばす。
「悪いな……。さっきの猿芝居と言い、初代みたいに惨たらしく遊ぶ気はさらさら無かったんだがな……」
黒の全身を覆う様に黒竜の魔力が纏わり付き、強固な鎧を形成する。
「七…八……と続いて、九解禁。さらには、十解禁か?まぁ…解禁の段階なんてどうでも良いけど、さっさと治して立てよ。2年前とは違うって所を見してくれ」
黒のドス黒い殺気が鴉を圧し殺そうと圧を掛ける。
叢雲を握る手が震えており、身体を分けた為か蜘蛛との精神魔法での連絡も一切通じない。
2年前の様な広範囲に及ぶ記憶改竄は、使用可能とは言えるレベルにはほど遠い。
そして、万が一にも改竄出来得るレベルであったとしても、目の前の皇帝がそれを許すとは到底思えない。
――ここで、負ければゲームマスター権限を剥奪される。
ならば、是が非でも勝たなければならない。
例え――世界を破壊しようとも――
鴉の体内で黒の魔力が黒の発する魔力に反応し、鴉の全身に駆け巡る。
黒の膨大な魔力と暁から奪い取った魔力を無理矢理掛け合わせ、自身の魔力で包み込む。
膨大な魔力と魔力が混ざり合い、さらに膨大な魔力を生み出し鴉の手中に収める。
(クフフフフ……ッ…。そうやって、今だけの余裕を噛み締めてろ……。最後に勝つのは――僕だッ!)
両手を勢い良く合わせ、身構えた黒と翔を他所に、膨大な魔力が鴉の体内で蠢き、全身を隈無く駆け巡る。
「やべーな……一旦退くぞ」
翔が黒の肩を掴むと、黒はその手を振り払う。
「鴉の最後の悪足掻きとも思える力だ。正面から切り捨てないと、まだ足掻き続けられて面倒だ。――ここで、潰す」
黒が背後から顕現させた黒竜で膨れ上がる鴉の魔力を叩く。
力の全てを魔力に変化しているのか、その固さは岩石を優に凌ぐ。
凄まじい魔力の膨張と周囲の瓦礫や岩石を吸収し取り込む様は、異様であった。
ゆっくりと大きさを変える鴉の魔力を距離を離して見詰める黒と翔の元に、駆け付けた暁が合流する。
「……まるで、空飛ぶ要塞だな」
「動力は僕と黒ちゃんの魔力かな?……燃費悪そう」
「んな事より…さっさと壊そうぜ。せっかく晴れて良い天気なのに、あれじゃ台無しだ」
黒に続いて、暁と翔がその背中に付いて歩くように、空飛ぶ巨大要塞へと歩みを進める。




