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第1話 新たな翼

ようやく完成。

待ってくださっていた方、お待たせしました。

「チェイサー、離陸を許可する。離陸後キーパー01及び02、キッカー03及び04と合流。訓練空域へ」

「管制塔、チェイサー了解」

キュイッとF15のエンジンが独特の音を出しエンジン出力をアイドリングからミリタリーへスロットルを押し出す。

ブレーキを解かれカクンと機首が一瞬下がり滑走を開始する。

離陸速度に達した後、ゆっくりと高度を上げ空中待機していた訓練生が乗るT-4の後継機である超音速練習機T-6と合流し訓練空域へ向かう。

『山下教官、お願いします』

訓練生の1人が無線で挨拶する。

「ん、今の所戦果はキーパー隊が1:0で有利だ。キッカー隊今日は落とせないぞ」

『キッカー03了解』


互いに距離を取りヘッドオン。その後模擬空戦開始だ。

T-6は訓練機だが20mmバルカン砲が一門、胴体下に取り付けられるようになっており空戦後に予定されている射撃訓練のためにペイント弾が装填されていた。


次第にお互いの距離が近付きわずか500mのところを物凄い速度で過ぎ去る。

直後、操縦桿を左に倒し互いに90°バンクの左旋回に入る。


「お、キッカーが後ろを取ったか」


教官である山下は空域の外からレーダーで様子をうかがっていた。

突然無線が入る。


『小松よりチェイサー。緊急事態だCOCへ繋ぐ』


突然のことだったが頭の回転は速い方だ。

『総隊司令部の上田だ。国籍不明機を確認した。速度が速い、恐らく戦闘機だ、数は1、今から小松のFを上げていては間に合わ無い、訓練生を避難させ要撃に当たれ』


「チェ、チェイサー了解。聞こえたな、訓練は中止だ。安全が確保されるまで高度7000距離200方位150で待機」


了解を返すとサッと4機編隊を組み指示された空域へ向かう。飛び去るのを確認した山下は操縦桿を倒し要撃に向かう。後から小松のFがやってくる。それまでの辛抱だ。



横田 総隊司令部

地下指揮所


「チェイサー、向かいます」

要撃管制官が上田に報告する。

上田の目の前には日本列島が大きく鎮座している。その中央、日本海に浮かぶオレンジの三角形は真南へ向かっている。そのunknownに対し西から緑の三角形が迫る。チェイサーだ。

「チェイサー、そろそろ見えてくるはずだ。同高度、距離5」


接近を知られ無いために要撃機は自機のレーダーを使わず日本列島各所にあるレーダーサイトから地下指揮所に送られてくるデータを元に誘導されて接近する。


『捉えた。こいつは……』

「チェイサー、どうした」

『驚いた、Su-50だ、厄介なのが来た』


Su-50とはロシアの主力ステルス戦闘機である。PAK FA計画で採用され、2017年から配備された新鋭機だ。

当然ながら目視観測では武装の有無はわからない。老朽化してきている山下の乗るF-15Jではかなり分が悪い。


「新たな反応2つ!北陸沿いを南下中、突然現れました!」

薄暗い地下指揮所が騒めく。

「小松のFをそっちへ向かわせろ!」

『チェイサーより、その2機はどこへ向かってる』

「G空域西南端です」

『そこはダメだ!訓練生を行かせた!早く知らせてやってくれ!』

山下の言葉とほぼ同時にそのセクター担当の管制官が悲鳴をあげる。

「高速飛翔体4つの派生を確認!中距離ミサイルです!」

簡易的なレーダーしか搭載していないT-6では国籍不明機の接近に気づけるはずもなかった。


「キッカー、キーパーの反応消失」


いきなりの事態に誰もが肩を落とした。

『ちくしょぉぉぉ!!』

地下指揮所のスピーカーから山下の叫びが流れる。



日本海海上


「俺の…俺のせいだ…」

と、つぶやいていると目の前に捉えていたSu-50が左へ吹っ飛んだ。


「クソッ!何なんだよぉ!」


山下も後を追い左旋回に入る。強烈なGに抵抗して頭をあげるが、そこに機影は無かった。すると、一瞬キャノピーに付いているミラーに機影が映る。

完全に背後を取られていた。


直ちに回避機動に入るが機動性、速度全てをとっても性能が上回るSu-50を振りきれるはずも無かった。


かろうじて冷静を保っていた頭はヘルメットのイアフォンから聞こえてきた女性の声を聞き取った。


『降下しろ』


訳がわからなかった。いきなりの戦場で女性の声。しかも命令系、管制官のそれではない威圧感。


『降下しろったら。死ぬぞ』

「あぁ、クソ!」


どこから聞こえてくるかわからない声に従い素早くロール、天地が逆転しすぐさま操縦桿を引き、ほぼ垂直の降下する。速度が増し空気が厚くなるため機体が揺れる。その揺れる機体から後方を振り返ると、視野には獲物に食らいつこうと猛然と降下してくるSu-50が太陽を背に一杯に映った。

その後方、遥か上を何やら光が落ちてくる。眩しくて見えない。しばらく見つめているうちにSu-50は急に機動を返す追尾をやめ消える。

機体を水平に戻し周囲を確認する。とさっきまで死神に見えたSu-50が撃墜されていた。


そのそばを悠々と過ぎ去る灰色の機体。すらっと伸びた機首に、ステルス機特有のエッジの揃った翼。そしてその灰翼には紅い日の丸があった。









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