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贄/
贄/
最も美しく、最も残酷な
透明へ射す光の季節の始まりのとき
その娘は捧げられる
装いは花々で美麗に飾られ
表情は光に満ち美しく整う
雷鳴を遠く聞く深い谷の奥で
秘密に贄が遂げられるとき
華やかな能面は砕け散り
その肌は鈍色に光を失う
そうして骸へ灰が降り積もり
夜と朝がしばし繰り返される
豪炎と灼熱は遂に去ったのだ
立上る寂しげな朝の香に
風の囁きが満ちる
秋雨がさらさらとふり
柘榴の紅となり
翡翠の碧となり
水晶の白銀となり
黄鉄の黄金となり
山塊は錦へ染まる
あれほどの熱を懐かしむこともなく
凍てつく氷の純粋へと傾いていく
季節の残酷へ捧げられる者たちへ。