一章十一節 バカと予感
警報が鳴り響き、王都の市民が逃げるなか。
王都の最重要機密が保管されている扉が開いていた。
「コレだ……コレさえあれば!!」
不適に笑う男は、笑いながら闇に消えていった。
 
「これくらいで、良いじゃないか?」
【黒幻】を鞘に納めながら、小型異形種を蹴散らしていたミッシェルの方を向くと。
「そうねぇ~千夏ちゃんの事が心配だけどね」【完全無欠】を抑えながら深呼吸をすると。
目の前で燃える王都を見ていた。
 
リーラは八方から来る異形種を蹴散らしながら、避難が出来なかった人達を助けていた。
「皆さん!こちらに建物から離れて下さい!」
王都内に入って来たヘカトンケイルが建物を壊しながら、王都の中心部に向けて走り出した。
「ヤバいって」
「逃げろ!!」
「ママー!ママー!!」
混乱の影響で逃げ惑う人で王都の中心部は埋め尽くされていた。
「あぶない!」
守備隊員の一人が迷子の子供を庇い崩れたガレキの下敷きになった、隊員は子供をガレキから出すと走って逃げるように言うと、子供は走って避難所方面に走っていった。
それを、見ていたリーラはガレキを力任せに投げ飛ばし、隊員を助けようとしたが、2体のヘカトンケイルが子供に気づくと、子供を追って避難所方面に向けて歩き始めた。
(しまった…あの方面にはまだ人がいるのに!)
どんなに頑張っても、リーラの足ではヘカトンケイルに追い付く事は無理だった、リーラが諦めかけた瞬間。
2体のヘカトンケイルの上半身が切り裂かれた。
建物の上からリーラを見下ろしながら『狂化状態』状態の千夏がリーラに向け叫んだ。
「お前、諦めたな……追いつけないと悟った瞬間諦めたな…そんなことで、諦めんじゃねえよ!!それが、お前の目指してる!騎士かぁ!!そんな騎士ならやめろ、そんなのお前の目指してる騎士じゃねえだろ!」
リーラの目指してる騎士を否定すると、千夏は中心部に佇むヘカトンケイルを引き裂き、建物の屋上にいる小型異形種を走り抜きながら、ヘカトンケイルを切り裂きながら徐々に数を減らしていった。
「小型と、王都の市民を任せる、俺は王の所に行く」
そう言うと、王都を統治する王の元に飛んで行った。
千夏が王の居る王室に行ってから少し立つと、王都の市民がほぼ避難が完了してきた、そんな時。
王の居る王室からヘカトンケイル……それ以上の大きさを持つ大型異形種が現れた。
 
千夏は王室に付くと、そこには王とその妃、子供の四人と王を警護する、警護兵がいたが。
「何だ、この状況は!」
千夏の見たものは、大臣が警護兵を突き刺して笑いながら警護兵を殺していた。
「止めてください!大臣殿!」
千夏が声を上げるが、大臣は気にもしなず王に剣を向けた。
「陛下……あなた様がいけないのですよ!」
警護兵の一人が間に入り大臣の剣を斬り落とした。
「貴様!陛下に剣を向けるとは、自分が何をしてるのかわかってるのか!」
長いアゴヒゲの特徴の老警護兵は大臣に向けて剣を構えた。
「わかってるに決まってるじゃろ……私たちはこの腐った世界を異形の力で正しく導くのだよ!」
発狂染みた声を上げながら飛びかかって来た大臣を千夏は壁に蹴りつけた。
「腐った世界を正しく導くってバカ過ぎんだろ、異形は世界に仇成す殲滅対象、世界を導くとかバカでも信じねえよ」
壁にめり込んだ大臣に冷たい目線を送りつつ、警戒しながら近づこうとすると。
「それこそ、凡人の考えですよ」
千夏の目の前まで近づいた大臣は、強烈な蹴りで千夏を下の階まで蹴り飛ばすと、懐から真っ青な水が入ったビンを取りだして魔力を流しながら呪文を説いた。
『天と地よ、異なる物よ、世界を断ち、善と悪、この世の理全てを、壊し恐しと怖がれよ』
ビンの中身が光り輝くと、ビンの中身が膨張し始めた。
「さぁ、パーティーの始まりだ……ふはははははは!」
「気持ち悪い声挙げやがって」
千夏はその場にいた王の家族と警護兵全員をトランプで作った、階段でしたまで下ろさせると、
王室を壊しながら現れたヘカトンケイル似の大型異形種が目の前にいた。
「早く、避難所に!」
千夏が声を挙げるのと同時に異形種が腕で潰そうと、腕を下ろそうとしてきた。
その時、大型異形種の腕を弾き返しそのまま異形種の顔を殴り飛ばした。
「ナイスタイミング!リーラ!」
千夏がその場にあった鉄骨を掴み大臣目掛けて投げた。
大臣はするりと避けると、二人を見ると笑いながら叫んだ。
「お前達にコイツを倒すことが出来るかな?」
すると、千夏の『狂化状態』が解けてしまった、千夏は倒れ込みそうな体を支えながら立つが、大臣が放った光弾で地面に倒れた。
リーラが助けようとしたが異形に阻まれて助けに行けなかった。
「王の首か、仲間の首かどっちか選ぶんだな!」
絶対絶命なこの状況を打破するにはどちらか選ぶしかなかった。
すると、大型異形の首がへこむとそのまま吹き飛ぶと、煙の中からミッシェルが現れた。
「選ぶことができなかったら、どっちも選んじゃうのよ」
リーラにウィンクしながらミッシェルが言うと大臣が光弾を撃とうした瞬間、大臣を防壁まで蹴り飛ばすと黒が声を挙げた。
「ミッシェルの言ってることわむちゃくちゃ過ぎんだよ。簡単にすると、後悔しない方を選べば良いんだよ」
鞘に納めた【黒幻】をだしながら、大臣に向けて、殺気をだした。
 




