I just rock!/
2017.08.21 推敲 最終行 (い)る→(い)た
I just rock!/
万葉の輩には言語或いは仮名の発露があっただろう
想いを文字に出来ることの喜びと初々しい苦悩が確かにあっただろう
そうして詠み人知らずの歌がきっと文字にも残らずに深い月夜に溶けていった
草花は黙ったままでそれを土の中へと閉じ込めた
秋空にこそ咲く輩の想いの長は仮名にぞ薫る香
言葉は嘘で覆われるから
外骨格をレンズとする三葉虫のごとく
真っ直ぐにだけ見る世界
ウレキサイトの直線的透過として
わき目も降らず見えるものを見る
みんなそうやって来ただろう?
生きていることはそういうことだろう?
やりたいようにやることを
妨げることとの抗いの中で
己の中にある半分は嘘であったことを知り
世界の半分は嘘であったことを知った
今出会った始まりの言葉がある
諦めきれない始まりへの回顧ではなくて
確かに今も始まり続けていること
秋空に放つ我らの迸り顧みすれば始まりの言
聞こえている
不器用な、しかし圧倒的な若いドラムが
溶けあっている老いたベースのシャウトが
二人だけで夜を渡る愚かしいけれど
眩しいほどの我儘の行く末が
I just rock!
I just rock!
just rock now!
雑踏の中で
段ボールに顔を隠し
片隅で
突然に始められるのは
発露
喜びであり初々しい苦悩
言葉はいつも
それを求める者にこそ訪れる
彼らが親子であるか
それとも師弟であるか
誰も知らず
唯、何れから来
何れへと去っていく
路上のアーティストでしかなく
しかし
確かにその時
彼らが演奏を終えたその時
その一帯は彼らの支配下にあった
熱が渦巻き
無償の拍手は止まず
賞賛の眼差しが唯一注がれる時
やがて彼らは消える
歌い手知らず
その曲は受け継がれるかも知れず
消えてしまうかも知れず
月は静かに夜は深く
人々は残酷に新しさだけを求めていた
夢を見た。老人と小柄だが筋骨逞しい青年のユニットの。老人はベース兼ボーカル。青年はドラムであった。老人とは思えぬ美しいシャウト。そしてベースの旋律。青年の圧倒的なドラム。怒涛のようなロール。小さなハイハットもどきと、スネア、そしてバス。彼らはそれだけで群衆を魅了していた。あの歌が忘れられない。そして、それは万葉の昂りと繋がった。彼らが生まれたての日本語という言語に出会った昂りへ。文字という表現を得た喜びへ。表現は遂に命を継ぐことを超え、己という形のないものを残そうとする試みとなった。